2022/07/18(月) - 07:44
集団スプリントで決着したツール・ド・フランス第15ステージの勝者はヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)。ここまであと一歩勝利に届かなかった新鋭スプリンターが、待望のキャリア初となるツール区間優勝をもぎ取った。
第2週目最終日となったツール・ド・フランス第14ステージの舞台は、ロデズからカルカッソンヌまで、中央山塊を避けるように西に蛇行しながら南下する今大会最長距離の202.5km。カルカッソンヌといえば昨年大会でマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)がエディ・メルクスがもつステージ通算に並ぶ34勝を挙げた場所であり、今年も集団スプリントに持ち込まれる予想が大。
しかしながらコースの大部分は細かいアップダウンが中心で、後半には3級山岳を中心とした山岳区間も登場。気温35度前後という暑い一日を前に、この日はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)の未出走というニュースが飛び込んだ。
落車による怪我をおして走っていたログリッチだが、今後のレーススケジュールを見込み、回復を最優先させてツールを離脱。「今のチームの有利な状況に貢献できたことを誇りに思うし、マイヨジョーヌとマイヨヴェールの獲得という目標を叶えられると信じている」というメッセージともに、ツールから2年連続のリタイアを喫することに。
また、序盤ステージを沸かせ、第10ステージで勝ったマグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)と、第5ステージ勝者サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)は共にPCR検査陽性でリタイア。感染リタイア者が徐々に増えるなか、第2週目最終日のスタートフラッグが振られた。
散発的なアタックが掛かる中、この日はマイヨヴェールのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)と共に先行し、ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)が追いついて3名逃げが形成される。トレック・セガフレードを中心に大勢がしばらく追走を試みていたが、スピードに長ける前3名がハイペースを貫き通したため、追いつくことは叶わなかった。
逃げグループを形成した3名
ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
メイン集団ではすぐにスプリント勝負を狙うバイクエクスチェンジ・ジェイコとアルペシン・ドゥクーニンク、さらにトレック・セガフレードがコントロールを開始し、逃げる3名に与えたのは僅か2分半弱。逃げ切り勝利の可能性が限りなくゼロに近くなったことを受け、ユンボはスプリント勝負のためにファンアールトをメイン集団に下げるという作戦変更を行った。
「本当は大きな逃げに乗るために先行したんだ。思っていたものと全く違う状況で、ワウトが下がったタイミングで今日はこれ以上の展開がないと思った」と振り返るドイツ王者ポリッツ。先頭グループが3名から2名に減り(しかもファンアールトが離脱)、スプリンターを振り落とす難しい丘もなく、そして気温40度に達しようかという今大会最も暑いコンディション。メイン集団にこの状況をひっくり返そうという意思はなく、平穏にフィニッシュに向けて距離を消化していった。
残り65km地点では小規模な座り込みデモが発生したものの、バイク警官の迅速な対処によってレース中断を回避。しかし時を同じくして、2分後方を走るメイン集団内で落車が発生した。
路面にうずくまり、立ち上がれなかったのはステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)だった。ここまでヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)の山岳アシストとして重要な責務を果たしてきたクライスヴァイクだったが、鎖骨骨折によって担架で救急車に担ぎ込まれリタイア。さらに数km後、ヴィンゲゴーにティシュ・ベノート(ベルギー)が追突する形で落車。幸い両名に大きな怪我はなく集団に戻ったものの、ユンボはこの日だけでログリッチとクライスヴァイクを失うという痛手を負ってしまった。
登坂でこの日の優勝候補であるファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)が遅れ、147kmの中間スプリントポイントを過ぎてから始まる3級山岳「コート・ド・カマーズ(距離5.1km/平均勾配4.1%)」では140km近く逃げていたポリッツとホノレを吸収。マッズ・ピーダスン(デンマーク)のためにトレック・セガフレードがペースアップを開始し、頂上が近づくとアレクシー・グジャール(フランス、B&Bホテルズ KTM)とバンジャマン・トマ(フランス、コフィディス)が飛び出した。
「ゲシュケの山岳ポイントを守るために飛び出した」と言うトマにとって、地元近くにフィニッシュするこのステージは是が非でも目立ちたい日。メイン集団の視界に捉えられながらもグジャールを残り5kmで振り切って、更にペースを上げてラスト3kmを駆け抜ける。残り10km区間を平均52.0km/hで駆け抜けたトマだったが、スプリント体制に入った集団に残り450mで飲み込まれ、ジ・エンド。ヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)の強力リードアウトでマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が解き放たれ、勝負の火蓋が切って落とされた。
最高66.7km/hで一気に加速したピーダスンだったが徐々に失速し、左からヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)、右からファンアールトの追い上げを許してしまう。ひときわ鋭い加速で追い抜き、完璧なハンドル投げを披露したフィリプセンがファンアールトに対してホイールひとつ分の差で勝ち切った。
ここまで4回トップ10入りを繰り返し、第4ステージでは一人逃げたファンアールトの存在に気づかず2位でガッツポーズを披露してしまったフィリプセンが、待ち望んでいたツール・ド・フランス初のステージ優勝を掴み取る。フィニッシュ後は元チームメイトのポガチャルと抱き合って喜ぶシーンも。
