プロロゴがツール・ド・フランスのステージ35勝という前人未到の記録を達成したマーク・カヴェンディッシュの記念モデルを発売。カヴが愛用するZERO IIをベースにレインボースプラッシュ柄があしらわれた特別モデルだ。プロロゴを扱う服部産業のキット北村さんによるインサイドレポートと共に紹介しよう。



プロロゴ ZERO II(マーク・カヴェンディッシュ) (c)服部産業

前人未到のツール・ド・フランス区間35勝を達成したマーク・カヴェンディッシュ。彼の偉業を記念し数々のサプライヤーがスペシャルモデルを誂える中で、彼の活躍をサドルから支えたプロロゴが満を持して特別モデルを用意した。

ベースとなったサドルはZERO II。現在プロロゴの主力としてラインアップされているDIMENSIONやSCRATCH M5ではなく、長らくプロロゴが展開しているモデルという点もカヴェンディッシュのチョイスが反映されている。レールはカーボンのNACK仕様だ。

デザイン面で目を惹くのは、彼が乗るウィリエールの記念モデルと合わせたスプラッシュデザイン。アルカンシエルを想起させるカラーリングはカヴェンディッシュの成績に相応しいペイントだ。そして、最多勝をアピールする35のナンバーはさりげなくあしらわれた。派手すぎないルックスとなっているため、カラーのアクセントとしてもぴったりだ。国内で展開される数量は35個。価格は49,500円(税込)。

以下はプロロゴの販売代理店である服部産業のキット北村さんからのインサイドレポートをお届けしよう。



満を持してプロロゴからマーク・カヴェンディッシュのツール35勝記念モデルが登場する (c)服部産業

2024年10月のジャパンカップあたりから、『来年はどんなスペシャルサドルを作ろうか?』と悩んでいました。幾つかアイディアを持ってはいましたが、生産ラインに載せられるレベルのアイディアではありませんでした。去年の様にタデイ・ポガチャルモデルとシモーネ・ヴェラスコ(イタリアンチャンピオン)モデルという強固な柱となるアイディアも無く、イタリア出張中に起こる閃きに託していました。

2025年度シーズンは、選手専用シグネチャーサドルを作るにしても、けっこう選手の移籍やサドルのスポンサー変更が多く、上手くいきそうにはありませんでした。数個だけの生産というのは出来ないので、最低発注数量を越えるには知名度が高く人気のある選手でないとシグネチャーサドルは作れません。パッ!と思いついたのは引退したマーク・カヴェンディッシュ卿ぐらいか…。

2024年夏、前人未到のツール・ド・フランス35勝を成し遂げたマーク・カヴェンディッシュ (c)服部産業

カヴェンディッシュ卿はシーズン終了後、世界各国のイベントに参加しました (c)服部産業

昨秋、アスタナ・カザクスタンがツール・ド・九州やジャパンカップで来日し、“マーク・カヴェンディッシュ卿が日本にプライベートで来るかもスケジュールを空けておいてくれ!”との打診がウィリエールを通してありました。

同時期にアスタナ・カザクスタンの機材スポンサーの工場への御礼参りに、カヴェンディッシュ卿がアジアを歴訪していました。世界中のイベントに招待され、熱烈に歓迎されたようです。カヴェンディッシュ卿、長年のプレッシャーから解放されて超ご機嫌トークです。今後、日本にもプライベートで来ることがあれば嬉しいですね。

カヴェンディッシュ卿は世界中で熱烈に歓迎されたようです (c)陳柏凱/FSA/Vision
各ブランドのツール35勝を祝うシグネチャーモデルで組まれたFILANTE SLR (c)陳柏凱/FSA/Vision


長年のプレッシャーから解放されてご機嫌トークをするカヴェンディッシュ卿 (c)陳柏凱/FSA/Vision
カヴェンディッシュのバイクにはZERO IIが搭載されている (c)服部産業



カヴェンディッシュ卿は2024年ツール・ド・フランスで走ったレインボースプラッシュ柄のバイクとホワイト/ゴールド柄のバイク2台で世界中のイベントに出席しました。彼が使うZERO IIは後端からプロロゴのロゴが見えます。

カヴェンディッシュ卿がプロ人生最後のサドルに選んだのはZERO II。既にプロロゴのラインナップにはありません。しかし、実はプロレースの世界ではZERO IIを未だに使用しているプロ選手は多いです。(特にグルパマFDJの選手にZERO II使用者が多く、ヨーロッパで撮影した写真がプロロゴの宣伝に使えないので困りました。)

ポストカードと化粧箱が同梱される (c)服部産業

そのタイミングで、翌年2月のイタリア出張での不測の事態(イタリアまで行って結局アイディアが浮かばないという由々しき事態)に備え、『ZERO II カヴェンディッシュ35勝モデル』を仕込んでおきました。

