2022/07/26(火) - 17:50
ツール・ド・フランスでユンボ・ヴィスマの快進撃を支えた、サーヴェロの新型S5がついにべールを脱ぐ。エアロ性能や剛性はそのままに、チームからの要望を踏まえ、快適性と調整機能を向上させた次世代機がデビューした。
サーヴェロの日本販売代理店を務める、東商会のオフィスで開催されたメディア向け新型S5発表会。ひときわ目を引く「サファイアアイス」カラーを筆頭に複数のテストバイクが用意され、プレゼンテーション終了後は付近の河川敷に場所を移してショートインプレッションを行う機会が設けられた。
ダイナミックに直線と曲線を組み合わせたフレーム形状や、世の度肝を抜いた専用のV字ステムとヒンジフォーク。サーヴェロのお家芸とも言えるアグレッシブなエアロ形状は先代とほぼ共通だが、UCIが公認フレームに定める形状規定の緩和とチームからのリクエスト、そしてR9200シリーズに代表されるシマノの新型コンポーネントに合わせて各部改良が施されたという。
ルックス上、特に顕著なのがヘッドチューブやフロントフォークといったフレーム前部の形状変更だ。フォークレッグはP5の設計を活かして大きく前後方向に伸び、ヘッドチューブを覆う部分も前方に張り出しつつ、前方投影面積を減らすべく横幅を大きく絞り込んでいる。
従来のフロントフォークはカーボン製の本体上部にアルミ製の部材を組み合わせる構造だったが、この形状変更に伴ってフルカーボン製となり53gもの軽量化を達成するとともに、ステムの高さ調整も簡便化しているという。
前方から当たる空気をまずV字部分に、続いてライダーの股の間を通過させ、一般的なステムに対して大幅なアドバンテージを得る特徴的なV字ステムは継続。ただし前方投影面積を減らすべくステム幅が左右に2cm位細くなっており、先代との互換性はないという。一方ハンドル角度調整に関しては、従来モデルがシムを挟み込むことで3種類しか設定できなかったが、今作では2本のボルトを調整することで0~5度の範囲で無段階調整が可能に。これはユンボ・ヴィスマからの意見が大きく反映された部分だという。
また、フレームのヘッドチューブやボトムブラケット周辺、さらにはシートポスト下部といったチューブ集合部はUCI規定緩和を受けてワイド化され、電動変速専用化に伴いリアエンドのドロップ形状や、Di2ケーブルの前後取り出し口の位置も最適化されている。
従来シートポストのオフセットは25mmが標準だった(54/56サイズ)が、前乗り化するライドポジションのトレンドを押さえて15mmに変更。従来25mm対応だったタイヤクリアランスは標準で28mmへとワイド化され、最大では実測34mmのタイヤを飲み込む余裕を見せる。ワイドタイヤ化に伴う快適性向上はユンボ・ヴィスマからの強い要望の一つであり、完成車ではサーヴェロとサンタクルズの共同開発で立ち上がった新ブランド「リザーブ」の、前後でリムハイトが異なる超ワイドリムホイールが標準装備となる。
サーヴェロは従来と同じように新型S5の空力性能や剛性、重量数値を一切公表していないものの、東商会によれば50サイズのデュラエース完成車の実測重量は7.52kgで、フレーム重量は1,030g、フォーク重量は410gだという。「よく進むバイクにはある程度の重量が必要」というサーヴェロの言葉通りUCIルール下限を狙ったものではないが、その性能はツールのあらゆるステージで使われていることからも推しはかるべきだろう。
新型S5ファーストインプレッション
発表会当日午後から開催された試乗会でファーストインプレッションを担当したのは、CW編集スタッフにして、現役JCL選手でもある高木三千成。ツール・ド・フランスのウィニングバイクとして注目集まる新型S5を試す機会に恵まれた。
「速度域に関係なく、どこまでもスピードが伸びていく」
レーシングバイクらしい高い剛性感を全身に漲せた一台です。ツールで勝ち、それも総合成績、山岳賞、ポイント賞を総ナメにした選手らが信頼を置く機材であるというオーラが、ルックスからもライドフィールからも伝わってきます。
