2022/10/26(水) - 15:05
日本のサイクルパーツブランドであるグロータックが手掛ける機械式ディスクブレーキキャリパー"EQUAL(イコール)"。美しい造形でルックスも良く、軽量で制動力に優れるブレーキを編集部員がインプレッションしていく。
痒いところに手が届くようなユニークな設計のプロダクトを開発する日本のグロータック。4本ローラー"GT-Roller Q1.1"や、フォーク固定式ながらエラストマーを仕込むことで前後左右の動きを実現する"GT-Roller F3.2"などローラー台を中心にサイクルパーツを手掛けてきたブランドだ。
そんなグロータックは、油圧式ディスクブレーキが主流となるなか、機械式ディスクブレーキキャリパー"EQUAL"をラインアップに加えている。大手コンポーネントブランドが機械式ディスクブレーキをアップデートしない状況下において、EQUALは機械式コンポーネントを愛するサイクリストの受け皿として受け入れられた。
現在主流の油圧式のメリットはシチュエーションに左右されず確かな制動力を発揮し、自動的にパッドクリアランスを調節してくれる点。レースで勝つべくして生み出されるロードコンポーネントのハイエンドとしては、性能に優れ安定性のある油圧を選択するのは自然な流れだった。一方で、一般ユーザーにとっては扱いにくさも少なからずあるのも事実だ。
一方で機械式ディスクブレーキが勝るのはワイヤー式という慣れ親しんだ方式であり、ユーザー自ら調整が行いやすいという点。輪行時に自転車を倒立させる可能性もあるが、ワイヤーであればエア噛みもせず、出先でのトラブルにも対応しやすい。さまざまな楽しみ方が存在する自転車遊びにおいては、機械式が扱いやすい場面もあるだろう。
グロータックはユーザーにブレーキの選択肢を与えるべく、機械式ディスクブレーキ"EQUAL"を用意したのだという。機械式が油圧式に対して劣る制動力を向上させるべく、グロータックはキャリパーに独自の縦軸カム構造を採用。さらにケーブルやパッドを含めたブレーキシステムをトータル設計することで、油圧式ディスクブレーキに迫る優れた制動力を得ている。
EQUALはブレーキフィーリング調整システムという世界初の機構を搭載していることも特徴だ。これはワイヤーを引いた時の制動力をコントロールできる機構で、ライダーの体重や好みに合わせたブレーキフィーリングに調整することができるという。さらに、パッドクリアランスは左右独立した無段階調整が可能で細かくセッティングが可能だ。
また、ブレーキ本体は高剛性と軽さを両立するため、高強度の超ジュラルミンを使用し、キャリパーのほぼ全ての部品を高い精度で削り出している。重量はフラットマウントもポストマウントもブレーキパッドを含んだ状態で136gと軽量に仕上がっている。
ブレーキケーブルも制動力やコントロール性に影響する部分であり、グロータックは2種類のアウターワイヤーを使いこなす設計を採用した。ワイヤーを窮屈に曲げるハンドルまわりは柔らかなアウターワイヤーで、その他の大部分は変形が少ない特殊なハードアウターケーシングを採用し、ブレーキパワーのロスを低減している。また、インナーワイヤーは日本のニッセンが手がけるスリックステンレスケーブルを採用し、引きの軽さを実現している。
ブレーキパッドはディスクブレーキパッド専門ブランドのベスラと共同開発し、高い制動力や耐摩耗性を備えることが特徴。ベースプレートにはアルミを採用し、放熱性と共に軽量性に優れている。シマノのブレーキパッドと互換性があり、メタルを使用したい場合はサードパーティー製を選ぶことになる。
フラットマウント仕様のカラーはグレー、レッド、ブルー、ゴールド、シルバーの展開、ポストマウント仕様のカラーはグレー、レッド、ブルー、ゴールド、パープルの5色展開となっている。価格はフラットマウントの2個セットが33,220円(税込)、ポストマウントの2個セットが36,850円(税込)だ。
―編集部インプレッション
インプレッションを担当したのはCW編集スタッフにして、現役JCL選手でもある高木三千成。ロードレースとシクロクロスでディスクブレーキを搭載したバイクを使用しており、シクロクロスではこれまで様々なメーカーの機械式ディスクブレーキキャリパーを使用した経験がある。
EQUALの導入に踏み切ったのは、手持ちのリムブレーキ用DURA-ACEとULTEGRAを流用してシクロクロスバイクを組み上げようと考えていた時に、タイミングよくEQUALが発売されたから。この時代にあえて機械式という選択をした新製品に興味があり導入し、現在シクロクロスバイク2台全てEQUALに統一し、すでに2シーズン目に差し掛かった。
組み立てはソフトとハードのアウターケーブルを使って自分自身で行なった。ソフトのアウターはリムブレーキ式で慣れたケーブルの硬さでハンドル周りのセッティングは違和感なく行え、ハードは曲率が大きなところに用いるため硬さによる組み立て時のデメリットはほぼない。2種類のアウターケーブルを使用するという手間は増えたものの、組み付けが苦にならないという印象だ。
