スイス、バレー州を舞台にMTB世界選手権が開催中だ。マチュー・ファンデルプール(オランダ)やニノ・シューター(スイス)が参戦する大一番の前半戦をダイジェストで振り返る。

スイス、バレー州全域を舞台としたMTB世界選手権。XCマラソンは雄大な景色の中で開催された photo:UCI
2025年8月30日から9月14日まで、スイスはバレー州全域を舞台としたMTB世界選手権が開催中だ。
開幕式は州都シオンで行われ、初の試みとなる8つすべてのマウンテンバイク競技(クロスカントリー、ダウンヒル、マラソン、ショートトラック、エンデューロ、E-MTB、E-エンデューロ、パンプトラック)が単一地域内で開催されたことで、開催地が掲げるマウンテンバイクの世界的首都としての存在感を示している。
ニノ・シューター(スイス)にとって最後の世界選手権としても注目される2025年大会は、9月9日(火)までで既に6つの競技を終了し、各カテゴリーで新世界チャンピオンが誕生している。9日開催のショートトラックまでをダイジェストで振り返る。

XCM男子:キーガン・スウェンソン(アメリカ)が6時間の戦いを制した photo:UCI 
XCM女子:元XCO世界女王、ケイト・コートニー(アメリカ)が優勝。キャリア2度目のアルカンシエルを手にした photo:UCI

XCMをアメリカ勢が制圧。ケイト・コートニーとキーガン・スウェンソンがアルカンシエルを獲得した photo:UCI
E-MTBのクロスカントリーレースで優勝したのは、フランスのジェローム・ジルーとオーストリアのアンナ・シュピルマンだった。特にこのフォーマットで無敵の強さを誇るジルーにとっては4回目のアルカンシエルだ。
距離125kmで獲得標高は実に5,000mオーバー。過酷な長距離山岳コースを駆け抜けたマラソン(XCM)レースではアメリカ勢が圧倒。男子はキーガン・スウェンソン(アメリカ)が6時間1分44秒で優勝。長距離グラベルレースでも活躍するキャリアと酸素供給の課題に慣れた経験が勝因だったという。女子は元XCOの世界女王、ケイト・コートニーが7時間10分11秒で初のXCM世界タイトルを獲得。手首骨折からの復帰とパンクを乗り越えた勝利だった。

DHI女子エリート:ヴァレンティーナ・ホール(オーストリア)が4連続制覇を達成 photo:UCI 
DHI男子エリートを初制覇したジャクソン・ゴールドストーン(カナダ) photo:UCI

DHI女子エリート表彰台 photo:UCI

DHI男子エリート表彰台は全員が23歳以下。トップ選手の世代交代が起きている photo:UCI
6日と7日に行われたダウンヒル男女決勝は、シャンペリーの超テクニカルコースが舞台。女子レースではオーストリアのヴァレンティーナ・ホールが危なげなく勝利し、4年連続の戴冠を果たした。
男子レースはクラッシュが相次ぐ波乱の展開。まずドイツのヘンリ・キーファーが暫定トップタイムをマークする。続いて、1年前の同地欧州選手権を制したオーストリアのアンドレアス・コルプが地元の声援を背に快走するも、オフキャンバーセクションでラインを外し無念のクラッシュ。ここで観客の視線を集めたのはカナダのジャクソン・ゴールドストーンだった。独創的なライン選択で果敢に攻め、キーファーを2秒近く上回る最速タイムを叩き出して暫定首位に立つ。世界選手権通算5勝を誇るフランスのロイック・ブルーニに逆転の期待がかかったものの、「フロントサスペンションに問題を抱えていた」と語るように、高低差のあるコーナーでクラッシュに沈んだ。こうして21歳の若きゴールドストーンが、自身初となるダウンヒル世界王者に輝いた。

XCCコース終盤のロックセクション。男子エリートレースはここで勝負が動いた photo:UCI

XCC女子U23:イザベラ・ホルムグレン(カナダ)がMTBで合計3枚目のアルカンシエルを獲得 photo:UCI 
XCC男子U23表彰台:アドリアン・ボワシ(フランス)がアルカンシエル獲得 photo:UCI
マッターホルンを背後に望むツェルマットが舞台となったクロスカントリーレースは、9月9日のXCC(クロスカントリーショートトラック)で開幕。U23女子はイザベラ・ホルムグレン(カナダ)が、U23男子はアドリアン・ボワシ(フランス)が制し、女子エリートレースへ。今季好調のジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン)が序盤からレースを引っ張り、中盤を過ぎてのジェニファー・ジャクソン(カナダ)のアタックでメンバーが絞られる。ラスト1周をフルスロットルで駆け抜けたアレッサンドラ・ケラー(スイス)が母国ファンの前で勝利した。ワールドカップでは常に上位に食い込むものの、世界選手権では勝てていなかったケラーがキャリア初のアルカンシエルを獲得することとなった。

