長野県の名湯・野沢温泉村を舞台に、ヒルクライム、ダウンヒル、グラベルの3種目のイベントが同時開催されるのが野沢温泉自転車祭だ。今年で5年目を迎える大会は、自転車×味覚×温泉と三拍子揃って盛りだくさんのサイクリストの祭典だ。初日のヒルクライムとダウンヒル予選、そして夜は屋台村で盛り上がった温泉街の様子をレポート。

野沢温泉スキー場の会場はブランドブースで賑わい、ロードやMTBに乗るサイクリストが集まった photo:Makoto AYANO

計量チャレンジ「最軽量バイクは誰だ!?」 
パナレーサーが用意した「パ停」
長野県北部、日本の真ん中に位置する上信越高原国立公園に指定される一帯にある素朴な山村、野沢温泉村。スキーと温泉でつとに名高い人気フィールドで開催されるのが野沢温泉自転車祭だ。

ゲストライダーの清水一輝、九島勇気、井本はじめ、永田隼也さん photo:Makoto AYANO
イベントは2日間にわたり、ヒルクライム、MTBダウンヒル、グラベルの3種目のサイクルイベントが開催されるのが大きな特徴。そして夜はお酒とショーが楽しめる屋台村を展開。野沢温泉村が一体となってサイクリストを歓迎してくれる。
スキー場の長坂ゴンドラ駐車場がメイン会場となり、イベント初日の10月4日はヒルクライムとMTBダウンヒルの予選が行われた。

開会挨拶をする上野雄大村長 photo:Makoto AYANO
イベントが村長の挨拶で始まることはよくあるが、サイクルジャージとヘルメット姿で現れた野沢温泉村の上野雄大(うえのゆうた)村長こそ、このイベントの発起人。じつはこの上野氏、根っからのスキーヤー&マウンテンバイカーで、この春に村長に選ばれたばかり。
「3月末に村長になって以来、公務で忙しくて大会の準備に関われなかった。だからせめて大会を賑やかそうと思い今日は皆さんと一緒に走らせていただきます! 2日間、目一杯楽しんでいってください!」との挨拶でイベントはスタート。

スペシャライズドは大型ブースを展開 photo:Makoto AYANO

前日に発表になった話題のATHOS2が展示された! 
参加者にレンタルするeBikeがずらりと並ぶ
上野村長とともに5年前のイベント立ち上げ時からのスポンサーであるスペシャライズドは大型ブースを展開。つい前日に発表になったばかりのロードバイク、Athos(エートス)2の展示や、ブース前には参加者レンタル用のeBikeなどがずらり勢揃い。走るのが大好きな社員も総出で参加者となって盛り上げる。

パナレーサーブースで愉快な写真を撮ってSNS投稿してネ! 
こんなカラフルなグラベルバイクも
イベント種目ごとのカテゴリスポンサーとなるシマノやパナレーサーなども人・モノ両方を揃えたブースを展開。会場には他のサイクルイベントでは見かけない様々なブランドやフードトラックが並んだ。

美味しいドリップコーヒーを提供するカフェの出店が嬉しい 
美味しそうなドーナツが並ぶ
スキーで有名な野沢温泉村に、隣り合う飯山市も連携。信越エリアはスキーやトレッキング、山岳レースなどが盛んな一帯だけに、イベントのゲストやインフルエンサーとしてプロスキーヤーやトレイルランナーも多数参加する。さらにイベントディレクターを務める永田隼也さんをはじめ清水一輝さんや井本はじめさん、九島勇気さんら日本のトップMTBライダーも大集合し、豪華な顔ぶれが揃う。

ヒルクライムのスタートを待つ選手たち photo:Makoto AYANO

ヒルクライムの最前列をリードするのはMTBダウンヒラーだ 
ヒルクライム第2ウェーブのスタート
ヒルクライムは10時にスタート。ちなみに上野村長もゲストMTBダウンヒラーたちもヒルクライムを走るとあって、どこか和気あいあいな雰囲気が溢れている。ちなみに村長やゲストライダーたちはサドルの後ろに野沢温泉スキー場のマスコット「ナスキー」をぶら下げて走る。そのゲストの前でフィニッシュすれば村の特産品やスポンサー提供のグッズなど豪華賞品がゲットできるとあって、誰にでもチャンスがあるのだ。