EQUALの制動力はこれまでに使用した機械式ディスクブレーキ以上に高く、油圧式ディスクブレーキとの中間に位置するような印象。ブレーキパッドがローターに接触した直後から制動力が発揮され、レバーを強く握った時も力が逃げない。高速域から急減速するときもコントロール下にあり、舗装路でも未舗装路でも、しっかりとブレーキが効いてくれるため、安心して走ることができる。
EQUALブレーキの体感できるほど優れた引きの軽さや制動力の高さは、ブレーキキャリパーの剛性のみならず、ワイヤールーティングにも起因するものだろう。フレームやフォークの内部から外に出るワイヤーは自然な角度でキャリパーに取り付けられるため、これまでの機械式キャリパーに感じていたようなロスがなく、力を余すことなく制動力に生かしていると感じる。
ブレーキの効き具合やパッドの調整が一般ユーザーでも簡単に行えるのは有り難い仕様だ。ブレーキパッドは3mmの六角レンチさえ用意すれば左右どちらの調整も行え、メンテナンス性能に優れている点がお気に入りだ。
シクロクロスレースで主に使っていたので、新幹線や飛行機で度々輪行することがあったが、エア噛みなどのブレーキトラブルの心配がないため、安心してバイクを逆さまにすることもできた。輪行後のレースでもブレーキに問題が出ることもなかったため、輪行でサイクリングを楽しむ人にはオススメしたい。
また、機械式ディスクブレーキのメリットは、機械式変速のSTIレバーの良さを引き出せること。電動変速の場合は油圧式、機械式ブレーキどちらもコンパクトで軽量なSTIレバーのため影響は少ないが、機械式変速・油圧ディスクブレーキのSTIはブラケットが非常に大きく、重く、ハンドリングなどに影響を与えてしまう。その点でブレーキも機械式の場合はコンパクトなSTIレバーを使用できるのは様々なサイクリストにメリットがあるはずだ。
グロータック EQUALはロードレースやシクロクロス、グラベル、MTBなどレースを楽しむ方から、新幹線や飛行機で旅をするサイクリストまで幅広くお勧めしたい機械式ディスクブレーキキャリパーだった。
グロータック EQUAL(2個セット)
重量:136g
仕様:フラットマウント、ポストマウント
カラー(フラットマウント):グレー、レッド、ブルー、ゴールド、シルバー
カラー(ポストマウント):グレー、レッド、ブルー、ゴールド、パープル
価格:33,220円(税込、フラットマウント)、36,850円(税込、ポストマウント)
impression:Michinari Takagi
痒いところに手が届くようなユニークな設計のプロダクトを開発する日本のグロータック。4本ローラー"GT-Roller Q1.1"や、フォーク固定式ながらエラストマーを仕込むことで前後左右の動きを実現する"GT-Roller F3.2"などローラー台を中心にサイクルパーツを手掛けてきたブランドだ。
そんなグロータックは、油圧式ディスクブレーキが主流となるなか、機械式ディスクブレーキキャリパー"EQUAL"をラインアップに加えている。大手コンポーネントブランドが機械式ディスクブレーキをアップデートしない状況下において、EQUALは機械式コンポーネントを愛するサイクリストの受け皿として受け入れられた。
現在主流の油圧式のメリットはシチュエーションに左右されず確かな制動力を発揮し、自動的にパッドクリアランスを調節してくれる点。レースで勝つべくして生み出されるロードコンポーネントのハイエンドとしては、性能に優れ安定性のある油圧を選択するのは自然な流れだった。一方で、一般ユーザーにとっては扱いにくさも少なからずあるのも事実だ。
一方で機械式ディスクブレーキが勝るのはワイヤー式という慣れ親しんだ方式であり、ユーザー自ら調整が行いやすいという点。輪行時に自転車を倒立させる可能性もあるが、ワイヤーであればエア噛みもせず、出先でのトラブルにも対応しやすい。さまざまな楽しみ方が存在する自転車遊びにおいては、機械式が扱いやすい場面もあるだろう。
グロータックはユーザーにブレーキの選択肢を与えるべく、機械式ディスクブレーキ"EQUAL"を用意したのだという。機械式が油圧式に対して劣る制動力を向上させるべく、グロータックはキャリパーに独自の縦軸カム構造を採用。さらにケーブルやパッドを含めたブレーキシステムをトータル設計することで、油圧式ディスクブレーキに迫る優れた制動力を得ている。
EQUALはブレーキフィーリング調整システムという世界初の機構を搭載していることも特徴だ。これはワイヤーを引いた時の制動力をコントロールできる機構で、ライダーの体重や好みに合わせたブレーキフィーリングに調整することができるという。さらに、パッドクリアランスは左右独立した無段階調整が可能で細かくセッティングが可能だ。
