2023/09/13(水) - 08:30
平坦路から2級山岳に登り詰めるブエルタ第16ステージは、山岳序盤で飛び出したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)が独走。今大会2勝目と総合でも2位に浮上し、アングリル決戦を前にマイヨロホのセップ・クスとの差を29秒まで縮めた。
9月12日(火)第16ステージ
リンクレス・プラヤ〜べヘス 120.1km(平坦/山頂フィニッシュ)
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャの第3週目は、平坦路から2級山岳を登り詰める120.1kmのショートステージで再始動する。ピレネー山脈での厳しい戦いを残り越え、休息日に身体を休めた選手たちはビスケー湾に面したカンタブリア州リンクレス・プラヤを出発。蛇行しながら沿岸を西に進み、アストゥリアスとの州境の街べヘスを目指す。
93.3km地点にある中間スプリントを通過後、115.3km地点までは平坦路。そこから駆け上がる2級山岳べヘスは登坂距離4.8km/平均勾配8.8%と難易度は高く、登り口から14%の勾配が登場。一度3.8%と緩やかになった後、最大15%が現れる。
胃腸炎と発熱により未出走となったダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)とウェレイハゴス・バーへ(エチオピア、ジェイコ・アルウラー)を除く152名が並んだスタート地点は、雨。しかし逃げを目指す選手たちはウェットな路面でも果敢にアタックを繰り返し、特にポイント賞ジャージを着るカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)は逃げを目指すほぼ全ての動きに反応した。
グローブスが見事乗ることに成功した10名の逃げ集団には、第2ステージの勝者アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー)やロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)などが入る。しかしこの有力クライマーが揃う先頭グループに対し、選手を送り込むことができなかったイネオス・グレナディアーズが中心となりメイン集団を牽引。残り78km地点で逃げが引き戻され、レースは振り出しに戻った。
しかし翌日から始まる山岳2連戦を前に、何とかポイントを積み重ねたいグローブスは諦めない。今度はマティア・カッタネオ(イタリア、スーダル・クイックステップ)やマックス・プール(イギリス、DSM・フィルメニッヒ)などが形成した6名の集団に入り、プロトンではユンボ・ヴィスマが牽引を開始。そのためレースはスタートから60kmを過ぎてようやく落ち着いた。
時折ビスケー湾の絶景を臨んだ逃げの6名は1分のリードを得たものの、ステージ優勝を狙うユンボは、それ以上のタイム差を許さないタイトなコントロールを披露。そして残り26.8km地点に設定された中間スプリントをグローブスがトップ通過し、マイヨプントスのリードを20ポイント拡大というこの日最大の目標を達成した。
逃げ続けるジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)らに対し、グローブスの戻ったプロトンではルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)が落車。現役最後のブエルタを走るサンチェスは、地面に打ち付けた左の腹部を押さえながらも何とか完走を果たしている。
小雨が再び降り出すなか、ユンボやボーラ・ハンスグローエがトレインを並べるプロトンは残り10km地点で逃げを捉える。そしてマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)に代わり、山岳アシストの重責を担うアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ユンボ・ヴィスマ)の牽引で2級山岳べヘス(距離4.8km/平均勾配8.8%)に突入。一気に平均勾配が10.8%まで上がる序盤で、ヴァルテルの高速牽引により集団はあっという間に30名弱に絞られた。
総合4位のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)やワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)が集団後方から番手を上げるなか、残り4km地点でヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がアタック。この鋭い飛び出しにチームメイトのクスやプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を除く総合上位陣は反応できず、UAEはフィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド)に単独での追走を託す。
しかし第13ステージで自身初のブエルタ区間優勝を飾ったヴィンゲゴーのペースは強烈で、フィッシャーブラックに差を詰めることすら許さない。そしてヴィンゲゴーはジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が牽引する追走集団に対し、そのリードを1分まで拡大した。
一発のアタックで独走体制を築いたヴィンゲゴーは最大15%の区間も安定したペダリングでクリアし、フラムルージュ(残り1km)を通過。その後方では総合2位のログリッチがアタックし、アユソとマークするクスを引き離すシーンも。しかしエンリク・マス(スペイン、モビスター)がログリッチを捉え、それにアユソが食らいつく一方で、クスは少し離された。
そして最後までシッティングで登坂したヴィンゲゴーは、ガッツポーズをすることなくフィニッシュラインを通過。超級山岳トゥールマレーに続く区間2勝目を、ツール・ド・フランス覇者が静かに喜んだ。
2位にはフィッシャーブラックが入り、プールスが3位でフィニッシュ。そして総合上位勢はアユソとマス、ログリッチとアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が1分1秒差でレースを終え、クスはそれから4秒遅れとライバルとの差を最小限に留めた。
この結果ヴィンゲゴーはログリッチを抜き総合2位に浮上。マイヨロホを守ったクスとのタイム差を1分37秒から29秒差まで縮めている。
「この勝利が素直に嬉しい。今朝、僕の親友に関する悲しいニュースが入ってきた。彼のためにも勝利が欲しかった。その後、彼は危機は脱し、僕やチームはいま安堵に包まれている」とヴィンゲゴーは、この日の朝に自宅のあるオランダで自ら運転する自動車で事故を起こし、一時昏睡状態に陥ったナータン・ファンホーイドンク(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)について言及。また総合2位に浮上したことを聞かれると「いまはただこの勝利を祝いたい」と語った。
ファンホーイドンクの事故や選手の詳細コメントについては別記事にてお伝えします。
9月12日(火)第16ステージ
リンクレス・プラヤ〜べヘス 120.1km(平坦/山頂フィニッシュ)
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャの第3週目は、平坦路から2級山岳を登り詰める120.1kmのショートステージで再始動する。ピレネー山脈での厳しい戦いを残り越え、休息日に身体を休めた選手たちはビスケー湾に面したカンタブリア州リンクレス・プラヤを出発。蛇行しながら沿岸を西に進み、アストゥリアスとの州境の街べヘスを目指す。
93.3km地点にある中間スプリントを通過後、115.3km地点までは平坦路。そこから駆け上がる2級山岳べヘスは登坂距離4.8km/平均勾配8.8%と難易度は高く、登り口から14%の勾配が登場。一度3.8%と緩やかになった後、最大15%が現れる。
胃腸炎と発熱により未出走となったダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)とウェレイハゴス・バーへ(エチオピア、ジェイコ・アルウラー)を除く152名が並んだスタート地点は、雨。しかし逃げを目指す選手たちはウェットな路面でも果敢にアタックを繰り返し、特にポイント賞ジャージを着るカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)は逃げを目指すほぼ全ての動きに反応した。
グローブスが見事乗ることに成功した10名の逃げ集団には、第2ステージの勝者アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー)やロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)などが入る。しかしこの有力クライマーが揃う先頭グループに対し、選手を送り込むことができなかったイネオス・グレナディアーズが中心となりメイン集団を牽引。残り78km地点で逃げが引き戻され、レースは振り出しに戻った。
しかし翌日から始まる山岳2連戦を前に、何とかポイントを積み重ねたいグローブスは諦めない。今度はマティア・カッタネオ(イタリア、スーダル・クイックステップ)やマックス・プール(イギリス、DSM・フィルメニッヒ)などが形成した6名の集団に入り、プロトンではユンボ・ヴィスマが牽引を開始。そのためレースはスタートから60kmを過ぎてようやく落ち着いた。
