2024/10/10(木) - 18:00
シクロクロス全日本王者、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)によるヴィットリアの新作タイヤ「Vittoria A.DUGAST」インプレッション。後編ではサンドから泥まで合計5種類用意されたトレッドパターンを、国内レースの特徴に合わせてどう選ぶのかについて聞いた。
デュガス伝統の5パターンを用意「Vittoria A.DUGASTシリーズ」
PIPISTRELLO(ピピストレッロ)にPIPISQUALLO(ピピスクアッロ)、SMALL BIRD(スモールバード)、TYPHOON(タイフーン)、そしてRHINO(リノ)...。新しいヴィットリアのシクロクロスタイヤが良さそうのは分かったけれど、5種類も用意されるトレッドパターンをどう選んだら良いのか分からないという人も多いはず。特に、従来のヴィットリアのシクロクロスタイヤは3種類で、それぞれDRY、MIX、WETと明快な名称だったから余計に分かりづらい。
ここでは前編に続き、全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)とチームGMの佐藤成彦氏に、Vittoria A.DUGASTシリーズのラインナップの中から、どういう路面コンディションでどのタイヤをチョイスすべきかについて聞いたインタビューを紹介する。超サンド用のPIPISTRELLO(ピピストレッロ)と激マッド用のRHINO(リノ)を含め、現実的な選択肢となるPIPISQUALLO(ピピスクアッロ)、SMALL BIRD(スモールバード)、そしてTYPHOON(タイフーン)の3種類についてのコメントを中心に聞いた。
インプレッションby織田聖:「国内はSMALL BIRDが基本、グリップが欲しいならTYPHOONE」
「正直、僕ならSMALL BIRD一択と言ってもいいかもしれません。それは、グリップとスピードのバランスが良くて国内レースにとてもマッチしそうだから。こういうタイヤが欲しかった、って感じました」と織田は言う。「これまでのヴィットリアならオールラウンドなMIXかドライコンディション用のDRYの二択でしたが、感覚的に言えばSMALL BIRDはその中間で、グリップ力とスピードのバランスがちょうど良い。公園や河川敷で行われる国内レースにぴったりだと思うんです」。
「PIPISQUALLOは直線が速くてすごく良いタイヤなんですが、コーナーを攻めすぎた時、特に芝や草地だと一度滑ったらグリップを戻すのが難しいですね。一番活躍するのはシクロクロス東京のお台場や、東海シクロクロスのワイルドネイチャーなどの砂コース。サイドノブの無いPIPISTRELLOはレースでは使う場面はあまりなく、むしろグラベル用として良いのかもしれません。
TYPHOONが活躍するのは路面が濡れている時です。前日に降った雨が残っていたり、宇都宮のような、勝負になりそうなキャンバー区間が濡れていたりしたら間違いなくTYPHOONですね。完全ウェットコンディションでなければ(茨城シクロクロス)土浦や(東北シクロクロス)亘理、(関西シクロクロス)烏丸もスモールバード。烏丸は結構キャンバーが多いコースなので、フロントにTYPHOON、リアはSMALL BIRDっていう組み合わせもアリかもしれません。
加えて日本では考えられないような深い泥がある海外遠征用にはRHINOも用意してもらいます。これも国内ではほとんど使う場面はないでしょうが、決戦レースが完全ウェットであれば、例えば(トラクションが必要な)リアだけ入れる可能性もありますね」。
織田は完全ドライコンディションで行われたJCXシリーズ開幕戦の土浦ラウンドを、チューブレスのSMALL BIRDで出走。チューブラーの供給が間に合わないためチューブレスを選択したというが、実戦レベルでも性能面で全く不満はなく、本人も確かな感触を掴んだという。
余談ではあるものの、先日ベルギーで開催されたばかりのグラベル世界選手権では、チューブレスのPIPISQUALLO(33c)を前輪に、TYPHOONを後輪に選択したマリアンヌ・フォス(オランダ)が優勝、男子カテゴリーで優勝したマチュー・ファンデルプール(オランダ)はグラベルタイヤのTerreno Zero Gravel Lite(未発表の38C)を使用していた。
雨の多いベルギーやオランダでは完全ドライコンディションになることは珍しい。現地でのスタンダードはTYPHOONで、ドライ基調だったり、テクニックに長ける選手はSMALL BIRD。完全な泥/雨であればRHINOを使うことになるという。
「選択肢が増えた分、海外遠征の時に持っていくタイヤは悩みますね(笑)。去年はMIXとWETの二択でしたが、今年はSMALL BIRDとTYPHOON、RHINOの3種類を持っていくかもしれません」と佐藤GMは言う。遠征ホイールが多くなるのは大変だが、成績に直結するタイヤだけに選択肢が多いに越したことはない、と加える。
