サントス・ツアー・ダウンアンダー第5ステージは名坂ウィランガヒルを登る山頂フィニッシュ。Sイェーツやアラフィリップの攻撃に耐え、アタックを成功させたオスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)がプロ初勝利を掴んだ。



ウィランガヒルが登場する5日目を迎えたサントス・ツアー・ダウンアンダー photo:CorVos

ウィランガヒルが登場する第5ステージのコースプロフィール image:Tour Down Under

真夏のサントス・ツアー・ダウンアンダーは5日目にしてクイーンステージ(最難関ステージ)がやってきた。アデレード市街地にあるクリスティズビーチを出発し、平坦区間を経てウィランガヒル(全長3.6km/平均7.1%/最大14%)を登坂。下った後に再びウィランガヒルを駆け上がり、フィニッシュラインは頂上から200m先に引かれている。

大会を象徴するウィランガヒルが登場するのはマシュー・ホームズ(イギリス)が制し、リッチー・ポート(共に2022年に引退)が総合優勝を決めた2020年大会以来4年振り。レースは序盤からカスパー・ピーダスン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)やサムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)ら4名が逃げ集団を形成し、それをリーダーチームであるUAEチームエミレーツやジェイコ・アルウラーが中心となって追いかけた。

カスパー・ピーダスン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)が4名による逃げ集団 photo:CorVos

逃げを3分差で追うメイン集団 photo:CorVos

ウィランガヒルまで平坦区間が続くこともあり、プロトンには穏やかな雰囲気が漂う。しかし残り50km地点で総合3位につけるコービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)が脚を止めると、そのままレースを棄権。チームはその理由を「第2ステージから続く胃腸系の不調」と発表している。

3分で推移していたプロトンとのタイム差が2分を切った逃げ集団からピーダスンがアタックする。1度目のウィランガヒル手前、残り32km地点で単独先頭に立ったピーダスンだったが、残り23km地点でメイン集団が吸収。そしてQ36.5プロサイクリングに所属し、今大会はオーストラリアナショナルチームとして走るダミアン・ホーゾンがプロトン先頭でペースを作った。

前日まで大会を盛り上げたスプリンターが遅れていくなか、ホーゾンの背後から山岳賞ジャージを着るルーク・バーンズ(オーストラリアナショナルチーム)が飛び出す。その後ろに山岳ポイントで2位につけるヤルディ・ファンデルリー(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)が迫ったものの、バーンズが1度目のウィランガヒルを先頭で通過。山岳ジャージの確保に成功した。

2度めのウィランガヒルで牽引からペースを上げたクリス・ハーパー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:CorVos

一度下って2度目のウィランガヒルに入り、先頭でペースを握ったのは地元オーストラリア唯一のワールドチームであるジェイコ・アルウラーのクリス・ハーパー(オーストラリア)。その後ろにはエースのサイモン・イェーツ(イギリス)はもちろん、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)や総合リーダージャージを着るイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)の姿もあった。

集団を牽引するハーパーがフィニッシュまで残り2km地点で加速し、それに唯一オスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が追従する。しかしこの差をイネオス・グレナディアーズが縮め、人数が絞られた集団が追いつくと再びハーパーがシッティングのままスルスルと集団から抜け出す。それを今度はヴィスマ・リースアバイクが捉え、フィニッシュまで約600mでアタックしたイェーツの動きをきっかけにアタック合戦が幕開けた。

加速するイェーツには今大会好調のジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)やオンリー、アラフィリップがマークする一方で、重いギヤを踏むデルトロが遅れていく。そして残り300mを切ってイェーツが周りを見た隙を突いてアラフィリップがアタック。そのままウィランガヒルの頂上をトップ通過したものの、直後に背後についていたオンリーがアラフィリップを抜き去った。

強豪を退け、ウィランガヒルでプロ初勝利を飾ったオスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) photo:CorVos

急加速したオンリーに同じイギリス出身のスティーブン・ウィリアムズ(イスラエル・プレミアテック)とナルバエスが反応。しかしスピードに乗ったオンリーを追い抜くことはできず、フィニッシュラインを先頭で通過したオンリーが両手を拡げてプロ初勝利を喜んだ。

昨年DSMの下部チームから昇格し、金星を挙げた弱冠21歳のオンリー。「信じられない勝利。調子は良かったものの、強豪揃いのなかでどんな走りができるか分からなかった。チームが僕の勝利を信じ、ここ数日は僕に冷静さを与えてくれた。大会を象徴するウィランガヒルに僕の名前が刻まれることはこの上なくクールなことだ」と、プロ初勝利をワールドツアーのクイーンステージで飾ったオンリーはそう語った。

デルトロがトップから6秒遅れの区間8位でフィニッシュしたため、総合首位には区間2位で総合5位のウィリアムズが浮上。オンリーは同タイムの総合2位につけ、区間3位のナルバエスが総合でも3位に入っている。

6秒遅れでリーダージャージを失ったイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

勝利と共にヤングライダー賞ジャージを獲得したオスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) photo:CorVos

総合首位に浮上したスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos

翌日の大会最終日も山頂フィニッシュが待ち受ける。アデレード市内のアンレーからマウント・ロフティ(距離3.8km/平均6.%/最大20%)を計3度登り、頂上に引かれたフィニッシュラインにて総合優勝者が決定する。
サントス・ツアー・ダウンアンダー2024第5ステージ
1位 オスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) 2:52:23
2位 スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)
3位 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)
4位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) +0:03
5位 バルト・レメン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)
6位 サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)
7位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) +0:06
8位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)
9位 ダミアン・ホーゾン(オーストラリアナショナルチーム) +0:12
10位 フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド、UAEチームエミレーツ) +0:20
個人総合成績
1位 スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック) 16:08:18
2位 オスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
3位 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) +0:05
4位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)
5位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) +0:13
6位 バルト・レメン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)
7位 サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)
8位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) +0:16
9位 ダミアン・ホーゾン(オーストラリアナショナルチーム) +0:22
10位 アクセル・マリオー(フランス、コフィディス) +0:24
その他の特別賞
ポイント賞 サム・ウェルスフォード(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
山岳賞 ルーク・バーンズ(オーストラリアナショナルチーム)
ヤングライダー賞 オスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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