男子チャンピオンレース200kmのレースは、残り10kmからのアタック合戦の末、風間翔眞(シマノレーシング)と山本大喜(JCLチーム右京)の2人の勝負となり、山本がツール・ド・おきなわ初優勝を決めた。女子国際ロードレースとあわせて詳報レポート。



ランタンの灯りでスタートサインする山本大喜(JCLチーム右京) photo:Satoru Kato
ドイツのサリス・ルーヴィ・ザウアーラント・チーム photo:Makoto AYANO


街頭が消えきらない早朝の名護をスタートしていく男子チャンピオンレース photo:Satoru Kato

今年は海外チームを招聘してUCI1.2クラスのワンデーレース本来の姿を取り戻したツール・ド・おきなわ男子チャンピオンロードレース。未明から降り続く雨はスタート時刻の朝6時45分になってもやまず、強風が吹き付ける海岸沿いでは寒さを感じるほどの中、国内外計14チーム68名がスタートした。

リアルスタート直後、サリス・ルーヴィ・ザウアーラント・チームが一気にペースを上げる photo:Satoru Kato

およそ30kmにわたるアタック合戦ののち、4名の先行が容認される。さらに2名が追走して合流し、6名の先頭集団が形成される。メンバーは、ジャスティン・デハート(Wielerploeg Groot Amsterdam)、レナート・ヴォージュ(サリス・ルーヴィ・ザウアーラント・チーム)、フェン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)、孫崎大樹(キナンレーシングチーム)、白尾雄大(さいたま那須サンブレイブ)、リー・ティンウェイ(タイペイシティチーム)。

フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)を先頭に普久川ダムへの登りに入った先頭集団 photo:Satoru Kato

メイン集団との差は、50km付近で4分、1回目の普久川ダムへの登りでは10分以上まで開く。クース・ジェロンカーズ(Wielerploeg Groot Amsterdam)とエンクタイヴァン・ボローエルデン(レバンテフジ静岡)の2名が2分前後の差で追走するものの、先頭集団には追いつけない。

2回目の山岳賞に向けて単独先行する孫崎大樹(キナンレーシングチーム) photo:Satoru Kato

2回目の普久川ダムへの登りに入ったメイン集団 photo:Satoru Kato

100kmを過ぎ、2回目の普久川ダムへの登りを前にメイン集団がペースアップ。各チームが協力し、登りの入り口で7分差まで縮める。デハートが遅れて5名になった先頭集団では、1回目に続き2回目の山岳賞を孫崎が獲得。下り切ったところでフェンが遅れて4名となり、東海岸を南下していく。

孫崎大樹(キナンレーシングチーム)ら4名になった先頭集団 photo:Satoru Kato

残り40km付近 増田成幸(JCLチーム右京)がメイン集団を牽引 photo:Satoru Kato

残り40kmを前に単独で追走に出た寺田吉騎(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

残り40km、先頭集団とメイン集団との差が5分未満になったところで、寺田吉騎(シマノレーシング)が単独追走。10km以上に及ぶ追走で4名を捉えるも、直後にメイン集団も続いて残り20kmを前に全ての逃げが吸収される。

今年は曇り空と雨と北風のツール・ド・おきなわ photo:Satoru Kato

残り30km過ぎ 新たに形成された4名の先頭集団 photo:Satoru Kato

残り10km 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)を先頭に追走のペースを上げるメイン集団 photo:Satoru Kato

その直後、山本元喜(キナンレーシングチーム)の飛び出しをきっかけに、山本大喜(JCLチーム右京)、入部正太朗(シマノレーシング)、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)の4名が抜け出す。メイン集団との差は30秒前後まで開くものの、残り10kmから始まる羽地ダムへの登りで差が徐々に縮まって吸収される。

羽地ダムへの登り 粘るフランシスコ・マンセボら先頭集団の直後に追走が迫る photo:Satoru Kato

残り5kmを前にアタックするネイサン・アール(JCLチーム右京) photo:Satoru Kato

残り7km付近でネイサン・アール(JCLチーム右京)がアタックするが、残り5kmを前に後続が追いつく。その直後、風間翔眞(シマノレーシング)がアタック。これに山本大喜が追従し、2名が先行して残り2km付近から始まる長い下りへ。バス・ファンベル(Wielerploeg Groot Amsterdam)が単独追走するが追いつかず、勝負は風間と山本大喜のスプリントへ。

残り100m、山本大喜が風間の前に出ると、一気に差を広げてフィニッシュ。右腕を何度も突き出し、喜びを爆発させた。

残り100mを切って前に出る山本大喜(JCLチーム右京) photo:Satoru Kato

優勝した山本大喜(JCLチーム右京)が何度も右腕を突き出して雄叫びをあげる photo:Satoru Kato

2位は風間翔眞(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

山本大喜 コメント
「(フランシスコ・)マンセボ選手と入部(正太朗)さんと兄(山本元喜)と4人で逃げたけれど、最後の登りで捕まってまた勝負がかかるだろうと思っていて、タイム差もあまり開かなかったので出来るだけ無駄脚使わないようにして走った。追いつかれたカウンターでネイサンが行ってくれて、脚は残っていたので本当は自分がアタックしたかったけれど、マンセボ選手と(ベンジャミン・)ダイボール選手をマークしてネイサンのフォローをしていた。

