イタリアの老舗サイクリングシューズブランド、シディがリリースした新たなエントリーモデル"PRIMA"。シディ初となる幅広ベルトとケーブルクロージャーのコンビネーションを採用した新作シューズをインプレッション。



シディ PRIMA photo:Michinari TAKAGI

1959年に創業し、ワールドチームのトップライダーをはじめ数多くの選手たちが愛用し続けるイタリアンシューズブランドのシディ。自転車用シューズだけでなく、モト用のブーツも手掛けており、二輪に跨るライダーの足元を長きに渡り支え続けてきた老舗だ。

サイクリングシューズにおいては、オンロード用からグラベル、MTB用まで幅広く取り揃えており、レーサーに向けた高剛性のレーシングモデルからビギナーにピッタリな履きやすさを重視した一足まであらゆるニーズを網羅する。そのどれもが、イタリアの靴作りの伝統に則ったクラフトマンシップに満ちたもの。今回インプレッションする"PRIMA"もまた、その系譜に連なるエントリーグレ―ドのロードシューズだ。

ベルト式の「Firmor Closure」システムを搭載 photo:Michinari TAKAGI

TECNO 3ダイヤルも搭載され締め込みやすい photo:Michinari TAKAGI

PRIMA最大の特徴は、独自のクロージャーシステムにある。現在のシディは独自のケーブル式クロージャーをメインに用いてきたが、このPRIMAでは新たに"Firmor Closure"と名付けたベルト式クロージャーを採用。

つま先側に配置されたFirmor Closureは、V字に折り返しながらテンションを掛ける構造によって、足の輪郭に合わせて均一にアッパーを引っ張ることを可能にした。ベルト式となっているため無段階に締め付け具合を調整できるの美点の一つだ。

足首側にはTECNO 3ダイヤルを配置。足を包み込むように設計された内側アッパーを引き寄せ、確実なホールドとしっかりしたサポートを提供。直感的に操作できるデザインによって、スムーズなフィッティングが可能となっている。

ナイロンとカーボンファイバーから成るコンポジットソール photo:Michinari TAKAGI

タンにはメッシュ素材を採用し、通気性に優れる photo:Michinari TAKAGI

シューズの内側にもパンチング加工が施される photo:Michinari TAKAGI
ヒールカップには踵を安定させて支える補強カップを採用 photo:Michinari TAKAGI


フィッティングという側面においては、シディが得意とするのがヒールカップだ。上位モデルのような調整可能なヒールパーツこそ搭載されないが、PRIMAにもかかとを安定させしっかり支えるための補強カップが配置されている。

解剖学に基づいて設計されたヒールカップは踵をしっかりホールドし、ペダリングパワーロスに繋がるシューズ内での足のズレを抑えてくれる。また、クラッシュした際には保護パーツとしても機能し、足をダメージから守ってくれる。

ソールには、エアロダイナミクスとパワー伝達性を最大化するように設計されたエアロライトソールを採用。ナイロン/カーボンコンポジット素材を採用し、優れたペダリング効率を確保しつつビギナーの足にも負担にならない快適性を両立した。

踵のグリップは交換可能 photo:Michinari TAKAGI

シンプルなデザインで、踵にブランドロゴが入る photo:Michinari TAKAGI

PRIMAには足幅に合わせたレギュラーフィットとメガフィットの2種類が展開される。レギュラーフィットはD~Eワイズ相当のラスト形状で平均的なアジア人の足型にフィットする。メガフィットはEE~EEEワイズ相当のラスト形状で、レギュラーフィットより母指球部分が4mm広く、甲部分に高さを持たせた設計となっている。

サイズは38~46までラインアップされ、ハーフサイズの設定も。きめ細やかなサイズ展開はイタリアのシューズブランドならでは。カラーはBLACK RED、WHITE BLACK、ANTHRACITE BLACK、BLACK BLACKの4色展開となる。

価格は、レギュラーフィットの「PRIMA」とメガフィットの「PRIMA MEGA」で共通となっており、21,450円(税込)。取扱いはアキボウ。それでは編集部員インプレッションへ移っていこう。



―編集部インプレッション

シディ PRIMAをインプレッションしていく photo:Gakuto Fujiwara

今回、PRIMAをインプレッションするのはこれまで多くのロード用やオフロード用ビンディングシューズをテストしてきたCW編集部の高木。足のサイズは27.5cmで普段履いているスニーカーはブランドによって異なるが27.5~28cm。

