1級山岳フィニッシュで争われたブエルタ・ア・エスパーニャ第6ステージで、ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)が21kmを独走勝利。共に逃げ、区間2位のトースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス)が総合首位に立った。



スペシャルジャージで今大会に臨んだロット photo:A.S.O.
チームプレゼンを待つアンテルマルシェ・ワンティ photo:A.S.O.


マイヨロホをまとい今大会最初の本格山岳ステージに臨むヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

第6ステージ ウロット〜パル(アンドラ) image:A.S.O.

8月28日(木)第6ステージ
ウロット〜パル(アンドラ) 170.3km(山岳/山頂フィニッシュ)
獲得標高差3,475m


第80回ブエルタ・ア・エスパーニャの第6ステージは、スペイン・カタルーニャ州ウロットから多くの自転車選手が暮らすアンドラのパルを目指す。ピレネー山脈に設定された合計4つの山岳は、スタート直後の3級山岳から始まり、続く1級山岳を経てアンドラに入国。終盤に2級山岳コメジャ(距離4.2km/平均8%)を越え、1級山岳パル(距離9.6km/平均6.3%)の頂上にフィニッシュする、今大会最初の本格山岳ステージだ。

大会初日に逃げたペピン・レンデリンク(オランダ、スーダル・クイックステップ)が体調不良でリタイアするなど、3名が出走しなかったこの日、直後のアタック合戦の末に10名が逃げグループを作った。その中に、前日ステージを制したUAEチームエミレーツXRGはジェイ・ヴァイン(オーストラリア)を送り、EFエデュケーション・イージーポストはジェームズ・ショー(イギリス)とアーチー・ライアン(アイルランド)を入れることに成功。それを追うメイン集団は、リーダーチームであるヴィスマ・リースアバイクが長時間にわたり牽引した。

スタート直後に形成された10名による逃げグループ photo:CorVos

プロトンはヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)を擁するヴィスマ・リースアバイクが牽引した photo:A.S.O.

最初の3級山岳はヴァインが先頭通過し、雨が降り始める。続く1級山岳は2日前も逃げたルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が先頭を取り、長い下り坂に突入。残り35.1km地点で今大会4カ国目となるアンドラに入国する頃には、逃げとプロトンとの差は6分半まで広がっていた。

10名のまま逃げ集団は、最大勾配12%の2級山岳コメジャ(距離4.2km/平均8%)に5分34秒で入る。再び降り出した雨のなか、登りで一気にペースは上がり、頂上をヴァインが先頭で通過。そして濡れた路面の下りに入ると、そのヴァインが飛び出した。

スペインとの国境を越え、アンドラに入国した選手たち photo:A.S.O.

2級山岳コメジャの下りでアタックしたジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

アンドラ在住で「この辺りのコースは熟知していたから、あえて路面の濡れた下りで仕掛けた」と語ったヴァインは、残り21km地点で単独先頭に立つ。下りアタックに虚を突かれた追走集団からは、ライアンが飛び出して追いかける。しかしこれは引き戻され、追走はローテーションを回したものの、ヴァインが徐々にタイム差を拡大させていった。

頂上にフィニッシュ地点の引かれた1級山岳パル(距離9.6km/平均6.3%)に入る頃には、ヴァインは追走集団に1分のリードを得る。その5分遅れで登りに入ったプロトンからは、総合2位でマイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)を着るフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)が遅れ、結果的に11分51秒遅れでフィニッシュ。総合争いから脱落した。2014年以来となるスペイン人総合優勝を期待されたアユソは、レース後「チームから”調子を試してみよう”と言われたが、僕の狙いは最初から総合優勝ではなかった」とコメントしている。

