チームとの確執が取り沙汰される渦中にいながら、今大会2勝目を挙げたアユソは「賢く立ち回る必要があった」と振り返った。悔しさをにじませたロモや、「精神的な拷問だった」と語ったロランなど、選手たちの声でブエルタ第12ステージを振り返る。



ステージ優勝 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)

ロモを抜き、勝利したフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

─ロモよりもスプリント力で上回ってると思っていたか?

思っていた。だが厳しい一日だったこともあり、自分のカードを切る必要があった。最後はロモを少しナーバスにさせ、ラスト1kmは駆け引きに持ち込んだ。僕がすでに1勝していることもあり、彼はより力を使わないと勝てない状況に持ち込んだ。

それがチームカーから伝えられた作戦。もちろんラストまで協力し合うことに比べれば、気持ちよく勝つ方法ではない。だが勝利を掴むためには、時に賢く立ち回る必要がある。最後のスプリントはかなり上手く仕掛けられたと思う。なぜならここはジュニアレースでのフィニッシュ地点だったこともあり、踏み込むタイミングは分かっていたからね。

第12ステージを制したフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

(最終山岳の残り3kmで仕掛けたのは)最も勾配が厳しい場所だったから。それに追い風も吹いており、ソレルがプロトン並みに大人数となった逃げ集団で、素晴らしいペースコントロールを見せてくれた。本当に彼に感謝している。

ステージ2位 ハビエル・ロモ(スペイン、モビスター)

アユソと共に先頭に立ったハビエル・ロモ(スペイン、モビスター) photo:CorVos

いまは悔しさが大きいけれど、そのうち”良い結果だった”と思うことができるはず。なぜなら良い走りができたから。フアン・アユソはああいった局面での経験が少ない僕の隙を上手くついて勝利した。

フィニッシュでハンドルバーを叩いてしまい、申し訳ない。(負けて)腹が立っていたんだ。フアンは強いだけでなく、賢さもあった。

ステージ3位 ブリユー・ロラン(フランス、グルパマFDJ)

経験豊富なチームメイトと共に逃げに乗り、2発の弾丸を使った。1つめは逃げに入るため、2つめは先手を打つためだ。(アユソとロモとの)差は小さいようで大きかった。僅か15秒差で、全力を尽くしたので全くペース配分はしなかった。なかなか差が縮まらず、精神的な拷問を受けているようだったよ。できるだけエアロポジションを意識していたが、脚に力は残っていなかった。長く苦しい時間だった。でも幸運にも、常に彼らの背中は見えていた。それが最後まで踏み続けられた理由だよ。

ステージ5位&マイヨプントス(ポイント賞)マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)

マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)も入った52名による逃げグループ photo:CorVos

いまは可能な限りポイントを稼いでいる。明日はヨナスが勝つ可能性が高く、そうすると彼に30ポイントが入る。だからこそ今日、ポイントを貯金しておく必要があった。今日はコンディションの良さを示し、山岳でも勝利の可能性があることを示した。勝者にわずか17秒しか離れていなかったからね。マドリッドまでステージは多く残されているので、勝利を目指して頑張るよ。

マイヨロホ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

プロトンでチームメイトに守られながら走るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

僕らは今大会でマイヨロホと区間2勝を飾っている。今日、チームとしての目標は総合タイムを失うことなくフィニッシュすること。だからここまでのブエルタは満足な結果を得られている。

─君が2019年にプロデビューを果たして以降、ブエルタにはアングリルが3度登場した。明日、君は3度目のアングリルに臨む。特別な縁を感じているか?

感じているよ。アングリルは過酷な登りで、とても厳しい。1度目の時(2020)が、僕がプロで初めて自分の力を見せたレースだった。3度目となる明日も良い脚があることを願っている。

セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)

明日のアングリルは重要な山岳ステージだが、まだブエルタは半分しか終わっていない。チームの皆のコンディションはよく、ここまで良い走りができている。チャンスがあればチームとして狙いに行く。

アングリルは勾配が急過ぎて他を驚かすようなアタックは難しい。全力で踏み続けるしかできることはない。だからそこシンプルな戦いになるんだ。ヨナスが勝てるかどうかはわからない。最近は驚く力を発揮する選手が多いからね。だが、僕らはヨナスが勝つ自信があるし、彼に適した登りであることは確かだ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.