2022/07/07(木) - 12:16
「チームを失った僕にイスラエルが声を掛けてくれた。与えてくれたチャンスを最大限活かそうと懸命に走った」とはツール5日目を制したサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)の言葉。混沌の石畳ステージを選手のコメントで振り返ります。
区間優勝 サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)
自身ツール初勝利を喜ぶサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック) photo:A.S.O.
昨年の冬に僕は所属チームを失い、イスラエル・プレミアテックが電話で「君にチャンスを与えたい」と声を掛けてくれた。貰ったチャンスを最大限に活かそうと、今シーズンは全てのレースを全力をかけた。ここまでの4レースはチームへの貢献を優先させていたが、今朝監督が僕の元にやってきて「クラーキー、今日は君が逃げに乗る日だ」と言ってくれた。その期待に応えたかった。
過去ブエルタ・ア・エスパーニャで区間優勝を挙げ、ジロ・デ・イタリアでジャージを獲得した経験から「今日はいけるのではないか」と思っていた。最後は両方の脚がつり、いままで一番のハンドル投げをした。(フィニッシュ後)どうか勝てていますように、と祈ったんだ。まだ自分の勝利が信じられないので、早くリプレイが観たいよ。
16歳の時にオーストラリアからヨーロッパにやってきた。そして第2休息日(7月18日)に僕は36歳を迎える。ヨーロッパに来て20年。ようやく夢が叶った。
表彰台に上がったサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック) photo:A.S.O.
思い返せばブエルタで勝利を挙げた2つのレースも2、3人によるスプリントだった。(最終盤で)ポーレスがアタックした時、僕よりも先に彼ら(ファンデルホールンとボアッソンハーゲン)がパニックを起こして飛び出してくれと願っていた。実はわざとボアッソンハーゲンが飛び出すスペースを開けたんだ。そしてその後は彼を全力で追いかけた。最後はタコが迫ってきて、前を向いたら「残り350m」の標識が見えたんだ。残り800mのコーナーからスプリントしていたので「まだこんなに距離があるのか!」とうんざりしたよ。笑
そしてタコの後ろから飛び出し、全力でフィニッシュライン目掛けてハンドルを投げた。
オーストラリアで観ている皆。応援をありがとう。同じオーストラリア人として僕の勝利を誇りに思ってくれるのならば、それ以上嬉しいことはない。
区間2位 タコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
歯を食いしばってスプリントするサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)とタコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
惜しかったね。ツールでの勝利まであと少しだった。もちろん残念に思っているよ。このステージが発表された昨年の冬から、ここで逃げようと決めていた。プロトンは逃げを捉えることよりも総合勢を守ることに注力するだろうから、逃げにチャンスがあると思っていた。先頭の6名による良い協力体制を築くことができ、リードが3分に達した時に逃げ切り勝利を確信した。
ボアッソンハーゲンのあとにスプリントしたのだが、少し早すぎたようだね。最後はサイモンに抜かれてしまった。僕と彼の差は数センチ。だが1位と2位の差はあまりにも大きい。
区間3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタルエネルジー)
ポーレスがアタックし、誰も追走しなかったので自ら追いかけた。(ポーレスを捉え)最後のスプリントは追い風が強く、スピードに乗る彼ら2人に抜かれてしまった。勝利を逃し残念だが、逃げ集団で走ることができてよかったと思う。
区間5位&マイヨアポワ マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
カテゴリー山岳が1つでもあればよかったのだが、逃げに乗ることができてよかったよ。チームの作戦としてはニールソン(ポーレス)を逃げに入れ、彼で勝負することだった。石畳レースでは何があるか分からない。だから逃げ集団の方が安全に走ることができる。残念ながら勝利はできなかったものの、良いレースができた。
区間7位&マイヨブラン タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
パヴェで抜け出したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)とヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:CorVos
あらゆる不運を想定していたが、僕の身には何も起きなかった。チームは石畳区間の前まで僕を守ってくれ、そこからはストゥイヴェンに食らいつこうと必死に走った。今日の目標は安全にこなして自分自身を守ること。そこに加え(ライバルとのタイム差という)得るものがあったのでポジティブな結果だと思っている。
区間16位&マイヨジョーヌ&マイヨヴェール ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
ヴィンゲゴーを引き上げるべくワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が牽引する photo:CorVos
(石畳区間に入った)序盤から集団前方にいるのが賢明ではないと感じたんだ。石畳に加えて町から町に向かう道幅の狭いコースや障害物が多く、極力ストレスを減らしたかったからね。しかしさすがに後ろは危険過ぎると判断し、集団前方に移動しようとした途中の狭まったコースで落車してしまった。
身体を少し痛め、同時に位置取り争いをする自信も失ってしまった。石畳でチームメイトを守るのではなく、集団復帰を目指さなくてはならず残念な展開となった。
もちろん望んでいたような展開のレースではない。そんな中でも考えを変え、今日のような日も乗り越えなくてはならない。幸いヨナス(ヴィンゲゴー)によって総合順位に大きなダメージはない。今日は不運の中チーム一丸となって追走することができた。この後も僕たちは変わらず戦い続けるよ。
フィニッシュ後、いまだマイヨジョーヌ着用の権利があると聞かされ驚いたよ。脚に力はなく、ジャージのことは忘れていたからね。ベルギーを出発する明日もマイヨジョーヌを楽しみたい。
肩を脱臼するも、2分59秒遅れで完走したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
障害物がコース上に現れ落車してしまった。コース上で脱臼した肩を戻すことはできず、観客の椅子を借りてこうやって(両手で膝を抱え)肩を入れたんだ。失ったタイム差を取り戻すことは難しいが、出来る限りのことをする。
ーこれで総合優勝のチャンスが絶たれたと思っているか?
