2024/11/01(金) - 19:00
サイクリストに長年愛されてきたフィニッシュラインから、チェーン潤滑剤のハイエンドモデル「HALO」シリーズが新登場。中空球状タングステンとセラミックを配合し、プロチームによるテストを経て、卓越した潤滑性能と耐久性を実現した3タイプを展開している。
フィニッシュラインのルブリカントは定番中の定番。赤色のDRY、緑色のWETは使用したことがあるサイクリストも非常に多いはずだ。さらにCERAMIC WETやCERAMIC WAXなどの高性能な潤滑剤なども展開しており、パフォーマンスと価格のバランスに優れたブランドとして認知されている。
そんなフィニッシュラインがこれまでよりもプレミア感のあるルブリカント”HALO”シリーズをリリースした。ラインアップはHALO HOT WAX LUBRICANT、HALO WAX LUBRICANT、HALO WET LUBRICANTという3種類。詳細は後述するが、HOT WAXが6,930円、WAXとWETが5,500円(いずれも税込)という価格に設定されており、他社のハイエンドよりも導入しやすい価格設定となっている。
それぞれのプロダクトの共通点から紹介しよう。この3種類のルブリカント全てには、中空コアの球状タングステンが配合されており、超微細な粒子が金属表面の凹凸を埋めて摩擦低減を果たす。さらに高トルクにも強い極圧耐性を備えているため、スプリントなどでも優れた性能を発揮することが特徴だ。
さらにセラミック(窒化ホウ素)がチェーン表面に非粘着コーティングを構成し、高い潤滑性能を実現する。先述の球状タングステンの摩擦抵抗低減とともに、相乗的にパフォーマンスを引き上げている。
そしてHOT WAX、WAXには共通点がある。ベースとなるのは高度に精製されたパラフィンで、これがドライなコーティングを形成することで水分と汚れの吸着を防ぎつつ、晴れや雨、どのような環境でも摩擦抵抗低減の効果を発揮するという。
HOT WAX、WAXが潤滑剤を塗布後に乾かして使用するのに対して、WETはその名の通り液体で潤滑させるタイプ。こちらは天然ガスから合成された流体フィルム(GTL)がベースとなっているため気温による粘度変化が起きにくく、様々なシチュエーションで効果が発揮される潤滑剤だ。また、蒸発しにくい性質や添加剤(ここでは球状タングステンやコーティング)の効果を引き出しやすい性質によって優れたパフォーマンスを実現した。
インプレッション
さて、今回はこの3種類のルブリカントを実際に使用し、扱いやすさなどを確認した。
まずはHOT WAXから。ペレット状のワックスを溶かすために、直径22cmの鍋を用意(パッケージの横幅が21cm)。パッケージを鍋に入れた状態で水を沸騰させたのちに、火力を弱めフツフツと水面が揺れる程度を保ち、30分後にチェーンを含浸させた。
チェーンを25回分 含浸させられる量を一気に溶かすため、30分程度必要となってしまったが、チェーンを1本だけ漬け込みたい時は、ペレットを小鍋に入れて直接火にかけても良さそうだ。また、パッケージ内のワックスを一度溶かした後に、冷ますと一塊になってしまうため、次回も溶かすのに30分程度かかる可能性があるだろう。
チェーンを漬け込む時はパッケージの中に封入されているツールを使用できるのは嬉しいところ。説明書通り3分チェーンを漬けた後に、チェーンを引き上げて乾燥の段階に移るのだが、チェーンを吊り下げるためにユーザー自身で一工夫する必要がある。その時にチェーンから余分なワックスが流れ落ちてくるのも注意してほしい。
乾燥は30分程度で大丈夫とフィニッシュラインは説明している。実際にその程度でもしっかりと乾いており、ワックスでコーティングされたチェーンは蝋細工のように固まっている。それを解消するために、チェーンを自分で揉んで余分なワックスを落としておきたい。ただ、完全に余分なワックスを落とし切るのは難しいため、ある程度は手作業で、残りは自転車に装着し慣らし走行で落とすという意識は必要そう。
慣らし走行は約5kmで完了。それまではチェーンの動きに鈍さを感じるものの、ある程度慣れてきたら、ルブリカント本来の潤滑性が発揮される。
