過酷な登りスプリントで争われたブエルタ・ア・エスパーニャ第3ステージ。先行したピーダスンをダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)がフィニッシュライン手前で追い抜き、2020年大会以来となる5年ぶり3度目のステージ優勝を果たした。



チームプレゼンに向かうランダ photo:CorVos
アウラールに声援が飛ぶ photo:A.S.O.


前日勝者で、マイヨロホを着て臨んだヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

第3ステージ サン・マウリーツィオ・カナヴェーゼ〜チェーレス image:A.S.O.

8月25日(月)第3ステージ
サン・マウリーツィオ・カナヴェーゼ〜チェーレス 134.6km(丘陵)
獲得標高差1,996m

大会3日目は、今大会最後のイタリア・フィニッシュとなるステージ。トリノ空港のあるサン・マウリーツィオ・カナヴェーゼを出発する134.6kmの丘陵コースで、設定されたカテゴリー山岳はコース中央の2級山岳イッシリオ(距離5.5km/平均6.5%)とフィニッシュ地点の4級山岳チェーレス(距離2.6km/平均3.6%)の2つだけ。そのため獲得標高差も1,996mと控えめだ。

総合争いが動くほどの難易度ではなく、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)のような登坂力のあるスプリンターも最後まで残れると予想された。また逃げ切りも期待されたこのステージには、前日に落車で大腿骨を骨折したホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター)と、体調不良のアクセル・ジングレ(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)を除く181名がスタートラインに並んだ。

マイヨモンターニャを着るアレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・B&Bホテルズ)ら4名による逃げグループ photo:A.S.O.

雨だった前日から一転晴天に恵まれたレースは、前日勝者でマイヨロホを纏うヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)を先頭にスタート。ヴィンゲゴーは重要なアシスト選手の離脱に加え、数台のバイクがチームトラックから盗まれる被害に遭う不幸に見舞われていた。アクチュアルスタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられ、ヴィンゲゴーの繰り下げによりマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着るアレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・B&Bホテルズ)ら4名が逃げ集団を形成した。

第3ステージで逃げた4名
ショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
パトリック・ガンパー(オーストリア、ジェイコ・アルウラー)
アレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・B&Bホテルズ)
ルーカ・ファンボーヴェン(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)

これを追うメイン集団は、スプリントに持ち込みたいリドル・トレックがペースコントロールを開始する。残り74.4km地点から始まる2級山岳イッシリオに、逃げ集団は2分半のリードで突入。ここでヴェッレが加速すると、194cmの長身タイムトライアルスペシャリストであるガンパーが遅れた。その後、グランツールデビューのファンボーヴェンも逃げグループから脱落し、最終的に前アメリカ合衆国王者のクインを従えたヴェッレが山頂を先頭通過。山岳賞ランキング首位の座を確実なものとした。

プロトン前方で脚を回す、優勝候補のマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

チームメイトに守られながら走るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を纏うヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)は、最終山岳で早々と遅れていった photo:A.S.O.


集団牽引のスペシャリストであるアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、リドル・トレック)が、カルロス・ベローナ(スペイン)と先頭交代しながらこの日も長時間プロトンを牽引する。2級山岳を下った先に設定された中間スプリントは、逃げグループからクインが先頭で通過。一方、プロトンではボーナスタイムを狙うヴィンゲゴーら総合勢を退けたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が集団の先頭を取り、15ポイントを加算。初日勝者でマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)との差を縮めた。

その後、プロトンではEFエデュケーション・イージーポストの総合エース、エステバン・チャベス(コロンビア)のバイク交換以外に目立った動きは見られなかった。残り40kmを過ぎた地点で、逃げ集団からチームメイトであるクインが単独アタックを敢行。この時点で1分差まで迫っていたプロトンはまずヴェッレを吸収し、ゲブレイグザビエの牽引によって残り19kmでクインも捉え、レースを振り出しに戻す。そして、頂上にフィニッシュラインが引かれた4級山岳チェーレスへと続く登りで、フィリプセンが集団から遅れていった。

残り19km地点でショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)がプロトンに吸収された photo:A.S.O.

残り2km地点から集団の先頭はリドル・トレックから、ツール・ド・フランスでも大車輪の働きを見せたヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)に代わる。しかし残り1kmの手前で再びリドル・トレックが先頭に立つと、その横から今度はベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がフィリッポ・ガンナ(イタリア)を引き連れ前に出た。

その後はベン・トゥレット(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)とジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)のアシスト2名が先頭を争い、単騎のオールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター)も位置を上げる。残り125mでチッコーネが役目を終えると、その背後からエースのマッズ・ピーダスン(デンマーク)が満を持して先頭へ。ヘアピンコーナーを抜けて緩斜面の最終ストレートに入り、ピーダスンがスプリントを開始した。

ピーダスンを抜き、フィニッシュラインに飛び込んだダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos

しかし、最初にフィニッシュラインを通過したのは、その背後からコーナーの内側を突き、圧巻のスピードを発揮したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)だった。

優勝候補のピーダスンを退け、2020年大会以来となるブエルタでのステージ優勝(通算3度目)を果たしたゴデュ。「試走のときにこのフィニッシュがとても気に入ったんだ。そして今朝、シュテファン(キュング)が『君の体重とそのパンチ力があればピーダスンに勝てる』と励ましてくれた。僕自身はあまり信じていなかったが(笑)、マッズがイン側を締めなかったので、そこを突くことができた。その後はフィニッシュまで完全なる一騎打ちだった」と、レースを振り返る。

また、「今シーズンは本当に大変な時期が長く、失敗や苦しみの連続だった。そんななかでも常に僕を支え、励ましてくれたチームに感謝している。昨日、そして今日、自分のレベルを示すことができた。僕らチームのブエルタはもう成功と言っていい」とも語った。

嬉し涙を流すダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos

5年ぶりとなるステージ優勝を果たしたダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos

区間3位にはマイヨロホを着るヴィンゲゴーが入り、ピーダスンをアシストしたチッコーネは4位に入る。この結果、ステージ優勝によるボーナスタイム10秒を加算したゴデュが総合順位でチッコーネを抜き、ヴィンゲゴーと同タイムの総合2位に浮上した。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第3ステージ
1位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) 2:59:24
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)
4位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)
5位 ジョルダン・ラブロッス(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
6位 オールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター)
7位 サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
9位 ビョルン・ケルト(イギリス、ピクニック・ポストNL)
10位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 10:55:36
2位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
3位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) +0:08
4位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +0:14
5位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) +0:16
6位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロン・AG2Rラモンディアル)
7位 サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)
9位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)
10位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 65pts
2位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) 54pts
3位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) 52pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 アレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・B&Bホテルズ) 8pts
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 5pts
3位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) 3pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 10:55:52
3位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)
2位 ウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 ヴィスマ・リースアバイク 23:49:22
2位 UAEチームエミレーツXRG
3位 XDSアスタナ
text:So.Isobe
photo:Unipublic, CorVos

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