2022/07/03(日) - 07:02
ファビオ・ヤコブセン(オランダ)が今ツール最初の集団スプリントを制し、クイックステップ・アルファヴィニルが2連勝。2位に甘んじながらもワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がマイヨジョーヌに袖を通した。
前日にコペンハーゲンの個人タイムトライアルコースを濡らした雨雲はどこへやら。3日に1度以上は雨が降る(年間降水日数は157日)というデンマークだが、ツール・ド・フランス第2ステージを迎えた7月2日(土)、コペンハーゲンの西側の街ロスキレから海岸線沿いに西進し、ニュボーを目指す202.5kmコースは終始快晴の下にあった。
シェラン島北部の海岸線を反時計回りに進み、ステージ後半はデンマークの東部と西部の島を結ぶ全長18kmの「グレート・ベルト橋」を渡る。スタート後60kmを過ぎて4級山岳が3ヶ所用意されている以外はド平坦のスプリンター向けレイアウト。全チームが横風による集団分裂を警戒していたものの、基本的に常時向かい風となったことで大きな波乱は起きることがなかった。
気温は20度を超えたあたり。パレードランと国歌斉唱を済ませ、第109回ツール・ド・フランス最初のマスドステージ(ラインレース)が動き出す。アクチュアルスタートの旗が振られると同時に飛び出したのは、事前に逃げに乗りマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)獲得狙いを公言していたマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)だった。
コルトに続いたのは、2014年のU23世界王者でアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)と共に今年アンテルマルシェ入りしたスヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)と、B&Bホテルズ KTMのシリル・バルトとピエール・ロラン(共にフランス)という3名。スプリント勝負を目指すメイン集団はすぐイージーモードに切り替えて4名を見送り、こうして今大会最初のエスケープはあっさりと決まった。
逃げグループを形成した4名
スヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
シリル・バルト(フランス、B&Bホテルズ KTM)
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ KTM)
アシストを担うバルトを除き、ビーストルムとコルト、そしてロランの狙いは共に、「丘」と呼べる低難易度の3連続4級山岳(先頭通過者に1ポイント付与)でポイントを獲り、今大会最初のマイヨアポワ着用者となること。ロット・スーダルやクイックステップ・アルファヴィニル、バイクエクスチェンジ・ジェイコ、そしてユンボ・ヴィスマ。スプリンターチーム率いるメイン集団は2分というタイトリードを与えてレース状況をコントロールした。
マイヨアポワ争いは1つ目の登坂が始まる遥か前に、ロランのアタックによって幕開けた。スプリント力に秀でるビーストルムとコルトを出し抜こうとしたこの動きは失敗に終わり、登坂に入ってゴール勝負さながらの牽制からバルトがアタック。続いて加速したビーストルムに対し、母国ファンの大歓声を受けるコルトは余裕で追い抜き、狙い通り先頭通過で1ポイント確保。数的優位を活かせなかったB&B勢は二人から遅れ、その後追走するも合流することは叶わなかった。
鈴なりの観客が詰めかけた第2山岳ではサイドバイサイドのスプリントでコルトが先着し、ポイント取り返しを狙うビーストルムを下し、この日のマイヨアポワ獲得に成功した。「こんな経験は初めてだし、この先も多分無いだろう」とファンの声援に感激するコルトは続く第3山岳も先頭通過し、ガッツポーズで母国ファンと喜びを分かち合う。「中間スプリントと敢闘賞狙いに切り替えた」というビーストルムは残り75km地点の中間スプリントを争うことなく先頭通過。その30秒後に迫ったメイン集団ではスプリンター勢による争いの末、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)がワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)らを下し全体の3位通過を果たしている。
翌日以降の山岳賞キープを見据えるコルトを引き離し、ビーストルムは敢闘賞獲得に繋がる独走を開始した。しかし横風を受けて緊張感を高めるメイン集団は30km以上を残して元U23世界王者を飲み込み、そのままグレート・ベルト橋へ。落車に引っかかりメカトラブルに見舞われたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)はこの後長い追走を強いられることになった。
進行方向の斜め左前から7.0m/s前後の風が吹くグレート・ベルト橋。混沌を極めるレベルでこそなかったものの、集団右側では10名程度が絡む落車が起き、その中にはマイヨジョーヌを着るイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)の姿も。幸い怪我はなくすぐに復帰し、橋中間地点のスプロウエ島を過ぎてウランやマイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ)も合流。どのチームも仕掛けることなく橋を渡り切ってフュン島に入り、各チームがスプリントに向かう中、残り2.4km地点ではメイン集団を2分する大落車が発生した。
転倒したフロリアン・セネシャル(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)やダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)たちが道を塞ぎ、100名近い選手が足止めを喰らってしまう(ラスト3km以内でのアクシデントのため、救済措置によってタイム差なし扱いに)。この影響を受けなかった30名〜40名が、クイックステップトレインの主導のままスプリント合戦へとなだれ込んだ。
元デンマーク王者カスパー・アスグリーン(クイックステップ・アルファヴィニル)や復帰したランパールトたちがファビオ・ヤコブセン(オランダ)のリードアウトトレインを組み上げた。緩く右に曲がる下り基調の最終局面ではトレック・セガフレードの最終リードアウト役を務めるヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)がマッズ・ピーダスン(デンマーク)を発進させたものの、繰り下がりマイヨヴェールを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) が並びかける。