「(織田)特にひどいのが1月1日恒例イベントの「GPスヴェンネイス」。永久凍土みたいなカチコチの泥で、下りはキツイわ、ウォッシュボードみたいになっているわ。どうやってタイヤを食わせるんだという場面の連続。みんなすごい勢いでコース外に吹っ飛んでいくんですよ。一瞬固まった泥っぽく見えるんですが、実は全部泥がうっすら乗った氷ですから。まあ、国内でそんなコースはありませんし、今までもひどい泥といえば全日本の(信州シクロクロス)飯山と野辺山、それに(東北シクロクロス)蔵王くらいだったでしょうか。
だから、何か一つだけ選べと言われたら、僕はSMALL BIRD。でも、それは滑っても対応できる技術があるからなので、グリップ力を優先したいならTYPHOONも良いですね。テクニックに自信があるならSMALL BIRD、滑る路面に自信がなければTYPHOONという選び方でも良いと思うんです。
「TYPHOONはシクロクロスタイヤ界のド定番。各社少しずつ設計が違いますが、この矢印パターンはずっと昔から、どのメーカーもラインナップしているものですから、性能バランスがいいんでしょうね」と佐藤GMは言う。「いま現在TYPHOON的なオールラウンドタイヤを持っているなら、SMALL BIRDを買い足すのもありですね。タイヤバリエーションが増えれば天気を見て履き替えができるし、路面コンディションがどう変わっても対応できるという安心感に繋がりますから」。
加えて佐藤GMが評価するのが、少量生産時代のデュガスと比較した際の製品精度だ。「明らかにタイヤの品質が上がり、ピシッと芯が出ていて、ホイールに取り付けて回転させても全然ブレがなくなった。今までのデュガスって良くも悪くもハンドメイドで、モノがいい代わりに精度が悪かったので、それを知っていると別物ですね。チューブラーもホイールに対して真っ直ぐ貼れましたし、誰にとっても素晴らしい進化だと感じます」。
「本当に良い進化ですよ。さらに僕、速くなっちゃいますからね」と言う織田は、これからイタリアに渡って毎週UCIレースを転戦し、世界選手権のスタート順を上げるためのポイント獲得を目指す。地元松伏町でのホームレースで、JCXシリーズに昇格した松伏シクロクロス、全日本選手権、世界選手権と重要レースを戦っていくという。
デュガス伝統の5パターンを用意「Vittoria A.DUGASTシリーズ」
PIPISTRELLO(ピピストレッロ)にPIPISQUALLO(ピピスクアッロ)、SMALL BIRD(スモールバード)、TYPHOON(タイフーン)、そしてRHINO(リノ)...。新しいヴィットリアのシクロクロスタイヤが良さそうのは分かったけれど、5種類も用意されるトレッドパターンをどう選んだら良いのか分からないという人も多いはず。特に、従来のヴィットリアのシクロクロスタイヤは3種類で、それぞれDRY、MIX、WETと明快な名称だったから余計に分かりづらい。
ここでは前編に続き、全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)とチームGMの佐藤成彦氏に、Vittoria A.DUGASTシリーズのラインナップの中から、どういう路面コンディションでどのタイヤをチョイスすべきかについて聞いたインタビューを紹介する。超サンド用のPIPISTRELLO(ピピストレッロ)と激マッド用のRHINO(リノ)を含め、現実的な選択肢となるPIPISQUALLO(ピピスクアッロ)、SMALL BIRD(スモールバード)、そしてTYPHOON(タイフーン)の3種類についてのコメントを中心に聞いた。
インプレッションby織田聖:「国内はSMALL BIRDが基本、グリップが欲しいならTYPHOONE」
「正直、僕ならSMALL BIRD一択と言ってもいいかもしれません。それは、グリップとスピードのバランスが良くて国内レースにとてもマッチしそうだから。こういうタイヤが欲しかった、って感じました」と織田は言う。「これまでのヴィットリアならオールラウンドなMIXかドライコンディション用のDRYの二択でしたが、感覚的に言えばSMALL BIRDはその中間で、グリップ力とスピードのバランスがちょうど良い。公園や河川敷で行われる国内レースにぴったりだと思うんです」。
「PIPISQUALLOは直線が速くてすごく良いタイヤなんですが、コーナーを攻めすぎた時、特に芝や草地だと一度滑ったらグリップを戻すのが難しいですね。一番活躍するのはシクロクロス東京のお台場や、東海シクロクロスのワイルドネイチャーなどの砂コース。サイドノブの無いPIPISTRELLOはレースでは使う場面はあまりなく、むしろグラベル用として良いのかもしれません。
TYPHOONが活躍するのは路面が濡れている時です。前日に降った雨が残っていたり、宇都宮のような、勝負になりそうなキャンバー区間が濡れていたりしたら間違いなくTYPHOONですね。完全ウェットコンディションでなければ(茨城シクロクロス)土浦や(東北シクロクロス)亘理、(関西シクロクロス)烏丸もスモールバード。烏丸は結構キャンバーが多いコースなので、フロントにTYPHOON、リアはSMALL BIRDっていう組み合わせもアリかもしれません。