上野雄大村長が手にするのは野沢温泉スキー場マスコットの「ナスキー」 
大会メインスポンサーのグリーンアライアンスの社員の皆さんもeBikeでヒルクライムに挑戦!
263人がエントリーしたヒルクライムレースは10分間隔の3ウェーブにグループ分けしてスタート。長坂ゴンドラの山麓「長坂駅」付近のスタートから標高差800m・全長約13kmのコースを一気に駆け上がる。ヒルクライムの最前列をリードするのはゲストのMTBダウンヒラーたちだ。

ヒルクライムへ向けてスタート! photo:Makoto AYANO
コースとなっている奥志賀林道は、日本一美しいブナ林のカヤノ平や奥志賀高原へと続く観光道路としても有名で、山頂駅までのルートを占有使用して開催されるのだ。

ホテルなどが並ぶスキーヴィレッジを抜けて登り始める photo:野沢温泉自転車祭
序盤は森のなかの緩斜面を登るが、後半はスキー場のゲレンデを通過する急勾配の激坂が待ち構える。速い選手なら35分ほどのタイム。制限時間は2時間のレースだ。

キツくなっていく勾配に耐えながら、つい蛇行してしまう... photo:野沢温泉自転車祭

景観が素晴らしいゲレンデのつづら折れを登る photo:Makoto AYANO

勾配が上がる残り2kmが気が遠くなる距離だ photo:Makoto AYANO
レース後半はゲレンデの斜面を行くため視界が一気に開け、斑尾山をはじめとした北信五岳、津南や栄村方面が眼下に見渡せる。
トップで駆け上がったのは土屋直樹さん(COW GUMMA)。乗鞍の年代別30代クラスの優勝や総合11位、富士ヒルでプラチナなど実績あるヒルクライマーで、タイムは35分24秒。

ヒルクライムをトップで駆け上がったのは土屋直樹さん(COW GUMMA) photo:Makoto AYANO
「昨年2位だったのが悔しくて、今回は優勝を狙って走ったので嬉しいです。昨年は先頭を引きすぎて最後にやられちゃったんですが、今年も最初から先頭を行って、追い風に乗ってアタックして後続との距離を見ながら逃げ切れました。このコースはスタートから中盤までは緩斜面で、後半に一気に勾配が増すんですが、自分の地元に似たようなプロフィールの峠があるので、そこで仮想練習して臨んだのがうまくいきました!」

コース後半の景観は素晴らしいが勾配のキツさはハンパない... photo:Makoto AYANO

登り勾配がキツくなるフィニッシュ地点まで残り2km! 
ダウンヒラーの清水一輝選手はグラベルバイクでヒルクライム
トップヒルクライマーたちが40分を切るタイムで駆け上るのに対して、多くのライダーにとってはフィニッシュに到達できるか、制限時間内にフィニッシュできるかが目標。手強いのは終盤のゲレンデを突っ切る管理道路だ。その景観は素晴らしいが、最大勾配は18%にのぼる。eBikeも混走のため、ペダルバイクの人は急勾配をスイスイ進む様を見せつけられながら、力を振り絞って登らなければならない!

昨年覇者のトレイルランナー長野安那さんの力強いクライミング 
ラストスパートに向けて気合を入れる上野村長!

標高差800m・全長約13kmのコースを一気に駆け上がってのフィニッシュだ photo:Makoto AYANO
フィニッシュエリアは芝生が美しい頂上のリゾートエリア「上ノ平ピクニックガーデン」。ここではボランティアさんによって地元産のネギ味噌おにぎりやきのこ汁、レッドブルのドリンク類が振る舞われた。

芝の美しい上ノ平ピクニックガーデンがフィニッシュエリアだ photo:Makoto AYANO

地元のボランティアスタッフのおもてなしが温かい 
新米のネギ味噌おにぎりの美味しいこと

ヒルクライムを終えて仲間たちと和む 
会場ではレッドブルが振る舞われた
くつろぎながら仲間の到着を待つ。頂上でひとりひとりを熱くコールしてくれるMCはプロMTBレーサーの永田隼也さんだ。

