2022/07/08(金) - 08:27
その加速力はまさに圧倒的。アルデンヌを駆けるツール・ド・フランス第6ステージの登坂フィニッシュで、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がライバル勢を一蹴。3連覇を目指す若き王者がボーナスタイムを得て、早くもマイヨジョーヌに袖を通した。
「パヴェ(石畳)ステージ翌日、そして山岳ステージ前日のイージーモードの日」そんなレース開始事前予想は180度覆された。
ベルギーからフランスに入国するツール・ド・フランス第6ステージは、春のクラシックシーズンでお馴染みのアルデンヌを駆け抜ける丘陵ステージ。コースプロフィール図は一見平坦に見えるものの、実際はその図に表現できないほどの細かいアップダウンが続き、獲得標高は2,400mを超える。
カテゴリー山岳はたった3ヶ所だが、フランスに戻ってきてからのラスト20kmからは4級と3級山岳(距離0.8km/平均12.3%)を立て続けに越え、最後はコート・デ・ルリジューズ(全長1.6km/高低差93m/平均5.8%)を駆け上がってフィニッシュする。
前回このフィニッシュ地点が登場した2017年大会の第3ステージでは、アルカンシエルを着たペテル・サガン(スロバキア、現トタルエネルジー)がクライマーであるダニエル・マーティン(アイルランド)らを破って優勝。過酷なパヴェを切り抜けたプロトンはあっさりと逃げを見送るかと思われたが、この日は逃げ切りを目論む選手たちが1時間以上にも渡り激しいアタック合戦を繰り広げることとなる。
その中で目立ったのはマイヨジョーヌのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)だった。前日2位のタコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)や今大会最年少のクィン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)といった強者たちが代わるがわる飛び出しを試みた。
一時的にシモンズとファンデルホールン、そしてブノワ・コスヌフロワ(フランス、AG2Rシトロエン)がメイン集団から1分リードを得ていたものの、落ち着かない集団からは再びファンアールトが追走し、ここにトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)や、総合4位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)までもが追従。レース開始後1時間の平均速度が52.6km/hという超ハイペースにで突き進んだ一方、調子の上がらないマチュー・ファンデルプール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)は集団後方で苦しい時間が続く。
レース開始後70kmを消化して5名が集団から飛び出し、2名が脱落。ファンアールトとシモンズ、そしてヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)が先行し、プロトンは遂にスピードを落として巡航体制に入る。こうしてマイヨジョーヌを含む3名逃げが決まった。
逃げグループを形成した3名
ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
クィン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)
ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)
総合首位の証マイヨジョーヌが逃げるという珍しい展開。メイン集団は約4分のリードを与えたものの、先頭グループがハイスピードを維持したため、決してイージーモードにならないまま距離を消化していく。レース開始後3時間を経ても平均スピードは50km/hを越え、最終的なマイヨヴェールを目指すファンアールトは145km地点の中間スプリントポイントを先頭通過。主催者予想を遥かに上回るスピーディーな展開で距離を減らしていった。
「大きな逃げに乗れば集団牽引で力を使う必要がなくなる。残念ながら逃げは3人だけだったけれど、その時点ですでに力を消費していたのでそのまま継続した」と振り返るファンアールト。残り66km地点ではフルサンがメカトラブルで離脱を喫し、後半戦の丘に入るとシモンズも脱落。またもマイヨジョーヌの一人逃げとなったものの、この日はメイン集団に分があった。
イネオス・グレナディアーズやUAEチームエミレーツが集団人数を絞りながらファンアールトとの距離を縮め、ゴール勝負に向けた位置取り争いを続けていく。10km地点を前にファンアールトを捉え、さらにスピードを上げる中ではアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が落車に巻き込まれた。
チームメイトと共に必死に追走したウラソフを振り切って突入した残り6km地点のコート・ド・ピュルヴォントゥー(800m/平均12.3%)ではアレクシー・ヴィエルモ(フランス、トタルエネルジー)がするすると抜け出したものの、マイケル・マシューズ(オーストラリア)を従えたバイクエクスチェンジ・ジェイコ率いる集団は慌てることなく追走し、視界に捕らえながら最後のコート・デ・ルリジューズ(全長1.6km/高低差93m/平均5.8%)に入った。
アシストを使い切ったバイクエクスチェンジに代わり、タデイ・ポガチャル(スロベニア)で勝利を狙うUAEチームエミレーツがペースメイク。マシューズやトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が隊列前方に位置取る中、残り350mからプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が真っ先に加速した。
ログリッチの踏み込みを確認したポガチャルがその背後に飛びつき、絶好のポジションから残り200mでスプリントを開始。爆発的な加速力の前に背後のダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)も、マシューズも反応できない。一気に4車身をつけたポガチャルが、後ろを振り返る余裕を見せつけながらフィニッシュラインに飛び込んだ。
前日に石畳適正を披露したポガチャルが、今度は登坂スプリントでマシューズやピドコックを軽々ねじ伏せた。2020年大会で自身初のマイヨジョーヌを獲得した1級山岳「プランシュ・デ・ベルフィーユ(距離7km/平均8.7%)」を前に今大会1勝目を獲り、ボーナスタイムを得て早くもマイヨジョーヌに袖を通すこととなった。
終盤に落車したウラソフは、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)らと共に5秒遅れでフィニッシュ。死角無しの強さを見せつけたポガチャルが、山岳ステージを前に、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)に31秒、アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)に39秒差を付けることとなった。
「パヴェ(石畳)ステージ翌日、そして山岳ステージ前日のイージーモードの日」そんなレース開始事前予想は180度覆された。
ベルギーからフランスに入国するツール・ド・フランス第6ステージは、春のクラシックシーズンでお馴染みのアルデンヌを駆け抜ける丘陵ステージ。コースプロフィール図は一見平坦に見えるものの、実際はその図に表現できないほどの細かいアップダウンが続き、獲得標高は2,400mを超える。
カテゴリー山岳はたった3ヶ所だが、フランスに戻ってきてからのラスト20kmからは4級と3級山岳(距離0.8km/平均12.3%)を立て続けに越え、最後はコート・デ・ルリジューズ(全長1.6km/高低差93m/平均5.8%)を駆け上がってフィニッシュする。
前回このフィニッシュ地点が登場した2017年大会の第3ステージでは、アルカンシエルを着たペテル・サガン(スロバキア、現トタルエネルジー)がクライマーであるダニエル・マーティン(アイルランド)らを破って優勝。過酷なパヴェを切り抜けたプロトンはあっさりと逃げを見送るかと思われたが、この日は逃げ切りを目論む選手たちが1時間以上にも渡り激しいアタック合戦を繰り広げることとなる。
その中で目立ったのはマイヨジョーヌのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)だった。前日2位のタコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)や今大会最年少のクィン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)といった強者たちが代わるがわる飛び出しを試みた。
一時的にシモンズとファンデルホールン、そしてブノワ・コスヌフロワ(フランス、AG2Rシトロエン)がメイン集団から1分リードを得ていたものの、落ち着かない集団からは再びファンアールトが追走し、ここにトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)や、総合4位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)までもが追従。レース開始後1時間の平均速度が52.6km/hという超ハイペースにで突き進んだ一方、調子の上がらないマチュー・ファンデルプール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)は集団後方で苦しい時間が続く。
