2023/07/17(月) - 07:16
大集団の逃げに乗ったワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)が、35歳にして自身初のステージ優勝。一方でマイヨジョーヌ争いはポガチャルのアタックが実らず、ヴィンゲゴーとタイム差なしでツール第15ステージを終えている。
第2週目の最終日、第15ステージが今大会最後の山頂フィニッシュとなる。逃げグループの形成を誘う30km付近のカテゴリーのつかない丘を越え、最初に挑む1級山岳フォルクラ・ド・モンマ(距離7.2km/平均7.3%)から獲得標高差4,400m超えのステージは本格的に幕を開ける。
その後1級山岳クロワ・フリ(距離11.3km/平均7%)と3級山岳を立て続けにクリアし、最終山岳の直前に立ちはだかる最大勾配17%の激坂、2級山岳アムラン(距離2.7km/平均10.9%)を駆け上がる。そしてフィニッシュまで残り7km地点から1級山岳サンジェルヴェ・モンブランの登りが始まり、頂上に向けて徐々に上がる勾配は平均7.7%(フィニッシュ手前は10.1%)と易しくない。
前日のステージでは落車で7名がレースを去り、この日もその影響でダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が脳震盪を理由に棄権を選んだ。そのため157名となった選手たちがMTBではお馴染みの地レ・ジェ・レ・ポート・デュ・ソレイユを出発。すると、この日もスタート直後から逃げを目指したフルガス(全力)の争いが繰り広げられた。
まずはマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)ら積極的に動き、30名を超える大きな逃げ集団が形成される。そしてカテゴリーのつかない登坂距離10kmの登りでジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・カザフスタン)が飛び出した。
先頭の2人に1分差、追走する逃げ集団に30秒差を許したメイン集団ではセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)が写真を撮ろうと手を伸ばした観客と衝突。落車したクスは集団前方を走行していたこともあり、チームメイトのナータン・ファンホーイドンク(ベルギー)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)ら後続選手を巻き込む。しかし幸いにもリタイア者はなく、クスを含めた選手たちは擦過傷を負いながらも再スタートを切っている。
落車した選手の集団復帰を待つべくプロトンがスローペースになったこともあり、逃げ選手たちは一気にリードを8分まで拡大する。レース先頭ではアラフィリップとルツェンコが順調に中間スプリントと最初の1級山岳を越えたものの、その下り(残り85km地点)で追走集団が引き戻した。
繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)は逃げから山岳ポイント獲得を狙ったものの、連日の疲れが影響してか集団のペースについていくだけ。それを尻目に山岳ランキング4位のジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)はこの日2つめの1級山岳クロワ・フリをトップ通過し、見事水玉ジャージを射止めている。
落ち着きを取り戻したメイン集団ではクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)が牽引を担当。ファンアールトのいる逃げ集団とのタイム差を6分まで縮める。
そして大所帯のままレース後半に突入した逃げグループからは、3級山岳(残り48km地点)でマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)がアタック。遅れて反応したファンアールトとワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)、クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック)が追走した。
3級山岳の下りで3名はソレルに追いついたものの、ニーランズがボトルを受け取ろうとしたオフィシャルモトと接触して落車。ニーランズに大きな怪我はなく、無事レースに戻り完走を果たしている。
プールス&ソレルという経験豊富なクライマーをファンアールトが下りで先導したため、追走集団とのタイム差を1分まで拡大させる。しかしファンアールトのダウンヒルのスピードに徐々にソレルが遅れ、先頭は2名に絞られた。
最後から2つ目の2級山岳アムラン(距離2.7km/平均10.9%)に入ると、ソレルが先頭の2人に追いついたものの、合流直前にプールスがアタックする。35歳のベテランはファンアールトとソレルを引き離しながら最大17%の急勾配をクリアし、そのまま1級山岳サンジェルヴェ・モンブラン(距離7km/平均7.7%)に突入。プールスの1分30秒後方ではワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)やチッコーネがペースを上げるものの、プールスどころかファンアールトとの差も縮まらない。
そしてこれまでチームスカイ時代から数多の勝利を演出してきたプールスが、喜びの雄叫びを上げながらフィニッシュに到達。そして意外にもこれが自身初のツール区間優勝、初のグランツールでの勝利となった。
「ツールでの区間優勝を夢見てきた。過去にモニュメント(リエージュ~バストーニュ~リエージュ)を制し、ようやく掴んだツールでの勝利。幼い頃に夢を見て、沿道やTVで観たあのツールだ。これまで10度出場し、これまでずっと人のために走ってきた。そしてようやく自分に巡ってきたチャンスを、勝利という夢を掴むことができた」とプールスは喜ぶ。
またプールスは「下りでソレルを追うファンアールトの姿を見て、それが”勝利への切符”だと思った」と勝因を語り、「ジェットコースターのように乱高下した感情のなか臨んだツール。いまだ彼を失ったことが信じられないが、ジーノ(メーダー)に敬意を表し掴んだこの結果は特別だ」と亡きチームメイトへの言葉を語った。
一方、7分30秒遅れで2級山岳アムランの登坂に入ったプロトンではユンボ・ヴィスマからUAEチームエミレーツに集団牽引がスイッチ。そして集団の人数を5名まで絞ったラファウ・マイカ(ポーランド)が仕事を終えると、序盤に落車し右半身に擦過傷を負ったセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)も遅れていく。
