2023/09/14(木) - 08:30
ユンボ・ヴィスマが最大勾配24%の超級山岳アングリルを制圧。ヴィンゲゴーとフィニッシュしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がブエルタ第17ステージを制し、遅れながらも粘ったクスが区間3位でマイヨロホを死守した。
9月13日(水)第17ステージ
リバデセリャ〜アルト・デ・アングリル 124.4km(山岳/山頂フィニッシュ)
アストゥリアス州のリバデセリャから「魔の山」とも呼ばれるアングリルへ。ブエルタ第18ステージは出発地点から徐々に標高を上げていき、残り56.4km地点から1級山岳コラディエラ峠(距離7.8km/平均7.1%)を登坂。下った先にある中間スプリントを経て、今度は登坂距離5.4kmながら平均勾配9.2%の1級山岳コルダル峠を駆け上がる。
そして8.7%のダウンヒルをクリアした選手たちは、「パンテオン(万神殿)」など様々な異名を持つ超級山岳アングリル峠に臨む。平均勾配こそ9.9%だが、これは序盤の緩斜面区間(とは言っても10%前後)と最後400mの下り区間を含む数字。終盤6.5kmからは度々20%オーバーで、平均約14%、最大24%というプロ選手でも蛇行して登るほどの激坂区間が待ち受ける。
この日が29歳の誕生日であるセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)を先頭に、150名になった選手たちがスタートを切る。すると前日に先頭から14分遅れでフィニッシュし、逃げを容認されるタイム差と脚を整えたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が飛び出す。平均50km/hを超えるハイスピードで繰り広げられたアタック合戦の末、白地に青水玉模様のマイヨモンターニャを着るエヴェネプールら11名の逃げ集団が形成された。
その中には今大会エヴェネプールの右腕を担うマティア・カッタネオ(イタリア、スーダル・クイックステップ)をはじめ、クリス・ハミルトン(オーストラリア、DSM・フィルメニッヒ)や元アメリカ王者ローレンス・ワーバス(AG2Rシトロエン)の姿も。しかし最初の1級山岳コラディエラ峠(距離7.8km/平均7.1%)の麓で、早くも先頭はエヴェネプールとカッタネオ、そしてグランツールデビューの21歳ロレンツォ・ジェルマーニ(イタリア、グルパマFDJ)という3名に絞られた。
ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)の牽引するメイン集団に対し、1分44秒差で山岳に突入した逃げ集団。頂上手前4kmでジェルマーニが遅れ、カッタネオのアシストを受けたエヴェネプールが先頭で頂上に到達。山岳賞のポイント(10点)を上積みした。
一方、登りに入ったプロトンでは総合6位(3分28秒遅れ)のマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が仕掛ける。総合ジャンプアップを狙うソレルは、逃げから遅れた選手をパスしながら1分10秒差で先頭を行くエヴェネプールを目指した。
続く1級山岳コルダル峠(距離5.4km/平均9.2%)の麓でカッタネオに感謝を告げたエヴェネプールは、単独で登坂を開始。すると2分50秒遅れで山岳に入ったプロトンでは、総合7位(4分12秒遅れ)のミケル・ランダ(スペイン)のためにバーレーン・ヴィクトリアスが先頭に人数を集め、ソレルとの差を縮めていった。
そして先頭では狙い通りエヴェネプールが頂上をトップ通過し、この日だけで20ポイントを獲得。その後は前日に「狙うかどうかは分からない」と語ったステージ優勝に向け約8kmのダウンヒルをこなし、いよいよこの日のメインディッシュである超級山岳アングリル峠(距離12.4km/平均9.9%)に足を踏み入れた。
山岳の手前でソレルを捉えたメイン集団は、バーレーン・ヴィクトリアスによる牽引のまま1分20秒遅れでアングリルに入る。そして順調に人数が絞られていくプロトンから、22%の勾配区間でロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)がアタック。このペースアップによりエヴェネプールが捕まり、バルデの攻撃を潰したワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)がここから驚異的な牽引を見せた。
前日のステージで3位に入り、好調ぶりを発揮するプールスのペースに総合4位のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が遅れ、また残り4.7kmで総合5位のエンリク・マス(スペイン、モビスター)も脱落する。そのため先頭はユンボのトリプルエースとバーレーンの3名(プールス、ランダ、ブイトラゴ)となり、2チームによる6名が徐々に霧深くなっていく頂上を目指した。
プールスのハイペースによって先にチームメイトのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)が遅れ、それでも35歳のベテランは変わらず高出力で踏み続ける。そして最大勾配24%の区間が訪れる残り3km地点に入り、ログリッチがシッティングのまま加速。それにランダとプールスは遅れ、大歓声に包まれるアングリルでユンボ・ヴィスマの3名が先頭に立った。
先頭で得意な急勾配を進むログリッチの後ろにヴィンゲゴーがつく一方で、クスが遅れていく。それをクスが無線で伝えたのを合図とするように、ログリッチとヴィンゲゴーがクスの側から離れていった。
その後もログリッチはヴィンゲゴーに先頭を譲ることなく、一定のペースで踏み続けてアングリル頂上に到達。2020年にマイヨロホを失った苦い経験を払拭するように、ログリッチが短い下りを経てフィニッシュラインを先頭で通過。区間2勝目と共にヴィンゲゴーとのワンツーフィニッシュを決めた。
一方のクスはランダに追いつかれると、ランダのペースメイクを利用するように登坂する。そしてクスはフィニッシュ手前でランダを抜いて3位に入り、トップから19秒遅れでフィニッシュ。ボーナスタイム-4秒を加算した結果、ヴィンゲゴーと8秒差でマイヨロホのキープに成功した。