まだその質問に答えるほど頭の整理はついていない。だが明日からも全力を尽くすよ。
ここ数日精彩を欠くマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
81位(3分48秒遅れ)でフィニッシュしたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos
ここ数日調子が悪く、特に今日は良くなかった。以前の体調に戻ったみたいでとてもフラストレーションが溜まっている。これ以上の説明することもない。ツール期間中に回復することを祈って、引き続き戦い続けていく。
text:Sotaro.Arakawa
区間優勝 サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)
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昨年の冬に僕は所属チームを失い、イスラエル・プレミアテックが電話で「君にチャンスを与えたい」と声を掛けてくれた。貰ったチャンスを最大限に活かそうと、今シーズンは全てのレースを全力をかけた。ここまでの4レースはチームへの貢献を優先させていたが、今朝監督が僕の元にやってきて「クラーキー、今日は君が逃げに乗る日だ」と言ってくれた。その期待に応えたかった。
過去ブエルタ・ア・エスパーニャで区間優勝を挙げ、ジロ・デ・イタリアでジャージを獲得した経験から「今日はいけるのではないか」と思っていた。最後は両方の脚がつり、いままで一番のハンドル投げをした。(フィニッシュ後)どうか勝てていますように、と祈ったんだ。まだ自分の勝利が信じられないので、早くリプレイが観たいよ。
16歳の時にオーストラリアからヨーロッパにやってきた。そして第2休息日(7月18日)に僕は36歳を迎える。ヨーロッパに来て20年。ようやく夢が叶った。
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思い返せばブエルタで勝利を挙げた2つのレースも2、3人によるスプリントだった。(最終盤で)ポーレスがアタックした時、僕よりも先に彼ら(ファンデルホールンとボアッソンハーゲン)がパニックを起こして飛び出してくれと願っていた。実はわざとボアッソンハーゲンが飛び出すスペースを開けたんだ。そしてその後は彼を全力で追いかけた。最後はタコが迫ってきて、前を向いたら「残り350m」の標識が見えたんだ。残り800mのコーナーからスプリントしていたので「まだこんなに距離があるのか!」とうんざりしたよ。笑
そしてタコの後ろから飛び出し、全力でフィニッシュライン目掛けてハンドルを投げた。
オーストラリアで観ている皆。応援をありがとう。同じオーストラリア人として僕の勝利を誇りに思ってくれるのならば、それ以上嬉しいことはない。
区間2位 タコ・ファンデルホールン(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
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ボアッソンハーゲンのあとにスプリントしたのだが、少し早すぎたようだね。最後はサイモンに抜かれてしまった。僕と彼の差は数センチ。だが1位と2位の差はあまりにも大きい。
区間3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタルエネルジー)
ポーレスがアタックし、誰も追走しなかったので自ら追いかけた。(ポーレスを捉え)最後のスプリントは追い風が強く、スピードに乗る彼ら2人に抜かれてしまった。勝利を逃し残念だが、逃げ集団で走ることができてよかったと思う。
区間5位&マイヨアポワ マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
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カテゴリー山岳が1つでもあればよかったのだが、逃げに乗ることができてよかったよ。チームの作戦としてはニールソン(ポーレス)を逃げに入れ、彼で勝負することだった。石畳レースでは何があるか分からない。だから逃げ集団の方が安全に走ることができる。残念ながら勝利はできなかったものの、良いレースができた。
区間7位&マイヨブラン タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
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区間16位&マイヨジョーヌ&マイヨヴェール ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
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身体を少し痛め、同時に位置取り争いをする自信も失ってしまった。石畳でチームメイトを守るのではなく、集団復帰を目指さなくてはならず残念な展開となった。
もちろん望んでいたような展開のレースではない。そんな中でも考えを変え、今日のような日も乗り越えなくてはならない。幸いヨナス(ヴィンゲゴー)によって総合順位に大きなダメージはない。今日は不運の中チーム一丸となって追走することができた。この後も僕たちは変わらず戦い続けるよ。
フィニッシュ後、いまだマイヨジョーヌ着用の権利があると聞かされ驚いたよ。脚に力はなく、ジャージのことは忘れていたからね。ベルギーを出発する明日もマイヨジョーヌを楽しみたい。
肩を脱臼するも、2分59秒遅れで完走したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
障害物がコース上に現れ落車してしまった。コース上で脱臼した肩を戻すことはできず、観客の椅子を借りてこうやって(両手で膝を抱え)肩を入れたんだ。失ったタイム差を取り戻すことは難しいが、出来る限りのことをする。
ーこれで総合優勝のチャンスが絶たれたと思っているか?
まだその質問に答えるほど頭の整理はついていない。だが明日からも全力を尽くすよ。
ここ数日精彩を欠くマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
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ここ数日調子が悪く、特に今日は良くなかった。以前の体調に戻ったみたいでとてもフラストレーションが溜まっている。これ以上の説明することもない。ツール期間中に回復することを祈って、引き続き戦い続けていく。
text:Sotaro.Arakawa
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