各ブランドからツール35勝を祝うシグネチャーモデルが発売されました。ウィリエールのフレーム、ヴィジョンのホイール、リマールのヘルメット等々…。多分、カヴェンディッシュのシグネチャーシリーズとしては大トリでしょう。最後の大トリを飾るのは、プロロゴのカヴェンディッシュのシグネチャーサドルです。FSA/ヴィジョンの工場を訪れた際には、既にシグネチャーサドルを使っていましたね。

ノーズにはカヴェンディッシュのロゴがあしらわれる (c)服部産業

『ZERO IIカヴェンディッシュ35勝モデル』にはポストカードと化粧箱が付属します。コレクションするも良し、ウィリエールのバイクに取り付けるも良しですね。ウィリエールのFILANTE SLRカヴェンディッシュモデルを購入された方には必須アイテムですね!

サドルの左後側には35勝とレインボースプラッシュ柄があしらわれています。先端右側にはカヴェンディッシュのマークが飾られています。カヴェンディッシュのロゴ使用料は如何ほどか?下世話な話ですが、カヴェンディッシュ卿へのロイヤリティー代が気になります。

35勝にちなんで日本への入荷は限定35個です。日本全国のカヴェンディッシュファンによる争奪戦になりそうですね。また、以前にもお話しした事がありますが、キット北村のスペシャルモデルのポリシーは『プロ選手のレプリカでは無く、選手が使っている製品と全く同じ商品を日本のユーザーに届けたい!』ということ。

アルカンシエルを想起させるスプラッシュが描かれる (c)服部産業

実はこの『ZERO IIカヴェンディッシュ35勝モデル』は一般販売されたZERO IIとは異なります(もちろん形状は一緒ですけど…)。その違いを語りたいのですが、サルヴァトーレGMから“カヴェンディッシュモデルとノーマルの違いを語ってはならん!”と厳命されたので私は語れません。しかし、ウィリエールのFILANTE SLRカヴェンディッシュモデルのバイクに乗って、『ZERO IIカヴェンディッシュ35勝モデル』のサドルを取り付けられたユーザーさんに、もしイベントで出会ったら、もしかしたらこっそり教えるかもしれません。

<編集後記>

プロロゴ本社には世界チャンピオンモデルがありました (c)服部産業

結果的に世界有数のタデイ・ポガチャル選手シグネチャーサドルコレクターになってしまったキット北村。(私よりポガチャル選手レプリカサドルを持っている人はタデイ・ポガチャル御本人しかいないと思います)

昨年、エディー・メルクス、ステファン・ロッシュに続き史上3人目のトリプルクラウンを達成したポガチャル選手。プロロゴ社は破竹の勢いで勝ち続けるポガチャル選手と共に、ポガチャルモデルを販売してきたので、世界チャンピオンモデルを絶対に作るだろうと予見していました。

そこで世界選手権終了後に世界チャンピオンモデルを作ってもらえるようにプロロゴ社に打診しました。しかし、残念ながらUAEチームエミレーツXRGの2025年度サドルスポンサー契約がすでに決まっており、またポガチャル世界チャンピオンモデルの生産時期とスポンサー契約終了時期が近すぎる問題やUCIのレインボー柄の使用許可の申請等々にかかる時間等の諸問題があり、ポガチャル世界チャンピオンモデルは結局お蔵入りしました。

チャリティーオークションに出品されるそう (c)服部産業

それでも、諦めずに2か月間北村の営業担当に『ポガチャル世界チャンピオンモデル作ろうぜ!』と毎週言い続けました。“ポガチャルモデルのフィナーレを飾るのに良いと思っていましたし、私のコレクションに加えたい!”キット北村は大変諦めの悪い男なのです。

2025年2月例年通りのイタリア出張に行くと、予想通りポガチャル世界チャンピオンモデルがプロロゴオフィスに鎮座していました。プロロゴのサルヴァトーレGMによると、突貫で10個製作されたらしく、そのうち5個がポガチャル選手の元に、2個がポガチャル選手のエージェントの元に、2個がプロロゴオフィスにあるそうです。

世界チャンピオンモデルの最後の1個は、ジロモデル、ツールモデルと一緒に3点でチャリティーオークションにかけるそうです。オークション金額のスタートは10,000ユーロから…。残念ながらポガチャル選手の世界チャンピオンモデルを手に入れる事は、夢のまた夢となりました。



プロロゴ ZERO II マーク・カヴェンディッシュシグネチャーモデル
価格:49,500円(税込)
※カヴェンディッシュのサインは入りません
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