2024/03/06(水) - 09:00
ジャイアントが誇る軽量オールラウンダー、TCRがフルモデルチェンジを果たした。新工法を取り入れたことで可能になった軽さと強さ、そして空力性能の向上。ジャイアントが軽量戦線に放つ渾身の第10世代TCRを、グローバルメディアローンチの場となった台湾、台中から現地レポートします。
世界ナンバーワンブランドであるジャイアントが1997年にデビューさせて以降、常にスポーツバイク業界のベンチマークとなってきたTCR。マイク・バロウズ監修による、「(T)トータル・(C)コンパクト・(R)ロード」たる世界初のスローピングフレームデザインは初登場時、世界に衝撃を与え、UCIによって一時使用禁止令が出されるなどの優位性を誇った。27年間という時を経ても一貫してジャイアントのフラッグシップを担ってきた軽量オールラウンダーが、このたび第10世代へとモデルチェンジを果たした。
新型TCRのグローバルメディアローンチの舞台となったのは台湾・台中のジャイアント本社。世界各国のメディア総勢30名を招聘し、本社新社屋や工場への招待、さらにはゲストとして、かつてTCRでジロ・デ・イタリアを制したトム・デュムランを招くなど威信を懸けた内容となった。
細身のフレームとフォーク、最上級のADVANCED SLグレードに用意されるインテグラルシートポストなど、歴代TCRのデザインコンセプトを強く引き継いでいる新型TCRだが、中身は完全なる別物。ロードカテゴリーマネージャーとして開発を主導したニクソン・ファン氏によれば、バイク全体での完成度を引き上げることを第一目標に据え、更に軽量化と剛性強化による重量剛性値の向上、そして待望のケーブル/ブレーキホースの内装化を含めた空力向上を叶えるべく、妥協なき開発を続けてきたという。
かつてないトータル設計でバイク全体をブラッシュアップ
プレゼンで最も力強く説明されたのが「システム・オプティマイゼーション」、つまりはバイクセットとしての完成度向上だ。新型TCRでは開発当初からフレームセットとホイール&タイヤ、ハンドルセットなど各開発チームが協業し、今までにないレベルでのトータル開発を実現。先行披露されていたカデックスブランドのMAX 40ホイールとRACE GCタイヤ、RACE INTEGRATED/AERO INTEGRATEDハンドルバーは、TCRと組み合わせるために生まれたものといっても過言ではないのだ。
フレームセット側で顕著なのはフロント周りの変化だろう。エアロロードのPROPELで新採用された上下1-1/2インチベアリング、かつD型断面コラムのOVERDRIVE AEROを導入し、内装ルーティングをTCRとして初採用したことは大きな話題だ。
ケーブルやブレーキホースに余裕を持たせつつ、ステム下側を這わせることでエアロ性能とメンテナンス性を両立している。専用ステム(CONTACT SLR/SL AEROLIGHTステム)こそ必要となるものの、より細身なD断面コラムを使う他社バイクより圧倒的に剛性に優れているとニクソン氏は胸を張る。
設計と製造工程の改善で重量を削ぎ、剛性を増す
歴代のTCRが重視してきた重量剛性比のさらなる強化も大きな開発ターゲットだ。既に軽量モデルとして名高いTCRをダイエットさせるために、開発チームはトップチューブからシートステー、つまりフレーム上部の表面積を2%削減。見た目上では、特にシートステーは左右が独立したままシートチューブへと繋がるデザインとなったことが顕著であり、後述するダウンチューブやフロントフォークの形状変更も大きく関わっている。
ただ軽くするのみならず、新型TCRではフォーククラウンとヘッドチューブ下側、ダウンチューブからBBにかけてフレーム形状を変化することで剛性を向上。更に、フォークやダウンチューブ、シートポストには、従来のティアドロップ断面を飛躍させ、より広い範囲のヨー角で一貫して空気抵抗を低減する新しい翼断面形状「トランケイテッド・エリプス(楕円の後部を切り落とした新しい翼型形状)」を採用。細身ながら剛性と空力性能を兼ね備え、かつ軽いという理想に可能な限り近づけたという。
そうした形状面での変化に加え、フレーム製造工程の進化も重量剛性値に大きく寄与した部分だ。従来からカーボン原糸を編み込む工程から自社で行うことで知られているジャイアントだが、最高級のADVANCED SLグレードではカーボンシートの切り出し工程を従来のレーザーカッティングから変更し、より正確に、より大きなカーボンシートを製造できる最先端の「コールドブレードカッティング」製法を新たに採用した。
1つのフレームあたりのカーボンシート数を10%減らし、シート同士の重なりを少なくすることで軽さへと繋げている。更に、従来3ピース構造だったフレームのフロント三角をワンピース構造とし、一つのブラダーで一括成型できるようになったことも、剛性を損なわずに軽量化を達成した要素の一つだという。
690g、6.4kg、-4.19ワット:史上最軽量、史上最速のTCR
結果的に新型TCRのADVANCED SLグレードでは、先代モデルからフレーム比較で70g以上を削減し、歴代TCR最軽量となる690g(Mサイズ)をマーク。カデックス40 MAXホイールとシマノDURA-ACEを装備した最上級完成車「TCR ADVANCED SL 0」では6.4kgを達成するなど、ペダルやコンピューター、ボトル類を装備しても6.8kgに収まるという圧倒的な高みへと到達している。