「前回(2020年)よりも良い登坂をすることができた。ほとんど戦術はなく、加速した地点は急勾配だったに加え、ペースが落ちていたので自分のテンポに切り替えた。彼(クス)が遅れたのは知っていたが、(振り落とすのではなく)あくまでも自分のテンポを守った結果だ。彼には”諦めず、自分を信じて踏み続けろ”と伝えた」とログリッチは、今大会最難関山岳であるアングリルでの勝利をそう振り返った。
終盤で遅れながらも総合首位を守ったクスは、「フィニッシュラインを通過した時はマイヨロホを失ったと思った。その瞬間はベストを尽くしたので悔しさもなかったが、マイヨロホがまだ僕のものであると聞き驚いたよ。最後はスプリントするのを躊躇い、ランダには申し訳ない気持ちがあったものの、マイヨロホの保持のためにスプリントしたんだ。とても良い誕生日になったよ」と語り、この日も変わらぬ笑顔を見せた。
9月13日(水)第17ステージ
リバデセリャ〜アルト・デ・アングリル 124.4km(山岳/山頂フィニッシュ)
アストゥリアス州のリバデセリャから「魔の山」とも呼ばれるアングリルへ。ブエルタ第18ステージは出発地点から徐々に標高を上げていき、残り56.4km地点から1級山岳コラディエラ峠(距離7.8km/平均7.1%)を登坂。下った先にある中間スプリントを経て、今度は登坂距離5.4kmながら平均勾配9.2%の1級山岳コルダル峠を駆け上がる。
そして8.7%のダウンヒルをクリアした選手たちは、「パンテオン(万神殿)」など様々な異名を持つ超級山岳アングリル峠に臨む。平均勾配こそ9.9%だが、これは序盤の緩斜面区間(とは言っても10%前後)と最後400mの下り区間を含む数字。終盤6.5kmからは度々20%オーバーで、平均約14%、最大24%というプロ選手でも蛇行して登るほどの激坂区間が待ち受ける。
この日が29歳の誕生日であるセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)を先頭に、150名になった選手たちがスタートを切る。すると前日に先頭から14分遅れでフィニッシュし、逃げを容認されるタイム差と脚を整えたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が飛び出す。平均50km/hを超えるハイスピードで繰り広げられたアタック合戦の末、白地に青水玉模様のマイヨモンターニャを着るエヴェネプールら11名の逃げ集団が形成された。
その中には今大会エヴェネプールの右腕を担うマティア・カッタネオ(イタリア、スーダル・クイックステップ)をはじめ、クリス・ハミルトン(オーストラリア、DSM・フィルメニッヒ)や元アメリカ王者ローレンス・ワーバス(AG2Rシトロエン)の姿も。しかし最初の1級山岳コラディエラ峠(距離7.8km/平均7.1%)の麓で、早くも先頭はエヴェネプールとカッタネオ、そしてグランツールデビューの21歳ロレンツォ・ジェルマーニ(イタリア、グルパマFDJ)という3名に絞られた。
ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)の牽引するメイン集団に対し、1分44秒差で山岳に突入した逃げ集団。頂上手前4kmでジェルマーニが遅れ、カッタネオのアシストを受けたエヴェネプールが先頭で頂上に到達。山岳賞のポイント(10点)を上積みした。
一方、登りに入ったプロトンでは総合6位(3分28秒遅れ)のマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が仕掛ける。総合ジャンプアップを狙うソレルは、逃げから遅れた選手をパスしながら1分10秒差で先頭を行くエヴェネプールを目指した。
続く1級山岳コルダル峠(距離5.4km/平均9.2%)の麓でカッタネオに感謝を告げたエヴェネプールは、単独で登坂を開始。すると2分50秒遅れで山岳に入ったプロトンでは、総合7位(4分12秒遅れ)のミケル・ランダ(スペイン)のためにバーレーン・ヴィクトリアスが先頭に人数を集め、ソレルとの差を縮めていった。
そして先頭では狙い通りエヴェネプールが頂上をトップ通過し、この日だけで20ポイントを獲得。その後は前日に「狙うかどうかは分からない」と語ったステージ優勝に向け約8kmのダウンヒルをこなし、いよいよこの日のメインディッシュである超級山岳アングリル峠(距離12.4km/平均9.9%)に足を踏み入れた。
山岳の手前でソレルを捉えたメイン集団は、バーレーン・ヴィクトリアスによる牽引のまま1分20秒遅れでアングリルに入る。そして順調に人数が絞られていくプロトンから、22%の勾配区間でロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)がアタック。このペースアップによりエヴェネプールが捕まり、バルデの攻撃を潰したワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)がここから驚異的な牽引を見せた。
前日のステージで3位に入り、好調ぶりを発揮するプールスのペースに総合4位のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が遅れ、また残り4.7kmで総合5位のエンリク・マス(スペイン、モビスター)も脱落する。そのため先頭はユンボのトリプルエースとバーレーンの3名(プールス、ランダ、ブイトラゴ)となり、2チームによる6名が徐々に霧深くなっていく頂上を目指した。
プールスのハイペースによって先にチームメイトのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)が遅れ、それでも35歳のベテランは変わらず高出力で踏み続ける。そして最大勾配24%の区間が訪れる残り3km地点に入り、ログリッチがシッティングのまま加速。それにランダとプールスは遅れ、大歓声に包まれるアングリルでユンボ・ヴィスマの3名が先頭に立った。
先頭で得意な急勾配を進むログリッチの後ろにヴィンゲゴーがつく一方で、クスが遅れていく。それをクスが無線で伝えたのを合図とするように、ログリッチとヴィンゲゴーがクスの側から離れていった。
その後もログリッチはヴィンゲゴーに先頭を譲ることなく、一定のペースで踏み続けてアングリル頂上に到達。2020年にマイヨロホを失った苦い経験を払拭するように、ログリッチが短い下りを経てフィニッシュラインを先頭で通過。区間2勝目と共にヴィンゲゴーとのワンツーフィニッシュを決めた。
一方のクスはランダに追いつかれると、ランダのペースメイクを利用するように登坂する。そしてクスはフィニッシュ手前でランダを抜いて3位に入り、トップから19秒遅れでフィニッシュ。ボーナスタイム-4秒を加算した結果、ヴィンゲゴーと8秒差でマイヨロホのキープに成功した。
「前回(2020年)よりも良い登坂をすることができた。ほとんど戦術はなく、加速した地点は急勾配だったに加え、ペースが落ちていたので自分のテンポに切り替えた。彼(クス)が遅れたのは知っていたが、(振り落とすのではなく)あくまでも自分のテンポを守った結果だ。彼には”諦めず、自分を信じて踏み続けろ”と伝えた」とログリッチは、今大会最難関山岳であるアングリルでの勝利をそう振り返った。
終盤で遅れながらも総合首位を守ったクスは、「フィニッシュラインを通過した時はマイヨロホを失ったと思った。その瞬間はベストを尽くしたので悔しさもなかったが、マイヨロホがまだ僕のものであると聞き驚いたよ。最後はスプリントするのを躊躇い、ランダには申し訳ない気持ちがあったものの、マイヨロホの保持のためにスプリントしたんだ。とても良い誕生日になったよ」と語り、この日も変わらぬ笑顔を見せた。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第17ステージ
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 3:15:56 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +0:19 |
4位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
5位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:44 |
6位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:58 |
7位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:20 |
8位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +1:42 |
10位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +1:43 |
26位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +8:24 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 60:34:21 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:08 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:08 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +4:00 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:16 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +4:30 |
7位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +6:43 |
8位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +7:38 |
9位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +9:26 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +11:26 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 228pts |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 152pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 120pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 91pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 51pts |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | 39pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 60:38:21 |
2位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +2:43 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +5:26 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 181:09:29 |
2位 | UAEチームエミレーツ | +24:35 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | +31:01 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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