ソチ五輪スキー銅メダリストの小野塚彩那さんはフラペ+スニーカーで登りきった photo:Makoto AYANO
2014年ソチ五輪スキーハーフパイプ銅メダリストのゲストライダー、小野塚彩那(おのづかあやな)さんは1時間6分でフィニッシュ。しかも足元はフラペにスニーカー!。最後の坂では息子さんが並走して迎えてくれたのに感激しつつ、年代別6位入賞はさすがトップアスリート。「スキーじゃない種目で表彰されてとっても嬉しかった」。

ヒルクライムを終えたMTBダウンヒルライダーたち photo:Makoto AYANO
午後にダウンヒル予選を走るゲストライダーの皆さんもバイクを(慣れない)ロードバイクに乗り換えて登った。そしてたどり着いた頂上では体力を使い果たした様子で、きのこ汁とおにぎりで補給しつつ休憩、談笑。ダウンヒラーがヒルクライムするという見慣れない光景を目にすることができた(笑)。

スノー系アンバサダーの2人、やっとの思いでたどり着いたフィニッシュ 
フィニッシュした上野村長とMCをつとめた永田隼也さん
上野村長も無事フィニッシュ。「1ヶ月前に出場を決めてから、公務で忙しくて練習できないまま今日を迎えてしまいましたが、運営チームに助けてもらうこと無く走ることができました!」

世界最新鋭の長坂ゴンドラは頂上〜麓を8分でつなぐ 
長坂ゴンドラで下山したヒルクライマーたち
フィニッシュした選手たちは長坂ゴンドラリフトに乗って下山。この4年前にリニューアルした世界最新鋭のゴンドラリフトは普段から自転車の搬送が可能で、MTBダウンヒルや日曜のグラベルでも使われ、2日間フル稼働するのだ。

DHゲストライダーの永田隼也、井本はじめ、九島勇気、清水一輝らのトークショー 
予選を終えたダウンヒルライダーたち。女子トップ選手の菊池美帆選手(左)
外界に降りてのメイン会場では、ヒルクライムを走り終えたダウンヒル界のゲストライダーによるトークショーが開催。予選レースを走り終えたMTBの選手たちがメイン会場に戻っては話に加わり、盛り上がっていった。

ヒルクライムでトップの土屋直樹さん(COW GUMMA)タイムは35分24秒 photo:Makoto AYANO
アドベンチャーダウンヒル

MTBアドベンチャーダウンヒルの予選 photo:野沢温泉自転車祭
ヒルクライムとほぼ同時スタートで開催されたのが「アドベンチャーダウンヒル」の予選だ。アドベンチャーと名がつくとおり、この長坂ゲレンデのDHコースはちょっとワイルドで、ハイスピードが出ることで有名。この日はタイム計測による予選レースで、今日勝ち上がった選手は明日の決勝の一斉ダウンヒルレースを走れることになる。

美しいブナ林のなかを下るダウンヒルコースだ photo:野沢温泉自転車祭

時速95km/h以上出るというハイスピードダウンヒルだ photo:野沢温泉自転車祭
会場に戻った選手たちで賑わう頃、ヒルクライムの表彰式が行われる。驚かされるのはその表彰カテゴリーの多さだ。年代別、性別、車種別などのカテゴリーがたくさんなのに加え、35・40・45・55分以内の設定タイムをクリアすればゴールド・シルバー・ブロンズ・グリーンの特製キーホルダーが贈呈される「タイムチャレンジ」も新たに用意され、頑張りに応じたご褒美があるのがうれしい。

ヒルクライム総合の表彰 photo:Makoto AYANO

ヒルクライム女性クラスの表彰 photo:Makoto AYANO

ヒルクライム年代別の表彰 
この表彰式はノリノリだ!
さらに「ナスキー」をバイクに付けたゲストライダーのひとつ前にフィニッシュしたら豪華賞品が授与される「ナスキーハント」など、賞典は数え切れない。

キング・オブ・ヒルクライムは土屋直樹さん(COW GUMMA)の手に 
クイーン・オブ・ヒルクライムを受賞した高橋綾さん(上毛レーシング)
「このヒルクライムレースはガチじゃないぶん、勝者だけが讃えられるんじゃなく、なるべく多くの人に賞が行き渡るようにしています」とのこと。もちろんダウンヒル予選の表彰もあり、次から次へと続く表彰式は大いに盛り上がった。

