トップ2人のタイム差ゼロで迎えたボルタ・ア・カタルーニャ最後の山岳決戦。ゴールスプリントでプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がステージ2勝目を挙げ、総合優勝を大きく引き寄せている。



新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が登場 photo:CorVos

第102回ボルタ・ア・カタルーニャ(UCI2.ワールドツアー)の5日目に、今大会最後となる超級山岳フィニッシュが登場。距離8.5kmながら平均勾配8.7%をマークし、最大勾配20%と恐れられる「ロ・ポルト」を舞台にした山岳決戦が繰り広げられた。

カタルーニャ州タラゴナ県のトゥルトーザを出発し、30km地点でピークを迎える3級山岳を前に山岳賞ジャージを着るギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)を含む逃げが決まる。イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)らと共に先行したマルタンは、狙い通り第1山岳を先頭通過し、スタートから100kmを過ぎた地点にある第2山岳(3級)も先頭通過。

合計6ポイントを稼いで山岳ランキングのリードを伸ばしたマルタンだったが、最終的にこの日ステージ優勝を決め、ポイントを荒稼ぎしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)にジャージを奪われることとなる。

山岳ポイントを加算したギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)だが、ログリッチにジャージを奪われることに photo:CorVos

チームメイトに守られて走るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

アシスト任務をこなす新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

マルタン不在となり、6名となった逃げグループは1分強のリードでロ・ポルトの麓に到達。逃げグループ中唯一のワールドチーム選手として残ったスガブ・グルマイ(エチオピア、ジェイコ・アルウラー)が単独逃げに持ち込んだが、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)たちがペースメイクするメイン集団がすぐ後ろに迫った。

昨日までの時点で、共にステージ1勝ずつ挙げている首位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)のタイム差はゼロ。逆転総合優勝を狙うスーダル・クイックステップがクライマー総動員でペースを上げ、ヤン・ヒルト(チェコ)→イラン・ファンウィルデル(ベルギー)継投で登坂中盤まで消化すると、フィニッシュまで4.6kmを残してエヴェネプールが発進した。

2022年のブエルタ・ア・エスパーニャ、そして世界選手権覇者である23歳の加速に対抗したのはログリッチと、ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)のアシスト役であるマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)だけ。攻めなければならないエヴェネプールが積極的に引いたものの、対する2人は待ちの構え。アルメイダが合流に成功したことでソレルもようやくペースアップに加わった。

最終山岳の後半戦。勝負はエヴェネプール、ログリッチ、アルメイダの3人に絞られた photo:CorVos

レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)を置き去りにするプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

総合3位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)と総合4位ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)を逆転したいアルメイダにとっては絶好のチャンス。上位2人がお見合い状態に陥ることを期待して残り1km地点で仕掛けるも決まらず、ログリッチはカウンターでこの日初めてのアタック。登坂力での決着はつかず、全ての勝負はゴールスプリントでのステージ優勝とボーナスタイム争いに持ち込まれる。

残り300m地点で加速したのはエヴェネプールだったが、ログリッチは冷静に対処してスリップストリームから離れず、残り100m地点からダッシュ。完全に脚が売り切れ「カウンターで仕掛けるべきじゃなかった。加速が早すぎたし、僕の大きなミスだっと」と悔やむエヴェネプールを6秒引き離し、総合優勝を大きく引き寄せるステージ2勝目を射止めた。

満面の笑みでテレマークを決めるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

ボーナスタイムと合わせ、この日10秒を稼いだログリッチは「大喜びだよ。こんなにタフな登坂レースに出たのは久々だった。高いレベルで戦い抜くことができて嬉しく思う。特に脚がよく回ったし、苦しくも楽しい戦いだった。肩の手術を経て流れがいい方向に向かっていることを実感できた」というログリッチ。しかし総合成績に関しては「まだ2日間残っているし何が起こるか分からない。気合を入れてレースに臨みたいと思う」と冷静な姿勢を崩していない。

敗れはしたものの、エヴェネプールは総合成績で-10秒とボーナスタイムでの逆転が可能な範囲。2人に食い下がりステージ3位のアルメイダが総合3位に浮上し、ステージ11位に甘んじたチッコーネは総合3位から7位までダウンを喫している。


ボルタ・ア・カタルーニャ2023第5ステージ
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 4:27:41
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:06
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:12
4位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:28
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:44
6位 レニ・マルティネス(フランス、グルパマFDJ) +0:47
7位 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:56
8位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
9位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +1:04
10位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +1:15
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 21:29:25
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:10
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +1:02
4位 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +1:50
5位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)
6位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) +1:54
7位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) +1:57
8位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +2:02
9位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +2:23
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) +2:44
その他の特別賞
ポイント賞 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
ヤングライダー賞 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:So Isobe
photo:CorVos

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