空力面の数値向上も顕著だ。PROPELを生み出し、今もなおジャイアントとパートナーシップを組むフランス・マニクールの風洞研究施設の数値によればフレームセットで2.28ワット(ADVANCED SL)、「TCR ADVANCED SL 0」完成車では4.19ワットを削減と、やはり空力面でも過去最速のTCRに仕上げられているという。
先代モデルで変更されたジオメトリーは継続され、タイヤクリアランスも28mmを基本としながら最大33mmまで対応するように微増している。あくまでオールラウンドに使いやすいことを想定しているためボトルとケージはノーマル。
3グレード、9バリエーションの新型TCRたち
フレームラインナップは「TCR ADVANCED SL」、「TCR ADVANCED PRO」、そして「TCR ADVANCED」という3シリーズ構成で従来と変わらず、SLグレードに2種類の完成車+フレームセット、PROグレードに3種類の完成車+フレームセット、そしてノーマルグレードに2種類の完成車という、合計9バリエーションでの発売となる。ジャイアントの持てる全てを投入した154万円の「TCR ADVANCED SL 0」完成車から、33万円という買い求めやすい価格を実現したシマノ105ワイドギアレシオ仕様の「TCR ADVANCED 2 KOM」まで、あらゆるニーズを満たすラインナップが揃っている。
シクロワイアードでは、台湾での100km以上に及ぶテストライドを経てのバイクインプレッションはもちろんのこと、カデックスやファクトリーについて、インタビューを通しながら深掘りした特集コンテンツをお届け予定。ご期待下さい。
世界ナンバーワンブランドであるジャイアントが1997年にデビューさせて以降、常にスポーツバイク業界のベンチマークとなってきたTCR。マイク・バロウズ監修による、「(T)トータル・(C)コンパクト・(R)ロード」たる世界初のスローピングフレームデザインは初登場時、世界に衝撃を与え、UCIによって一時使用禁止令が出されるなどの優位性を誇った。27年間という時を経ても一貫してジャイアントのフラッグシップを担ってきた軽量オールラウンダーが、このたび第10世代へとモデルチェンジを果たした。
新型TCRのグローバルメディアローンチの舞台となったのは台湾・台中のジャイアント本社。世界各国のメディア総勢30名を招聘し、本社新社屋や工場への招待、さらにはゲストとして、かつてTCRでジロ・デ・イタリアを制したトム・デュムランを招くなど威信を懸けた内容となった。
細身のフレームとフォーク、最上級のADVANCED SLグレードに用意されるインテグラルシートポストなど、歴代TCRのデザインコンセプトを強く引き継いでいる新型TCRだが、中身は完全なる別物。ロードカテゴリーマネージャーとして開発を主導したニクソン・ファン氏によれば、バイク全体での完成度を引き上げることを第一目標に据え、更に軽量化と剛性強化による重量剛性値の向上、そして待望のケーブル/ブレーキホースの内装化を含めた空力向上を叶えるべく、妥協なき開発を続けてきたという。
かつてないトータル設計でバイク全体をブラッシュアップ
プレゼンで最も力強く説明されたのが「システム・オプティマイゼーション」、つまりはバイクセットとしての完成度向上だ。新型TCRでは開発当初からフレームセットとホイール&タイヤ、ハンドルセットなど各開発チームが協業し、今までにないレベルでのトータル開発を実現。先行披露されていたカデックスブランドのMAX 40ホイールとRACE GCタイヤ、RACE INTEGRATED/AERO INTEGRATEDハンドルバーは、TCRと組み合わせるために生まれたものといっても過言ではないのだ。
フレームセット側で顕著なのはフロント周りの変化だろう。エアロロードのPROPELで新採用された上下1-1/2インチベアリング、かつD型断面コラムのOVERDRIVE AEROを導入し、内装ルーティングをTCRとして初採用したことは大きな話題だ。
ケーブルやブレーキホースに余裕を持たせつつ、ステム下側を這わせることでエアロ性能とメンテナンス性を両立している。専用ステム(CONTACT SLR/SL AEROLIGHTステム)こそ必要となるものの、より細身なD断面コラムを使う他社バイクより圧倒的に剛性に優れているとニクソン氏は胸を張る。
設計と製造工程の改善で重量を削ぎ、剛性を増す
歴代のTCRが重視してきた重量剛性比のさらなる強化も大きな開発ターゲットだ。既に軽量モデルとして名高いTCRをダイエットさせるために、開発チームはトップチューブからシートステー、つまりフレーム上部の表面積を2%削減。見た目上では、特にシートステーは左右が独立したままシートチューブへと繋がるデザインとなったことが顕著であり、後述するダウンチューブやフロントフォークの形状変更も大きく関わっている。
ただ軽くするのみならず、新型TCRではフォーククラウンとヘッドチューブ下側、ダウンチューブからBBにかけてフレーム形状を変化することで剛性を向上。更に、フォークやダウンチューブ、シートポストには、従来のティアドロップ断面を飛躍させ、より広い範囲のヨー角で一貫して空気抵抗を低減する新しい翼断面形状「トランケイテッド・エリプス(楕円の後部を切り落とした新しい翼型形状)」を採用。細身ながら剛性と空力性能を兼ね備え、かつ軽いという理想に可能な限り近づけたという。