追走集団から飛び出したトースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

1級山岳を軽快に登るジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

ヴァインのペースはフィニッシュが近づいても落ちることなく、軽快なダンシングで急勾配区間をクリア。後方では逃げた選手のなかで最も総合タイムの良い(58秒遅れ)トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス)が単独で追いかける。しかしその差がゼロになることはなく、ヴァインが残り1km地点を通過。そして大観衆の待つフィニッシュラインに息一つ乱さず到着し、自身3度目となるブエルタ区間優勝を飾った。

21kmの独走勝利を決めたジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

勝利と共に、昨年獲得した山岳賞ランキングでもトップに立ったヴァインは「この丘の麓に住む僕にとって、(アタックした)コメジャはアンドラで最も好きな登りなんだ。本来なら(登りを使って)もっと厳しい展開に持ち込みたかったのだが、向かい風だったので難しかった。だから濡れた下りを利用し、小細工なしの真っ向勝負を仕掛けた」とレースを振り返った。

また、「ブエルタ出場を告げられたのは4週間ほど前で、本来のレーススケジュールにはなかった。だから自分の暮らすアンドラで、息子と妻の前で勝てたなんて信じられない。ラスト5kmは『ハリソン、君のために走っているんだ』と思いながら走った」と、フィニッシュ地点で待っていた妻と息子と勝利の喜びを分かち合った。

家族に勝利の報告をするジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

トップから4分19秒遅れでフィニッシュしたヴィンゲゴーら総合上位勢 photo:A.S.O.

5分遅れで最終山岳に入ったプロトンでは、先頭牽引がヴィスマ・リースアバイクからリドル・トレックへ移行した。アンドレア・バジオーリ(イタリア、リドル・トレック)が引き終えると総合5位のジュリオ・チッコーネ(イタリア)が仕掛け、それにマイヨロホのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が唯一追従する。反応の遅れたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)だったが、マイペースで追いつくと、そのままひと塊の集団は残り1km地点を通過した。

秒差を稼ごうとアルメイダがスプリントを試みたものの、ヴィンゲゴーら総合争いのライバルを引き離すことはできず、集団トップの区間10位でフィニッシュ。これからの総合争いを占う今大会最初の本格山岳ステージでは、アユソを除き、大きくタイムを失う総合上位勢は現れなかった。

自身3度目となるブエルタ区間優勝を果たしたジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

マイヨロホを獲得したトースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:A.S.O.

そして総合首位に立ったのは、トップから54秒遅れの区間2位でフィニッシュしたトレーエンだった。「正直、これが現実だと信じられない。マイヨロホを着るのが初めてであることはもちろん、グランツールで総合リーダージャージも着たことがなかった。特別な気持ちだし、全く予想外の出来事だ。本当に厳しい1日だったし、土砂降りの雨にも見舞われた。そんななかでも踏み続け、マイヨロホ獲得を目標に全力を尽くした」と、戸惑いと共に喜びを語った。

トレーエンはウノエックス・モビリティの下部チームから2020年に昇格した30歳で、昨年バーレーンに移籍。そしてブエルタという大舞台で、自身初となるステージレースの総合首位に立った。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第6ステージ
1位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) 4:12:36
2位 トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:54
3位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) +1:10
4位 ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) +1:15
5位 パブロ・カストリーリョ(スペイン、モビスター) +1:52
6位 ジェームズ・ショー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) +2:05
7位 ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +2:15
8位 ラムセス・デブライネ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +2:19
9位 アーチー・ライアン(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) +2:42
10位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) +4:19
11位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)
12位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) 20:25:46
2位 ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) +0:31
3位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) +1:01
4位 ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +1:58
5位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +2:33
6位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) +2:41
7位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) +2:42
8位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +2:49
9位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +2:53
10位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +2:55
43位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) +10:13
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 78pts
2位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) 76pts
3位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) 75pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) 24pts
2位 ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 23pts
3位 ジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) 11pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) 20:28:39
2位 マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) +0:27
3位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:38
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツXRG 60:30:38
2位 バーレーン・ヴィクトリアス +1:57
3位 スーダル・クイックステップ +3:49
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos