31.2kmの個人タイムトライアルでフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がライバルを圧倒。マリアローザを着るポガチャルに29秒差をつけ、2021年以来となるジロ・デ・イタリア区間優勝を果たした。



圧巻の走りでステージ優勝したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:RCS Sport

地元ファンによる熱い応援を受けるガンナ photo:RCS Sport
ジロ・デ・イタリア2024第14ステージ コースプロフィール image:RCS Sport


第107回ジロ・デ・イタリアの第2週目も残すところあと2日。第14ステージは今大会2度目となる31.2kmの個人タイムトライアルが行われ、ステージ優勝と総合タイムを賭けた戦いが繰り広げられた。

山頂フィニッシュだった第7ステージの個人TTとは違い、今回のコースは丘一つない平坦路。カスティリオーネ・デッレから反時計回りに、イタリア最大のガルダ湖に面したデゼンツァーノ・デル・ガルダを目指して突き進む。中間計測地点は7.8km(残り23.4km)と23.2km(残り8km)にあり、純粋なパワーが求められるTTスペシャリストに有利なレイアウトだ。

主要なスプリントステージが終わったためスプリンターのフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)がレースを去ったこの日は、残された152名が総合順位の最下位から順に出走した。最初に平均速度50km/hを超えたのは3番手にスタートしたヨセフ・チェルニー(チェコ、スーダル・クイックステップ)。しかしこのTTスペシャリストが出した36分58秒というタイムは、次々と更新されていくことになった。

序盤に好タイムでフィニッシュしたヨセフ・チェルニー(チェコ、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

ステージ8位:トビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

20番目に走り出したのは出発地点から僅か40kmほどのマントヴァ出身のエドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)。リタイアが相次ぎチーム4名での戦いを強いられるなか、アッフィニは暫定トップを9秒上回る好タイムでフィニッシュする。しかしアッフィニの地元勝利は前TT世界王者トビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ)に阻まれ、その5名後にフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がスタートを切った。

イタリアTT王者ジャージを纏うガンナは第7ステージの敗戦を払拭するべく序盤から飛ばし、第1中間計測(7.8km地点)で暫定トップタイムをマーク。前にスタートした選手たちを続々と追い抜きながら、第2計測(23.2km)では平均スピード52km/hに迫るハイペースで踏み込んでいく。

そして64Tのフロントシングルギヤに11-34Tカセットを使ったガンナは、暫定トップだったフォスを1分26秒上回る35分2秒という驚異的なタイムでフィニッシュ。その平均速度は53.435km/hと、ここまでの上位にランクインした選手たちよりも時速2km以上速い異次元の走りを見せつけた。

ステージ優勝:フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

ステージ3位:テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

その後に出走した中ではルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が1分18秒遅れと良い走りを見せ、第7ステージは区間3位だったマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)が第1計測をガンナから9秒遅れで通過。第2計測でも39秒差と好タイムを刻んでいたものの、シェフィールドは終盤のコーナーで落車する不運に見舞われ、それでも最後まで諦めることなく1分35秒遅れの12位に入っている。

そしてスタートの間隔が1分から3分となる総合上位勢が走り出した。

前回4位のテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)は1分7秒遅れの快走を見せ(区間3位)、総合10位から6位にジャンプアップ。またアレンスマンとマリアビアンカ(ヤングライダー賞)を争う総合5位アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)は、最終的に区間6位に食い込む好走。また昨年のオフシーズンにTT強化に注力したベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)もガンナから1分25秒遅れ(区間7位)と意地を見せた。

好タイムでマリアビアンカを守ったアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:RCS Sport

ステージ4位:ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

総合2位ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)に16秒差をつけられたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)は、フロント68T(11-34)のビックギアをつけたバイクでスタートを切る。不調だった前回のTTから一転、トーマスは本来の強さを発揮。ガンナから1分14秒遅れの暫定3位(最終的に4位)でフィニッシュし、1分45秒遅れの14位だったマルティネスを総合で逆転した。

そして午後4時43分、マリアローザに紫のビブショーツを合わせたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が走り出す。62T(11-32)とガンナやトーマスに比べるとやや控えめなチェーリングで駆けたポガチャルは、第1計測をガンナを4秒上回るハイスピードで通過。しかし第2計測では10秒遅れとなり、最終的に29秒遅れの35分31秒(平均時速52.708km)でフィニッシュした。

ステージ2位:タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

総合リードを2分近く拡大したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

これによりポガチャルは区間2位に甘んじたものの、総合2位との差を2分40秒から3分41秒まで拡大することに成功する。そしてイタリアの国旗を纏ったガンナは2021年大会以来3年振りのステージ優勝を決め、通算7度目のジロでの勝利を手に入れた。

「2時間待った末ようやく勝つことができた。イタリア(ジロ)では暫く勝利から遠ざかっていたので特別な気持ちがある。また第2の故郷とも呼べるガルダ湖での勝利は嬉しいね」とガンナは喜びと共に、安堵の表情でインタビューに答えた。

翌日のジロ第2週目の最終日、第15ステージは今大会最難関と目される最長222km&獲得標高差5,700mの山岳バトル。ラストはいずれも標高2,200mを超える、1級山岳パッソ・ディ・フォスカーニョ(距離14.6km/平均6.5%km)と1級リヴィーニョ(距離4.7km/平均7.6%)が待ち受ける。

3年振りのジロ勝利を喜ぶフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

翌日の険しい山岳ステージに臨むタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos


ジロ・デ・イタリア2024第14ステージ結果
1位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) 35:02
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +0:29
3位 テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) +1:07
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +1:14
5位 ルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +1:18
6位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +1:19
7位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) +1:25
8位 トビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ) +1:26
9位 ミッケル・ビョーグ(デンマーク、UAEチームエミレーツ) +1:28
10位 エドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) +1:30
14位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) +1:45
マリアローザ 個人総合成績
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 50:00:09
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +3:41
3位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) +3:56
4位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) +4:35
5位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +5:17
6位 テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) +6:30
7位 フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) +7:26
8位 ロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +7:52
9位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、アスタナ・カザクスタン) +8:40
10位 アレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) +8:56
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 284pts
2位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 174pts
3位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 93pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 104pts
2位 シモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス) 59pts
3位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) 55pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) 49:29:05
2位 フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) +0:56
3位 テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) +1:25
チーム総合成績
1位 イネオス・グレナディアーズ 150:17:37
2位 デカトロンAG2Rラモンディアル +2:09
3位 ボーラ・ハンスグローエ +22:21
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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