レース開始後70kmを消化して5名が集団から飛び出し、2名が脱落。ファンアールトとシモンズ、そしてヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)が先行し、プロトンは遂にスピードを落として巡航体制に入る。こうしてマイヨジョーヌを含む3名逃げが決まった。
逃げグループを形成した3名
ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
クィン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)
ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)
総合首位の証マイヨジョーヌが逃げるという珍しい展開。メイン集団は約4分のリードを与えたものの、先頭グループがハイスピードを維持したため、決してイージーモードにならないまま距離を消化していく。レース開始後3時間を経ても平均スピードは50km/hを越え、最終的なマイヨヴェールを目指すファンアールトは145km地点の中間スプリントポイントを先頭通過。主催者予想を遥かに上回るスピーディーな展開で距離を減らしていった。
「大きな逃げに乗れば集団牽引で力を使う必要がなくなる。残念ながら逃げは3人だけだったけれど、その時点ですでに力を消費していたのでそのまま継続した」と振り返るファンアールト。残り66km地点ではフルサンがメカトラブルで離脱を喫し、後半戦の丘に入るとシモンズも脱落。またもマイヨジョーヌの一人逃げとなったものの、この日はメイン集団に分があった。
イネオス・グレナディアーズやUAEチームエミレーツが集団人数を絞りながらファンアールトとの距離を縮め、ゴール勝負に向けた位置取り争いを続けていく。10km地点を前にファンアールトを捉え、さらにスピードを上げる中ではアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が落車に巻き込まれた。
チームメイトと共に必死に追走したウラソフを振り切って突入した残り6km地点のコート・ド・ピュルヴォントゥー(800m/平均12.3%)ではアレクシー・ヴィエルモ(フランス、トタルエネルジー)がするすると抜け出したものの、マイケル・マシューズ(オーストラリア)を従えたバイクエクスチェンジ・ジェイコ率いる集団は慌てることなく追走し、視界に捕らえながら最後のコート・デ・ルリジューズ(全長1.6km/高低差93m/平均5.8%)に入った。
アシストを使い切ったバイクエクスチェンジに代わり、タデイ・ポガチャル(スロベニア)で勝利を狙うUAEチームエミレーツがペースメイク。マシューズやトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が隊列前方に位置取る中、残り350mからプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が真っ先に加速した。
ログリッチの踏み込みを確認したポガチャルがその背後に飛びつき、絶好のポジションから残り200mでスプリントを開始。爆発的な加速力の前に背後のダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)も、マシューズも反応できない。一気に4車身をつけたポガチャルが、後ろを振り返る余裕を見せつけながらフィニッシュラインに飛び込んだ。
前日に石畳適正を披露したポガチャルが、今度は登坂スプリントでマシューズやピドコックを軽々ねじ伏せた。2020年大会で自身初のマイヨジョーヌを獲得した1級山岳「プランシュ・デ・ベルフィーユ(距離7km/平均8.7%)」を前に今大会1勝目を獲り、ボーナスタイムを得て早くもマイヨジョーヌに袖を通すこととなった。
終盤に落車したウラソフは、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)らと共に5秒遅れでフィニッシュ。死角無しの強さを見せつけたポガチャルが、山岳ステージを前に、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)に31秒、アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)に39秒差を付けることとなった。
ツール・ド・フランス2022第6ステージ結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 4:27:13 |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | |
3位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | |
4位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
5位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | |
6位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
7位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | |
8位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
10位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 20:44:44 |
2位 | ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | +0:04 |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:31 |
4位 | アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:39 |
5位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:40 |
6位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:46 |
7位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:52 |
8位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +1:00 |
9位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | +1:01 |
10位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +1:02 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 198pts |
2位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル) | 137pts |
3位 | ヤスパー・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク) | 89pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | 11pts |
2位 | アレクシー・ヴィエルモ(フランス、トタルエネルジー) | 2pts |
3位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 2pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 20:44:44 |
2位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:40 |
3位 | ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +1:58 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 62:15:57 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | +1:01 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | +2:21 |
text:So Isobe
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji, CorVos
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji, CorVos
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