2010年7月8日、ツール・ド・フランス第5ステージが行なわれ、今大会3回目の本格的な集団スプリントでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)が優勝。昨年ステージ6勝を飾った韋駄天は、念願のステージ初勝利に涙を見せた。

ヒマワリ畑を通過するメイン集団ヒマワリ畑を通過するメイン集団 photo:Cor Vos第5ステージはエペルネからモンタルジまで、フランス中部に広がる広大な平野を駆け抜ける187.5km。前半に2つの4級山岳が設定されているだけの平坦コースで、起伏の少なさから集団スプリントの可能性大。スプリンターたちによるバトルが予想された。

気温が40度近くまで上がったこの日、6km地点でアタックを成功させたのは3名。

逃げるジュリアン・エルファレ(フランス、コフィディス)、ユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)、ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)逃げるジュリアン・エルファレ(フランス、コフィディス)、ユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)、ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vosスペインチャンピオンジャージを着るホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)、ジュリアン・エルファレ(フランス、コフィディス)、ユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)の3名が“熱い”エスケープを開始した。

以前から「第5ステージで逃げたい」と語っていた新城幸也(Bboxブイグテレコム)は逃げに乗れず。

メイン集団はチームHTC・コロンビアがコントロールを開始メイン集団はチームHTC・コロンビアがコントロールを開始 photo:Makoto Ayano3名の逃げは最大で7分55秒のリードを稼ぎ出し、総合50位のグティエレスが暫定マイヨジョーヌに。2つの4級山岳はいずれもファンデワールが先頭で通過し、チームメイトであるジェローム・ピノー(フランス)の山岳賞ジャージを守る動きを見せた。

ゴールまで100kmを切ると、徐々にメイン集団は追撃体制に。最も積極的に集団を率いたのはチームHTC・コロンビアで、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)、ベアト・グラブシュ(ドイツ)、マキシム・モンフォール(ベルギー)の3名が第1陣として集団を牽引。タイム差は4分、3分、2分と順調に縮まった。

完璧なスプリントで勝利したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)完璧なスプリントで勝利したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vosやがてランプレやサーヴェロ・テストチームも集団牽引に加わると、逃げグループには為す術無し。ゴールまで13kmを残してタイム差は1分を切り、残り7km地点でラストアタックを決めたグティエレスもゴール4km手前で吸収。大集団はスプリンターチームに先導され、モンタルジのゴールに向かった。

トニ・マルティン(ドイツ)とベルンハルト・アイゼル(オーストリア)が引き継いだチームHTC・コロンビアのトレインが、ランプレやガーミン・トランジションズとバトルを繰り広げながらラスト3km。人数を揃えたガーミンが先頭で主導権を握り、ラスト1kmに突入した。

ステージ15位でゴールする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)ステージ15位でゴールする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayanoガーミントレインの番手はマイヨヴェールを着るトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)がキープ。しかしカヴェンディッシュの発射台役のマーク・レンショー(オーストラリア)がフースホフトを押しのけ、そのままカヴを引き連れて先頭へ。

ガーミンのタイラー・ファラー(アメリカ)が連係ミスでスプリントが遅れる中、絶好の位置で発射されたカヴェンディッシュが先頭に。ゲラルド・チオレック(ドイツ、チームミルラム)やエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)の追撃届かず、トップを維持し続けたカヴェンディッシュが勢い良く両手を上げた。

表彰台で涙を見せるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)表彰台で涙を見せるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vos昨年のツールでステージ6勝を飾りながらも、今大会ここまで勝ち星が無かったカヴ。今シーズンは出だしからつまずき、ツール直前のツール・ド・スイスでは落車を発生させたとして目の敵に。低調気味だったマン島の超特急カヴェンディッシュが、ようやく、念願の、嬉しいステージ1勝目を手にした。

「1年を通して自分を苦しめていたプレッシャーから解放された気分だ。これまでの努力がようやく報われた。これからもっとステージ優勝を狙っていきたい(チームHTC・コロンビア公式サイトより)」。表彰台で涙を見せたカヴ。勢いを取り戻した「世界最速スプリンター」はライバルたちの脅威になるだろう。

集団スプリントに絡んだユキヤは、有力スプリンターの少し後ろ、ステージ15位でゴールに飛び込んだ。逃げでもスプリントでも上位に絡めるスピードの持ち主であることを今一度見せつけた。今後のステージでは逃げでチャンスを見いだしてくれるに違いない。

総合は動かず、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がパヴェで取り戻したマイヨジョーヌをキープ。カンチェラーラの首位の座は少なくともあと1日は安泰だろう。第7ステージからツールは山岳地帯に分け入って行く。


ツール・ド・フランス2010第5ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)4h02'18"
2位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、チームミルラム)
3位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
5位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)
6位 セバスティアン・テュルゴー(フランス、Bboxブイグテレコム)
7位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
8位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
9位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
10位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
15位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)

第5ステージ敢闘賞
ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)      22h59'45"
2位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)          +23"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)     +39"
4位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)      +46"
5位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)      +1'01"
6位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)        +1'09"
7位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)    +1'19"
8位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)      +1'31"
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)          +1'40"
10位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +1'42"
71位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)              +3'47"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)     102pts
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)     88pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)   81pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)   13pts
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) 8pts
3位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)     8pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ) 23h00'08"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)   +46"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)     +2'01"

チーム総合成績
1位 サクソバンク        69h03'10"
2位 ガーミン・トランジションズ    +11"
3位 チームスカイ           +25"


text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Makoto Ayano

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