2022/07/12(火) - 19:12
MTB大国スイスで開催されたW杯第5戦。混沌の男子エリートを制したのはルーカ・ブライド(イタリア、サンタクルズ・FSA MTBプロチーム)で、北林力(Athlete Farm SPECIALIZED)が同カテゴリー初完走。女子U23レースに出場した川口うらら(日本体育大学)は45位だった。
男子エリート:ブライド初勝利でシューターとフルッキガーに更なる確執、北林力が初完走
MTBレースシーンの最高峰に位置付けられるUCIワールドカップの第5戦を迎えたのは、2018年世界選手権開催地であり、定番W杯サーキットの一つ、スイスのレンツァーハイデ。現世界王者のニノ・シューター(スコット・スラムMTBレーシングチーム)や、そのライバルとして名乗りを挙げるマティアス・フルッキガー(トムス・マクソン)ら、MTB・XCO界を牽引する大国スイスを舞台にハイレベルな戦いが繰り広げられた。
3.8kmのスタートループと4.2kmのメインコースを6周回、合計29kmで争われた男子エリートレースにエントリーしたのは29カ国113名。日本からは北林力(Athlete Farm SPECIALIZED)が参戦し、大混戦の79番手出走からスタートを切った。
スタートループを飛ばし、メインコースに入ってもなおレースを掌握したのは、ブラジル開催の第1戦でジュリアン・アブサロン(フランス)が保持するワールドカップ最多優勝記録タイとなる33勝目を獲得し、上書き更新を目指すシューターだった。2周目に入ってぐいぐい加速したシューターにはフルッキガーが飛びつき、アラン・ハースリー(南アフリカ、キャノンデールファクトリーレーシング)とフィリッポ・コロンボ(スイス、BMC MTBレーシング)も追従した。
一時的にペースを落とした先頭グループにはルーカ・ブライド(イタリア、サンタクルズ・FSA MTBプロチーム)とダビ・バレロ(スペイン、BHテンプロカフェUCC)も合流。後半戦に入ってペースアップが図られる中、フルッキガーのアタックによって先頭グループが分裂し、シューターが畳み掛けるようにペースアップを継続した。
アタックと合流を経て、先頭グループで最終周回突入の鐘を聴いたのはフルッキガー、シューター、ブライド、そしてハースリーの4名。次から次へと矢継ぎ早に全力アタックが掛かる中、フルッキガーとシューターが他2名を振り落としつつ最終盤の森林区間へ。勝負はその2人に絞られたかに思われたが、その区間を終えてカメラが捉えたのは、リードを築くブライドとハースリー、そして遅れたフルッキガーとシューターの姿だった。
シューターによれば、フルッキガーの無理な追い抜きによって交錯した二人がクラッシュ。ブライドが先行して最後の下りを終え、ハースリーとのゴールスプリント勝負へ。絞り尽くすようなスプリントで、アウト側から追い込むハースリーを抑えきったブライドが歓喜のW杯初優勝を遂げた。
「ニノとマティアスがぶつかり、そこから死に物狂いでフィニッシュまでアタックしたんだ。リザルトの一番上に僕の名前があるだなんて信じられない。インクレディブルだ。この後数日かけて実感が湧いてくるだろうけれど、今は全く勝利した現実味がないよ」と、涙ながらに語ったブライド。今年トップ10入賞が1回だけという、ダークホースがキャリア最大の勝利を挙げることに。
レース後のインタビューで謝ることなく「レースアクシデント」と繰り返したフルッキガーと、フィニッシュ後に怒りを爆発させたシューター。昨年の世界選手権ではこの二人の一騎討ちの末にシューターが勝利したが、その際フルッキガーはシューターの追い抜き方に不満をぶつけ、その後のW杯でも際どい抜き方でやり返すなど、レースで接戦を繰り返すごとに二人の緊張感は高まっているように見える。
そして北林は、ブライドから遅れること11分59秒、最終完走者となる90位でフィニッシュ。山本幸平の元で育ち、本格的なヨーロッパレース挑戦の中で自身初となる完走にこぎつけた。
「練習を思うように日本で積めずにいて、走りはスタートから良くなかった」と北林。「走っていて湧き出る力も気持ちも無く、苦しいレースでしたが、その中でも自分の頭ではストレスを作らず、気持を折らずに最後まで耐えて走る事が出来たのは今回良かった所です。この後はヨーロッパに残って生活していくので、シーズン後半のワールドカップで勝負をしながら走れるように練習して行きたいと思っています」と加えている。北林は今週末開催の第6戦にも連戦する予定だ。
女子エリート:仏女王ルコントが2連勝、U23の川口うららは45位
女子レースで序盤からリードしたのはリオ五輪女王のジェニー・リスヴェッツ(チーム31アイビスサイクルズ)で、東京五輪女王ヨランダ・ネフ(スイス、トレックファクトリーレーシングXC)とロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV)らが追う展開。やがてネフとアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)が入れ替わり、3名が先頭集団を形成する。