勝負は横並びでもがく2人に絞られたかと思われたが、フィニッシュ直前で急加速したヤコブセンが追い上げ、そしてパス。リードアウトを崩されながらも自力で活路を見出したヤコブセンが今大会最初のスプリンターバトルを制した。
「チームは素晴らしい働きをしてくれた。橋を渡り切った先のトリッキーなコーナーと、最終ストレート。彼らなくしてこの勝利は不可能だった。一人になってからは残り150mでスプリントを開始し、2人を抜いて勝つことができた。こういうと簡単そうに聞こえるけれど、決してそんなことはない」と言うヤコブセンにとって、今回がツール・ド・フランス初勝利。生死の淵をさまよった2020年ツール・ド・ポローニュ初日大事故から2年に渡るカムバックストーリーを、ツールのステージ優勝という最高の結果に結びつけた。
「ここに辿り着くまで長いプロセスを経て、一歩ずつ確実に進んできた。その過程で多くの人が私を助けてくれ、多大なサポートをしてくれた。この勝利は彼らのためのものであり、彼らの働きが無駄ではなかったと理解してもらいたい」と言うヤコブセン。「2年前に起こったことは永遠に残る記憶だが、多くの素晴らしい人々の助けを借りて克服することができ、幸運だった。自転車に乗ったりレースを楽しんだりすることができて本当に嬉しい。僕はまだ勝つことができる。素晴らしい日だ。だからこそ、私がここにいるのを手伝ってくれたすべての人に感謝したいと思う」と加えている。
ファンアールトは2日連続の2位に甘んじたものの、ボーナスタイムを得てランパールトからマイヨジョーヌを奪うことに成功。「プライドをかけてこのジャージを守りたいと思う。まだまだステージ優勝を狙うチャンスはある」と話している。
この日は落車に巻き込まれた選手も含め、誰一人リタイアすることなく176名がフィニッシュしている。
前日にコペンハーゲンの個人タイムトライアルコースを濡らした雨雲はどこへやら。3日に1度以上は雨が降る(年間降水日数は157日)というデンマークだが、ツール・ド・フランス第2ステージを迎えた7月2日(土)、コペンハーゲンの西側の街ロスキレから海岸線沿いに西進し、ニュボーを目指す202.5kmコースは終始快晴の下にあった。
シェラン島北部の海岸線を反時計回りに進み、ステージ後半はデンマークの東部と西部の島を結ぶ全長18kmの「グレート・ベルト橋」を渡る。スタート後60kmを過ぎて4級山岳が3ヶ所用意されている以外はド平坦のスプリンター向けレイアウト。全チームが横風による集団分裂を警戒していたものの、基本的に常時向かい風となったことで大きな波乱は起きることがなかった。
気温は20度を超えたあたり。パレードランと国歌斉唱を済ませ、第109回ツール・ド・フランス最初のマスドステージ(ラインレース)が動き出す。アクチュアルスタートの旗が振られると同時に飛び出したのは、事前に逃げに乗りマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)獲得狙いを公言していたマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)だった。
コルトに続いたのは、2014年のU23世界王者でアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)と共に今年アンテルマルシェ入りしたスヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)と、B&Bホテルズ KTMのシリル・バルトとピエール・ロラン(共にフランス)という3名。スプリント勝負を目指すメイン集団はすぐイージーモードに切り替えて4名を見送り、こうして今大会最初のエスケープはあっさりと決まった。
逃げグループを形成した4名
スヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
シリル・バルト(フランス、B&Bホテルズ KTM)
ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ KTM)
アシストを担うバルトを除き、ビーストルムとコルト、そしてロランの狙いは共に、「丘」と呼べる低難易度の3連続4級山岳(先頭通過者に1ポイント付与)でポイントを獲り、今大会最初のマイヨアポワ着用者となること。ロット・スーダルやクイックステップ・アルファヴィニル、バイクエクスチェンジ・ジェイコ、そしてユンボ・ヴィスマ。スプリンターチーム率いるメイン集団は2分というタイトリードを与えてレース状況をコントロールした。
マイヨアポワ争いは1つ目の登坂が始まる遥か前に、ロランのアタックによって幕開けた。スプリント力に秀でるビーストルムとコルトを出し抜こうとしたこの動きは失敗に終わり、登坂に入ってゴール勝負さながらの牽制からバルトがアタック。続いて加速したビーストルムに対し、母国ファンの大歓声を受けるコルトは余裕で追い抜き、狙い通り先頭通過で1ポイント確保。数的優位を活かせなかったB&B勢は二人から遅れ、その後追走するも合流することは叶わなかった。
鈴なりの観客が詰めかけた第2山岳ではサイドバイサイドのスプリントでコルトが先着し、ポイント取り返しを狙うビーストルムを下し、この日のマイヨアポワ獲得に成功した。「こんな経験は初めてだし、この先も多分無いだろう」とファンの声援に感激するコルトは続く第3山岳も先頭通過し、ガッツポーズで母国ファンと喜びを分かち合う。「中間スプリントと敢闘賞狙いに切り替えた」というビーストルムは残り75km地点の中間スプリントを争うことなく先頭通過。その30秒後に迫ったメイン集団ではスプリンター勢による争いの末、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)がワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)らを下し全体の3位通過を果たしている。
翌日以降の山岳賞キープを見据えるコルトを引き離し、ビーストルムは敢闘賞獲得に繋がる独走を開始した。しかし横風を受けて緊張感を高めるメイン集団は30km以上を残して元U23世界王者を飲み込み、そのままグレート・ベルト橋へ。落車に引っかかりメカトラブルに見舞われたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)はこの後長い追走を強いられることになった。
