走って、遊んで、語り合う。ジャンルも年齢も関係なく、600人以上のサイクリストが同じ気持ちで楽しめた2日間。Specialized Day 2025には、スペシャライズドらしい“人と空気の温度”が満ちていた。2日間のレポートです。



グラベル耐久レースでSpecialized Dayがスタート。スペシャライズド・ジャパンの社長の木戸脇 美輝成も盛り上げに加わります photo:So Isobe

スペシャライズドが主催する総合サイクリングイベント「Specialized Day(スペシャライズドデイ)」。その第2回となる2025年大会は、昨年の評価を軽々と越えてきた。

房総の"いい道"をたっぷり走れるロードライドに、走るのは難しくないけど、攻めるとタフなコースをたっぷり走れるグラベルとMTBレース、子どもたちに暇なんかさせない走れて遊べるキッズスペース、お腹いっぱいになれる贅沢なふるまいフード、整った会場でキャンプ泊...。

けんたさんと風花さんを発見。お二人ともAethos乗りです photo:So Isobe
竹谷賢治さんと、オートバイレーサーの中上貴晶さん、レーシングドライバーの元嶋佑弥さん。皆スペシャライズドのアンバサダーです photo:So Isobe


チームで訪れている方々も多数。こちらはRX&Co.のみなさん(取材班もだいぶお世話になってしまいました。ありがとうございます!) photo:So Isobe

イベントは大抵、ロードならロード、MTBならMTBとカテゴリーごとに分かれるものだ。けれどSpecialized Dayは、その常識を軽々と超えてくる。レース派も、ファンライダーも、キッズだってひとつの会場で一緒に楽しめて、最後はプロMTBライダーの華麗な技でワアァァッっと盛り上がる。主催者はスペシャライズドだけど、参加者のバイクブランドはなんだってウェルカム。ブランドのスローガンである「Pedal the Planet Forward -ペダルをまわして地球を前に進めよう」を体現したハッピーイベントだ。

参加者の声としてまず聞こえてくるのは「こんなイベントなかなか無い」「文句なしに楽しかった。来年も絶対来ます」というプラスなものばかり。実際、昨年の約380名から、今年は600名超へ。いろんな人に聞いてみても「去年参加した仲間がとってもいいイベントだったって言うので来てみました」と、どうやら口コミでどんどん参加者の輪が広がっているらしい。

だんだんと日が暮れていい感じに...。焚き火の香りも広がります photo:So Isobe

気分の上がるナイトレースでバチバチの接戦 photo:So Isobe
盛り上がり度100%! photo:So Isobe



Specialized Dayの皮切りとなったのは、初日土曜日の15時にスタートして18時にフィニッシュする3時間のグラベル耐久レース。

「1日開催だった昨年大会を150%くらいパワーアップさせてみようと思いました」というスタッフの言葉通り、2025年の大会は昨年の一日開催から二日間イベントへと進化した。その象徴となったのが、このグラベルレースだ。スタートからフィニッシュまでの3時間のうち、後半は完全にナイトレース。会場がゆっくりと日没に向かう中、ライトを灯したバイクだけが奥の森に吸い込まれていく。

「真っ暗でオフロードなんて危ないよ!」と心配することなかれ。コースには照明が配置されて視界の確保はばっちり。むしろ、日が落ちて光と影がくっきりと浮かび上がり、昼間とはまったく違う様相がなんとも楽しい。夜に思いっきり遊ぶという非日常の高揚感といったらない。

トライアルライダー、岸勇希さんが火の上でバックフリップ! photo:So Isobe
チームメンバーが走っている一方、キャンプサイトでは焚き火で料理...(いい香り! photo:So Isobe


レッドブルアスリートの木村絢斗さんは焚き火も、前に飛んだ岸勇希さんも飛び越えるスーパーハイジャンプ。あんな小さいランプからこんなに飛べるんですか!?!?!? photo:So Isobe

グラベル耐久の総合優勝は吉岡拓哉さん(イナーメ信濃山形)。高岡亮寛さん(Roppongi Express)の追撃を振り切って優勝! photo:So Isobe
グラベル耐久チーム部門でワンツーを決めた「変態志駆路倶楽部」。スタイリッシュで速く、独自路線を突き進む注目チームです photo:So Isobe