HOT WAX LUBRICANTはペダルを踏み込みチェーンにストレスが掛かる瞬間、足が感じるのは柔らかさ。固体となったワックスが柔軟に潰されていくような感覚がある。加えて、変速時にチェーンとスプロケットが噛み合う瞬間や、チェーンが横移動する時の衝撃も心なしか和らいでいるようだ。とはいえペダリングパワーをロスしているようには感じない。
チェーンの潤滑は、その言葉どおり滑るようにチェーンが回転する。トップギアに入れてチェーンの屈曲が大きくなった時もクッション感と潤滑性によって、スルッとペダリングができ、かつ余力を残せるようなフィーリングだ。
HOT WAXの大きなメリットは汚れにくいこと。ワックスのカスが削れ落ちることはあり、それは汚れを持って黒ずんでいるものの、軽く拭くことで落とすことができる。オイルのようにチェーンステーに黒い汚れが飛び散ることもない。さらに使い込んだチェーンを手に持っても、その汚れが手にベッタリとつくことがないのは嬉しい。
固形ワックスは約7,000円とやや高価ではあるが、25回分の内容量があるため、単純計算で一回当たり250円と考えると非常に手に取りやすい。25回もチェーンを漬け込むのは大変なため、一度に複数本を漬け込んでロット管理すれば多少は運用の手間も解消されるはずだ。もちろんゆくゆくは施工してくれるショップが現れることも期待したい。
対してWETルブはペダリングの初動が圧倒的に軽い。後述するが特別なヘッドを使うことで、チェーンに多めの潤滑剤が塗布されるものの、ペダルを踏み込んだ時はワックスとは対照的にダイレクトで硬い感覚がある。
薄い被膜が形成されるタイプの潤滑剤で、ペダリングや変速時もカツンカツンと金属同士が接触するような感触だ。これによってひと踏ごとの力がロスすることなく、推進力に繋がっているんだろうという感覚を体験できる。
リキッドタイプのためライド中の砂塵はやや抱え込んでしまう。チェーンには黒ずんだ潤滑剤が滲み出てくるものの、サラサラとしている潤滑剤の印象に反してフレームへと飛び散る量は少なめ。ペーパータオルでサッと拭き取れるので、汚れを抱え込んでギトギトになってしまうことはない。
この汚れの落としやすさはライド後に行う簡易清掃のハードルを下げてくれる。黒いタングステンが配合されているため、新品のようなギラギラした状態は保てないものの、常にチェーンを最適な状態に保ちやすいだろう。
HOT WAXとWETルブを比較すると、ゼロからの加速感はWETの方が感触がよく、HOT WAXは高トルクでペダリングをしている時の印象が良い。コーナーの立ち上がりなどを重視するのであればWETで、気持ちよくハイスピード巡航したい場合はHOT WAXを選ぶと良さそう。
その中間にいるのがリキッドタイプのWAXだ。足あたりの柔らかさはHOT WAXのようだが、ワックスが薄塗りされているような感じがあり、ややダイレクト感もある。メンテナンス性も良く、性能も良いオールラウンダーという印象だ。
またリキッドタイプのボトルにはSmart Luberというスポンジがビルトインされたヘッドが装備されている。これを使うことで手間と時間をかけずに、チェーン全体に潤滑剤を塗布することができる。
このヘッドを外せばひとコマずつ滴下できるが、WETルブは非常にサラサラしており、やや垂れやすいような印象があった。Smart Luberは、そのサラサラとした潤滑剤をスポンジで受け止めてからチェーンへと伝えてくれるので、適量が塗布されるという仕組みだ。リキッドタイプは5,500円と高価なため、無駄にしたくない時は純正ヘッドを使うのが良さそうだ。
どのモデルもこれまでのフィニッシュライン製品とは一味違う性能を備えている。潤滑性能、耐久性全てが進化を遂げており、今のフィニッシュラインを体感するのにはうってつけ。ハイパフォーマンスのルブを使いたいという気持ちや期待に応えてくれるシリーズだ。
フィニッシュライン HALO HOT WAX LUBRICANT
サイズ:600g
付属品:浸漬ツール
価格:6,930円(税込)
フィニッシュライン HALO WAX LUBRICANT
サイズ:120ml
付属品:チェーンルーバー、交換用パッド6枚
価格:5,500円(税込)
フィニッシュライン HALO WET LUBRICANT
サイズ:120ml
付属品:チェーンルーバー、交換用パッド6枚
価格:5,500円(税込)