「信じられないよ。何度も何度もチャレンジしてきたけれど、今日ようやく報われた。昨年(カヴェンディッシュが勝利した日)このフィニッシュを走って、最終コーナーからフィニッシュまで距離がないことを知っていた。最後は少し囲まれたけれど、マッズを追い抜くことができてよかった。ツールでの勝利をずっと追い求めてきたが、今日がその日だった」とフィリプセンは話している。
また、「僕は完璧なポジションにいたけれど、フィリプセンは強過ぎた」とライバルを称えるファンアールトにとっては今大会4度目のステージ2位。ここまで15ステージ中、ファンアールトのトップ10入りは7回に及んでいる。
総合勢にとっては(落車したヴィンゲゴーを除き)平穏な一日となった第2週目最終日だが、熱波にダメージを受けたミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)はこの日180km地点から単独走を強いられ、完走を目指していたものの無念のタイムアウト。ユンボも重要アシスト2人の脱落という不安要素を抱えて最後の休息日を迎えることとなった。
第2週目最終日となったツール・ド・フランス第14ステージの舞台は、ロデズからカルカッソンヌまで、中央山塊を避けるように西に蛇行しながら南下する今大会最長距離の202.5km。カルカッソンヌといえば昨年大会でマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、クイックステップ・アルファヴィニル)がエディ・メルクスがもつステージ通算に並ぶ34勝を挙げた場所であり、今年も集団スプリントに持ち込まれる予想が大。
しかしながらコースの大部分は細かいアップダウンが中心で、後半には3級山岳を中心とした山岳区間も登場。気温35度前後という暑い一日を前に、この日はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)の未出走というニュースが飛び込んだ。
落車による怪我をおして走っていたログリッチだが、今後のレーススケジュールを見込み、回復を最優先させてツールを離脱。「今のチームの有利な状況に貢献できたことを誇りに思うし、マイヨジョーヌとマイヨヴェールの獲得という目標を叶えられると信じている」というメッセージともに、ツールから2年連続のリタイアを喫することに。
また、序盤ステージを沸かせ、第10ステージで勝ったマグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)と、第5ステージ勝者サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)は共にPCR検査陽性でリタイア。感染リタイア者が徐々に増えるなか、第2週目最終日のスタートフラッグが振られた。
散発的なアタックが掛かる中、この日はマイヨヴェールのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)と共に先行し、ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)が追いついて3名逃げが形成される。トレック・セガフレードを中心に大勢がしばらく追走を試みていたが、スピードに長ける前3名がハイペースを貫き通したため、追いつくことは叶わなかった。
逃げグループを形成した3名
ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
メイン集団ではすぐにスプリント勝負を狙うバイクエクスチェンジ・ジェイコとアルペシン・ドゥクーニンク、さらにトレック・セガフレードがコントロールを開始し、逃げる3名に与えたのは僅か2分半弱。逃げ切り勝利の可能性が限りなくゼロに近くなったことを受け、ユンボはスプリント勝負のためにファンアールトをメイン集団に下げるという作戦変更を行った。
「本当は大きな逃げに乗るために先行したんだ。思っていたものと全く違う状況で、ワウトが下がったタイミングで今日はこれ以上の展開がないと思った」と振り返るドイツ王者ポリッツ。先頭グループが3名から2名に減り(しかもファンアールトが離脱)、スプリンターを振り落とす難しい丘もなく、そして気温40度に達しようかという今大会最も暑いコンディション。メイン集団にこの状況をひっくり返そうという意思はなく、平穏にフィニッシュに向けて距離を消化していった。
残り65km地点では小規模な座り込みデモが発生したものの、バイク警官の迅速な対処によってレース中断を回避。しかし時を同じくして、2分後方を走るメイン集団内で落車が発生した。
路面にうずくまり、立ち上がれなかったのはステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)だった。ここまでヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)の山岳アシストとして重要な責務を果たしてきたクライスヴァイクだったが、鎖骨骨折によって担架で救急車に担ぎ込まれリタイア。さらに数km後、ヴィンゲゴーにティシュ・ベノート(ベルギー)が追突する形で落車。幸い両名に大きな怪我はなく集団に戻ったものの、ユンボはこの日だけでログリッチとクライスヴァイクを失うという痛手を負ってしまった。
登坂でこの日の優勝候補であるファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)が遅れ、147kmの中間スプリントポイントを過ぎてから始まる3級山岳「コート・ド・カマーズ(距離5.1km/平均勾配4.1%)」では140km近く逃げていたポリッツとホノレを吸収。マッズ・ピーダスン(デンマーク)のためにトレック・セガフレードがペースアップを開始し、頂上が近づくとアレクシー・グジャール(フランス、B&Bホテルズ KTM)とバンジャマン・トマ(フランス、コフィディス)が飛び出した。
「ゲシュケの山岳ポイントを守るために飛び出した」と言うトマにとって、地元近くにフィニッシュするこのステージは是が非でも目立ちたい日。メイン集団の視界に捉えられながらもグジャールを残り5kmで振り切って、更にペースを上げてラスト3kmを駆け抜ける。残り10km区間を平均52.0km/hで駆け抜けたトマだったが、スプリント体制に入った集団に残り450mで飲み込まれ、ジ・エンド。ヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)の強力リードアウトでマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が解き放たれ、勝負の火蓋が切って落とされた。