アダム・イェーツ(イギリス)の高速牽引に前日勝者カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)も脱落するなか、イェーツがそのままアタック。これにヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)は反応せず、牽制でスピードが緩んだポガチャルとヴィンゲゴーにロドリゲスが追いついた。
残り1km地点を過ぎてポガチャルが仕掛けたものの前日のようなキレはなく、またボーナスタイムもつかないことからヴィンゲゴーとの差はつかない。2人は先頭から6分4秒遅れでフィニッシュし、ヴィンゲゴーが10秒リードでマイヨジョーヌを保持したままツール第2週目を終えた。
第2週目の最終日、第15ステージが今大会最後の山頂フィニッシュとなる。逃げグループの形成を誘う30km付近のカテゴリーのつかない丘を越え、最初に挑む1級山岳フォルクラ・ド・モンマ(距離7.2km/平均7.3%)から獲得標高差4,400m超えのステージは本格的に幕を開ける。
その後1級山岳クロワ・フリ(距離11.3km/平均7%)と3級山岳を立て続けにクリアし、最終山岳の直前に立ちはだかる最大勾配17%の激坂、2級山岳アムラン(距離2.7km/平均10.9%)を駆け上がる。そしてフィニッシュまで残り7km地点から1級山岳サンジェルヴェ・モンブランの登りが始まり、頂上に向けて徐々に上がる勾配は平均7.7%(フィニッシュ手前は10.1%)と易しくない。
前日のステージでは落車で7名がレースを去り、この日もその影響でダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が脳震盪を理由に棄権を選んだ。そのため157名となった選手たちがMTBではお馴染みの地レ・ジェ・レ・ポート・デュ・ソレイユを出発。すると、この日もスタート直後から逃げを目指したフルガス(全力)の争いが繰り広げられた。
まずはマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)ら積極的に動き、30名を超える大きな逃げ集団が形成される。そしてカテゴリーのつかない登坂距離10kmの登りでジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・カザフスタン)が飛び出した。
先頭の2人に1分差、追走する逃げ集団に30秒差を許したメイン集団ではセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)が写真を撮ろうと手を伸ばした観客と衝突。落車したクスは集団前方を走行していたこともあり、チームメイトのナータン・ファンホーイドンク(ベルギー)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)ら後続選手を巻き込む。しかし幸いにもリタイア者はなく、クスを含めた選手たちは擦過傷を負いながらも再スタートを切っている。
落車した選手の集団復帰を待つべくプロトンがスローペースになったこともあり、逃げ選手たちは一気にリードを8分まで拡大する。レース先頭ではアラフィリップとルツェンコが順調に中間スプリントと最初の1級山岳を越えたものの、その下り(残り85km地点)で追走集団が引き戻した。
繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)は逃げから山岳ポイント獲得を狙ったものの、連日の疲れが影響してか集団のペースについていくだけ。それを尻目に山岳ランキング4位のジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)はこの日2つめの1級山岳クロワ・フリをトップ通過し、見事水玉ジャージを射止めている。
落ち着きを取り戻したメイン集団ではクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)が牽引を担当。ファンアールトのいる逃げ集団とのタイム差を6分まで縮める。
そして大所帯のままレース後半に突入した逃げグループからは、3級山岳(残り48km地点)でマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)がアタック。遅れて反応したファンアールトとワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)、クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック)が追走した。
3級山岳の下りで3名はソレルに追いついたものの、ニーランズがボトルを受け取ろうとしたオフィシャルモトと接触して落車。ニーランズに大きな怪我はなく、無事レースに戻り完走を果たしている。
プールス&ソレルという経験豊富なクライマーをファンアールトが下りで先導したため、追走集団とのタイム差を1分まで拡大させる。しかしファンアールトのダウンヒルのスピードに徐々にソレルが遅れ、先頭は2名に絞られた。
最後から2つ目の2級山岳アムラン(距離2.7km/平均10.9%)に入ると、ソレルが先頭の2人に追いついたものの、合流直前にプールスがアタックする。35歳のベテランはファンアールトとソレルを引き離しながら最大17%の急勾配をクリアし、そのまま1級山岳サンジェルヴェ・モンブラン(距離7km/平均7.7%)に突入。プールスの1分30秒後方ではワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)やチッコーネがペースを上げるものの、プールスどころかファンアールトとの差も縮まらない。
そしてこれまでチームスカイ時代から数多の勝利を演出してきたプールスが、喜びの雄叫びを上げながらフィニッシュに到達。そして意外にもこれが自身初のツール区間優勝、初のグランツールでの勝利となった。
「ツールでの区間優勝を夢見てきた。過去にモニュメント(リエージュ~バストーニュ~リエージュ)を制し、ようやく掴んだツールでの勝利。幼い頃に夢を見て、沿道やTVで観たあのツールだ。これまで10度出場し、これまでずっと人のために走ってきた。そしてようやく自分に巡ってきたチャンスを、勝利という夢を掴むことができた」とプールスは喜ぶ。
またプールスは「下りでソレルを追うファンアールトの姿を見て、それが”勝利への切符”だと思った」と勝因を語り、「ジェットコースターのように乱高下した感情のなか臨んだツール。いまだ彼を失ったことが信じられないが、ジーノ(メーダー)に敬意を表し掴んだこの結果は特別だ」と亡きチームメイトへの言葉を語った。
