2022/07/12(火) - 19:41
デンマーク、ベルギー、スイスで繰り広げられたツールはフランス本土へ。そしてツール第2週目はアルプスの山岳地帯を舞台とした登坂バトルで幕開ける。大会最高地点のガリビエ峠やツール4年ぶりの登場となるラルプデュエズなど、第10〜15ステージのコースを紹介します。
7月12日(火)第10ステージ
モルジンヌ・レ・ポルト・デュ・ソレイユ〜ムジェーブ 148.1km(丘陵ステージ)
濃密な第1週目の疲れを癒やした選手たちはいきなりアルプス3連戦に臨む。だがレース主催者による配慮からか、その初日は2級山岳にフィニッシュする148.1kmと短く、比較的穏やかなレイアウトを用意した。難易度の低い山岳ステージに今大会2番目に短い距離(個人TTと最終日は除く)となれば、すなわち逃げ屋の出番。今大会不出場の逃げ屋トーマス・デヘントならばコースブックに折り目をつけていたに違いない。
出発地点は南にモンブラン、北のレマン湖に挟まれたスキーリゾート地モルジンヌ・レ・ポルト・デュ・ソレイユ。そこから一旦テレマン湖畔の街トノンまで北上すると、フィニッシュ地点のムジェーヴ飛行場に向かって約100kmの行程を南下する。登場するカテゴリー山岳は4級、3級、4級とインパクトはない。
最後の2級山岳ムジェーヴ(飛行場)も総距離19.2kmかつ平均勾配4.1%(最大でも7%以下)の緩やかだが、フィニッシュ手前約2kmだけその勾配が7%まで上がる。ちなみにここは2020年のクリテリウム・デュ・ドーフィネの第5ステージで、その前日に落車リタイアしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)に代わりセップ・クス(アメリカ)が勝利を挙げた場。第1週目でライバルを圧倒したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に対し、ユンボ・ヴィスマが反撃のきっかけを掴めるか。
フィニッシュ予定時刻:午前0時7分頃(日本時間)
7月13日(水)第11ステージ
アルベールビル〜コル・ド・グラノン・セッレ=シェヴァリブリアンソン 151.7km(山岳ステージ)
超級山岳が今大会初めて登場するアルプス2日目。それも151.2kmと短い距離に、超級山岳ガリビエ峠と超級山岳グラノン峠が詰め込まれた過酷なレイアウトとなっている。総合順位がシャッフルされることはもちろん、制限時間内にフィニッシュを目指さなくてはならないスプリンターたちにとっても試練の日となる。
本格的な登坂が始まるのはアルベールビルをスタートして70.7km地点から。まずは2017年大会でログリッチがスロベニア人初勝利を挙げた1級山岳テレグラフ(距離11.9km/平均7.1%)を越え、5kmのダウンヒルの後に超級山岳ガリビエ(距離17.7km/平均6.9%)に臨む。最大13%を越えた先にある頂上は大会最高地点の標高2642mで、ここを先頭通過した選手には「アンリ・デグランジュ賞」が贈られる。
ガリビエ峠が登場する例年のツールならばフィニッシュ地点は下った先にあるヴァロワールに引かれることが定番となっている。しかしレース主催者はそこから超級山岳コル・デュ・グラノンの登坂を選手たちに課した。登坂距離11.3kmの勾配は平均9.2%で、特に残り8〜5kmの区間は勾配が2桁代で最大勾配は18%に達する”激坂”だ。
超級山岳コル・デュ・グラノンの険しさは、その勾配だけでなく狭く荒れた(また滑りやすい)路面と幾度とないタイトコーナーにある。前回この山岳が登場したのはベルナール・イノーが最後に総合優勝を果たした1986年。ここでイノーがマイヨジョーヌを失いチームメイトのレモンがアメリカ人選手として初めて着用した歴史ある場所だ。
フィニッシュ予定時刻:午前11時54分頃(日本時間)
7月14日(木)第12ステージ
ブリアンソン〜ラルプデュエズ 165.1km(山岳ステージ)
ツール主催者A.S.O.はフランス独立記念日の7月14日、ベルナール・イノーがグレッグ・レモンと手を取り合いフィニッシュした1986年大会の第18ステージと全く同じレイアウトを用意した。
スタート地点は前日にフィニッシュした超級山岳コル・デュ・グラノンの麓、ブリアンソン。そこから出発して僅か11.8km地点の中間スプリントでスプリンターたちのレースは実質的に終了し、クライマーと総合勢による登坂勝負が幕開ける。