ネフや、シリーズ序盤戦に圧倒的な力を誇ったレベッカ・マコンネル(オーストラリア、プリマフロール・モンドレイカー・ジェヌイン)、元世界王者ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、BMC MTBレーシング)といった面々が第2グループ。しかしハイペースを維持して逃げる先頭グループに追いつくことはなかった。
全5周回中の4周目には登坂力に長けるルコントが抜け出し、8秒リードで最終周回へと突入。猛追するケラーとリスヴェッツを振り切ってルコントが2戦連続のW杯独走勝利を挙げた。
またこの日、元世界女王ケイト・コートニー(アメリカ、スコット・スラムMTBレーシングチーム)は8位で久々のトップ10入り。女子U23レースに出場した川口うらら(日本体育大学)は45位で、「昨年の順位を越えることができず、悔しいです。足が思うように動かず、気持ちも身体もプッシュすることができないまま、自分の持っている力を出しきれませんでした。結果を求める前に、まずは自分の納得できるレースになるように今回感じたことを大切にして、改善していきたいです」とSNSに綴っている。
男子エリート:ブライド初勝利でシューターとフルッキガーに更なる確執、北林力が初完走
MTBレースシーンの最高峰に位置付けられるUCIワールドカップの第5戦を迎えたのは、2018年世界選手権開催地であり、定番W杯サーキットの一つ、スイスのレンツァーハイデ。現世界王者のニノ・シューター(スコット・スラムMTBレーシングチーム)や、そのライバルとして名乗りを挙げるマティアス・フルッキガー(トムス・マクソン)ら、MTB・XCO界を牽引する大国スイスを舞台にハイレベルな戦いが繰り広げられた。
3.8kmのスタートループと4.2kmのメインコースを6周回、合計29kmで争われた男子エリートレースにエントリーしたのは29カ国113名。日本からは北林力(Athlete Farm SPECIALIZED)が参戦し、大混戦の79番手出走からスタートを切った。
スタートループを飛ばし、メインコースに入ってもなおレースを掌握したのは、ブラジル開催の第1戦でジュリアン・アブサロン(フランス)が保持するワールドカップ最多優勝記録タイとなる33勝目を獲得し、上書き更新を目指すシューターだった。2周目に入ってぐいぐい加速したシューターにはフルッキガーが飛びつき、アラン・ハースリー(南アフリカ、キャノンデールファクトリーレーシング)とフィリッポ・コロンボ(スイス、BMC MTBレーシング)も追従した。
一時的にペースを落とした先頭グループにはルーカ・ブライド(イタリア、サンタクルズ・FSA MTBプロチーム)とダビ・バレロ(スペイン、BHテンプロカフェUCC)も合流。後半戦に入ってペースアップが図られる中、フルッキガーのアタックによって先頭グループが分裂し、シューターが畳み掛けるようにペースアップを継続した。
アタックと合流を経て、先頭グループで最終周回突入の鐘を聴いたのはフルッキガー、シューター、ブライド、そしてハースリーの4名。次から次へと矢継ぎ早に全力アタックが掛かる中、フルッキガーとシューターが他2名を振り落としつつ最終盤の森林区間へ。勝負はその2人に絞られたかに思われたが、その区間を終えてカメラが捉えたのは、リードを築くブライドとハースリー、そして遅れたフルッキガーとシューターの姿だった。
シューターによれば、フルッキガーの無理な追い抜きによって交錯した二人がクラッシュ。ブライドが先行して最後の下りを終え、ハースリーとのゴールスプリント勝負へ。絞り尽くすようなスプリントで、アウト側から追い込むハースリーを抑えきったブライドが歓喜のW杯初優勝を遂げた。
「ニノとマティアスがぶつかり、そこから死に物狂いでフィニッシュまでアタックしたんだ。リザルトの一番上に僕の名前があるだなんて信じられない。インクレディブルだ。この後数日かけて実感が湧いてくるだろうけれど、今は全く勝利した現実味がないよ」と、涙ながらに語ったブライド。今年トップ10入賞が1回だけという、ダークホースがキャリア最大の勝利を挙げることに。
レース後のインタビューで謝ることなく「レースアクシデント」と繰り返したフルッキガーと、フィニッシュ後に怒りを爆発させたシューター。昨年の世界選手権ではこの二人の一騎討ちの末にシューターが勝利したが、その際フルッキガーはシューターの追い抜き方に不満をぶつけ、その後のW杯でも際どい抜き方でやり返すなど、レースで接戦を繰り返すごとに二人の緊張感は高まっているように見える。
そして北林は、ブライドから遅れること11分59秒、最終完走者となる90位でフィニッシュ。山本幸平の元で育ち、本格的なヨーロッパレース挑戦の中で自身初となる完走にこぎつけた。
「練習を思うように日本で積めずにいて、走りはスタートから良くなかった」と北林。「走っていて湧き出る力も気持ちも無く、苦しいレースでしたが、その中でも自分の頭ではストレスを作らず、気持を折らずに最後まで耐えて走る事が出来たのは今回良かった所です。この後はヨーロッパに残って生活していくので、シーズン後半のワールドカップで勝負をしながら走れるように練習して行きたいと思っています」と加えている。北林は今週末開催の第6戦にも連戦する予定だ。