時折ビスケー湾の絶景を臨んだ逃げの6名は1分のリードを得たものの、ステージ優勝を狙うユンボは、それ以上のタイム差を許さないタイトなコントロールを披露。そして残り26.8km地点に設定された中間スプリントをグローブスがトップ通過し、マイヨプントスのリードを20ポイント拡大というこの日最大の目標を達成した。
逃げ続けるジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)らに対し、グローブスの戻ったプロトンではルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)が落車。現役最後のブエルタを走るサンチェスは、地面に打ち付けた左の腹部を押さえながらも何とか完走を果たしている。
小雨が再び降り出すなか、ユンボやボーラ・ハンスグローエがトレインを並べるプロトンは残り10km地点で逃げを捉える。そしてマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)に代わり、山岳アシストの重責を担うアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ユンボ・ヴィスマ)の牽引で2級山岳べヘス(距離4.8km/平均勾配8.8%)に突入。一気に平均勾配が10.8%まで上がる序盤で、ヴァルテルの高速牽引により集団はあっという間に30名弱に絞られた。
総合4位のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)やワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)が集団後方から番手を上げるなか、残り4km地点でヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がアタック。この鋭い飛び出しにチームメイトのクスやプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を除く総合上位陣は反応できず、UAEはフィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド)に単独での追走を託す。
しかし第13ステージで自身初のブエルタ区間優勝を飾ったヴィンゲゴーのペースは強烈で、フィッシャーブラックに差を詰めることすら許さない。そしてヴィンゲゴーはジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が牽引する追走集団に対し、そのリードを1分まで拡大した。
一発のアタックで独走体制を築いたヴィンゲゴーは最大15%の区間も安定したペダリングでクリアし、フラムルージュ(残り1km)を通過。その後方では総合2位のログリッチがアタックし、アユソとマークするクスを引き離すシーンも。しかしエンリク・マス(スペイン、モビスター)がログリッチを捉え、それにアユソが食らいつく一方で、クスは少し離された。
そして最後までシッティングで登坂したヴィンゲゴーは、ガッツポーズをすることなくフィニッシュラインを通過。超級山岳トゥールマレーに続く区間2勝目を、ツール・ド・フランス覇者が静かに喜んだ。
2位にはフィッシャーブラックが入り、プールスが3位でフィニッシュ。そして総合上位勢はアユソとマス、ログリッチとアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が1分1秒差でレースを終え、クスはそれから4秒遅れとライバルとの差を最小限に留めた。
この結果ヴィンゲゴーはログリッチを抜き総合2位に浮上。マイヨロホを守ったクスとのタイム差を1分37秒から29秒差まで縮めている。
「この勝利が素直に嬉しい。今朝、僕の親友に関する悲しいニュースが入ってきた。彼のためにも勝利が欲しかった。その後、彼は危機は脱し、僕やチームはいま安堵に包まれている」とヴィンゲゴーは、この日の朝に自宅のあるオランダで自ら運転する自動車で事故を起こし、一時昏睡状態に陥ったナータン・ファンホーイドンク(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)について言及。また総合2位に浮上したことを聞かれると「いまはただこの勝利を祝いたい」と語った。
ファンホーイドンクの事故や選手の詳細コメントについては別記事にてお伝えします。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第16ステージ結果
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 2:38:23 |
2位 | フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド、UAEチームエミレーツ) | +0:43 |
3位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:49 |
4位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | +0:55 |
5位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +1:01 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
7位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
8位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
9位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:05 |
10位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | |
11位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:09 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 57:18:10 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:29 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:33 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +2:33 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +3:02 |
6位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +3:28 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:12 |
8位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +4:58 |
9位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +5:38 |
10位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +8:43 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 228pts |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 135pts |
3位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | 111pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 71pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 41pts |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | 39pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 57:20:43 |
2位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +3:05 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +6:10 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 171:21:22 |
2位 | UAEチームエミレーツ | +11:14 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | +19:02 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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