Impression:Michinari Takagi, Gakuto Fujiwara
フィニッシュラインのルブリカントは定番中の定番。赤色のDRY、緑色のWETは使用したことがあるサイクリストも非常に多いはずだ。さらにCERAMIC WETやCERAMIC WAXなどの高性能な潤滑剤なども展開しており、パフォーマンスと価格のバランスに優れたブランドとして認知されている。
そんなフィニッシュラインがこれまでよりもプレミア感のあるルブリカント”HALO”シリーズをリリースした。ラインアップはHALO HOT WAX LUBRICANT、HALO WAX LUBRICANT、HALO WET LUBRICANTという3種類。詳細は後述するが、HOT WAXが6,930円、WAXとWETが5,500円(いずれも税込)という価格に設定されており、他社のハイエンドよりも導入しやすい価格設定となっている。
それぞれのプロダクトの共通点から紹介しよう。この3種類のルブリカント全てには、中空コアの球状タングステンが配合されており、超微細な粒子が金属表面の凹凸を埋めて摩擦低減を果たす。さらに高トルクにも強い極圧耐性を備えているため、スプリントなどでも優れた性能を発揮することが特徴だ。
さらにセラミック(窒化ホウ素)がチェーン表面に非粘着コーティングを構成し、高い潤滑性能を実現する。先述の球状タングステンの摩擦抵抗低減とともに、相乗的にパフォーマンスを引き上げている。
そしてHOT WAX、WAXには共通点がある。ベースとなるのは高度に精製されたパラフィンで、これがドライなコーティングを形成することで水分と汚れの吸着を防ぎつつ、晴れや雨、どのような環境でも摩擦抵抗低減の効果を発揮するという。
HOT WAX、WAXが潤滑剤を塗布後に乾かして使用するのに対して、WETはその名の通り液体で潤滑させるタイプ。こちらは天然ガスから合成された流体フィルム(GTL)がベースとなっているため気温による粘度変化が起きにくく、様々なシチュエーションで効果が発揮される潤滑剤だ。また、蒸発しにくい性質や添加剤(ここでは球状タングステンやコーティング)の効果を引き出しやすい性質によって優れたパフォーマンスを実現した。
インプレッション
さて、今回はこの3種類のルブリカントを実際に使用し、扱いやすさなどを確認した。
まずはHOT WAXから。ペレット状のワックスを溶かすために、直径22cmの鍋を用意(パッケージの横幅が21cm)。パッケージを鍋に入れた状態で水を沸騰させたのちに、火力を弱めフツフツと水面が揺れる程度を保ち、30分後にチェーンを含浸させた。
チェーンを25回分 含浸させられる量を一気に溶かすため、30分程度必要となってしまったが、チェーンを1本だけ漬け込みたい時は、ペレットを小鍋に入れて直接火にかけても良さそうだ。また、パッケージ内のワックスを一度溶かした後に、冷ますと一塊になってしまうため、次回も溶かすのに30分程度かかる可能性があるだろう。
チェーンを漬け込む時はパッケージの中に封入されているツールを使用できるのは嬉しいところ。説明書通り3分チェーンを漬けた後に、チェーンを引き上げて乾燥の段階に移るのだが、チェーンを吊り下げるためにユーザー自身で一工夫する必要がある。その時にチェーンから余分なワックスが流れ落ちてくるのも注意してほしい。
乾燥は30分程度で大丈夫とフィニッシュラインは説明している。実際にその程度でもしっかりと乾いており、ワックスでコーティングされたチェーンは蝋細工のように固まっている。それを解消するために、チェーンを自分で揉んで余分なワックスを落としておきたい。ただ、完全に余分なワックスを落とし切るのは難しいため、ある程度は手作業で、残りは自転車に装着し慣らし走行で落とすという意識は必要そう。
慣らし走行は約5kmで完了。それまではチェーンの動きに鈍さを感じるものの、ある程度慣れてきたら、ルブリカント本来の潤滑性が発揮される。
HOT WAX LUBRICANTはペダルを踏み込みチェーンにストレスが掛かる瞬間、足が感じるのは柔らかさ。固体となったワックスが柔軟に潰されていくような感覚がある。加えて、変速時にチェーンとスプロケットが噛み合う瞬間や、チェーンが横移動する時の衝撃も心なしか和らいでいるようだ。とはいえペダリングパワーをロスしているようには感じない。