まず手始めに超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)を前日の反対側から登坂して、テレグラフを下山。続いて登り口が急勾配(10%前後の勾配が4kmに渡って続く)の平均5.2%の超級クロワ・ド・フェールを29kmかけて登っていく。その後、ル・ブール=ドアザンの街まで下山すると、いよいと4年ぶりに登場するラルプデュエズ(距離13.8km/平均勾配8.1%)へ。数多の名勝負を生んできた21のヘアピンカーブを先頭で登坂した選手が、総合首位の証であるマイヨジョーヌを大きく引き寄せることになるだろう。
無論ティボー・ピノやダヴィド・ゴデュ(ともにグルパマ・エフデジ)、そしてロマン・バルデ(チームDSM)に期待がかかるところ。36年の時を超え復活したクイーンステージの勝利は誰の手に。
フィニッシュ予定時刻:午前1時11分頃(日本時間)
7月15日(金)第13ステージ
ル・ブール=ドワザン〜サンテティエンヌ 192.6km(平坦ステージ)
アルプスでの5日間に及ぶ山岳決戦を終え、総合上位勢にとっては久々に休息のステージとなるだろうか。反対にここまでをグルペットで過ごしたスプリンターにとっては数少ない勝利のチャンスとなる。
この日のスタート地点は前日のフィニッシュ地点であるラルプデュエズの麓の街ル・ブール=ドワザン。そこから西に進路を取り3つのカテゴリー山岳(3級、2級、3級)を越えると、フィニッシュするのはサッカーのフランス1部リーグで戦うASサンテティエンヌが本拠地とするサンテティエンヌだ。
細かく言えばそのホームスタジアム「スタッド・ジェフロワ=ギシャール」の側。残り400m地点に設定された緩やかな左コーナーを抜けて最終ストレートへ。そのクラブカラーである緑(マイヨヴェール)を争う白熱の集団スプリントが見られるか。
フィニッシュ予定時刻:午前0時37分頃(日本時間)
7月16日(土)第14ステージ
サンテティエンヌ〜マンド 192.5km(丘陵ステージ)
分類こそ丘陵ステージだが、中央山塊を越えるこの日の獲得標高差は3,400mを超える。選手たちの身体が温まる前、14.2km地点からはじまる3級山岳サン=ジュスト=マルモンは距離7.7km/平均勾配3.9%と逃げ向き。当然ここまでステージ優勝のないチームがわんさか逃げに選手を送り込んでくるだろう。
その後も3級、3級、3級とカテゴリー山岳(と細かなアップダウン)が続き、マンドの市街地に入った選手たちはピュアスプリンターは厳しいであろう2級山岳コート・ド・ラ・クロワ・ヌーヴ(距離3km/平均10.2%)を登坂する。フィニッシュ地点はそこから平坦路が1.5km続いた先にあるマンド=ブルヌー飛行場だ。
この登りがフランス人の記憶に根強く残っているのはミゲル・インデュライン(スペイン)が大会5連覇を成し遂げた1995年のツール第12ステージに登場したため。そしてこの時逃げ切り勝利を決めたのが、総合6位につけていたフランス人のローラン・ジャラベールだったからだ。
翌日が平坦ステージに加え翌々日が休息日のこの日、クライマーやパンチャーはもちろんタイム差を取り戻したい総合勢も動いてくるだろう。
フィニッシュ予定時刻:午前0時19分頃(日本時間)
7月17日(日)第15ステージ
ロデズ〜カルカッソンヌ 202.5km(平坦ステージ)
ツール第2週目は平坦ステージで締めくくられる。距離は今大会最長の202.5kmで、中央山塊を避けるように西に蛇行しながら真南のカルカッソンヌを目指す。2つの3級が登場するものの恐れるるに足らず、ピュアスプリンターも遅れる心配はなさそうだ。
フィニッシュ地点であるカルカッソンヌは昨年大会でマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、)がエディ・メルクスがもつステージ通算に並ぶ34勝を挙げた場。そこで勝利を狙うのは、開幕2日目で早くもカヴェンディッシュの呪縛から自身とルフェーブルGMを解き放ったファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)だ。
翌日が休息日ということもあり、スプリントチームのアシストたちは捨て身の牽引を見せるはず。つまり逃げ切りは難しく、大方の予想通り集団スプリントになだれ込む可能性が、極めて高い。
