2022/10/09(日) - 08:42
シーズン最後の大一番、第116回イル・ロンバルディアは前哨戦で激しい戦いを繰り広げてきた2名のスプリントで決着。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がエンリク・マス(スペイン、モビスター)を退け大会連覇を達成した。
1905年に第1回大会が開催され、今年で実に開催116回目を迎えるイル・ロンバルディア(元ジロ・ディ・ロンバルディア)。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント(世界五大クラシック)」と称される伝統の一戦だ。例年決まって秋に開催されることから、イタリア国内では「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」と呼び親しまれている。
ワールドツアー最終戦にして、シーズン最後の大一番、そしてモニュメント最終戦。翌日の10月13日にフランスで開催されるパリ〜トゥール(UCI1.Pro)とともにヨーロッパのシーズン最終戦に数えられ、イタリアで2週間にわたって開催されてきたワンデークラシック連戦を締めくくる大一番。スタートとフィニッシュ地点が年によって入れ替わることでも知られる大会だが、第116回大会は昨年同様にベルガモからコモに向かう253kmで行われた。
一時代を築いたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)の現役最終レースでもあるレースの獲得標高は実に4,800m越え。様々な思惑を秘めた「落ち葉のクラシック」はスタート後に9名の逃げが決まり、オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン)が合流して10名逃げに。メイン集団に対して最大5分半リードを得て前半戦を駆け抜けた。
平穏に距離を消化していくかに思えたが、105km地点でピークを超える登坂「フォルチェッラ・ディ・ブラ」の下りで落車発生。引退を発表していたミケル・ニエベ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が鎖骨骨折でリタイアし、さらにレース前に「このシーズン終盤にこんなに良いコンディションなのは初めて。過去最高位の6位を越えたい」と話していたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)も路面に叩きつけられレースを去る事態となってしまった。
コモ湖のある湖水地方でモビスターやイネオス・グレナディアーズといったトップチームがペースを上げ、スタートから5時間が経とうかというタイミングでマドンナ・デル・ギザッロ(登坂距離8.6km/平均勾配6.2%/最大勾配14%)に突入する。フィニッシュまで70km以上を残してあっさり10名逃げが吸収されるハイスピード進行を引っ張ったのはユンボ・ヴィスマだった。
ツール・ド・フランス覇者ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)のためにクリス・ハーパー(オーストラリア)がレースを絞り込んだが、そのヴィンゲゴーとツールで熱戦を繰り広げたタデイ・ポガチャル(スロベニア)率いるUAEチームエミレーツがチーム力にモノを言わせて主導権を奪い取る。ジョアン・アルメイダ(ポルトガル)の強力牽引で鐘が鳴り響くギザッロ教会横を通過し、そのままコース終盤戦へと入っていった。
細かくも厳しいアップダウンコース。複数チームが並びかけるも鉄壁の走りを続けるUAEは崩れず、30名ほどにまで縮小したメイン集団が一旦コモのフィニッシュラインを通過(残り22.4km)して、終盤最大の難所であるチヴィリオ(距離9.2km/平均7.3%)へと突入した。
相変わらずUAEコントロール主導でハイペースを刻む集団からは、それまでも何度か遅れかけていた前世界王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)が脱落し、引退記念のスペシャルペイントバイクに乗る2015年と2017年のロンバルディア覇者ニバリも頂上まで3kmを残して脱落。勾配の上がる後半区間に入るとダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のペースメイクで集団が木っ端微塵となり、これをチャンスと見たポガチャルがアタックした。
「チヴィリオでアタックするつもりだったし、それまでにチームが完璧なお膳立てをしてくれた」と振り返る昨年度覇者をフォローできたのはエンリク・マス(スペイン、モビスター)ただ一人だけで、二人が少しペースを緩めるとミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が合流したが、アタック合戦が始まると再び脱落。ヴィンゲゴーやバルベルデ、アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) といった面々は遅れ、追走グループを作って前3人を追いかける。