中でも特筆すべきなのはハンドル周りの剛性感でしょう。エアロヒンジを使用していることもあり、通常のエアロロードよりもさらにフロントフォークに重心があるような、TTバイクに通ずる乗り味です。とはいえ、コーナーでも癖が強いわけではなく、今回の限られた時間でのインプレッションライドでも、しっかりと馴染み、乗りこなせる素直さもあります。
空力性能を突き詰めた設計は、まさにサーヴェロの真骨頂ですが、実際の走行シーンでもその性能は感じ取れます。平坦での巡航の伸び感は他のバイクとは一線を画していますし、向かい風の中ですらバイクが勝手に前へと進んでくれるような感覚がありました。
速度域に関係なく気持ちよくスピードが伸び、特に大きなトルクを掛けるとBB付近が僅かにたわみ、バネ感ある加速を感じ取れました。ワウト(ファンアールト)のポイント賞を支えたようにスプリントも抜群ですが、痺れるような加速感とは裏腹に、何度もアタックがかけられそうな足当たりの良さをも両立しています。
だからこそダンシングでリズムが取りやすい。もちろんシッティングでこなす長い登りではR5に譲る部分は大きいでしょうが、短い坂をハイペースで繰り返したり、アタックや、ライバルへの反応など、速度の上げ下げのあるロードレース的な走り方こそマッチしそうです。今度は山岳を含むコースでより深いテストをしてみたいと思わされました。
4種類の完成車とフレームセットで販売:最高級モデルは税込214万5千円
新型S5の販売パッケージは4種類の完成車と、フレームセットという合計5ラインナップ。シマノ組みがR9270系デュラエースDi2(税込2,145,000円)とR8170アルテグラDi2(税込1,606,000円)の2種類で、スラム組みがRED eTap AXS(税込2,200,000円)とFORCE eTap AXS(税込1,639,000円)の2種類。フレームセット価格は税込968,000円だ。各モデルの詳細は東商会の製品ラインナップページを確認してほしい。
東商会によれば新型S5の初回入荷台数はフレームと完成車合わせて8台ほど。7〜8ヶ月くらい待てば供給状況も安定する見通しだという。すでに注文受付はスタートしており、問い合わせは全国のサーヴェロ取り扱いプロショップまで。
text&photo:So Isobe
test rider:Michinari Takagi
サーヴェロの日本販売代理店を務める、東商会のオフィスで開催されたメディア向け新型S5発表会。ひときわ目を引く「サファイアアイス」カラーを筆頭に複数のテストバイクが用意され、プレゼンテーション終了後は付近の河川敷に場所を移してショートインプレッションを行う機会が設けられた。
ダイナミックに直線と曲線を組み合わせたフレーム形状や、世の度肝を抜いた専用のV字ステムとヒンジフォーク。サーヴェロのお家芸とも言えるアグレッシブなエアロ形状は先代とほぼ共通だが、UCIが公認フレームに定める形状規定の緩和とチームからのリクエスト、そしてR9200シリーズに代表されるシマノの新型コンポーネントに合わせて各部改良が施されたという。
ルックス上、特に顕著なのがヘッドチューブやフロントフォークといったフレーム前部の形状変更だ。フォークレッグはP5の設計を活かして大きく前後方向に伸び、ヘッドチューブを覆う部分も前方に張り出しつつ、前方投影面積を減らすべく横幅を大きく絞り込んでいる。
従来のフロントフォークはカーボン製の本体上部にアルミ製の部材を組み合わせる構造だったが、この形状変更に伴ってフルカーボン製となり53gもの軽量化を達成するとともに、ステムの高さ調整も簡便化しているという。
前方から当たる空気をまずV字部分に、続いてライダーの股の間を通過させ、一般的なステムに対して大幅なアドバンテージを得る特徴的なV字ステムは継続。ただし前方投影面積を減らすべくステム幅が左右に2cm位細くなっており、先代との互換性はないという。一方ハンドル角度調整に関しては、従来モデルがシムを挟み込むことで3種類しか設定できなかったが、今作では2本のボルトを調整することで0~5度の範囲で無段階調整が可能に。これはユンボ・ヴィスマからの意見が大きく反映された部分だという。
また、フレームのヘッドチューブやボトムブラケット周辺、さらにはシートポスト下部といったチューブ集合部はUCI規定緩和を受けてワイド化され、電動変速専用化に伴いリアエンドのドロップ形状や、Di2ケーブルの前後取り出し口の位置も最適化されている。