井本はじめ選手提供の賞品争奪のじゃんけん大会 
和気あいあいの雰囲気で表彰が進む

パナレーサー最軽量バイク王に輝いた参加者のバイクは5.07kg! photo:Makoto AYANO
夜は呑める屋台村とトライアルショーで楽しむ

中心部にある大湯(おおゆ)は村のシンボル的な共同浴場だ photo:Makoto AYANO
夕刻4時には初日のプログラムが終了。「このイベントは宿や街が近いのがいいんですよね」と井本はじめ選手が言う通り、ゲレンデすぐ下の野沢温泉村に泊まる人がほとんど。しかも村内には味わい深い共同浴場の外湯が13箇所もあるだけに、筆者もまずは温泉に入るために浴衣に着替えて街へと繰り出した。まずは村のシンボル的な存在の「大湯(おおゆ」へ。
熱湯で有名な大湯。お湯はとても熱くて浸かるのには勢いが必要だったが、地元の方のアドバイスを受けてなんとかドボン完了。文字通り身体の芯から温まり、疲れが吹き飛ぶ気がした(笑)。

トランペットの生演奏で屋台村がスタート photo:Makoto AYANO

温泉街でトランペットの生演奏に聞き入る 
酒の肴の美味さも格別だ
温泉からあがり、すぐさま村の中心部の「じょんのび広場」へ。ここでは大会が企画する屋台村が18時からスタートするのだ。この催し、ただ呑み食いできるだけでなく、スペシャライズドのトライアルライダー 岸勇希さんによるトライアルショーケースが楽しめるのだ。

トライアルライダー 岸勇希さんによるアクロバティックなトライアルショー photo:Makoto AYANO

じょんのび広場はトライアルショーで大喝采で盛り上がる photo:Makoto AYANO
トランペットの生演奏と、赤提灯に照らされた広場で華麗に繰り広げられるアクロバティックなショーに魅了された。参加者たちはここで心ゆくまで飲み明かす。共通の話で盛り上がれる異種の自転車好きたちが交流すれば、新しいつながりが生まれる。

金魚すくいに夢中の子どもたち photo:Makoto AYANO

舞台脇ではマッサージも受けられた 
野沢温泉村には洒落たバーもたくさんある
そして風情たっぷりな夜の野沢温泉村をそぞろ歩き、お気に入りの居酒屋や洒落たカフェバーなどでの2次会へ。楽しすぎて呑みすぎて、2日目の朝が試練という選手は多いようです(笑)。
2日目のグラベル&アドベンチャーツーリング、MTBアドベンチャーダウンヒルのレポートに続きます。
text&photo:Makoto AYANO



長野県北部、日本の真ん中に位置する上信越高原国立公園に指定される一帯にある素朴な山村、野沢温泉村。スキーと温泉でつとに名高い人気フィールドで開催されるのが野沢温泉自転車祭だ。

イベントは2日間にわたり、ヒルクライム、MTBダウンヒル、グラベルの3種目のサイクルイベントが開催されるのが大きな特徴。そして夜はお酒とショーが楽しめる屋台村を展開。野沢温泉村が一体となってサイクリストを歓迎してくれる。
スキー場の長坂ゴンドラ駐車場がメイン会場となり、イベント初日の10月4日はヒルクライムとMTBダウンヒルの予選が行われた。

イベントが村長の挨拶で始まることはよくあるが、サイクルジャージとヘルメット姿で現れた野沢温泉村の上野雄大(うえのゆうた)村長こそ、このイベントの発起人。じつはこの上野氏、根っからのスキーヤー&マウンテンバイカーで、この春に村長に選ばれたばかり。
「3月末に村長になって以来、公務で忙しくて大会の準備に関われなかった。だからせめて大会を賑やかそうと思い今日は皆さんと一緒に走らせていただきます! 2日間、目一杯楽しんでいってください!」との挨拶でイベントはスタート。



上野村長とともに5年前のイベント立ち上げ時からのスポンサーであるスペシャライズドは大型ブースを展開。つい前日に発表になったばかりのロードバイク、Athos(エートス)2の展示や、ブース前には参加者レンタル用のeBikeなどがずらり勢揃い。走るのが大好きな社員も総出で参加者となって盛り上げる。