また、ブレーキ本体は高剛性と軽さを両立するため、高強度の超ジュラルミンを使用し、キャリパーのほぼ全ての部品を高い精度で削り出している。重量はフラットマウントもポストマウントもブレーキパッドを含んだ状態で136gと軽量に仕上がっている。
ブレーキケーブルも制動力やコントロール性に影響する部分であり、グロータックは2種類のアウターワイヤーを使いこなす設計を採用した。ワイヤーを窮屈に曲げるハンドルまわりは柔らかなアウターワイヤーで、その他の大部分は変形が少ない特殊なハードアウターケーシングを採用し、ブレーキパワーのロスを低減している。また、インナーワイヤーは日本のニッセンが手がけるスリックステンレスケーブルを採用し、引きの軽さを実現している。
ブレーキパッドはディスクブレーキパッド専門ブランドのベスラと共同開発し、高い制動力や耐摩耗性を備えることが特徴。ベースプレートにはアルミを採用し、放熱性と共に軽量性に優れている。シマノのブレーキパッドと互換性があり、メタルを使用したい場合はサードパーティー製を選ぶことになる。
フラットマウント仕様のカラーはグレー、レッド、ブルー、ゴールド、シルバーの展開、ポストマウント仕様のカラーはグレー、レッド、ブルー、ゴールド、パープルの5色展開となっている。価格はフラットマウントの2個セットが33,220円(税込)、ポストマウントの2個セットが36,850円(税込)だ。
―編集部インプレッション
インプレッションを担当したのはCW編集スタッフにして、現役JCL選手でもある高木三千成。ロードレースとシクロクロスでディスクブレーキを搭載したバイクを使用しており、シクロクロスではこれまで様々なメーカーの機械式ディスクブレーキキャリパーを使用した経験がある。
EQUALの導入に踏み切ったのは、手持ちのリムブレーキ用DURA-ACEとULTEGRAを流用してシクロクロスバイクを組み上げようと考えていた時に、タイミングよくEQUALが発売されたから。この時代にあえて機械式という選択をした新製品に興味があり導入し、現在シクロクロスバイク2台全てEQUALに統一し、すでに2シーズン目に差し掛かった。
組み立てはソフトとハードのアウターケーブルを使って自分自身で行なった。ソフトのアウターはリムブレーキ式で慣れたケーブルの硬さでハンドル周りのセッティングは違和感なく行え、ハードは曲率が大きなところに用いるため硬さによる組み立て時のデメリットはほぼない。2種類のアウターケーブルを使用するという手間は増えたものの、組み付けが苦にならないという印象だ。
EQUALの制動力はこれまでに使用した機械式ディスクブレーキ以上に高く、油圧式ディスクブレーキとの中間に位置するような印象。ブレーキパッドがローターに接触した直後から制動力が発揮され、レバーを強く握った時も力が逃げない。高速域から急減速するときもコントロール下にあり、舗装路でも未舗装路でも、しっかりとブレーキが効いてくれるため、安心して走ることができる。
EQUALブレーキの体感できるほど優れた引きの軽さや制動力の高さは、ブレーキキャリパーの剛性のみならず、ワイヤールーティングにも起因するものだろう。フレームやフォークの内部から外に出るワイヤーは自然な角度でキャリパーに取り付けられるため、これまでの機械式キャリパーに感じていたようなロスがなく、力を余すことなく制動力に生かしていると感じる。
ブレーキの効き具合やパッドの調整が一般ユーザーでも簡単に行えるのは有り難い仕様だ。ブレーキパッドは3mmの六角レンチさえ用意すれば左右どちらの調整も行え、メンテナンス性能に優れている点がお気に入りだ。
シクロクロスレースで主に使っていたので、新幹線や飛行機で度々輪行することがあったが、エア噛みなどのブレーキトラブルの心配がないため、安心してバイクを逆さまにすることもできた。輪行後のレースでもブレーキに問題が出ることもなかったため、輪行でサイクリングを楽しむ人にはオススメしたい。
また、機械式ディスクブレーキのメリットは、機械式変速のSTIレバーの良さを引き出せること。電動変速の場合は油圧式、機械式ブレーキどちらもコンパクトで軽量なSTIレバーのため影響は少ないが、機械式変速・油圧ディスクブレーキのSTIはブラケットが非常に大きく、重く、ハンドリングなどに影響を与えてしまう。その点でブレーキも機械式の場合はコンパクトなSTIレバーを使用できるのは様々なサイクリストにメリットがあるはずだ。
グロータック EQUALはロードレースやシクロクロス、グラベル、MTBなどレースを楽しむ方から、新幹線や飛行機で旅をするサイクリストまで幅広くお勧めしたい機械式ディスクブレーキキャリパーだった。
グロータック EQUAL(2個セット)
重量:136g
仕様:フラットマウント、ポストマウント
カラー(フラットマウント):グレー、レッド、ブルー、ゴールド、シルバー
カラー(ポストマウント):グレー、レッド、ブルー、ゴールド、パープル
価格:33,220円(税込、フラットマウント)、36,850円(税込、ポストマウント)
impression:Michinari Takagi