16年にわたりプロとして活躍したダヴィデ・チモライ(イタリア、モビスター)が引退を発表した。プロ通算9勝で、キャリア後半はリードアウトとしての活躍。しかし今季は体調不良が続き、予定より1年早い引退を決断した。



2015年のパリ〜ニースでステージ優勝したダヴィデ・チモライ(イタリア、当時ランプレ・メリダ) photo:CorVos

「2026年に引退するつもりだったが、今シーズンの流れを見て『今年を最後にするべき』だと気づいた。身体的にも精神的にも本当に苦しかった」と、チモライはイタリアメディアilNordEstのインタビューでそう引退理由を語った。

2010年にリクイガス・ドイモでプロデビューしたチモライは1989年生まれの36歳。ランプレ・メリダ時代はエーススプリンターとして、ツール・ド・フランスでは何度もトップ10に入り、2016年は新城幸也と共にツアー・オブ・ジャパンに出場し、ステージ優勝。ボルタ・ア・カタルーニャやパリ〜ニースなどで勝利を挙げ、プロ通算では9勝をマークし、グルパマFDJではアルノー・デマール(フランス)のリードアウトとして何度も勝利へと導いた。最も思い出に残るレースを問われると、チモライは自身のリードアウトからマッテオ・トレンティン(イタリア)が優勝した2018年ヨーロッパ選手権を挙げた。

キャリア後期はイスラエル・プレミアテック、コフィディスを経て、2024年からはモビスターで走った。15回のグランツール出場を誇る経験豊富なアシスト選手として活躍。「2025年を最高の1年にして、2026年に引退するつもりだった」と振り返る一方で、シーズン序盤からインフルエンザにかかり、出場を予定していたジロ・デ・イタリアの前には腕の感染症を発症。さらに8月のツール・ド・ポローニュでは新型コロナウイルスに感染し、満足に走れない状態が続いたという。「シーズン半ばで気持ちがもう疲れてしまっていた」と明かしている。

2016年ツアー・オブ・ジャパンで区間優勝したダヴィデ・チモライ(ランプレ・メリダ) photo:Satoru.Kato

「20歳の頃は『35歳まで走れば十分だろう』と思っていた。でも情熱が仕事になり、将来が見えるようになった。人生は変わる。家族ができ、物事の見方も変わる。スポーツとしての活動や家を離れて過ごす生活も、その変化の一部だった。だが最近は”走る楽しさ”がなくなっていた。レース中に感じるあの楽しさがね」と引退を決断した理由を語った。

今後は自転車界に関わり続けたいとしつつ、まったく異なる農業分野の仕事にも興味を示しているという。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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