XCC女子エリート:アレッサンドラ・ケラー(スイス)とジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン)がバトルを繰り広げる photo:UCI

XCC女子エリート表彰台:アレッサンドラ・ケラー(スイス)が母国で初のアルカンシエルを獲得 photo:UCI
男子XCCレースは強烈なペースアップが掛かることはなく、比較的落ち着いた展開で進行した。次第にフランス勢がペースを上げ、過去アルカンシエルを獲っているクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ)が対応する中、最終周回突入と共にブレヴィンスが全開アタック。2番手のマティス・アザロ(フランス)は距離を空けてしまい、現世界王者ヴィクトル・コレツキー(フランス)にパス。コレツキーは必死の追走で3秒ほど開いていたギャップを詰め、ロックセクションを最速で下った勢いそのままにフィニッシュライン目掛けてスプリント。普段スペシャライズド・ファクトリーレーシングに所属するチームメイトとの激しい一騎打ちを制し、XCC世界タイトル防衛に成功した。

XCC男子エリート:ヴィクトル・コレツキー(フランス)とクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ)がレースを引っ張る photo:UCI

XCC男子エリート表彰台:ヴィクトル・コレツキー(フランス)が2年連続のタイトル獲得 photo:UCI
本日9月10日のコーストレーニングを経て、世界選手権は今週末のクロスカントリー本戦で閉幕。厚い選手層を誇るスイス勢は母国ファンの前でアルカンシエルを増やせるか、ベストコンディションに戻せないまま大一番に挑むシューターは世界選手権で有終の美を飾れるか、そしてマチュー・ファンデルプール(オランダ)はキャリアで唯一取れていないMTBのアルカンシエルを着用できるのか。各レースに注目したい。

2025年8月30日から9月14日まで、スイスはバレー州全域を舞台としたMTB世界選手権が開催中だ。
開幕式は州都シオンで行われ、初の試みとなる8つすべてのマウンテンバイク競技(クロスカントリー、ダウンヒル、マラソン、ショートトラック、エンデューロ、E-MTB、E-エンデューロ、パンプトラック)が単一地域内で開催されたことで、開催地が掲げるマウンテンバイクの世界的首都としての存在感を示している。
ニノ・シューター(スイス)にとって最後の世界選手権としても注目される2025年大会は、9月9日(火)までで既に6つの競技を終了し、各カテゴリーで新世界チャンピオンが誕生している。9日開催のショートトラックまでをダイジェストで振り返る。



E-MTBのクロスカントリーレースで優勝したのは、フランスのジェローム・ジルーとオーストリアのアンナ・シュピルマンだった。特にこのフォーマットで無敵の強さを誇るジルーにとっては4回目のアルカンシエルだ。
距離125kmで獲得標高は実に5,000mオーバー。過酷な長距離山岳コースを駆け抜けたマラソン(XCM)レースではアメリカ勢が圧倒。男子はキーガン・スウェンソン(アメリカ)が6時間1分44秒で優勝。長距離グラベルレースでも活躍するキャリアと酸素供給の課題に慣れた経験が勝因だったという。女子は元XCOの世界女王、ケイト・コートニーが7時間10分11秒で初のXCM世界タイトルを獲得。手首骨折からの復帰とパンクを乗り越えた勝利だった。




6日と7日に行われたダウンヒル男女決勝は、シャンペリーの超テクニカルコースが舞台。女子レースではオーストリアのヴァレンティーナ・ホールが危なげなく勝利し、4年連続の戴冠を果たした。
男子レースはクラッシュが相次ぐ波乱の展開。まずドイツのヘンリ・キーファーが暫定トップタイムをマークする。続いて、1年前の同地欧州選手権を制したオーストリアのアンドレアス・コルプが地元の声援を背に快走するも、オフキャンバーセクションでラインを外し無念のクラッシュ。ここで観客の視線を集めたのはカナダのジャクソン・ゴールドストーンだった。独創的なライン選択で果敢に攻め、キーファーを2秒近く上回る最速タイムを叩き出して暫定首位に立つ。世界選手権通算5勝を誇るフランスのロイック・ブルーニに逆転の期待がかかったものの、「フロントサスペンションに問題を抱えていた」と語るように、高低差のあるコーナーでクラッシュに沈んだ。こうして21歳の若きゴールドストーンが、自身初となるダウンヒル世界王者に輝いた。