18時。完全に陽が落ちたコースにフィニッシュの歓声が響き、Day1が静かに幕を閉じる...と思いきや、これで終わらないのがスペシャライズド流だ。

日が沈んだ会場で、今度はMTBジャンプショーがスタートするのだ。メイン会場に焚き火を据えて、その真上をスペシャライズドがサポートする3人のアスリートが世界トップクラスのスゴ技で豪快に飛び越えていく。山田ルーカス淳一、岸勇希、そしてレッドブルアスリートの木村絢斗さん。MCアリーさんの盛り上げトークも輪をかけていい。圧巻のショーが終わるころには、すっかり夜も深まり、Day1は最高に熱いまま幕を下ろしたのだった。

大会スポンサーの台湾企業、裕源のみなさん。海上コンテナで台湾からバイクを輸送してきたというダイナミックさ! photo:So Isobe
お二人でスペシャライズド。素敵です! photo:So Isobe


Etsuyoさん、MihoCこと中村美穂さん、アンナさん、Love Cyclist編集長のTatsさん photo:So Isobe

2日目の朝は、前夜の熱気をリセットするような、少しひんやりとした空気から始まった。キャンプサイトからは炭火とコーヒーの香りが漂っていて、ちょっと下り坂の曇り空もなんだかしっとりといい感じ。2日目午前中のメインはロング/ショートの2ルートが用意されたロードライドだ。筆者(CWスタッフの磯部)もデビューしたばかりの「Aethos 2」をお借りしてショートコースへ...。

房総半島らしい、キツすぎずユルすぎない、走りごたえのあるアップダウンルートを走ったのは400人以上!50km弱のショートと、70km超のロングが選べるから、脚のある人も、久々の人も、それぞれのペースで楽しめる。途中のエイドステーションには、これでもかというほどの手厚いふるまいフードが並び参加者の笑顔が絶えなかった。

ロングライドがスタート。序盤は走りやすいアップダウンが続きます photo:So Isobe
今回一番大きな登り区間 photo:So Isobe


房総の山の中はちょうど紅葉が見ごろ photo:So Isobe

エイドステーションのふるまいフードもたっぷり。寒かったので暖かい粕汁が嬉しい photo:So Isobe
今年、アンバウンドの200マイルを完走した松橋拓也さん photo:So Isobe



実は会場となった千葉県木更津市は、筆者(CWスタッフの磯部)が高校時代にもう嫌!と言うほど走り回った地元だったりする。今回もよく知ったコースを終始走ったけれど、参加者さんから「初めて房総走ったけれど、すごくいい場所ですね」とか「登りが長すぎないからロードのトレーニングライドには最高!」という声をたくさん聞くことができて、ちょっと誇らしい気持ちに。

そうでしょうそうでしょう? ここ、本当にいい場所なんです。地元だから知っている絶妙な走りごたえを、こうして多くの人と共有できることがすごく嬉しかった。またみんな、ぜひ走りに来てくださいね(勝手に広報大使)!

スペシャライズドからお借りしたAethos 2。筆者、磯部にとっては発表会に続く2度目の試乗。登りでの走りに驚いた(本文参照) photo:So Isobe

「今日はバイクを見せびらかそうと思って」とレムコ仕様で来た旦那さんと奥様 photo:So Isobe
コース脇にある「永昌寺トンネル」に寄り道。1898年に掘られた隧道で、日本古来の「観音掘り」特有の五角形断面が特徴です photo:So Isobe



先に書いた通り、今回のSpecialized Dayでは、Aethos 2をお借りして、長い登りと下りをしっかり試すことができた。登場時にもインプレを書いているが、今回はその続編として、しっかりと進化を実感できたポイントに絞って紹介したい。

まず登り。Aethos 2は登りギュンッと伸びるように加速し、軽いだけでは終わらないバネ感をはっきり感じる。先代にあった少しせっかちな挙動が薄まり、ダンシングが驚くほど長続きするのが印象的だった。ジオメトリーの刷新が効いていて、リズムがまったく途切れない。下りではその進化がもっと分かりやすい超軽量モデルと思えないほどラインが安定し、倒し込みの軽さと安心感がしっかり共存している。軽量バイク特有のヒラヒラ感は残しつつ、無駄な不安がそぎ落とされている印象だ。6.8kgを余裕で下回るのに、この走りはちょっと反則レベル(マイバイクを2に更新したい...)!