普段のロードレースやトレーニングで着用しているジャイアントのシューズは42サイズ。シマノやスペシャライズドでは42サイズ、DMTでは42.5サイズ、ジロを履く場合は43サイズを選択している。このように、ブランドによってサイズ感は異なるため、試着は欠かせない。

また、筆者の足は土踏まずのアーチが高めで親指の厚みがあり、母指球から小指球までの幅があるため、横幅が広めのブランドのシューズとの相性が良い傾向がある。

アウトソールは空力や剛性を考慮したデザインに photo:Gakuto Fujiwara

これまでシディのビンディングシューズのノーマルモデルは細身でシャープな足形を採用していたこともあり、足幅が広い私にとっては縁遠いシューズブランドの一つだった。しかし、ここ数年で採用する足形が変化してきたことによって、選択肢に入ってきた。

今回のインプレッションにあたり、PRIMAとPRIMA MEGAの42、42.5、43の3サイズを履いてみたところ43サイズがしっくりくる。さらに、意外なことにワイドモデルのMEGAではなく、スタンダードフィットの43サイズがジャストフィットだった。これはかなり驚きの結果で、これまで細身シューズのイメージでシディを敬遠していた方も一度試してみてほしいところだ。

ベルト式のため無段階で細かく締め付け具合を調整できる photo:Gakuto Fujiwara

早速、テスト用のPRIMAに足を通し、Firmor Closureのベルトを締め込んでいく。幅広かつ甲高の足のため、シューズタンが固いものはタンが甲を圧迫し痛くなることもある。しかし、PRIMAのタン部分は柔らかいメッシュ生地とされている上、幅広い面積で締め込むベルトクロージャーのおかげでそういった痛みの心配は無用。

また、アッパーにタンが縫い合わせられるような設計となっているため、タンの位置ズレも起きづらい。クロージャーを締め込んでいくだけで、自然と足に合わせてフィットしてくれる。足首側に配置されたTECNO 3ダイヤルは細かく締め付け具合を調整できる一方で、ダイヤルの両脇のボタンを押せば一気にテンションを解放できるので、脱ぎやすく履きやすい一足となっている。

引き足が使いやすいシューズ photo:Gakuto Fujiwara

いざ漕ぎ出してみて、強く感じるのがアッパーのフィット感。足を包み込むようなアッパー構造と、均一なホールド力を発揮するクロージャーシステムの相乗効果は、引き足の際にもっとも大きな恩恵を生み出す。アッパーを強く引き上げるようなシーンにおいても、シューズの中で足が動く感覚は少なく、ペダリングに集中しやすい一足だ。

スプリントレベルの出力でペダルを踏み込むと、アウトソールのクリート取付位置付近には固さを感じる一方、土踏まずや踵にかけてはしなる印象。総じて足あたりは柔らかめで、高出力なスプリンターにとっては剛性不足に感じるかもしれないが、最初の一足に選ぶシューズとしては疲れづらく扱いやすい剛性感と言える。

クリートの取り付け位置付近では固さを感じるが、そのほかの部分はしなやかな印象 photo:Gakuto Fujiwara

しなやかなアウトソールは、トルクを掛けるのではなくケイデンスを重視したペダリングにもピッタリ。シディのお家芸とも言えるヒールカップはしっかり踵をホールドしてくれるので、ハイケイデンスなペダリングでもシューズ内で足の位置がぶれづらいのも重要なポイントだ。

夏の盛りのテストライドとなったが、アッパーや付属のインソールにはパンチング加工が施され、タンにもメッシュ生地が採用されているため通気性は良好。シューズ内も蒸れづらく、常に快適にサイクリングを楽しめた。

週末サイクリングやロングライドに適したエントリーグレードのビンディングシューズ photo:Gakuto Fujiwara

PRIMAのデザインはイタリアンシューズらしくデザイン。ベースカラーがブラックやホワイト、グレーを採用されているため、サイクルウェアとトータルコーディネートを楽しめるシューズでもある。PRIMAは週末ライドやロングライドを楽しむサイクリストにおすすめしたい一足だった。



シディ PRIMA
サイズ:38 / 38.5 / 39 / 39.5 / 40 / 40.5 / 41 / 41.5 / 42 / 42.5 / 43 / 43.5 / 44 / 44.5 / 45 / 45.5 / 46
カラー:BLACK RED、WHITE BLACK、ANTHRACITE BLACK、BLACK BLACK
価格:21,450円(税込)

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