今年の8月にイスラエル・プレミアテックとの契約終了を表明したデレク・ジー(カナダ)が、自身のSNSに現状を投稿。UCI(国際自転車競技連合)を含め協議中だが、チームから契約の途中解除として3,000万ユーロ(約48億円)の損害賠償請求を受けていると明かした。



8月にイスラエル・プレミアテックを退団したデレク・ジー(カナダ) photo:CorVos

イスラエル・プレミアテックの下部チームを経て、2023年にトップチームに昇格したジー。その年のジロ・デ・イタリアでは何度も逃げに乗り、4度の区間2位と総合敢闘賞を獲得。直後にチームと2028年までの5年という、当時の最長記録である長期契約を締結した。

今年はジロを完走後、ロードで自身初のカナダ王者に輝く。しかしその後はレース出場はなく、8月26日に突然ブエルタ・ア・エスパーニャの欠場とチームとの契約終了を表明。そして日本時間の10月10日、ジーは再びSNSに長文を投稿し、現状を語った。

8月の投稿で別チームとの契約はもちろん交渉もしていないと語っていたジー。「(協議が)進行中のためコメントはできない。だが私は『正当な理由』に基づき(チームとの)契約を終了した。この決断は軽いものではなく、チーム代表者との関係が修復不能なほど悪化し、チームでレースを続けることに対する安全面および信念の面で深刻な懸念があったことが背景にある」と説明。また「金銭が契約終了の理由ではない」とした。

「チーム側は異なる見解を持っており、この件はしかるべき機関が判断することになるだろう。しかし私はいま、『自らの基本的な権利を行使』した結果、3,000万ユーロ(約48億円)に及ぶ損害賠償請求に直面している」とコメント。「最近のチームのブランド変更や体制の刷新方針に関する発表にかかわらず、私はチームを離れたことが正しい判断だったと改めて確信している」と締めくくった。

8月のジーの声明発表直後、イスラエルは「ジーとの契約が2028年まで有効であると確信しており、現在もジー側の代理人およびUCIと協議を継続し、状況の解決と契約の遵守に向けて取り組んでいる」とコメント。ジーとはジロ後に、契約条件の再交渉をしていた最中の出来事だったと説明している。

ガザ侵攻への抗議活動の激化や、レース主催者が出場を断る事例が続いたことも受け、イスラエルを除外したチーム名変更に加え、チームオーナーでイスラエル系カナダ人のシルヴァン・アダムス氏が退任することを発表した。またチームは、イタリアのレースでは安全上の懸念から3つのワンデーレースを辞退し、ジロ・デッレミリアでは主催者が招待を撤回。10月11日のイル・ロンバルディアにも出場しないことが明らかとなっている。


text:Sotaro.Arakawa
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