チェーンの潤滑は、その言葉どおり滑るようにチェーンが回転する。トップギアに入れてチェーンの屈曲が大きくなった時もクッション感と潤滑性によって、スルッとペダリングができ、かつ余力を残せるようなフィーリングだ。
HOT WAXの大きなメリットは汚れにくいこと。ワックスのカスが削れ落ちることはあり、それは汚れを持って黒ずんでいるものの、軽く拭くことで落とすことができる。オイルのようにチェーンステーに黒い汚れが飛び散ることもない。さらに使い込んだチェーンを手に持っても、その汚れが手にベッタリとつくことがないのは嬉しい。
固形ワックスは約7,000円とやや高価ではあるが、25回分の内容量があるため、単純計算で一回当たり250円と考えると非常に手に取りやすい。25回もチェーンを漬け込むのは大変なため、一度に複数本を漬け込んでロット管理すれば多少は運用の手間も解消されるはずだ。もちろんゆくゆくは施工してくれるショップが現れることも期待したい。
対してWETルブはペダリングの初動が圧倒的に軽い。後述するが特別なヘッドを使うことで、チェーンに多めの潤滑剤が塗布されるものの、ペダルを踏み込んだ時はワックスとは対照的にダイレクトで硬い感覚がある。
薄い被膜が形成されるタイプの潤滑剤で、ペダリングや変速時もカツンカツンと金属同士が接触するような感触だ。これによってひと踏ごとの力がロスすることなく、推進力に繋がっているんだろうという感覚を体験できる。
リキッドタイプのためライド中の砂塵はやや抱え込んでしまう。チェーンには黒ずんだ潤滑剤が滲み出てくるものの、サラサラとしている潤滑剤の印象に反してフレームへと飛び散る量は少なめ。ペーパータオルでサッと拭き取れるので、汚れを抱え込んでギトギトになってしまうことはない。
この汚れの落としやすさはライド後に行う簡易清掃のハードルを下げてくれる。黒いタングステンが配合されているため、新品のようなギラギラした状態は保てないものの、常にチェーンを最適な状態に保ちやすいだろう。
HOT WAXとWETルブを比較すると、ゼロからの加速感はWETの方が感触がよく、HOT WAXは高トルクでペダリングをしている時の印象が良い。コーナーの立ち上がりなどを重視するのであればWETで、気持ちよくハイスピード巡航したい場合はHOT WAXを選ぶと良さそう。
その中間にいるのがリキッドタイプのWAXだ。足あたりの柔らかさはHOT WAXのようだが、ワックスが薄塗りされているような感じがあり、ややダイレクト感もある。メンテナンス性も良く、性能も良いオールラウンダーという印象だ。
またリキッドタイプのボトルにはSmart Luberというスポンジがビルトインされたヘッドが装備されている。これを使うことで手間と時間をかけずに、チェーン全体に潤滑剤を塗布することができる。
このヘッドを外せばひとコマずつ滴下できるが、WETルブは非常にサラサラしており、やや垂れやすいような印象があった。Smart Luberは、そのサラサラとした潤滑剤をスポンジで受け止めてからチェーンへと伝えてくれるので、適量が塗布されるという仕組みだ。リキッドタイプは5,500円と高価なため、無駄にしたくない時は純正ヘッドを使うのが良さそうだ。
どのモデルもこれまでのフィニッシュライン製品とは一味違う性能を備えている。潤滑性能、耐久性全てが進化を遂げており、今のフィニッシュラインを体感するのにはうってつけ。ハイパフォーマンスのルブを使いたいという気持ちや期待に応えてくれるシリーズだ。
フィニッシュライン HALO HOT WAX LUBRICANT
サイズ:600g
付属品:浸漬ツール
価格:6,930円(税込)
フィニッシュライン HALO WAX LUBRICANT
サイズ:120ml
付属品:チェーンルーバー、交換用パッド6枚
価格:5,500円(税込)
フィニッシュライン HALO WET LUBRICANT
サイズ:120ml
付属品:チェーンルーバー、交換用パッド6枚
価格:5,500円(税込)
Impression:Michinari Takagi, Gakuto Fujiwara
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