イタリアンシューズブランドのDMTから次世代ハイエンドモデル「KR0 EVO」が登場。Boa Li2ダイヤルとクロージャーバンドの組み合わせにより、固定力に優れたフラッグシップニットシューズをインプレッションしていく。



DMT KR0 EVO(ブラック/アントラサイト) photo:Michinari TAKAGI

昨シーズン、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、ロード世界選手権を制覇するトリプルクラウンを達成したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が愛用するイタリアンシューズブランドのDMT。過去にはマグネシウム製のアウトソールを採用したシューズを手がけるなど、独創的なプロダクトを手がけてきた。現在はニットアッパーを採用したシューズを多くラインアップしており、その中で新たにハイエンドモデルとしてラインアップされたのが今回インプレッションする「KR0 EVO」だ。

新たなフラッグシップモデルとなるR0 EVOのために、DMTはAEROFLEX BREATHABLE UPPERと名付けた新型ニットアッパーを開発。ニットアッパーの特長である高い通気性と柔軟性はそのままに、新たに採用したハイテク繊維によって強度やエアロダイナミクスを向上させることでレーシングシューズとしての総合力を高めた。

アッパーはニット素材を用いた photo:Michinari TAKAGI

軽量で柔軟性に優れたマイクロファイバー製のシュータン photo:Michinari TAKAGI
2つのBOA Li2クロージャーを搭載 photo:Michinari TAKAGI



ポガチャルが愛用するシューレース仕様のPOGI'sと大きく異なるのが、KR0 EVOにはシュータンが存在していること。軽量で柔軟性に優れたマイクロファイバー製のシュータンが柔らかな足当たりを実現。細やかな調整を可能とする2つのBOA Li2クロージャーと合わせ、吸い付くような着用感を実現した。

レーシングシューズとして重要なペダリング効率に対しては2つのアプローチが行われている。一つは新たなクロージャーシステム。土踏まずから回り込むように配置されたワイドなTPUストラプをBOAダイヤルで締めこむ方式によって圧力を分散し、快適なフィット感と強固なサポートを提供する。もう一つが高強度なスーパーライトカーボンファイバーソール。DMTシューズの中で最高レベルの剛性を誇るフルカーボンソールはねじれを効果的に抑制し、大出力のスプリントでも踏力をペダルへと余すところなく伝える。

新しいクロージングシステムとして土踏まずから回り込む幅広のTPUストラップバンド photo:Michinari TAKAGI
アウトソールはパワー伝達性能に優れる高強度スーパーライトカーボンファイバーソールを採用 photo:Michinari TAKAGI



これらの先進的な設計により、次世代のハイエンドレーシングシューズに相応しい一足として完成したKR0 EVO。それではインプレッションをお届けしよう。



―編集部インプレッション

DMT KR0 EVOをインプレッションするのはCW編集部の高木 photo:Gakuto Fujiwara

今回、DMT KR0 EVOをインプレッションするのはCW編集部の高木。前回はシューレースモデルのハイエンドモデルであるPOGI'Sをインプレッションしたが、今回はBOAダイヤル搭載のハイエンドモデルをテストしていく。

足のサイズは27.0cm、普段のレースやトレーニングで着用しているジャイアントのシューズは42サイズ。シマノやスペシャライズドでは42サイズ、ジロやシディを履く場合は43サイズを選択している。また筆者の足は土踏まずのアーチは高め、親指の厚みがあり、母指球から小指球まで幅があるため、横幅が広めのブランドのシューズとの相性が良い。

これまでにDMTのロードシューズではPOGI'SやKR1、SH1などをインプレッションしてきたが、どのモデルも42.5サイズがぴったりだった。今回も試し履きをしてみたところ、前回テストした"POGI'S"と同様のサイズ感で、42.5サイズがジャストフィット。

足の甲の部分から締め上げるように、足にフィットしていく photo:Gakuto Fujiwara

シューレースタイプのPOGI'Sと比較すると履き心地は若干固めの印象だが、ニット素材のアッパーだけあって全体的に足当たりは柔らかい。柔らかいアッパーのシューズは強く締め込んでいくとどこかに圧力が集中して痛みを感じることもままあるもの。しかし、このKR0 EVOはしなやかなマイクロファイバー製のシュータンが良い働きをしてくれ、痛みを感じるようなことは皆無。