最高66.7km/hで一気に加速したピーダスンだったが徐々に失速し、左からヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)、右からファンアールトの追い上げを許してしまう。ひときわ鋭い加速で追い抜き、完璧なハンドル投げを披露したフィリプセンがファンアールトに対してホイールひとつ分の差で勝ち切った。
ここまで4回トップ10入りを繰り返し、第4ステージでは一人逃げたファンアールトの存在に気づかず2位でガッツポーズを披露してしまったフィリプセンが、待ち望んでいたツール・ド・フランス初のステージ優勝を掴み取る。フィニッシュ後は元チームメイトのポガチャルと抱き合って喜ぶシーンも。
「信じられないよ。何度も何度もチャレンジしてきたけれど、今日ようやく報われた。昨年(カヴェンディッシュが勝利した日)このフィニッシュを走って、最終コーナーからフィニッシュまで距離がないことを知っていた。最後は少し囲まれたけれど、マッズを追い抜くことができてよかった。ツールでの勝利をずっと追い求めてきたが、今日がその日だった」とフィリプセンは話している。
また、「僕は完璧なポジションにいたけれど、フィリプセンは強過ぎた」とライバルを称えるファンアールトにとっては今大会4度目のステージ2位。ここまで15ステージ中、ファンアールトのトップ10入りは7回に及んでいる。
総合勢にとっては(落車したヴィンゲゴーを除き)平穏な一日となった第2週目最終日だが、熱波にダメージを受けたミケル・モルコフ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)はこの日180km地点から単独走を強いられ、完走を目指していたものの無念のタイムアウト。ユンボも重要アシスト2人の脱落という不安要素を抱えて最後の休息日を迎えることとなった。
ツール・ド・フランス2022第15ステージ結果
1位 | ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 4:27:27 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | |
4位 | ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー) | |
5位 | ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | |
7位 | フロリアン・セネシャル(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル) | |
8位 | ルーカ・モッツァート(イタリア、B&Bホテルズ KTM) | |
9位 | アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
10位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 59:58:28 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +2:22 |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +2:43 |
4位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | +3:01 |
5位 | アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +4:06 |
6位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | +4:15 |
7位 | ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +4:24 |
8位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | |
9位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +8:49 |
10位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +9:58 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 378pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 182pts |
3位 | ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 176pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス) | 46pts |
2位 | ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 39pts |
3位 | ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | 37pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 60:00:50 |
2位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +6:27 |
3位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) | +57:43 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 79:46:42 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | +35:16 |
3位 | グルパマFDJ | +39:29 |
text:So Isobe
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji, CorVos
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji, CorVos
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