でもあまり差が開かなくて、登り切ったあたりで捕まってしまったので、どうしようかと思っていたところで風間選手が行ったのでついて行った。下りが速くて離されたけれど、5秒くらいの差だったので淡々と踏んでいれば追いつくと思い、残り1kmくらいで追いついた。そこからはスプリントに向けて備えていた」

男子チャンピオンレース 表彰式 photo:Satoru Kato

「今年はツール・ド・熊野で勝って、全日本で勝って、でも全日本チャンピオンになると見られる立場になるからなかなか勝てないことが多いけれど、力ずくで勝負すれば勝てるところを見せつけたいと思っていた。それをしっかり出来て良かった。来年はチームの活動が大きく変わるが、日本チャンピオンジャージを着て日本人でも戦えるところを見せられるようにしたい」
ツール・ド・おきなわ男子チャンピオンレース 結果(200km)
1位 山本大喜(JCLチーム右京) 5時間14分42秒
2位 風間翔眞 (シマノレーシング) +1秒
3位 バス・ファンベル(Wielerploeg Groot Amsterdam、オランダ) +5秒
4位 フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ、スペイン) +15秒
5位 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
6位 岡本 隼 (愛三工業レーシングチーム)
7位 ジュリアン・ボレッシュ(サリス・ルーヴィ・ザウアーラント・チーム、ドイツ)
8位 吉岡直哉(さいたま那須サンブレイブ)
9位 中井唯晶(シマノレーシング)
10位 トマ・ルバ(キナンレーシングチーム、フランス)
男子チャンピオンレース山岳賞 孫崎大樹(キナンレーシングチーム) photo:Satoru Kato
男子チャンピオンレース新人賞 ジュリアン・ボレッシュ(サリス・ルーヴィ・ザウアーラント・チーム) photo:Satoru Kato


山岳賞 孫崎大樹(キナンレーシングチーム)
新人賞 ジュリアン・ボレッシュ(サリス・ルーヴィ・ザウアーラント・チーム、ドイツ)



女子国際ロードレース ナ・アルムが優勝

渡部春雅(明治大学)、川口 うらら(TEAM TATSUNO)、金子広美(イナーメ信濃山形・バイクサンド・R×L)、手塚悦子(IMEレーシング)が普久川ダムの登りを行く photo:Makoto AYANO

普久川ダムの上りを行く木下友梨奈(鈴なり妖怪 鈴) photo:Makoto AYANO
普久川ダムの上りを行く與那嶺恵理(ヒューマンパワード・ヘルス) photo:Makoto AYANO


100kmで行われた女子国際ロードレース。普久川ダムの登りで昨年優勝の金子広美(イナーメ信濃山形・バイクサンドR×L)がペースアップして人数を絞る。全日本チャンピオンの與那嶺恵理(ヒューマンパワード・ヘルス)はここで遅れ、数名が先行する。

女子 4名でのスプリント勝負をナ・アルム(High Ambition 2022 jp)が制した photo:Satoru Kato

残り10km、羽地ダムへの登りまでに金子、木下友梨奈(鈴なり妖怪 鈴)、手塚悦子(IMEレーシング)ら3名が先行し、ナ・アルム(High Ambition 2022 jp)が追いついて4名に。最後はスプリント勝負となり、ナが優勝した。

女子国際ロードレース 表彰式 photo:Satoru Kato

優勝 ナ・アルム コメント
「ツール・ド・おきなわは初めて走ったが、日本選手がとても強くて、登りも速くてキツいレースだった。最後のスプリントは自信は無かったけれど、自分の距離の残り200mから150mから仕掛けた」

女子国際ロードレース 昨年優勝の金子広美(イナーメ信濃山形バイクサンドR×L)は2位 photo:Satoru Kato

2位 金子広美 コメント
「ダンシングするたびに雨で後輪が滑る感じだったので、落車しなくて本当に良かった。鹿児島国体に照準を絞っていたので、ツール・ド・おきなわはどれだけ走れるだろうと思っていた。連覇は出来なかったが、上出来だと思う。

来年は選手を続けつつ、後進の育成にも関わっていきたい。強くなりそうと思っていた選手も壁に当たって伸び悩んで辞めてしまった人も多いので、私の経験を元にサポートしながら、強い選手を育てたい」
女子国際ロードレース 結果(100km)
1位 ナ・アルム(High Ambition 2020 jp.、韓国 2時間58分11秒
2位 金子広美(イナーメ信濃山形・バイクサンドR×L)  
3位 木下友梨奈(鈴なり妖怪 鈴)

text:Satoru Kato
photo:Makoto AYANO, Satoru Kato

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