フィニッシュ予定時刻:午前0時51分頃(日本時間)
7月5日(月)休息日
text:Sotaro.Arakawa
7月12日(火)第10ステージ
モルジンヌ・レ・ポルト・デュ・ソレイユ〜ムジェーブ 148.1km(丘陵ステージ)
濃密な第1週目の疲れを癒やした選手たちはいきなりアルプス3連戦に臨む。だがレース主催者による配慮からか、その初日は2級山岳にフィニッシュする148.1kmと短く、比較的穏やかなレイアウトを用意した。難易度の低い山岳ステージに今大会2番目に短い距離(個人TTと最終日は除く)となれば、すなわち逃げ屋の出番。今大会不出場の逃げ屋トーマス・デヘントならばコースブックに折り目をつけていたに違いない。
出発地点は南にモンブラン、北のレマン湖に挟まれたスキーリゾート地モルジンヌ・レ・ポルト・デュ・ソレイユ。そこから一旦テレマン湖畔の街トノンまで北上すると、フィニッシュ地点のムジェーヴ飛行場に向かって約100kmの行程を南下する。登場するカテゴリー山岳は4級、3級、4級とインパクトはない。
最後の2級山岳ムジェーヴ(飛行場)も総距離19.2kmかつ平均勾配4.1%(最大でも7%以下)の緩やかだが、フィニッシュ手前約2kmだけその勾配が7%まで上がる。ちなみにここは2020年のクリテリウム・デュ・ドーフィネの第5ステージで、その前日に落車リタイアしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)に代わりセップ・クス(アメリカ)が勝利を挙げた場。第1週目でライバルを圧倒したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に対し、ユンボ・ヴィスマが反撃のきっかけを掴めるか。
フィニッシュ予定時刻:午前0時7分頃(日本時間)
7月13日(水)第11ステージ
アルベールビル〜コル・ド・グラノン・セッレ=シェヴァリブリアンソン 151.7km(山岳ステージ)
超級山岳が今大会初めて登場するアルプス2日目。それも151.2kmと短い距離に、超級山岳ガリビエ峠と超級山岳グラノン峠が詰め込まれた過酷なレイアウトとなっている。総合順位がシャッフルされることはもちろん、制限時間内にフィニッシュを目指さなくてはならないスプリンターたちにとっても試練の日となる。
本格的な登坂が始まるのはアルベールビルをスタートして70.7km地点から。まずは2017年大会でログリッチがスロベニア人初勝利を挙げた1級山岳テレグラフ(距離11.9km/平均7.1%)を越え、5kmのダウンヒルの後に超級山岳ガリビエ(距離17.7km/平均6.9%)に臨む。最大13%を越えた先にある頂上は大会最高地点の標高2642mで、ここを先頭通過した選手には「アンリ・デグランジュ賞」が贈られる。
ガリビエ峠が登場する例年のツールならばフィニッシュ地点は下った先にあるヴァロワールに引かれることが定番となっている。しかしレース主催者はそこから超級山岳コル・デュ・グラノンの登坂を選手たちに課した。登坂距離11.3kmの勾配は平均9.2%で、特に残り8〜5kmの区間は勾配が2桁代で最大勾配は18%に達する”激坂”だ。
超級山岳コル・デュ・グラノンの険しさは、その勾配だけでなく狭く荒れた(また滑りやすい)路面と幾度とないタイトコーナーにある。前回この山岳が登場したのはベルナール・イノーが最後に総合優勝を果たした1986年。ここでイノーがマイヨジョーヌを失いチームメイトのレモンがアメリカ人選手として初めて着用した歴史ある場所だ。
フィニッシュ予定時刻:午前11時54分頃(日本時間)
7月14日(木)第12ステージ
ブリアンソン〜ラルプデュエズ 165.1km(山岳ステージ)
ツール主催者A.S.O.はフランス独立記念日の7月14日、ベルナール・イノーがグレッグ・レモンと手を取り合いフィニッシュした1986年大会の第18ステージと全く同じレイアウトを用意した。
スタート地点は前日にフィニッシュした超級山岳コル・デュ・グラノンの麓、ブリアンソン。そこから出発して僅か11.8km地点の中間スプリントでスプリンターたちのレースは実質的に終了し、クライマーと総合勢による登坂勝負が幕開ける。
