名門コース、ゾルダーで開催されたスーパープレスティージュ第5戦。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)とのスプリントでティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が勝利を挙げ、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が47位でフルラップ完走を果たしている。



ゾルダーで開催されたスーパープレスティージュ第5戦。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が連戦出場した photo:CorVos

12月20日(土)のUCIシクロクロスW杯第5戦、21日(日)の同第6戦、22日(月)のX2Oトロフェーの第4戦に続くクリスマス前の4連戦最終日、12月23日(火)に開催されたのが、三大シリーズ(W杯、スーパープレスティージュ、X2Oトロフェー)の一戦に数えられるスーパープレスティージュ。かつて世界選手権も開催された名門コース、ゾルダーサーキットを舞台に第5戦が開催され、再びシクロクロストップ選手たちが火花を散らした。

ベルギー・フランダース東部のリンブルフ州ヒュースデン=ゾルダー近郊、テラーメンの森に設営されている起伏に富んだ「テラーメン・サーキット」を使ったコースは、これまでの3連戦とは異なり砂区間のないハイスピードコース。各カテゴリーでロードレースのような集団バトルが繰り広げられ、男子エリートレースには織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)と田島綾人(W.V.OTA)も参戦を果たした。



女子エリート:来季所属チーム未定のフークネが3大シリーズ初勝利

先頭グループを引っ張るカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

今季勝利数15戦13勝と絶好調のルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)はこのゾルダーラウンドをスキップ。このチャンスを逃すまいと、欧州女王インへ・ファンデルヘイデン(オランダ、クレラン・コレンドン)やアニック・ファンアルフェン(オランダ、セブンレーシング)ら、ブラントに一歩及んでいなかった選手たちが激しいバトルを繰り広げた。

SDワークス・プロタイムのカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)やマリー・シュライバー(ルクセンブルク)も加わった先頭グループは、時に肩をぶつけ合いながら激しいバトルを展開する。すると最終周回を前に、今季積極的な走りが目立つアマンディーヌ・フークネ(フランス、アルケアB&Bホテルズ)が決定的なアタックを放った。

最終ラップを逃げ切ったアマンディーヌ・フークネ(フランス、アルケアB&Bホテルズ)がキャリア最大の勝利を達成 photo:CorVos

テレネット・スーパープレスティージュ2025-2026第5戦 女子エリート表彰台 photo:CorVos

10秒ほどのリードを得たフークネが逃げる一方、人数の多さが災いした後続グループは、互いにフラストレーションを溜めてしまい追撃体制を組むことができない。そんな2番手グループを尻目に最後までハイペースを保ち続けたフークネがキャリア初のビッグレース勝利をマークした。

「これは私のキャリアで最高の勝利になった。もちろんフランス選手権で2度優勝したことはあるけれど、ベルギーで勝つのとは全く違う」と、レース後のインタビューで満面の笑みで言うフークネ。今季は積極的な走りでワールドカップで2度表彰台に登っているが、3大シリーズでの優勝は初。しかし所属するアルケアB&Bホテルズのチーム解散によって来季所属チームが決まっておらず、未だ加入先を探している状況だ。「この勝利で新たな契約を得られることを願いたい。できればロードとシクロクロスを両立させられるチームと契約できたら嬉しい」と切実な気持ちを話している。



男子エリート:ファンアールトとのスプリントでデルフロッソ勝利、織田聖は47位でフルラップ完走

15番手付近から追い上げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)と田島綾人(W.V.OTA)が出走した男子エリートレースには、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が前日から連続参戦。連勝中のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)は出走せず、調子を上げているファンアールトが今季初勝利を挙げるかに注目が集まった。

実に100名出走というレースを引っ張ったのはティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とケヴィン・クーン(スイス、ヘイゾマット・キューブ)の2人。スロースタートのファンアールトは10番手以降から徐々にポジションを上げ、レース中盤戦に入る頃に大人数の3番手グループに追いつき、自らプッシュ。ライバル勢を引き連れてレース開始後20分で逃げていた2人を引き戻した。

ティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)など、優勝候補をたっぷりと含んだ10名グループが牽制を繰り返しながら周回をこなし、レース時間が30分を超えるといよいよエンジンが掛かったファンアールトが猛然とペースアップ。この動きに同調できたのはオランダチャンピオンジャージを着るデルフロッソ一人だけだった。

ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)とティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が先頭グループを組む photo:CorVos

一騎打ちのスプリントでファンアールトを破ったティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

ファンアールトとデルフロッソが抜け出してリードを広げ、2人の一騎打ちへ。ファンアールトは残り2周回からもう一段階ペースを上げたものの、テクニックに秀でるデルフロッソは脚を使わず小さな差を埋めていく。最終周回でも差は付かず、勝負はホームストレート上のマッチスプリントへ。ハンドルを投げ合う接戦の末、ホイール半分先行したデルフロッソがファンアールトを下した。

ファンデルプールを継ぐ次世代選手として注目されているデルフロッソが、ファンアールトを相手にスーパープレスティージュのエリートカテゴリーで初優勝。「あんなに凄いスプリントができたなんて自分でも信じられないよ(笑)ビッグレースで優勝争いができたのは本当にクール。後続グループは離れていたから落ち着いて勝負に集中できたんだ。ワウトがもっと早いタイミングで仕掛けなかったのは意外だったけれど、そのおかげで勝つことができた」と、22歳の新時代選手は大きなタイトル獲得を喜んでいる。

テレネット・スーパープレスティージュ2025-2026第5戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos

一方、敗れたファンアールトは「残念だ。今日みたいに接戦になるほど負けるのは本当に悔しい。コース終盤で彼にプレッシャーをかけようとしたけれど、振り切ることができなかった。力が拮抗していると感じていたよ」と心境を語る。「フィニッシュラインでは強い向かい風が吹いていて、先頭からスプリントをスタートするのは難しかった。今思えば、もっと早く攻めるべきだったと思う。でも、そうすると彼をスリップストリームに入れてしまうリスクもあった。結局のところ彼の方が強かったね」と、9歳年下のライバルを讃えている。

また、織田は6分20秒遅れの47位でフルラップ完走を果たしている。前線のアントワープではパンクリタイアに終わっているため、悔しさを晴らした形になった。
テレネット・スーパープレスティージュ2025-2026第5戦 女子エリート結果
1位 アマンディーヌ・フークネ(フランス、アルケアB&Bホテルズ) 51:03
2位 カタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム) +0:08
3位 アニック・ファンアルフェン(オランダ、セブンレーシング) +0:09
4位 インへ・ファンデルヘイデン(オランダ、クレラン・コレンドン) +0:14
5位 マリオン・ノーブルリブロール(ベルギー、クレラン・コレンドン) +0:32
6位 フルール・ムーアス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) +0:45
7位 マリー・シュライバー(ルクセンブルク、SDワークス・プロタイム) +1:12
8位 ヨランダ・ネフ(スイス、キャノンデールファクトリーレーシング) +1:46
9位 ジュリー・ブラウワーズ(ベルギー、シャルル・リエジョワ・ロースタリー) +1:50
10位 ラファエレ・キャリアー(カナダ) +1:51
テレネット・スーパープレスティージュ2025-2026 第5戦 男子エリート結果
1位 ティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) 58:48
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) +0:01
3位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ) +0:12
4位 ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:13
5位 ヨラン・ウィズーレ(ベルギー、クレラン・コレンドン) +0:14
6位 フェリペ・オルツ(スペイン、リドレーレーシングチーム) +0:17
7位 ケヴィン・クーン(スイス、ヘイゾマット・キューブ) +0:20
8位 メース・ヘンドリクス(オランダ、ヘイゾマット・キューブ) +0:30
9位 フィリッポ・フォンタナ(イタリア) +0:35
10位 ヘルベン・クイペルス(ベルギー、シャルル・リエジョワ・ロースタリー) +0:39
47位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) +6:20
66位 田島綾人(W.V.OTA) LAP
text:So.Isobe

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