イベント種目ごとのカテゴリスポンサーとなるシマノやパナレーサーなども人・モノ両方を揃えたブースを展開。会場には他のサイクルイベントでは見かけない様々なブランドやフードトラックが並んだ。


スキーで有名な野沢温泉村に、隣り合う飯山市も連携。信越エリアはスキーやトレッキング、山岳レースなどが盛んな一帯だけに、イベントのゲストやインフルエンサーとしてプロスキーヤーやトレイルランナーも多数参加する。さらにイベントディレクターを務める永田隼也さんをはじめ清水一輝さんや井本はじめさん、九島勇気さんら日本のトップMTBライダーも大集合し、豪華な顔ぶれが揃う。



ヒルクライムは10時にスタート。ちなみに上野村長もゲストMTBダウンヒラーたちもヒルクライムを走るとあって、どこか和気あいあいな雰囲気が溢れている。ちなみに村長やゲストライダーたちはサドルの後ろに野沢温泉スキー場のマスコット「ナスキー」をぶら下げて走る。そのゲストの前でフィニッシュすれば村の特産品やスポンサー提供のグッズなど豪華賞品がゲットできるとあって、誰にでもチャンスがあるのだ。


263人がエントリーしたヒルクライムレースは10分間隔の3ウェーブにグループ分けしてスタート。長坂ゴンドラの山麓「長坂駅」付近のスタートから標高差800m・全長約13kmのコースを一気に駆け上がる。ヒルクライムの最前列をリードするのはゲストのMTBダウンヒラーたちだ。

コースとなっている奥志賀林道は、日本一美しいブナ林のカヤノ平や奥志賀高原へと続く観光道路としても有名で、山頂駅までのルートを占有使用して開催されるのだ。

序盤は森のなかの緩斜面を登るが、後半はスキー場のゲレンデを通過する急勾配の激坂が待ち構える。速い選手なら35分ほどのタイム。制限時間は2時間のレースだ。



レース後半はゲレンデの斜面を行くため視界が一気に開け、斑尾山をはじめとした北信五岳、津南や栄村方面が眼下に見渡せる。
トップで駆け上がったのは土屋直樹さん(COW GUMMA)。乗鞍の年代別30代クラスの優勝や総合11位、富士ヒルでプラチナなど実績あるヒルクライマーで、タイムは35分24秒。

「昨年2位だったのが悔しくて、今回は優勝を狙って走ったので嬉しいです。昨年は先頭を引きすぎて最後にやられちゃったんですが、今年も最初から先頭を行って、追い風に乗ってアタックして後続との距離を見ながら逃げ切れました。このコースはスタートから中盤までは緩斜面で、後半に一気に勾配が増すんですが、自分の地元に似たようなプロフィールの峠があるので、そこで仮想練習して臨んだのがうまくいきました!」



トップヒルクライマーたちが40分を切るタイムで駆け上るのに対して、多くのライダーにとってはフィニッシュに到達できるか、制限時間内にフィニッシュできるかが目標。手強いのは終盤のゲレンデを突っ切る管理道路だ。その景観は素晴らしいが、最大勾配は18%にのぼる。eBikeも混走のため、ペダルバイクの人は急勾配をスイスイ進む様を見せつけられながら、力を振り絞って登らなければならない!



フィニッシュエリアは芝生が美しい頂上のリゾートエリア「上ノ平ピクニックガーデン」。ここではボランティアさんによって地元産のネギ味噌おにぎりやきのこ汁、レッドブルのドリンク類が振る舞われた。





くつろぎながら仲間の到着を待つ。頂上でひとりひとりを熱くコールしてくれるMCはプロMTBレーサーの永田隼也さんだ。

2014年ソチ五輪スキーハーフパイプ銅メダリストのゲストライダー、小野塚彩那(おのづかあやな)さんは1時間6分でフィニッシュ。しかも足元はフラペにスニーカー!。最後の坂では息子さんが並走して迎えてくれたのに感激しつつ、年代別6位入賞はさすがトップアスリート。「スキーじゃない種目で表彰されてとっても嬉しかった」。