従来シートポストのオフセットは25mmが標準だった(54/56サイズ)が、前乗り化するライドポジションのトレンドを押さえて15mmに変更。従来25mm対応だったタイヤクリアランスは標準で28mmへとワイド化され、最大では実測34mmのタイヤを飲み込む余裕を見せる。ワイドタイヤ化に伴う快適性向上はユンボ・ヴィスマからの強い要望の一つであり、完成車ではサーヴェロとサンタクルズの共同開発で立ち上がった新ブランド「リザーブ」の、前後でリムハイトが異なる超ワイドリムホイールが標準装備となる。
サーヴェロは従来と同じように新型S5の空力性能や剛性、重量数値を一切公表していないものの、東商会によれば50サイズのデュラエース完成車の実測重量は7.52kgで、フレーム重量は1,030g、フォーク重量は410gだという。「よく進むバイクにはある程度の重量が必要」というサーヴェロの言葉通りUCIルール下限を狙ったものではないが、その性能はツールのあらゆるステージで使われていることからも推しはかるべきだろう。
新型S5ファーストインプレッション
発表会当日午後から開催された試乗会でファーストインプレッションを担当したのは、CW編集スタッフにして、現役JCL選手でもある高木三千成。ツール・ド・フランスのウィニングバイクとして注目集まる新型S5を試す機会に恵まれた。
「速度域に関係なく、どこまでもスピードが伸びていく」
レーシングバイクらしい高い剛性感を全身に漲せた一台です。ツールで勝ち、それも総合成績、山岳賞、ポイント賞を総ナメにした選手らが信頼を置く機材であるというオーラが、ルックスからもライドフィールからも伝わってきます。
中でも特筆すべきなのはハンドル周りの剛性感でしょう。エアロヒンジを使用していることもあり、通常のエアロロードよりもさらにフロントフォークに重心があるような、TTバイクに通ずる乗り味です。とはいえ、コーナーでも癖が強いわけではなく、今回の限られた時間でのインプレッションライドでも、しっかりと馴染み、乗りこなせる素直さもあります。
空力性能を突き詰めた設計は、まさにサーヴェロの真骨頂ですが、実際の走行シーンでもその性能は感じ取れます。平坦での巡航の伸び感は他のバイクとは一線を画していますし、向かい風の中ですらバイクが勝手に前へと進んでくれるような感覚がありました。
速度域に関係なく気持ちよくスピードが伸び、特に大きなトルクを掛けるとBB付近が僅かにたわみ、バネ感ある加速を感じ取れました。ワウト(ファンアールト)のポイント賞を支えたようにスプリントも抜群ですが、痺れるような加速感とは裏腹に、何度もアタックがかけられそうな足当たりの良さをも両立しています。
だからこそダンシングでリズムが取りやすい。もちろんシッティングでこなす長い登りではR5に譲る部分は大きいでしょうが、短い坂をハイペースで繰り返したり、アタックや、ライバルへの反応など、速度の上げ下げのあるロードレース的な走り方こそマッチしそうです。今度は山岳を含むコースでより深いテストをしてみたいと思わされました。
4種類の完成車とフレームセットで販売:最高級モデルは税込214万5千円
新型S5の販売パッケージは4種類の完成車と、フレームセットという合計5ラインナップ。シマノ組みがR9270系デュラエースDi2(税込2,145,000円)とR8170アルテグラDi2(税込1,606,000円)の2種類で、スラム組みがRED eTap AXS(税込2,200,000円)とFORCE eTap AXS(税込1,639,000円)の2種類。フレームセット価格は税込968,000円だ。各モデルの詳細は東商会の製品ラインナップページを確認してほしい。
東商会によれば新型S5の初回入荷台数はフレームと完成車合わせて8台ほど。7〜8ヶ月くらい待てば供給状況も安定する見通しだという。すでに注文受付はスタートしており、問い合わせは全国のサーヴェロ取り扱いプロショップまで。
text&photo:So Isobe
test rider:Michinari Takagi
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