勝者なしとなったブエルタ第11ステージ。ヴィンゲゴーは「誕生日の息子のために勝ちたかった」、ピドコックは「勝つチャンスは十分にあった」と語った。イスラエル・プレミアテックや大会側の声明も交え、この混乱の一日を振り返る。



先頭で残り3km地点を通過したマイヨロホ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

特別ユニフォームが手渡されたヴィンゲゴー photo:A.S.O.

今日、誕生日を迎えた息子のためにも勝ちたかった。レースを通してプロトンをハイペースで牽引していたので、もちろん勝利のチャンスがなくなってしまったのは残念。危険を感じることはなかったが、1度目のフィニッシュ地点を通過したとき、何かが起きていることは分かった。レースがニュートラルとなったことを聞いた後、再び集中するのに少し苦労した。

その後ピドコックがアタックし、それに反応して2人でそのまま行くことにした。最終的に、僕らチームはとても強い走りを見せることができた。今日のレースでそれが主な思い出となるだろう。

2番手で通過した総合3位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)

最終山岳でアタックしたトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) photo:CorVos

この失望をどう表現すればいいのか分からない。なぜなら今日は僕の日だと思っていたから。エキシビションレースじゃないのだから、常にフィニッシュラインはあるべきだ。

─なぜ(チームバスに戻らず)フィニッシュラインへ向かったのか?

トム・ピドコックらしいことをしたまでさ。フィニッシュラインが残り3km地点であることは把握していたが、それがどこか分からなかった。ヨナス(ヴィンゲゴー)とローテーションを回すのに必死だったからね。

僕自身「勝てた」とは言わないが、勝つチャンスは十分にあったと思う。残念だが(タラレバに)エネルギーを費やすつもりはない。まだ先は長いのだからね。

3級山岳ピケ峠で人数が絞られていく photo:A.S.O.

ブエルタの主催者は僕らの安全を守るべく、最善を尽くしたのだと思う。問題に巻き込まれたくないから政治的な話はしたくない。多くの選手は公に語ることを控えていると思うが、プロトンのなかにいると時々ちょっと怖さを感じることもある。

僕たちを危険にさらすことが、彼ら(抗議者)の主張をサポートすることにはならない。抗議の目的にとって何のプラスにもならない。誰にでも、どんなことでも抗議する権利はあるが、僕たちを危険に巻き込むのは何かを前に進めるための方法にはなり得ない。

イスラエル・プレミアテックによるリリース


イスラエル・プレミアテックはプロサイクリングチームであり、チームは引き続きブエルタ・ア・エスパーニャで走り続けることを約束する。我々は平和的でプロトンの安全を損なわない限り、すべての人々に対し、抗議する権利を尊重する姿勢を繰り返し表明してきた。しかし今日、ビルバオで起きた抗議者による行為は、危険であるだけでなく、彼ら自身の主張と逆効果となり、世界でも最高のサイクリングファンを抱えるバスクの人々から、ステージフィニッシュを奪い取ってしまった。

我々は大会主催者とUCI(国際自転車競技連合)による継続的な支援と協力、そして公私にわたって支持を示してくれたチームや選手、そしてファンに感謝している。

ブエルタ・ア・エスパーニャによるリリース

スタート地点となったサン・マメススタジアム photo:CorVos

選手の安全と身体的な保全は、主催者にとって絶対的な最優先事項である。ステージ中に起きた出来事については強く非難するとともに、すべての選手を守るためにこの決定が下された。ブエルタはイベントの枠内での平和的な抗議の権利を尊重し擁護するが、参加者やレースキャラバンのメンバーの身体的安全を脅かす行為は容認できない。

大会組織の全メンバーは、今後も当局や国家・地域の治安当局と緊密に連携し、安全とレースの円滑な運営を保証するために取り組みを続ける。最後に、主催者はファンに感謝の意を表する。伝統的に自転車文化の根付いた地域で、選手たちを絶え間なく応援してくれたにもかかわらず、今回レース全体を十分に楽しんでもらえなかったことは残念である。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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