加えて日本では考えられないような深い泥がある海外遠征用にはRHINOも用意してもらいます。これも国内ではほとんど使う場面はないでしょうが、決戦レースが完全ウェットであれば、例えば(トラクションが必要な)リアだけ入れる可能性もありますね」。
織田は完全ドライコンディションで行われたJCXシリーズ開幕戦の土浦ラウンドを、チューブレスのSMALL BIRDで出走。チューブラーの供給が間に合わないためチューブレスを選択したというが、実戦レベルでも性能面で全く不満はなく、本人も確かな感触を掴んだという。
余談ではあるものの、先日ベルギーで開催されたばかりのグラベル世界選手権では、チューブレスのPIPISQUALLO(33c)を前輪に、TYPHOONを後輪に選択したマリアンヌ・フォス(オランダ)が優勝、男子カテゴリーで優勝したマチュー・ファンデルプール(オランダ)はグラベルタイヤのTerreno Zero Gravel Lite(未発表の38C)を使用していた。
雨の多いベルギーやオランダでは完全ドライコンディションになることは珍しい。現地でのスタンダードはTYPHOONで、ドライ基調だったり、テクニックに長ける選手はSMALL BIRD。完全な泥/雨であればRHINOを使うことになるという。
「選択肢が増えた分、海外遠征の時に持っていくタイヤは悩みますね(笑)。去年はMIXとWETの二択でしたが、今年はSMALL BIRDとTYPHOON、RHINOの3種類を持っていくかもしれません」と佐藤GMは言う。遠征ホイールが多くなるのは大変だが、成績に直結するタイヤだけに選択肢が多いに越したことはない、と加える。
「(織田)特にひどいのが1月1日恒例イベントの「GPスヴェンネイス」。永久凍土みたいなカチコチの泥で、下りはキツイわ、ウォッシュボードみたいになっているわ。どうやってタイヤを食わせるんだという場面の連続。みんなすごい勢いでコース外に吹っ飛んでいくんですよ。一瞬固まった泥っぽく見えるんですが、実は全部泥がうっすら乗った氷ですから。まあ、国内でそんなコースはありませんし、今までもひどい泥といえば全日本の(信州シクロクロス)飯山と野辺山、それに(東北シクロクロス)蔵王くらいだったでしょうか。
だから、何か一つだけ選べと言われたら、僕はSMALL BIRD。でも、それは滑っても対応できる技術があるからなので、グリップ力を優先したいならTYPHOONも良いですね。テクニックに自信があるならSMALL BIRD、滑る路面に自信がなければTYPHOONという選び方でも良いと思うんです。
「TYPHOONはシクロクロスタイヤ界のド定番。各社少しずつ設計が違いますが、この矢印パターンはずっと昔から、どのメーカーもラインナップしているものですから、性能バランスがいいんでしょうね」と佐藤GMは言う。「いま現在TYPHOON的なオールラウンドタイヤを持っているなら、SMALL BIRDを買い足すのもありですね。タイヤバリエーションが増えれば天気を見て履き替えができるし、路面コンディションがどう変わっても対応できるという安心感に繋がりますから」。
加えて佐藤GMが評価するのが、少量生産時代のデュガスと比較した際の製品精度だ。「明らかにタイヤの品質が上がり、ピシッと芯が出ていて、ホイールに取り付けて回転させても全然ブレがなくなった。今までのデュガスって良くも悪くもハンドメイドで、モノがいい代わりに精度が悪かったので、それを知っていると別物ですね。チューブラーもホイールに対して真っ直ぐ貼れましたし、誰にとっても素晴らしい進化だと感じます」。
「本当に良い進化ですよ。さらに僕、速くなっちゃいますからね」と言う織田は、これからイタリアに渡って毎週UCIレースを転戦し、世界選手権のスタート順を上げるためのポイント獲得を目指す。地元松伏町でのホームレースで、JCXシリーズに昇格した松伏シクロクロス、全日本選手権、世界選手権と重要レースを戦っていくという。
Vittoria A.Dugastシリーズラインナップ
仕様 | タイヤ幅 | 価格(税込) | |
---|---|---|---|
Pipistrello | チューブラー | 28-33mm | 17.930円 |
チューブレスレディ/チューブド兼用 | 700x33c | 15,620円 | |
Pipisquallo | チューブラー | 28-33mm | 17.930円 |
チューブレスレディ/チューブド兼用 | 700x33c | 15,620円 | |
Small Bird | チューブラー | 28-33mm | 18.920円 |
チューブレスレディ/チューブド兼用 | 700x33c | 15,620円 | |
Typhoon | チューブラー | 28-33mm | 17.930円 |
チューブラー(フライングドクターケーシング) | 28-33mm | 21,340円 | |
チューブレスレディ/チューブド兼用 | 700x33c | 15,620円 | |
Rhino | チューブラー | 28-33mm | 18.590円 |
チューブレスレディ/チューブド兼用 | 700x33c | 15,620円 | |
text&photo:So Isobe
リンク
Amazon.co.jp