そうした形状面での変化に加え、フレーム製造工程の進化も重量剛性値に大きく寄与した部分だ。従来からカーボン原糸を編み込む工程から自社で行うことで知られているジャイアントだが、最高級のADVANCED SLグレードではカーボンシートの切り出し工程を従来のレーザーカッティングから変更し、より正確に、より大きなカーボンシートを製造できる最先端の「コールドブレードカッティング」製法を新たに採用した。
1つのフレームあたりのカーボンシート数を10%減らし、シート同士の重なりを少なくすることで軽さへと繋げている。更に、従来3ピース構造だったフレームのフロント三角をワンピース構造とし、一つのブラダーで一括成型できるようになったことも、剛性を損なわずに軽量化を達成した要素の一つだという。
690g、6.4kg、-4.19ワット:史上最軽量、史上最速のTCR
結果的に新型TCRのADVANCED SLグレードでは、先代モデルからフレーム比較で70g以上を削減し、歴代TCR最軽量となる690g(Mサイズ)をマーク。カデックス40 MAXホイールとシマノDURA-ACEを装備した最上級完成車「TCR ADVANCED SL 0」では6.4kgを達成するなど、ペダルやコンピューター、ボトル類を装備しても6.8kgに収まるという圧倒的な高みへと到達している。
空力面の数値向上も顕著だ。PROPELを生み出し、今もなおジャイアントとパートナーシップを組むフランス・マニクールの風洞研究施設の数値によればフレームセットで2.28ワット(ADVANCED SL)、「TCR ADVANCED SL 0」完成車では4.19ワットを削減と、やはり空力面でも過去最速のTCRに仕上げられているという。
先代モデルで変更されたジオメトリーは継続され、タイヤクリアランスも28mmを基本としながら最大33mmまで対応するように微増している。あくまでオールラウンドに使いやすいことを想定しているためボトルとケージはノーマル。
3グレード、9バリエーションの新型TCRたち
フレームラインナップは「TCR ADVANCED SL」、「TCR ADVANCED PRO」、そして「TCR ADVANCED」という3シリーズ構成で従来と変わらず、SLグレードに2種類の完成車+フレームセット、PROグレードに3種類の完成車+フレームセット、そしてノーマルグレードに2種類の完成車という、合計9バリエーションでの発売となる。ジャイアントの持てる全てを投入した154万円の「TCR ADVANCED SL 0」完成車から、33万円という買い求めやすい価格を実現したシマノ105ワイドギアレシオ仕様の「TCR ADVANCED 2 KOM」まで、あらゆるニーズを満たすラインナップが揃っている。
シクロワイアードでは、台湾での100km以上に及ぶテストライドを経てのバイクインプレッションはもちろんのこと、カデックスやファクトリーについて、インタビューを通しながら深掘りした特集コンテンツをお届け予定。ご期待下さい。
グレード | フレーム | コンポーネント | ホイール | 税込価格 |
---|---|---|---|---|
ADVANCED SL 0 | Advanced SL-Grade | SHIMANO DURA ACE DI2 | CADEX MAX 40 | 1,540,000円 |
ADVANCED SL 1 | Advanced SL-Grade | SHIMANO ULTEGRA DI2 | GIANT SLR0 40 | 1,045,000円 |
ADVANCED SL FRAME SET | Advanced SL-Grade | - | - | 495,000円 |
ADVANCED SL TEAM FRAME SET | Advanced SL-Grade | - | - | 528,000円 |
ADVANCED PRO 0 | Advanced-Grade | SHIMANO ULTEGRA DI2 | GIANT SLR0 40 | 847,000円 |
ADVANCED PRO 1 | Advanced-Grade | SHIMANO 105 DI2 | GIANT SLR1 40 | 682,000円 |
ADVANCED PRO 2 | Advanced-Grade | SHIMANO 105 | GIANT SLR1 40 | 572,000円 |
ADVANCED PRO FRAME SET | Advanced-Grade | - | 308,000円 | |
ADVANCED 1 KOM | Advanced-Grade | SHIMANO 105 DI2 | GIANT P-R2 DISC | 429,000円 |
ADVANCED 2 KOM | Advanced-Grade | SHIMANO 105 | GIANT P-R2 DISC | 330,000円 |
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