一方、7分30秒遅れで2級山岳アムランの登坂に入ったプロトンではユンボ・ヴィスマからUAEチームエミレーツに集団牽引がスイッチ。そして集団の人数を5名まで絞ったラファウ・マイカ(ポーランド)が仕事を終えると、序盤に落車し右半身に擦過傷を負ったセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)も遅れていく。
アダム・イェーツ(イギリス)の高速牽引に前日勝者カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)も脱落するなか、イェーツがそのままアタック。これにヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)は反応せず、牽制でスピードが緩んだポガチャルとヴィンゲゴーにロドリゲスが追いついた。
残り1km地点を過ぎてポガチャルが仕掛けたものの前日のようなキレはなく、またボーナスタイムもつかないことからヴィンゲゴーとの差はつかない。2人は先頭から6分4秒遅れでフィニッシュし、ヴィンゲゴーが10秒リードでマイヨジョーヌを保持したままツール第2週目を終えた。
ツール・ド・フランス2023第15ステージ結果
1位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | 4:40:45 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | +2:08 |
3位 | マチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー) | +3:00 |
4位 | ローソン・クラドック(アメリカ、ジェイコ・アルウラー) | +3:10 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +3:14 |
6位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | |
7位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | +3:32 |
8位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +3:43 |
9位 | シモン・グリエルミ(フランス、アルケア・サムシック) | +3:59 |
10位 | ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) | +4:20 |
16位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +6:04 |
17位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | |
18位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +6:24 |
19位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +6:42 |
20位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +7:05 |
25位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +7:58 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 62:34:17 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +0:10 |
3位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +5:21 |
4位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +5:40 |
5位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +6:38 |
6位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +9:16 |
7位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +10:11 |
8位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | +10:48 |
9位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +14:07 |
10位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | +14:18 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 323pts |
2位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 179pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 178pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | 58pts |
2位 | ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | 58pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 54pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 62:34:27 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +5:11 |
3位 | フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) | +14:29 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 188:22:03 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +3:22 |
3位 | UAEチームエミレーツ | +7:39 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
Amazon.co.jp