デマールの現役ラストレースとなったパリ〜トゥールは、先行した2名のラスト1kmで後続が追いつく展開に。6名スプリントをマッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング)が制し、2017年以来となる自身3度目の優勝を果たした。



花道を進むアルノー・デマール(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) photo:CorVos

多くのクライマーやパンチャーがイル・ロンバルディアで欧州最終戦を終えるなか、スプリンターやクラシックレーサーはこのパリ〜トゥール(UCI.Pro)でシーズンを締めくくる。今年で第119回を迎える本大会は、フランス・パリ近郊シャルトルから南のトゥールまで駆ける211.6kmのワンデーレースだ。

コースは平坦基調だが、終盤には10箇所の未舗装路と8箇所の短い丘が登場。ここ2年は小集団スプリントでの決着が続き、逃げ切りや独走などあらゆる可能性を孕むのが魅力だ。レースの3日前に突如引退を発表し、これが現役最後のレースとなったアルノー・デマール(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)は、選手たちで作られた花道を通ってスタートに臨んだ。

ジョルダン・ラブロッス(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)ら6名が序盤から逃げ集団を作り、それをロットとヴィスマ・リースアバイクが先導するメイン集団が追う。特にヴィスマはオラフ・コーイ(オランダ)と、前年優勝者でサイトメガロウイルス感染による離脱から8月に復帰したクリストフ・ラポルト(フランス)の2枚看板を揃えた。

未舗装路区間に突入した選手たち photo:CorVos

最初の2時間の平均時速が50kmに迫るハイペースのままレースは進み、やがて終盤の未舗装路区間に突入。UAEチームエミレーツXRGもプロトン牽引に加わるとさらにスピードが上がり、残り49km地点で逃げを吸収。残り30kmを切り、ポール・ラペラ(デカトロンAG2Rラモンディアール)とトゥール近郊が故郷のティボー・グリュエル(グルパマFDJ)によるフレンチ・コンビがアタックし、2人での逃げ体制に入る。

後方では優勝候補のアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット)らがパンクに見舞われ勝負から脱落していくなか、縮小する集団からラポルトがアタック。しかし先頭2名には届かず、舗装路での一時的なペースダウンもあってプロトンに選手たちが戻ってくる。そこからアレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツXRG)とアルバート・ウィゼンフィリプセン(デンマーク、リドル・トレック)が仕掛け、再び活発化した集団はラポルトの仕掛けも相まって、5名の追走集団が22秒差で先頭2人を追った。

クリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)が何度もアタックする photo:CorVos

最後の未舗装路区間を終え、短い登りでのラポルトのアタックには、マッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング)、シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンAG2Rラモンディアール)らが食らいつく。先頭のラペラとグリュエルは10秒のリードでラスト1kmを通過。しかし牽制が入ったことで後続が合流し、勝負は6名のスプリントへ。

2名を残すデカトロンはビッセガーがラペラのためにペースを作り、最終ストレートに突入。しかしスプリンタータイプのトレンティンがビッグギヤを踏み込むと、そのトップスピードにはラポルトも敵わず、先頭でフィニッシュラインを通過した。

6名によるスプリントを制したマッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング) photo:CorVos

3度目の優勝を果たしたマッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング) photo:A.S.O.

未舗装路導入前の2015年に初優勝、2017年に2度目の優勝を挙げ、8年ぶりの勝利でハットトリックを果たしたトレンティン。「ようやくシーズン初勝利を掴めた。ツール・ド・フランスを終えてから調子がよく、やっと本来の脚の状態を取り戻した。ハンブルク(8月のADACクラシックス)では怪我をして、実戦復帰して勝利できた」と、困難を経ての勝利を喜んだ。

2位にラポルト、3位に19歳でU23版パリ〜ルーベ覇者のウィゼンフィリプセンが入った。
パリ〜トゥール2025結果
1位 マッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング) 4:18:50
2位 クリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)
3位 アルバート・ウィゼンフィリプセン(デンマーク、リドル・トレック)
4位 ポール・ラペラ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
5位 ティボー・グリュエル(フランス、グルパマFDJ)
6位 シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンAG2Rラモンディアール) +0:03
7位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) +0:19
8位 ドリアン・ゴドン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) +0:23
9位 ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック)
10位 アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツXRG)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos