創設以来最低となるチーム14勝でシーズンを終えたイネオス・グレナディアーズが、監督やパフォーマンスコーチを刷新。かつて黄金時代を築いたチームからはルーク・ロウとダニエル・ビガムが去り、クルトアスル・アルヴェセンが監督のトップとして復帰した。



今年チーム14勝と不振に陥ったイネオス・グレナディアーズ photo:CorVos

2021年のジロ・デ・イタリアを最後にグランツール総合優勝はなく、ツール・ド・フランス制覇は2019年が最後。2023年はシーズン38勝と躍進したものの、今年はその半分にも満たない14勝と、かつての常勝軍団が不振に喘いでいる。

その背景にはグランツールにおけるヴィスマ・リースアバイクやUAEチームエミレーツの台頭はもちろん、エース級の選手たちが続々とチームを離れていっているためだ。昨年はリチャル・カラパス(エクアドル)やディラン・ファンバーレ(オランダ)が退団し、今年はダニエル・マルティネス(コロンビア)、パヴェル・シヴァコフ(フランス)、テイオ・ゲイガンハート(イギリス)、ルーク・プラップ(オーストラリア)が新天地へと去っていった。

4月のアムステルゴールドレースで初優勝したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

また今年の1月には黄金時代を率いたデイヴ・ブレイルスフォードがチームを離れ、新代表にジョン・アラートが就任。新体制のなか今シーズン前半こそトーマス・ピドコック(イギリス)のアムステルゴールドレース制覇やジロ区間2勝と順調だったものの、後半はまさかの0勝。またチームとの不和が報じられたピドコックがイル・ロンバルディアの出場メンバーから直前で外されるなど、規律が売りだったチームの崩壊を予感させた。

更にタイムトライアルの改善に寄与したコーチのダニエル・ビガム(イギリス)はレッドブル・ボーラ・ハンスグローエへと移り、チーム一筋13年の生え抜きだったルーク・ロウ(イギリス)は、現役引退と共にデカトロンAG2Rラモンディアルでの監督就任が発表されている。

引退し、デカトロンAG2Rラモンディアルの監督に就任するルーク・ロウ(イギリス) photo:CorVos

そんな中、イネオスは監督やパフォーマンスコーチを含む新しいスタッフの加入を発表した。かつて監督を務めたクルトアスル・アルヴェセンが監督のトップとしてウノエックス・モビリティから復帰し、昨年引退したレオナルド・バッソも監督に就任。またパフォーマンスコーチのトップとしてDSMフィルメニッヒ・ポストNLからトム・ヘルマンを招聘した。

トラックとスプリントの専門家であるメヒディ・コルディ氏はパフォーマンスサポート・イノベーション部門のトップに。そして空力学の専門家としてフィリッポ・ガンナ(イタリア)のアワーレコード世界記録に貢献したルカ・オッジャーノ氏は、テクニカルパートナーとしてより密接にチームと関わることとなった。

スカイプロサイクリング時代の2013年に監督としてジャパンカップにやってきたクルトアスル・アルヴェセン photo:Kei Tsuji

また今年の春からパフォーマンス・ディレクターを務めるスコット・ドロワーは加入からの6ヶ月間をレースとトレーニングにおける環境の見直しに費やし、新たにエンジニアリング・テクノロジー部門のトップのポストも準備しており、2025年シーズンの開幕前までに発表されるのだという。

ジョン・アラート代表は「スコット(ドロワー)は(選手たちの)パフォーマンス面を徹底的に見直し、今後数年間に渡る明確な計画と(これまでからの)変更案を提示した。このチームには誇るべき成功のレガシーがあり、再び表彰台の一番上に戻ることを誓う。新しい体制とアプローチは、チームの次なる章を築く重要な要素となる」と、プレスリリースを締めくくった。

text:Sotaro.Arakawa

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