2022/07/16(土) - 08:03
アルプス決戦を終え、第109回ツール・ド・フランス次なる舞台ピレネーを目指す。13日目はマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が逃げ切りからツール初勝利を決め、集団スプリントを狙ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)は落車する不運に見舞われた。
休息日を挟み、5日間に及ぶアルプス山岳決戦を終えた選手たちはピレネーに向かい大移動を開始。第109回ツール・ド・フランス第13ステージはル・ブール=ドワザンから真西に位置するサンテティエンヌを目指す192.6km。途中に設定された3級、2級、3級山岳に加えてカテゴリーのつかない丘を越え獲得標高差は2,000mに達するが、レース主催者であるA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシヨン)は「平坦ステージ」に分類している。
前日のフィニッシュ地点ラルプデュエズの麓の街ル・ブール=ドワザンを出発したのは、当日の朝に新型コロナウイルスの感染が発覚したワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)を除く158名の選手たち。これで6人目となった陽性者に対し、PCR検査の信頼度などの批判を一身に集めるクリスティアン・プリュドム氏がアクチュアルスタートの旗を降る。すぐさま元世界選手権王者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が飛び出した。
しかしこの動きが引き戻され、今度は30km地点の3級山岳ブリエ峠でフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とシュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)によるTTスペシャリストら3名が抜け出す。そこにクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)と共に、再アタックしたピーダスンらが合流すると、メイン集団がこれを容認。こうして7名の逃げ集団が形成された。
逃げグループを形成した7名
フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)
マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)
ユーゴ・ウル(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
それを追うプロトンの先頭で人数を集めたのはマイヨジョーヌのユンボ・ヴィスマではなく、今大会未だ勝利のないアルペシン・ドゥクーニンクや現役最後のツールとなるフィリップ・ジルベール(ベルギー)が先頭を牽くロット・スーダル。スプリンターチームに加え、横風分断の危険を察知したイネオス・グレナディアーズなども集団先頭に位置取りをしたためメイン集団のペースは上がり、逃げとのタイム差は2分半のまま推移した。
主催者予想を上回るスピーディーな展開で距離を減らしていくなか、メイン集団先頭付近でロット・スーダルを中心とした落車が発生し、カレブ・ユアン(オーストラリア)が地面に叩きつけられる事態に。レース後「何が起きたの全く分からない」と語ったユアンは右腕と膝などを負傷。なんとか再スタートを切り完走は果たしたものの、残り73km地点で優勝候補の1人が早々と勝負から脱落した。
カテゴリーのつかない丘が選手たちの脚を徐々に削り、アルプスの疲れを残すピュアスプリンターたちの喘ぎが逃げ集団に味方した。残り44km地点の3級山岳に入ると、レース中盤から苦悶の表情を浮かべていたファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)やペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)がプロトンから脱落。またアルペシンも隊列を組む選手たちが遅れを喫し、逃げの追走に興味を示したのがバイクエクスチェンジ・ジェイコだけという展開になったため、タイム差は2分40秒から縮まらなかった。
途中でシモンズが脱落したものの、逃げ集団はタイムトライアルの世界選手権王者ガンナと欧州覇者キュングの2人を中心にローテーションを回しながらフィニッシュを目指し突き進む。一方のメイン集団はバイクエクスチェンジが残り14kmまで決死の追走を見せたものの、タイム差が2分は割ることはなく、無線から追走断念の指示を受けたチームはユンボ・ヴィスマに集団先頭を譲った。
そして逃げ切りが確定した6名はこの報を受けて一気に活気づく。残り12.5kmの緩やかな登りで「6人のままスプリント勝負するのは嫌だった」と振り返るピーダスンが仕掛けると、追従できたライトとウル以外を振り落とす。これを25秒差で世界屈指のTTスペシャリスト2人による追走が届くことはなく、勝負は先頭の3名によるスプリントに持ち込まれた。
ウルを先頭にフラムルージュ(残り1km地点)を通過し、残り400mの左コーナーを抜けて最終ストレートへ。そして真っ先に加速したのはスプリント力で勝るピーダスンだった。その動きにライトが反応してウルももがくが、元世界王者のトップスピードには当然敵わなかった。フィニッシュ直前で後ろを振り返る余裕を見せたピーダスンが高々と両手を点に突き上げ、母国で叶わなかったツール初勝利を挙げた。
「ようやく掴み取った勝利だ。素晴らしい。開幕を迎えたデンマークでは初日のタイムトライアルを6位、翌日を3位という悪くない結果で終えたものの、やはり勝利が欲しかった。僕らチームはステージ優勝を狙いツールにやってきたので、1勝を挙げることができて肩の荷が下りた気持ちがするよ」と、戸惑いの表情を見せながらもピーダスンは喜んだ。
2019年のロード世界選手権を弱冠23歳にして制したピーダスンだが、それ以降は2020年のヘント〜ウェヴェルヘムを除きメジャーレースでの勝利から遠ざっていた。しかし今年はパリ〜ニースでの区間1勝を含む6勝を挙げるなど好調をキープ。母国で行われた開幕3連戦でこそ勝利を逃したものの、元世界王者の力を印象づけるツール初勝利を飾った。
トップから5分45秒遅れてやってきたメイン集団はマイヨヴェールを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が先着してポイント加算に成功。マイヨジョーヌのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)や総合2位でマイヨブランのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は同集団内でフィニッシュし、怪我が心配されるユアンや不調に喘ぐヤコブセンなどは20分遅れでレースを終えている。
休息日を挟み、5日間に及ぶアルプス山岳決戦を終えた選手たちはピレネーに向かい大移動を開始。第109回ツール・ド・フランス第13ステージはル・ブール=ドワザンから真西に位置するサンテティエンヌを目指す192.6km。途中に設定された3級、2級、3級山岳に加えてカテゴリーのつかない丘を越え獲得標高差は2,000mに達するが、レース主催者であるA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシヨン)は「平坦ステージ」に分類している。
前日のフィニッシュ地点ラルプデュエズの麓の街ル・ブール=ドワザンを出発したのは、当日の朝に新型コロナウイルスの感染が発覚したワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)を除く158名の選手たち。これで6人目となった陽性者に対し、PCR検査の信頼度などの批判を一身に集めるクリスティアン・プリュドム氏がアクチュアルスタートの旗を降る。すぐさま元世界選手権王者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が飛び出した。