下りでランダが追いつき、残り5km地点で頂上を迎えるサンフェルモ・デッラ・バッターリア(登坂距離2.7km/平均勾配7.2%/最大勾配10%)に入るとマスがアタックしたが、余裕感漂わせるポガチャルはシッティングで対応し、カウンターアタック。これまでの前哨戦で何度も繰り返されてきた二人のアタックはいずれも決まらず、ランダを振り切ってコモの街に降りるダウンヒルをクリア。勝負は一騎討ちのスプリントに持ち込まれた。
先行ポガチャル、2番手マス。ランダが追いつかないことを互いに確認し、スプリント力で分が悪いマスが残り200m地点から加速するも、ポガチャルは冷静に対処する。すぐに並びかけ、ギアを変えてもう一度踏み直したポガチャルがフィニッシュラインまで距離を残して手を広げる。最後まで踏み込むマスを退けたポガチャルがロンバルディア2連覇を勝ち取った。
「このロンバルディアに戻ってくることができて、さらに今シーズン最後のレースでもう一勝。素晴らしい結果になったよ。素晴らしい働きをしてくれたチームメイトに対して、僕がどんなに素晴らしい感情を抱いているか説明しきれないよ」と、チームの鉄壁のコントロールを勝ちに繋げたポガチャルは感謝する。
ロンバルディア初参戦からの2連勝は史上初の快挙。「素晴らしいコンディションに仕上げてきたマスとはゴールまで協調して、お互いに勝つべくスプリントした。幸いエミリアと違って勝つことができたよ。ここまで素晴らしいシーズンを過ごし、最良の形で終えることができた」と加えている。
2人の後ろで粘り続けたランダが3位表彰台を射止め、セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)とカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が4位&5位。1分24秒遅れの6位グループの頭をとったのはバルベルデ。2019年2位、2021年5位に続く、自身8度目のトップ10フィニッシュをもって20年に及ぶ長いキャリアを締め括った。盟友ニバリは24位フィニッシュだった。
1905年に第1回大会が開催され、今年で実に開催116回目を迎えるイル・ロンバルディア(元ジロ・ディ・ロンバルディア)。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント(世界五大クラシック)」と称される伝統の一戦だ。例年決まって秋に開催されることから、イタリア国内では「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」と呼び親しまれている。
ワールドツアー最終戦にして、シーズン最後の大一番、そしてモニュメント最終戦。翌日の10月13日にフランスで開催されるパリ〜トゥール(UCI1.Pro)とともにヨーロッパのシーズン最終戦に数えられ、イタリアで2週間にわたって開催されてきたワンデークラシック連戦を締めくくる大一番。スタートとフィニッシュ地点が年によって入れ替わることでも知られる大会だが、第116回大会は昨年同様にベルガモからコモに向かう253kmで行われた。
一時代を築いたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)の現役最終レースでもあるレースの獲得標高は実に4,800m越え。様々な思惑を秘めた「落ち葉のクラシック」はスタート後に9名の逃げが決まり、オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン)が合流して10名逃げに。メイン集団に対して最大5分半リードを得て前半戦を駆け抜けた。
平穏に距離を消化していくかに思えたが、105km地点でピークを超える登坂「フォルチェッラ・ディ・ブラ」の下りで落車発生。引退を発表していたミケル・ニエベ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が鎖骨骨折でリタイアし、さらにレース前に「このシーズン終盤にこんなに良いコンディションなのは初めて。過去最高位の6位を越えたい」と話していたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)も路面に叩きつけられレースを去る事態となってしまった。
コモ湖のある湖水地方でモビスターやイネオス・グレナディアーズといったトップチームがペースを上げ、スタートから5時間が経とうかというタイミングでマドンナ・デル・ギザッロ(登坂距離8.6km/平均勾配6.2%/最大勾配14%)に突入する。フィニッシュまで70km以上を残してあっさり10名逃げが吸収されるハイスピード進行を引っ張ったのはユンボ・ヴィスマだった。
ツール・ド・フランス覇者ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)のためにクリス・ハーパー(オーストラリア)がレースを絞り込んだが、そのヴィンゲゴーとツールで熱戦を繰り広げたタデイ・ポガチャル(スロベニア)率いるUAEチームエミレーツがチーム力にモノを言わせて主導権を奪い取る。ジョアン・アルメイダ(ポルトガル)の強力牽引で鐘が鳴り響くギザッロ教会横を通過し、そのままコース終盤戦へと入っていった。
細かくも厳しいアップダウンコース。複数チームが並びかけるも鉄壁の走りを続けるUAEは崩れず、30名ほどにまで縮小したメイン集団が一旦コモのフィニッシュラインを通過(残り22.4km)して、終盤最大の難所であるチヴィリオ(距離9.2km/平均7.3%)へと突入した。
