富士ヒルクライム会場で出会った、6人のトレックユーザーをご紹介!人気連載「あなたの自転車見せてください」の富士ヒル編は、大会トップシェアを誇るブランド・トレック特集です。目標未達に悔しがる姿も、夫婦で楽しむ姿も、それぞれの“富士山との向き合い方”がありました。



熊木孝真さん/トレック Madone SLR Gen 8

熊木孝真さんのトレック Madone SLR Gen 8 photo:So Isobe

ホワイトxゴールドのMadone SLR Gen 8。センスよくカスタマイズされている photo:So Isobe
大理石調ペイントが目をひく「Era White/Supernova Marble」カラー photo:So Isobe



「今日は…悔しいです。シルバーに届きませんでした。でも来年こそは必ず...!」と静かに語るのは熊木孝真さん。次回への決意をにじませる熊木さんのバイクは、ホワイトベースに大理石調のグラフィックと、ゴールドロゴが入ったMadone SLR Gen 8だ。

この魅力溢れるカラーリングは、トレックのオーダーシステムであるプロジェクトワンの中で、追加料金がかからない定番ラインナップの一つとしてラインナップされているもの。ちょっと色合わせが難しいゴールドカラーだが、熊木さんはスルーアクスルやディスクロックリング、クランクキャップだけをゴールドパーツに組み替えて、センスある大人の一台に仕上げていることが好印象。

ホイールはボントレガー、タイヤはピレリ。由緒正しいトレック純正仕様だ photo:So Isobe

クランクキャップはデンマークのFRAMESANDGEAR photo:So Isobe
スルーアクスルはウルフトゥース製に交換 photo:So Isobe



パーツ選びの基準は「信頼性」だ。「コンポもパワーメーターも、よくある変わり種は使っていません。ブランドを絞って、信頼できる構成にしたかったんです」と言う。ペダルのみシマノではなくスピードプレイを愛用しており、これは10年以上の付き合いとのこと。

もともとトレックバイクを長年愛用しており、「Émondaから始まり、先代のMadone、そして今のMadone Gen 8へ。トレックの進化をずっと体感してきました」と話す熊木さん。新型については、「7よりもずっと軽く、かつ平坦も走れる。富士ヒルはまさに一番良さが光るコースだと思います。最後までスピードを維持しやすかったので」とその性能に太鼓判を押す。強いこだわりと愛着が詰まった1台。来年の富士ヒルではぜひシルバー獲得を!



原良多さん・睦さん夫妻(EMU SPEED CLUB)/トレック Émonda SLR

原良多さん・睦さん夫妻(EMU SPEED CLUB)のトレック Émonda SLR photo:So Isobe

黄色ベースに青のTREKロゴ。富士北麓公園の中でもひときわ目を引くそのÉmonda(エモンダ)は、なんと夫婦で全く同じ仕様。「どうせオリジナルで作るなら、ちょっと面白くしようって」と語るのは、福島から参加した原良多さん・睦さんご夫妻。お二人ともEMU SPEED CLUBに所属するガチンコクライマーだ。

派手なカラーリングだが、黄色は良多さんが好きな色で、青は睦さんが好きな色。二人のそれぞれ好きな色を組み合わせたデザインだ。「仲良しアピールじゃないですよ(笑)」と照れながらも、「この色で覚えてもらえることが増えましたし、声をかけてもらうことも多くて」とご本人たちも気に入っている様子。バーテープの色もお揃いで、パーツ類もだいたい同じ。「なにかトラブっても部品を拝借できるのはいいことかもしれません」と笑う。

お二人の好みの色を組み合わせたプロジェクトワン。ペインターが違うので、微妙にフェードの具合が違うのだそう photo:So Isobe

グレードはSLR。「自分たちにとってÉmondaはまだまだ現役です」 photo:So Isobe
基本パーツ構成はほとんど同じ。トラブルの時にも融通が効くそう photo:So Isobe


睦さんバイクのネームは623(むつみ) photo:So Isobe
睦さんのサドルはアルピチュードの超軽量モデル photo:So Isobe



「もうÉmonda自体がラインアップから消えちゃってますけど、自分たちにとってはまだまだ現役。軽くて走れるし、長く付き合いたいバイクです」と力強いコメント。地元・福島では磐梯吾妻スカイラインをはじめとした名ヒルクライムルートが豊富。「このカラーのÉmondaを見て、福島にも遊びに来てくれる人が増えたらうれしいですね」と地域愛もたっぷりだ。

夫婦で自転車に乗ることのメリットは?という問いには、「サボれないこと...だね」と即答するお二人。ストイックで真面目な姿勢が垣間見える。「でも。生活のリズムが一緒になるのは楽ですね。練習もだいたい一緒にしてるんです」とのこと。

「これからも仲良く走ってください」というひと言には、「仲良くかどうかは分からないですけど...(笑)」とリアルなコメント。でも、きっとそのバチバチも含めて、素敵な“チーム”なのだ。



高橋瑞恵さん(Roppongi Express)/トレック Émonda SLR

高橋瑞恵さん(Roppongi Express)のトレック Émonda SLR photo:So Isobe

Roppongi Express所属、旦那様の誠さんとともに関東の女子ホビーレース界では知られた存在の高橋瑞恵さん。今は本気のトレーニングからは少し距離を置き、カフェライド中心のサイクリングライフを楽しんでいるとのこと。「山はもう…アレルギー反応出るくらい苦手(笑)」と語りつつも、今年富士ヒルには自身13年ぶりのヒルクライムレースとして参加した。「目標?…いや、完走です(笑)」と冗談交じりに語る姿からは肩肘張らないスタイルがにじむ。