まず手始めに超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)を前日の反対側から登坂して、テレグラフを下山。続いて登り口が急勾配(10%前後の勾配が4kmに渡って続く)の平均5.2%の超級クロワ・ド・フェールを29kmかけて登っていく。その後、ル・ブール=ドアザンの街まで下山すると、いよいと4年ぶりに登場するラルプデュエズ(距離13.8km/平均勾配8.1%)へ。数多の名勝負を生んできた21のヘアピンカーブを先頭で登坂した選手が、総合首位の証であるマイヨジョーヌを大きく引き寄せることになるだろう。
無論ティボー・ピノやダヴィド・ゴデュ(ともにグルパマ・エフデジ)、そしてロマン・バルデ(チームDSM)に期待がかかるところ。36年の時を超え復活したクイーンステージの勝利は誰の手に。
フィニッシュ予定時刻:午前1時11分頃(日本時間)
7月15日(金)第13ステージ
ル・ブール=ドワザン〜サンテティエンヌ 192.6km(平坦ステージ)
アルプスでの5日間に及ぶ山岳決戦を終え、総合上位勢にとっては久々に休息のステージとなるだろうか。反対にここまでをグルペットで過ごしたスプリンターにとっては数少ない勝利のチャンスとなる。
この日のスタート地点は前日のフィニッシュ地点であるラルプデュエズの麓の街ル・ブール=ドワザン。そこから西に進路を取り3つのカテゴリー山岳(3級、2級、3級)を越えると、フィニッシュするのはサッカーのフランス1部リーグで戦うASサンテティエンヌが本拠地とするサンテティエンヌだ。
細かく言えばそのホームスタジアム「スタッド・ジェフロワ=ギシャール」の側。残り400m地点に設定された緩やかな左コーナーを抜けて最終ストレートへ。そのクラブカラーである緑(マイヨヴェール)を争う白熱の集団スプリントが見られるか。
フィニッシュ予定時刻:午前0時37分頃(日本時間)
7月16日(土)第14ステージ
サンテティエンヌ〜マンド 192.5km(丘陵ステージ)
分類こそ丘陵ステージだが、中央山塊を越えるこの日の獲得標高差は3,400mを超える。選手たちの身体が温まる前、14.2km地点からはじまる3級山岳サン=ジュスト=マルモンは距離7.7km/平均勾配3.9%と逃げ向き。当然ここまでステージ優勝のないチームがわんさか逃げに選手を送り込んでくるだろう。
その後も3級、3級、3級とカテゴリー山岳(と細かなアップダウン)が続き、マンドの市街地に入った選手たちはピュアスプリンターは厳しいであろう2級山岳コート・ド・ラ・クロワ・ヌーヴ(距離3km/平均10.2%)を登坂する。フィニッシュ地点はそこから平坦路が1.5km続いた先にあるマンド=ブルヌー飛行場だ。
この登りがフランス人の記憶に根強く残っているのはミゲル・インデュライン(スペイン)が大会5連覇を成し遂げた1995年のツール第12ステージに登場したため。そしてこの時逃げ切り勝利を決めたのが、総合6位につけていたフランス人のローラン・ジャラベールだったからだ。
翌日が平坦ステージに加え翌々日が休息日のこの日、クライマーやパンチャーはもちろんタイム差を取り戻したい総合勢も動いてくるだろう。
フィニッシュ予定時刻:午前0時19分頃(日本時間)
7月17日(日)第15ステージ
ロデズ〜カルカッソンヌ 202.5km(平坦ステージ)
ツール第2週目は平坦ステージで締めくくられる。距離は今大会最長の202.5kmで、中央山塊を避けるように西に蛇行しながら真南のカルカッソンヌを目指す。2つの3級が登場するものの恐れるるに足らず、ピュアスプリンターも遅れる心配はなさそうだ。
フィニッシュ地点であるカルカッソンヌは昨年大会でマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、)がエディ・メルクスがもつステージ通算に並ぶ34勝を挙げた場。そこで勝利を狙うのは、開幕2日目で早くもカヴェンディッシュの呪縛から自身とルフェーブルGMを解き放ったファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)だ。
翌日が休息日ということもあり、スプリントチームのアシストたちは捨て身の牽引を見せるはず。つまり逃げ切りは難しく、大方の予想通り集団スプリントになだれ込む可能性が、極めて高い。
フィニッシュ予定時刻:午前0時51分頃(日本時間)
7月5日(月)休息日
text:Sotaro.Arakawa
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