安心してBOAダイヤルを締め込んでいくと、足の甲の部分から締め上げるように足にフィットしていく。ルックスの面でも印象的なTPUストラップバンドが、土踏まずのあたりから足の甲を包み込むようにフィットしていく。これまで試してきたDMTのシューズの中で、最もホールド感が高い一足と言っても過言ではないだろう。

今回テストを行ったのは週末のトレーニングライドや通勤など。平坦もあるが、アップダウンを繰り返すコースとなっており、様々なペダリングを試すことができた。また、実走だけでなくシューズに負荷がかかりやすいインドアトレーニングにおいてもその性能をテストしている。

踏み込むとカーボンアウトソールは固めの印象でレーサー向き photo:Gakuto Fujiwara

それでは走り込んでみた印象を。ハイエンドシューズとして位置付け通りのレーシングモデルらしい剛性感が印象的な一足だ。アッパーに注目が集まりがちなモデルではあるが、まず感じるのはアウトソールの剛性の高さで、1000Wを超えるスプリントにおいても不快なねじれは一切感じない。出力を一滴も無駄にしたくないレーサーにとって、魅力的な踏み心地であることは間違いない。

DMTのラインアップにおいて、POGI'SとKR0 EVOという2つのトップエンドモデルが存在しているが、それぞれの味付けは異なっている。ニットの柔軟性を前面に押し出し、その追従性を活かしたリズム感の良いペダリングを楽しめるのがPOGI’Sだとすれば、KR0 EVOが得意とするのはよりダイレクトでパワフルなペダリング。特に瞬間的に大出力を発揮するようなアタックやスプリントでペダリングが多少横ブレしても、剛性感の高いアッパーとサポート力に優れるストラップクロージャーが支えてくれる安心感がKR0 EVOの美点と言える。

1000Wを超えるスプリントでも踏力の入力に対して、余すことなく出力される photo:Gakuto Fujiwara

通気性に関してはニットアッパーらしく超ハイレベル。特につま先部は靴下が透けて見えるほどで、冬場ではシューズカバーに加えてトーカバーを重ねたくなるレベル。インソールにも大きなベンチレーションが設けられており、インドアトレーニングでも足が蒸れるようなことは無かった。今回は寒い時期でのテストとなったが、どちらかと言えば夏場にこそ真価を発揮するタイプのシューズだと感じた。

シューズの踵に備わったNFCタグはDMTが近年積極的に取り組んでいる機能。スマートフォンをかざすとライダーの氏名や住所、緊急連絡先などが表示されるという機能で、シューズがエマージェンシーカードになるというもの。落車してもほぼ脱げることが無いだろうシューズに、こういった機能を備えてくれるのは合理的。ただ、機能を知らないと宝の持ち腐れになってしまうので、いざという時にNFCタグを読み取ってもらえるような方策は考えておいてもいいかもしれない。

NFCマークにスマートフォンをかざすだけでシューズ自体がエマージェンシーカードの代わりにもなる photo:Michinari TAKAGI


KR0 EVOを評するなら、優れた性能とエレガントなルックスを兼ね備え、DMTのハイエンドシューズに相応しい一足と言えるだろう。同じハイエンドモデルであるPOGI’Sとは異なる着用感に仕上げられ、それぞれスタイルに合わせて選択可能なラインアップが揃うのもDMTの魅力と言える。

シューレースかつシュータン一体型アッパーのPOGI’Sに対し、KR0 EVOはダイヤルクロージャーとシュータン別体構造を採用することで、脱ぎ履きのしやすさやフィッティングの容易さといったわかりやすいメリットだけでなく、より強固なホールド感とダイレクトなペダリングを手に入れている。

柔のPOGI’Sと、剛のKR0 EVO。あなたのスタイルにぴったりな一足をDMTは用意している。



DMT KR0 EVO
カラー:ブラック/アントラサイト、ホワイト/ブロンズ、ホワイト/シルバー
サイズ:37、38、39、39.5、40、40.5、41、41.5、42、42.5、43、43.5、44、45
重量:268g(42サイズ)
価格:66,000円(税込)
リンク