愛車は、それまでずっと乗っていたGDR(グラファイトデザイン)のしなやかさを思わせる乗り味を求めてたどり着いたÉmonda SLR。「足に優しい。ハマるとスーッと進んでくれる」と、そのフィーリングにすっかり惚れ込んで、気がつけばもう4年の付き合いだ。

Émondaの前には他ブランドの軽量モデルに乗ったが、「足がやられちゃって即返品。ごめん、無理だわって(笑)」とNG。以来、無理なく乗り続けられるこのバイクが瑞恵さんの相棒になっている。

サドルはプロロゴの女性用モデル「SCRATCH EVA TIROX」スペシャライズドのウィメンズモデルが廃盤になったので替えたとのこと photo:So Isobe
ステムは懐かしのグラファイトデザイン。以前乗っていた愛車から使いまわしているそう photo:So Isobe


「ゆるーく乗って、美味しいもの食べに行く。それだけで自転車ってすごく楽しいものですから」 photo:So Isobe

最近は「主婦業とバイクの両立がほんと大変で…思うように乗れないのが一番の悩み」と語る。それでも、“ちょっとまたやろうかな”という気持ちが芽生えてきたという。きっかけは「ニセコ(グランフォンドニセコ)でのチームリレー」。女子枠で唯一のメンバーに抜擢され、Roppongi ExpressのTT強者たちとチームを組むことに。「スペシャリスト揃いの中に、肩書き主婦の私…。どうしましょう(笑)」と謙遜しながらも嬉しそうなご様子。

「レースじゃなくても、ゆるーく乗って、美味しいもの食べに行く。それだけでいいと思います。それも自転車の楽しみなので」と笑う。強さとしなやかさが同居する、瑞恵さんらしいバイクとの向き合い方だ。



新田健太郎さん(BOSO VICTORIOUS)/トレック Émonda ALR 5

新田健太郎さん(BOSO VICTORIOUS)のトレック Émonda ALR 5 photo:So Isobe

今年は“エントリー峠”に敗れてしまった新田健太郎さん。でも、富士ヒルの会場にはしっかり姿を現した。「去年は参加したし、今年は応援で。それでもやっぱり、この空気が好きだから」と笑顔で語る。

バイクはトレックが2023年に発表したアルミモデル、Émonda ALR。鮮やかなコーラルブルーのフレームに、ボントレガーやビジョンのカーボンパーツを組み合わせた“ガチ仕様”の1台だ。「初期費用を抑えつつ、レースでガシガシ踏めるバイクがほしくて」と語るように、抜かりないセットアップでまとめられている。このÉmondaに見せたい景色は?と尋ねると「表彰台のてっぺんですね。2位まではあるんですけど、まだその上に行けてない」と本気の眼差し。

レース用に組んだ一台。パーツ構成は「きちんと追い込んで走る人」だと分かる仕様 photo:So Isobe
ボトルはリドル・トレック。お作法も抜かりなし photo:So Isobe


「このバイクで表彰台のてっぺんを獲りたい」 photo:So Isobe

ちなみに、新田さんは先代モデルのMadoneも所有。父親が2014年モデルに乗っている影響で、「やっぱり息子としてはマドンに乗りたくなっちゃって」と語る。こちらはロングライドや平坦ステージ向けに活躍中とのこと。2台を乗り分ける理想のトレックライフだ。



坐古良知さん(BOSO VICTORIOUS)/トレック Madone SLR Gen 8

坐古良知さん(BOSO VICTORIOUS)のトレック Madone SLR Gen 8 photo:So Isobe

「シルバー、届きませんでした……」と悔しさ全開でインタビューに答えてくれた吉本さんは、上でご登場頂いた新田さんのお友達。1回目はブロンズ未達、2回目でブロンズ達成。そして迎えた3回目の富士ヒル挑戦だったが、目標のシルバーには届かず、むしろタイムを落としてしまったそう。それでも「今年は攻めすぎました。でも、失敗から学ぶことは多いです」とストイックに前を向く。

こだわりポイントは「全部」と言うバイクは、「先代よりも細身なフレームが気に入りました」という現行Madone Gen 8の「Carbon Red Smoke」カラー。昨年8月に納車されたばかりの最新鋭マシンだ。「ブランドがバラバラだと見た目がガチャつくのが嫌で」と、ボントレガーとシマノで構成された、パーツアッセンブリーにも強いこだわりを見せる。チェーンステーのシマノロゴとフォークのピレリロゴ、ネームステッカーはプロバイクを参考にして作ったものだと言うが、全部フレームと同じ白で統一しているあたりにセンスの良さが光る。

こだわりポイントは「全部」。センスの良さが光る一台だ photo:So Isobe

ステムは最長の130mm。シルバーとブロンズの基準表を参考にしながら走ったという photo:So Isobe
各所のロゴは自分で作成して貼り付けたもの。プロバイクと同じでセンスよし photo:So Isobe



普段のライドスタイルは「カフェライド」と言うものの、ヒルクライムイベントも多数参加していて「実はけっこうヒルクライマー」な一面も。「このバイクでいろんなカフェに行って、たくさん写真を撮りたい」と語る吉本さん。だけど、その奥には、やっぱり「来年こそはシルバーを」という強い思いが見えていた。

text:So Isobe

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