相変わらずUAEコントロール主導でハイペースを刻む集団からは、それまでも何度か遅れかけていた前世界王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)が脱落し、引退記念のスペシャルペイントバイクに乗る2015年と2017年のロンバルディア覇者ニバリも頂上まで3kmを残して脱落。勾配の上がる後半区間に入るとダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のペースメイクで集団が木っ端微塵となり、これをチャンスと見たポガチャルがアタックした。
「チヴィリオでアタックするつもりだったし、それまでにチームが完璧なお膳立てをしてくれた」と振り返る昨年度覇者をフォローできたのはエンリク・マス(スペイン、モビスター)ただ一人だけで、二人が少しペースを緩めるとミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が合流したが、アタック合戦が始まると再び脱落。ヴィンゲゴーやバルベルデ、アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) といった面々は遅れ、追走グループを作って前3人を追いかける。
下りでランダが追いつき、残り5km地点で頂上を迎えるサンフェルモ・デッラ・バッターリア(登坂距離2.7km/平均勾配7.2%/最大勾配10%)に入るとマスがアタックしたが、余裕感漂わせるポガチャルはシッティングで対応し、カウンターアタック。これまでの前哨戦で何度も繰り返されてきた二人のアタックはいずれも決まらず、ランダを振り切ってコモの街に降りるダウンヒルをクリア。勝負は一騎討ちのスプリントに持ち込まれた。
先行ポガチャル、2番手マス。ランダが追いつかないことを互いに確認し、スプリント力で分が悪いマスが残り200m地点から加速するも、ポガチャルは冷静に対処する。すぐに並びかけ、ギアを変えてもう一度踏み直したポガチャルがフィニッシュラインまで距離を残して手を広げる。最後まで踏み込むマスを退けたポガチャルがロンバルディア2連覇を勝ち取った。
「このロンバルディアに戻ってくることができて、さらに今シーズン最後のレースでもう一勝。素晴らしい結果になったよ。素晴らしい働きをしてくれたチームメイトに対して、僕がどんなに素晴らしい感情を抱いているか説明しきれないよ」と、チームの鉄壁のコントロールを勝ちに繋げたポガチャルは感謝する。
ロンバルディア初参戦からの2連勝は史上初の快挙。「素晴らしいコンディションに仕上げてきたマスとはゴールまで協調して、お互いに勝つべくスプリントした。幸いエミリアと違って勝つことができたよ。ここまで素晴らしいシーズンを過ごし、最良の形で終えることができた」と加えている。
2人の後ろで粘り続けたランダが3位表彰台を射止め、セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)とカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が4位&5位。1分24秒遅れの6位グループの頭をとったのはバルベルデ。2019年2位、2021年5位に続く、自身8度目のトップ10フィニッシュをもって20年に及ぶ長いキャリアを締め括った。盟友ニバリは24位フィニッシュだった。
イル・ロンバルディア2022結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 6:21:22 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
3位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:10 |
4位 | セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:52 |
5位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | |
6位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | +1:24 |
7位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | |
8位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) | |
9位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | |
10位 | アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:26 |
24位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) | +2:17 |
text:So.Isobe
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