女子エリート:仏女王ルコントが2連勝、U23の川口うららは45位
女子レースで序盤からリードしたのはリオ五輪女王のジェニー・リスヴェッツ(チーム31アイビスサイクルズ)で、東京五輪女王ヨランダ・ネフ(スイス、トレックファクトリーレーシングXC)とロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV)らが追う展開。やがてネフとアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)が入れ替わり、3名が先頭集団を形成する。
ネフや、シリーズ序盤戦に圧倒的な力を誇ったレベッカ・マコンネル(オーストラリア、プリマフロール・モンドレイカー・ジェヌイン)、元世界王者ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、BMC MTBレーシング)といった面々が第2グループ。しかしハイペースを維持して逃げる先頭グループに追いつくことはなかった。
全5周回中の4周目には登坂力に長けるルコントが抜け出し、8秒リードで最終周回へと突入。猛追するケラーとリスヴェッツを振り切ってルコントが2戦連続のW杯独走勝利を挙げた。
またこの日、元世界女王ケイト・コートニー(アメリカ、スコット・スラムMTBレーシングチーム)は8位で久々のトップ10入り。女子U23レースに出場した川口うらら(日本体育大学)は45位で、「昨年の順位を越えることができず、悔しいです。足が思うように動かず、気持ちも身体もプッシュすることができないまま、自分の持っている力を出しきれませんでした。結果を求める前に、まずは自分の納得できるレースになるように今回感じたことを大切にして、改善していきたいです」とSNSに綴っている。
メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第5戦男子エリート結果
1位 | ルーカ・ブライド(イタリア、サンタクルズ・FSA MTBプロチーム) | 1:17:32 |
2位 | アラン・ハースリー(南アフリカ、キャノンデールファクトリーレーシング) | +0:00 |
3位 | マティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン) | +0:04 |
4位 | ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム) | +0:12 |
5位 | フィリッポ・コロンボ(スイス、BMC MTBレーシング) | +0:32 |
6位 | ダビ・バレロ(スペイン、BHテンプロカフェUCC) | +0:32 |
7位 | トーマス・リッチャー(スイス、クロス・オルレンサイクリングチーム) | +1:38 |
8位 | クリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) | +1:47 |
9位 | ゲラルド・ケルシュバウアー(イタリア、スペシャライズドファクトリーレーシング) | +1:51 |
10位 | ジョフレ・クルレル(スペイン、プリマフロール・モンドレイカー・ジェヌイン) | +2:09 |
90位 | 北林力(Athlete Farm SPECIALIZED) | +11:59 |
メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第5戦女子エリート結果
1位 | ロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV) | 1:17:31 |
2位 | ジェニー・リスヴェッツ(チーム31アイビスサイクルズ) | +0:08 |
3位 | アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) | +0:24 |
4位 | ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、BMC MTBレーシング) | +2:06 |
5位 | アン・テルプストラ(オランダ、ゴーストファクトリーレーシング) | +2:06 |
6位 | ヨランダ・ネフ(スイス、トレックファクトリーレーシングXC) | +2:23 |
7位 | ケイト・コートニー(アメリカ、スコット・スラムMTBレーシングチーム) | +2:38 |
8位 | マルティナ・ベルタ(イタリア、サンタクルズ・FSA MTBプロチーム) | +2:47 |
9位 | リンダ・インダーガンド(スイス、リブファクトリーレーシング) | +3:00 |
10位 | カロリーヌ・ボヘ(デンマーク、ゴーストファクトリーレーシング) | +3:05 |
text:So Isobe
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