進行方向の斜め左前から7.0m/s前後の風が吹くグレート・ベルト橋。混沌を極めるレベルでこそなかったものの、集団右側では10名程度が絡む落車が起き、その中にはマイヨジョーヌを着るイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)の姿も。幸い怪我はなくすぐに復帰し、橋中間地点のスプロウエ島を過ぎてウランやマイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ)も合流。どのチームも仕掛けることなく橋を渡り切ってフュン島に入り、各チームがスプリントに向かう中、残り2.4km地点ではメイン集団を2分する大落車が発生した。
転倒したフロリアン・セネシャル(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)やダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)たちが道を塞ぎ、100名近い選手が足止めを喰らってしまう(ラスト3km以内でのアクシデントのため、救済措置によってタイム差なし扱いに)。この影響を受けなかった30名〜40名が、クイックステップトレインの主導のままスプリント合戦へとなだれ込んだ。
元デンマーク王者カスパー・アスグリーン(クイックステップ・アルファヴィニル)や復帰したランパールトたちがファビオ・ヤコブセン(オランダ)のリードアウトトレインを組み上げた。緩く右に曲がる下り基調の最終局面ではトレック・セガフレードの最終リードアウト役を務めるヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)がマッズ・ピーダスン(デンマーク)を発進させたものの、繰り下がりマイヨヴェールを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) が並びかける。
勝負は横並びでもがく2人に絞られたかと思われたが、フィニッシュ直前で急加速したヤコブセンが追い上げ、そしてパス。リードアウトを崩されながらも自力で活路を見出したヤコブセンが今大会最初のスプリンターバトルを制した。
「チームは素晴らしい働きをしてくれた。橋を渡り切った先のトリッキーなコーナーと、最終ストレート。彼らなくしてこの勝利は不可能だった。一人になってからは残り150mでスプリントを開始し、2人を抜いて勝つことができた。こういうと簡単そうに聞こえるけれど、決してそんなことはない」と言うヤコブセンにとって、今回がツール・ド・フランス初勝利。生死の淵をさまよった2020年ツール・ド・ポローニュ初日大事故から2年に渡るカムバックストーリーを、ツールのステージ優勝という最高の結果に結びつけた。
「ここに辿り着くまで長いプロセスを経て、一歩ずつ確実に進んできた。その過程で多くの人が私を助けてくれ、多大なサポートをしてくれた。この勝利は彼らのためのものであり、彼らの働きが無駄ではなかったと理解してもらいたい」と言うヤコブセン。「2年前に起こったことは永遠に残る記憶だが、多くの素晴らしい人々の助けを借りて克服することができ、幸運だった。自転車に乗ったりレースを楽しんだりすることができて本当に嬉しい。僕はまだ勝つことができる。素晴らしい日だ。だからこそ、私がここにいるのを手伝ってくれたすべての人に感謝したいと思う」と加えている。
ファンアールトは2日連続の2位に甘んじたものの、ボーナスタイムを得てランパールトからマイヨジョーヌを奪うことに成功。「プライドをかけてこのジャージを守りたいと思う。まだまだステージ優勝を狙うチャンスはある」と話している。
この日は落車に巻き込まれた選手も含め、誰一人リタイアすることなく176名がフィニッシュしている。
ツール・ド・フランス2022第2ステージ結果
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル) | 4:34:34 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | |
4位 | ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
6位 | ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー) | |
7位 | ジェレミー・ルクロック(フランス、B&Bホテルズ・KTM) | |
8位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | |
9位 | ルカ・モッツァート(イタリア、B&Bホテルズ・KTM) | |
10位 | ユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 4:49:50 |
2位 | イヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | +0:01 |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +0:08 |
4位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | +0:11 |
5位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | +0:12 |
6位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:14 |
7位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:16 |
8位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +0:17 |
9位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | +0:18 |
10位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:21 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイヨアポワ(山岳賞)
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 14:30:09 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +0:21 |
3位 | トレック・セガフレード | +0:37 |
text:So Isobe
photo:Makoto AYANO,CorVos
photo:Makoto AYANO,CorVos
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