マッターホルンを背後に望むツェルマットが舞台となったクロスカントリーレースは、9月9日のXCC(クロスカントリーショートトラック)で開幕。U23女子はイザベラ・ホルムグレン(カナダ)が、U23男子はアドリアン・ボワシ(フランス)が制し、女子エリートレースへ。今季好調のジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン)が序盤からレースを引っ張り、中盤を過ぎてのジェニファー・ジャクソン(カナダ)のアタックでメンバーが絞られる。ラスト1周をフルスロットルで駆け抜けたアレッサンドラ・ケラー(スイス)が母国ファンの前で勝利した。ワールドカップでは常に上位に食い込むものの、世界選手権では勝てていなかったケラーがキャリア初のアルカンシエルを獲得することとなった。


男子XCCレースは強烈なペースアップが掛かることはなく、比較的落ち着いた展開で進行した。次第にフランス勢がペースを上げ、過去アルカンシエルを獲っているクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ)が対応する中、最終周回突入と共にブレヴィンスが全開アタック。2番手のマティス・アザロ(フランス)は距離を空けてしまい、現世界王者ヴィクトル・コレツキー(フランス)にパス。コレツキーは必死の追走で3秒ほど開いていたギャップを詰め、ロックセクションを最速で下った勢いそのままにフィニッシュライン目掛けてスプリント。普段スペシャライズド・ファクトリーレーシングに所属するチームメイトとの激しい一騎打ちを制し、XCC世界タイトル防衛に成功した。


本日9月10日のコーストレーニングを経て、世界選手権は今週末のクロスカントリー本戦で閉幕。厚い選手層を誇るスイス勢は母国ファンの前でアルカンシエルを増やせるか、ベストコンディションに戻せないまま大一番に挑むシューターは世界選手権で有終の美を飾れるか、そしてマチュー・ファンデルプール(オランダ)はキャリアで唯一取れていないMTBのアルカンシエルを着用できるのか。各レースに注目したい。
UCI MTB世界選手権2025 クロスカントリーマラソン男子エリート結果
1位 | キーガン・スウェンソン(アメリカ) | 6:01:44 |
2位 | サムエーレ・ポッロ(イタリア) | 6:02:10 |
3位 | レオナルド・パエス(コロンビア) | 6:05:27 |
UCI MTB世界選手権2025 クロスカントリーマラソン女子エリート結果
1位 | ケイト・コートニー(アメリカ) | 7:10:11 |
2位 | アンナ・ヴァインベール(スイス) | 7:13:55 |
3位 | モナ・ミッターウォールナー(オーストリア) | 7:15:10 |
UCI MTB世界選手権2025 ダウンヒル男子エリート結果
1位 | ジャクソン・ゴールドストーン(カナダ) | 2:54:153 |
2位 | ヘンリ・キーファー(ドイツ) | 2:56:099 |
3位 | ロナン・ダン(アイルランド) | 2:56:146 |
UCI MTB世界選手権2025 ダウンヒル女子エリート結果
1位 | ヴァレンティーナ・ホール(オーストリア) | 3:27:136 |
2位 | ミリアム・ニコル(フランス) | 3:27:803 |
3位 | マリーヌ・カビルー(フランス) | 3:28:227 |
UCI MTB世界選手権2025 クロスカントリーショートトラック男子エリート結果
1位 | ヴィクトル・コレツキー(フランス) | 21:26 |
2位 | クリストファー・ブレヴィンス(アメリカ) | +0:01 |
3位 | マティス・アザロ(フランス) | +0:03 |
UCI MTB世界選手権2025 クロスカントリーショートトラック女子エリート結果
1位 | アレッサンドラ・ケラー(スイス) | 20:43 |
2位 | ジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン) | +0:04 |
3位 | ジェニファー・ジャクソン(カナダ) | +0:14 |
text:So Isobe
Amazon.co.jp