女子エリート+U23混走で行われたMTB世界選手権XCO女子レース。ホールショットを決めたプック・ピーテルセ(オランダ)が積極的な走りで初優勝した。ロード転向するポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)は14位でMTB最終レースを終えた。



女子エリート+U23混走レースがスタート。プック・ピーテルセ(オランダ)がホールショットを決めた photo:SWpix.com/UCI

MTBの名門コース、アンドラ公国の山岳リゾート地パル・アリンサルで開催されたMTB世界選手権。最終日となる9月1日(日)にはXCO(クロスカントリーオリンピック)の男女エリートとU23レースが開催され、合計4人の世界チャンピオンが誕生した。

この日は午後早くから雷を伴う長時間の嵐が予測されていることを受け、UCIと現地主催者は各レースの周回数を減らし、かつ女子U23とエリートを同周回混走レースとすることを決定。現地8:30に男子U23(6周→5周)、10:15に女子エリート(6周→5周)+U23(5周)、12:00に男子エリート(7周→6周)が開催されることとなった。

女子エリート+U23の優勝候補筆頭はパリ五輪を制したディフェングチャンピオン、ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)。ヴィスマ・リースアバイク移籍とロードへの完全転向をアナウンスしたオフロード界の女王にとって、2015年に初のMTB世界タイトルを獲得したこのアンドラがキャリア最後のMTBレース参戦となる。

力強く先頭争いをリードするプック・ピーテルセ(オランダ) photo:SWpix.com/UCI

ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)は先頭争いに加わったものの、遅れて14位フィニッシュ photo:UCI

ホールショットを決めたプック・ピーテルセ(オランダ)が積極的な攻めの走りで独走体制に持ち込み、アレッサンドラ・ケラー(スイス)やキャンディス・リル(南アフリカ)が2番手グループで追走する。やがて遅れたケラーは3番手グループに飲み込まれ、単独でペースを上げたフェランプレヴォが、リルと合流してピーテルセをキャッチする。ここからフェランプレヴォのアタックが決まるかと思われたものの、この日ディフェンディングチャンピオンはパリ五輪の時のようなトップコンディションになかった。

「勝つには最初から全力でプッシュしないといけないと思っていた。2日前のショートトラックレースのスタートでミスして優勝争いに加われなかったので、今日は最初から集中していた」と振り返るピーテルセは、追いつかれてもなお集中を崩さなかった。2周目の登坂区間でフェランプレヴォを振り落とし、リルにプレッシャーを掛け続けて再び独走体制に持ち込む。今年のW杯で2度表彰台に登って一気に注目選手となったリルは、ピーテルセとのトップ争いで脚を使い果たしてズルズルとペースを落とし、最終的にアン・テルプストラ(オランダ)やマルティナ・ベルタ(イタリア)にも追い抜かれてしまった。

ピーテルセに食い下がったキャンディス・リル(南アフリカ)は脚を使い果たして4位フィニッシュ photo:UCI

エリート選手を抜き去りながらU23先頭を走るイザベラ・ホルムグレン(カナダ) photo:SWpix.com/UCI

2日前に開催されたXCCでU23世界女王に輝いたイザベラ・ホルムグレン(カナダ)がエリート選手相手に大健闘する中、フェランプレヴォはペースダウンでトップ10圏外へ。ショートトラック覇者イヴィ・リチャーズ(イギリス)やリオ五輪金メダリストのジェニー・リスヴェッツ(スウェーデン)といった今季好調を維持していた優勝候補たちもまた、上位争いに加わることができなかった。

独走体制に入ってからも淡々とペーシングしたピーテルセが1分近いリードを得て登坂区を終え、そのままフィニッシュへ。最終コーナーで受け取ったオランダ国旗を背中に掲げた22歳が新MTB世界女王に輝いた。2位にはポジションアップを続けたテルプストラが入ってオランダがワンツー。最終登坂でリルを抜き去ったベルタが3位銅メダルを手にする結果となった。

オランダ国旗を掲げてフィニッシュするプック・ピーテルセ(オランダ) photo:SWpix.com/UCI

オランダのワンツーフィニッシュを決めたプック・ピーテルセとアン・テルプストラ photo:SWpix.com/UCI

全体の5位でフィニッシュしたイザベラ・ホルムグレン(カナダ)がU23女子王者に輝く photo:SWpix.com/UCI

「最初のエリートタイトル。何て言ったらいいか分からない。MTB大国じゃないオランダがワンツーフィニッシュするだなんて素晴らしいこと。私が住んでいるのは海抜0m以下の場所で、ここは2000m(笑)。アン(テルプストラ)はこのアンドラでいつもいい成績だったし今日も強さをアピールしたと思う。本当に最高の結果になった」と喜ぶピーテルスは、オランダの国技とも言えるシクロクロスを出身で、持ち前のテクニックと爆発力を武器にロードとMTBでも成績を出す次世代のマルチタレント選手。マチュー・ファンデルプールと同じアルペシン・ドゥクーニンクに所属し、シクロクロスでは2022年のU23世界選手権優勝、2023年はエリートで2位銀メダル、今年のツール・ド・フランス・ファムではステージ優勝を挙げていたが、エリートでのアルカンシエルはキャリアを通じて初めてだ。

フェランプレヴォは笑顔で歓声に応えながら14位でフィニッシュ。「最後のMTBレースを走り終えてとても幸せ。今日はもう何も体力が残っていなくてレースには参加できなかったし、この競技を引退するのにいいタイミングだと思う。新しいチャンピオンにおめでとうと伝えたい」とレース後のコメントで感謝を綴っている。

U23女王イザベラ・ホルムグレン(カナダ)とエリート女王プック・ピーテルセ(オランダ) photo:SWpix.com/UCI

MTB世界選手権2024 XCO女子エリート表彰台:1位ピーテルセ、2位テルプストラ、3位ベルタ photo:UCI

MTB世界選手権2024 XCO女子U23表彰台:1位ホルムグレン、2位オネスティ、3位ジョンストン photo:UCI

U23のホルムグレンは、エリート選手たちを次々と抜き去って全体の5番手でフィニッシュ。シクロクロスU23、XCCに続くオフロード世界選手権3カテゴリー優勝を叶えた。序盤に先頭を走っていたオリヴィア・オネスティ(フランス)が同2位に入っている。

MTB世界選手権2024 XCO女子エリート結果
1位 プック・ピーテルセ(オランダ) 1:09:41
2位 アン・テルプストラ(オランダ) +0:59
3位 マルティナ・ベルタ(イタリア) +1:19
4位 キャンディス・リル(南アフリカ) +1:23
5位 ロアナ・ルコント(フランス) +1:43
6位 イヴィ・リチャーズ(イギリス) +1:51
7位 ラウラ・スティガー(オーストリア) +2:23
8位 サヴィリア・ブランク(アメリカ) +2:32
9位 ケイト・コートニー(アメリカ) +2:57
10位 レベッカ・ヘンダーソン(オーストラリア) +3:02
MTB世界選手権2024 XCO女子U23結果
1位 イザベラ・ホルムグレン(カナダ) 1:11:12
2位 オリヴィア・オネスティ(フランス) +1:17
3位 エミリー・ジョンストン(カナダ) +2:32
text:So.Isobe
photo:UCI