しかしこの動きが引き戻され、今度は30km地点の3級山岳ブリエ峠でフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とシュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)によるTTスペシャリストら3名が抜け出す。そこにクイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)と共に、再アタックしたピーダスンらが合流すると、メイン集団がこれを容認。こうして7名の逃げ集団が形成された。
逃げグループを形成した7名
フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)
マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)
ユーゴ・ウル(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
それを追うプロトンの先頭で人数を集めたのはマイヨジョーヌのユンボ・ヴィスマではなく、今大会未だ勝利のないアルペシン・ドゥクーニンクや現役最後のツールとなるフィリップ・ジルベール(ベルギー)が先頭を牽くロット・スーダル。スプリンターチームに加え、横風分断の危険を察知したイネオス・グレナディアーズなども集団先頭に位置取りをしたためメイン集団のペースは上がり、逃げとのタイム差は2分半のまま推移した。
主催者予想を上回るスピーディーな展開で距離を減らしていくなか、メイン集団先頭付近でロット・スーダルを中心とした落車が発生し、カレブ・ユアン(オーストラリア)が地面に叩きつけられる事態に。レース後「何が起きたの全く分からない」と語ったユアンは右腕と膝などを負傷。なんとか再スタートを切り完走は果たしたものの、残り73km地点で優勝候補の1人が早々と勝負から脱落した。
カテゴリーのつかない丘が選手たちの脚を徐々に削り、アルプスの疲れを残すピュアスプリンターたちの喘ぎが逃げ集団に味方した。残り44km地点の3級山岳に入ると、レース中盤から苦悶の表情を浮かべていたファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)やペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)がプロトンから脱落。またアルペシンも隊列を組む選手たちが遅れを喫し、逃げの追走に興味を示したのがバイクエクスチェンジ・ジェイコだけという展開になったため、タイム差は2分40秒から縮まらなかった。
途中でシモンズが脱落したものの、逃げ集団はタイムトライアルの世界選手権王者ガンナと欧州覇者キュングの2人を中心にローテーションを回しながらフィニッシュを目指し突き進む。一方のメイン集団はバイクエクスチェンジが残り14kmまで決死の追走を見せたものの、タイム差が2分は割ることはなく、無線から追走断念の指示を受けたチームはユンボ・ヴィスマに集団先頭を譲った。
そして逃げ切りが確定した6名はこの報を受けて一気に活気づく。残り12.5kmの緩やかな登りで「6人のままスプリント勝負するのは嫌だった」と振り返るピーダスンが仕掛けると、追従できたライトとウル以外を振り落とす。これを25秒差で世界屈指のTTスペシャリスト2人による追走が届くことはなく、勝負は先頭の3名によるスプリントに持ち込まれた。
ウルを先頭にフラムルージュ(残り1km地点)を通過し、残り400mの左コーナーを抜けて最終ストレートへ。そして真っ先に加速したのはスプリント力で勝るピーダスンだった。その動きにライトが反応してウルももがくが、元世界王者のトップスピードには当然敵わなかった。フィニッシュ直前で後ろを振り返る余裕を見せたピーダスンが高々と両手を点に突き上げ、母国で叶わなかったツール初勝利を挙げた。
「ようやく掴み取った勝利だ。素晴らしい。開幕を迎えたデンマークでは初日のタイムトライアルを6位、翌日を3位という悪くない結果で終えたものの、やはり勝利が欲しかった。僕らチームはステージ優勝を狙いツールにやってきたので、1勝を挙げることができて肩の荷が下りた気持ちがするよ」と、戸惑いの表情を見せながらもピーダスンは喜んだ。
2019年のロード世界選手権を弱冠23歳にして制したピーダスンだが、それ以降は2020年のヘント〜ウェヴェルヘムを除きメジャーレースでの勝利から遠ざっていた。しかし今年はパリ〜ニースでの区間1勝を含む6勝を挙げるなど好調をキープ。母国で行われた開幕3連戦でこそ勝利を逃したものの、元世界王者の力を印象づけるツール初勝利を飾った。
トップから5分45秒遅れてやってきたメイン集団はマイヨヴェールを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が先着してポイント加算に成功。マイヨジョーヌのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)や総合2位でマイヨブランのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は同集団内でフィニッシュし、怪我が心配されるユアンや不調に喘ぐヤコブセンなどは20分遅れでレースを終えている。
ツール・ド・フランス2022第13ステージ結果
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 4:13:03 |
2位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
3位 | ユーゴ・ウル(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | |
4位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ) | +0:30 |
5位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター) | |
6位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | +0:32 |
7位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | +5:45 |
8位 | フロリアン・セネシャル(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル) | |
9位 | ルーカ・モッツァート(イタリア、B&Bホテルズ KTM) | |
10位 | アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 333pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 164pts |
3位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル) | 155pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス) | 43pts |
2位 | ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 39pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 36pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 50:49:56 |
2位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +5:17 |
3位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) | +54:11 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 152:21:50 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | +20:59 |
3位 | グルパマFDJ | +44:33 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji, CorVos
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji, CorVos
Amazon.co.jp