午後にダウンヒル予選を走るゲストライダーの皆さんもバイクを(慣れない)ロードバイクに乗り換えて登った。そしてたどり着いた頂上では体力を使い果たした様子で、きのこ汁とおにぎりで補給しつつ休憩、談笑。ダウンヒラーがヒルクライムするという見慣れない光景を目にすることができた(笑)。


上野村長も無事フィニッシュ。「1ヶ月前に出場を決めてから、公務で忙しくて練習できないまま今日を迎えてしまいましたが、運営チームに助けてもらうこと無く走ることができました!」


フィニッシュした選手たちは長坂ゴンドラリフトに乗って下山。この4年前にリニューアルした世界最新鋭のゴンドラリフトは普段から自転車の搬送が可能で、MTBダウンヒルや日曜のグラベルでも使われ、2日間フル稼働するのだ。


外界に降りてのメイン会場では、ヒルクライムを走り終えたダウンヒル界のゲストライダーによるトークショーが開催。予選レースを走り終えたMTBの選手たちがメイン会場に戻っては話に加わり、盛り上がっていった。

アドベンチャーダウンヒル

ヒルクライムとほぼ同時スタートで開催されたのが「アドベンチャーダウンヒル」の予選だ。アドベンチャーと名がつくとおり、この長坂ゲレンデのDHコースはちょっとワイルドで、ハイスピードが出ることで有名。この日はタイム計測による予選レースで、今日勝ち上がった選手は明日の決勝の一斉ダウンヒルレースを走れることになる。


会場に戻った選手たちで賑わう頃、ヒルクライムの表彰式が行われる。驚かされるのはその表彰カテゴリーの多さだ。年代別、性別、車種別などのカテゴリーがたくさんなのに加え、35・40・45・55分以内の設定タイムをクリアすればゴールド・シルバー・ブロンズ・グリーンの特製キーホルダーが贈呈される「タイムチャレンジ」も新たに用意され、頑張りに応じたご褒美があるのがうれしい。




さらに「ナスキー」をバイクに付けたゲストライダーのひとつ前にフィニッシュしたら豪華賞品が授与される「ナスキーハント」など、賞典は数え切れない。


「このヒルクライムレースはガチじゃないぶん、勝者だけが讃えられるんじゃなく、なるべく多くの人に賞が行き渡るようにしています」とのこと。もちろんダウンヒル予選の表彰もあり、次から次へと続く表彰式は大いに盛り上がった。



夜は呑める屋台村とトライアルショーで楽しむ

夕刻4時には初日のプログラムが終了。「このイベントは宿や街が近いのがいいんですよね」と井本はじめ選手が言う通り、ゲレンデすぐ下の野沢温泉村に泊まる人がほとんど。しかも村内には味わい深い共同浴場の外湯が13箇所もあるだけに、筆者もまずは温泉に入るために浴衣に着替えて街へと繰り出した。まずは村のシンボル的な存在の「大湯(おおゆ」へ。
熱湯で有名な大湯。お湯はとても熱くて浸かるのには勢いが必要だったが、地元の方のアドバイスを受けてなんとかドボン完了。文字通り身体の芯から温まり、疲れが吹き飛ぶ気がした(笑)。



温泉からあがり、すぐさま村の中心部の「じょんのび広場」へ。ここでは大会が企画する屋台村が18時からスタートするのだ。この催し、ただ呑み食いできるだけでなく、スペシャライズドのトライアルライダー 岸勇希さんによるトライアルショーケースが楽しめるのだ。


トランペットの生演奏と、赤提灯に照らされた広場で華麗に繰り広げられるアクロバティックなショーに魅了された。参加者たちはここで心ゆくまで飲み明かす。共通の話で盛り上がれる異種の自転車好きたちが交流すれば、新しいつながりが生まれる。



そして風情たっぷりな夜の野沢温泉村をそぞろ歩き、お気に入りの居酒屋や洒落たカフェバーなどでの2次会へ。楽しすぎて呑みすぎて、2日目の朝が試練という選手は多いようです(笑)。
2日目のグラベル&アドベンチャーツーリング、MTBアドベンチャーダウンヒルのレポートに続きます。
text&photo:Makoto AYANO
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