ライド後半区間は、ロングコースをぶっ飛ばしてきたお馴染み竹谷賢治さんと、レーシングドライバーの元嶋佑弥さんとオートバイレーサーの中上貴晶さんの「ぶっとびアンバサダートレイン」に乗っかって会場へ。結構キツいペースながら、なんとかぶら下がって耐え切れたのはAethos 2の足残りの良さのおかげだと思う。Aethos 2は、先代の軽快さを残しつつ、そこに扱いやすさをプラスした素晴らしいバイク。軽くて自由で、それでいて安心して攻められる。軽量バイクの弱点を丸ごと補強した、完成度の高い2代目だ。

オートキャンプ場内を使ったMTB耐久レース。ライン選択が分かれる激坂の直登区間も photo:So Isobe

MTBコースは基本的に走りやすいコースレイアウト photo:So Isobe
カメラの前で大クラッシュ!(このあと光の速さで再スタート) photo:So Isobe


懐かしのS-Works M5!ポリッシュが激シブです photo:So Isobe
ロードライドの後に3時間ソロを走った河岸さんは兵庫からご参加。一番よく走りましたで賞を進呈します photo:So Isobe



ロードライドを走り終えて会場へ戻ると、今度はオフロードエリアがざわざわと熱気を帯びはじめていた。ここからは3時間のMTB耐久レースの時間だ。

とはいえ、ガチ勢だけの競技ではないところがとってもいい。コースは「セクションは難しくないけど踏めばかなりキツい」設定だから、グラベルバイクで走る人もチラホラ。リムブレーキ時代のバイクを引っ張り出して参戦する人がいたり、さっきまでロードライドをMTBで走っていた人も連続参加(!)していたり。雰囲気はどこまでも自由でゆるい。そんな光景が自然に成立してしまうのが、Specialized Dayの懐の深さ。このジャンルの境界線が溶けていく感じが、実にスペシャライズドらしくていい感じだ。

お馴染み、東京都葛飾区のバイシクルコーヒーも出店していました photo:So Isobe
たっぷりのふるまいフードにご満悦なEtsuyoさんやMihoCたち photo:So Isobe


ナイスウィリー photo:So Isobe

プッシュバイクだって全力で楽しめます photo:So Isobe
絵本や塗り絵コーナーも。キッズを一切飽きさせません photo:So Isobe



今年のSpecialized Dayを語る上で外せないのが、圧倒的なホスピタリティだ。ふるまいフードはもう食べ切れないよ!というくらいに豊富(しかも無料!正確には参加費に含まれているのだけれど、それでも贅沢だ)だし、パンプトラックや小さなスキルコース、輪投げ、塗り絵など、子どもが夢中になるコンテンツもたっぷり用意。さらにはスペシャライズド以外のブランド出店も少なからずある。

確かにレースやライド、最新モデルの試乗など、自転車好きが喜ぶコンテンツはたくさんあるけれど、バイクを降りても、家族連れでも楽しめるプログラムが充実しているイベントは意外と少ない。参加者から「こんなイベント、他にないよね」という声が絶えなかったのも頷ける。

そもそも今回が昨年に続く「第2回」とされているSpecialized Dayだが、実は2012年に白馬を舞台に同じ名称の大会が初開催されていた。取材班はその際もお邪魔させてもらったのだが、ヒルクライムやMTBレース、パンプトラックレース、さらには本国のコンセプトモデルまで持ち込んだ展示、マット・ハンターや国内プロチームといったサポートライダーを集めたり、スペシャライズドの世界観を表現した素晴らしい大会だったことをよく覚えている。

スペシャライズド京都のみなさん。入賞メンバーもいらっしゃいました! photo:So Isobe
楽しかったですね!また来年! photo:So Isobe


お約束のパフォーマンスで会場を沸かせる岸勇希さん photo:So Isobe
MTB耐久が終わったら最後のショーアップ。慎重に打ち合わせを重ねます photo:So Isobe

2日間を締めくくる大ワザは木村絢斗さんの22人(!)一気跳び! photo:So Isobe

こうして振り返ってみると、Specialized Dayは単なる試乗会でもフェスでもなく、自転車にまつわるすべてを、まるごと体験できる空間だった。ロードも、グラベルも、MTBも、キッズも、家族も。全員が同じ熱量で楽しめるイベントはそう多くない。スペシャライズドというブランドの懐の深さがしっかり滲み出た、唯一無二の2日間だった。

イベントの来年開催については、現時点ではまだ未定だという。けれど、この2日間で見た参加者の熱と、スペシャライズドというブランドの懐の深さを思えば、この素晴らしい時間が今年限りだなんて、とても思えない。もし来年も開催されるなら、きっと今年を軽々と超えてくるはず。

Specialized Day、また会いましょう。僕もまた必ず取材に伺います。

text&photo:So Isobe