オーストリアを舞台にしたMTBワールドカップ第4戦。マティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン)とロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV)がそれぞれ男女レースを制している。



金曜日のXCCを制したマティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン)金曜日のXCCを制したマティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン) photo:UCIXCC女子勝者はロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV)XCC女子勝者はロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV) photo:UCI


MTBレース最高峰の舞台である「メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ」第4戦の舞台は、オーストリアはザルツブルグ州のスキーリゾート、レオガング。ダウンヒルの定番コースとして知られているが、クロスカントリー(XCO)コースは2020年の世界選手権のために設定され、W杯開催実績は昨年に続く2回目という新しいコースだ。

男子エリート:フルッキガーがシューターを下して勝利

男子エリートでここまでW杯2連勝しているトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)はツール・ド・スイスに参戦中。頭一つ抜けている感のあるピドコックの不在も重なり、レースは実力伯仲の強豪選手たちが鎬を削り合う激しい戦いとなった。

抜群の登坂力でレースをリードするマティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン)抜群の登坂力でレースをリードするマティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン) photo:UCI
メキメキと成績を上げるヴラッド・ダスカル(ルーマニア、トレックファクトリーレーシングXC)やヘンリケ・アヴァンチーニ(ブラジル、キャノンデールファクトリーレーシング)らが好スタートを決めてスタートループを完了したものの、メイン周回に入ると1周目から世界王者ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム)が加速した。

直登の登り区間で積極的にペースを上げ、下り区間では持ち前のテクニックで魅せるなど、余裕を感じさせながら走るシューター。そんな世界王者には、ペースの上がらない第2グループからアラン・ハースリー(南アフリカ、キャノンデールファクトリーレーシング)とマティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン)、そしてダスカルが飛び出し、そして合流する。全6周回中の3周目にはフルッキガーがアタックしたことでダスカルが振り落とされ、やがてハースリーも脱落。こうして勝負は昨年の世界選手権で一騎討ちを繰り広げた2人に絞られた。

ヒリついた緊張感を漂わせて走る2人の均衡が崩れたのは最終周回の直登区間だった。「お互いにペースを落としていたように見えたけど、実際はかなりフルガス状態。向かい風が強く勝負のタイミングを待ち仕掛けた」と言うフルッキガーが仕掛け、5秒ほどのリードを稼いで最後の登りをクリア。そのままリードを維持しきったフルッキガーが今季W杯初勝利を挙げた。

シューターを退け、今季初のW杯勝利を挙げたマティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン)シューターを退け、今季初のW杯勝利を挙げたマティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン) photo:UCI
メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第4戦男子エリート表彰台メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第4戦男子エリート表彰台 photo:UCI
「ニノとの素晴らしい戦いだった。今回は僕の方が強くとてもハッピーだ。そして彼にもおめでとうと言いたい。登りが厳しく、更にリカバリーのチャンスがほとんど無いタフなコースだったし、暑さにも苦しめられたよ。そんな厳しいレースを制することができてうれしく思う」と、金曜日のXCC(クロスカントリーショートトラック)とのダブル優勝を飾ったフルッキガーは話している。



女子エリート:ルコントが復活勝利を挙げる

アルカンシエルを着るイヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシングXC)が2月から腰痛に苦しめられていたことを公表・レースキャンセルを選んだ女子エリートレース。スタートダッシュ中に現U23世界女王であり開催国期待の星モナ・ミッターウォールナー(オーストリア、キャノンデールファクトリーレーシング)が落車するという波乱の展開でスタートした。

レースを作り、独走に持ち込んだロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV)レースを作り、独走に持ち込んだロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV) photo:UCI
スタートループで抜け出し、先頭グループを構成したのは好調のジェニー・リスヴェッツ(チーム31アイビスサイクルズ)やロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV)、更にヨランダ・ネフ(スイス、トレックファクトリーレーシングXC)といったメンバーだった。

すぐに先頭グループがルコントとリスヴェッツに絞られる一方、ここまで圧倒的な登坂力でW杯全戦優勝中のレベッカ・マコンネル(オーストラリア、プリマフロール・モンドレイカー・ジェヌイン)は遅れをとった。「それまでと比べてコンディションを落としていた」と言うマコンネルは先頭グループに入れず、最終的に7位でレースを終了。「自分のレッドゾーンで攻め続けることができなかったけれど、今の状態としてはとても満足」と話している。

昨シーズン以来となるW杯優勝を挙げたロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV)昨シーズン以来となるW杯優勝を挙げたロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV) photo:UCI
メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第4戦女子エリート表彰台メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第4戦女子エリート表彰台 photo:UCI
やがて先頭グループでは、登坂力に勝るルコントが独走を開始した。金曜日のXCCを制して波に乗るフランス女王は、リスヴェッツや、その後方で3位グループを作るラウラ・スティッガー(オーストリア)とシーナ・フライ(スイス)のスペシャライズドファクトリーレーシングコンビを寄せ付けずフィニッシュへ。今季は昨年披露した圧倒的な力を見せれずにいたが、今回復調をアピールすることとなった。


メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第4戦男子エリート結果
1位 マティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン) 1:15:31
2位 ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム) +0:06
3位 アラン・ハースリー(南アフリカ、キャノンデールファクトリーレーシング) +0:39
4位 ヴラッド・ダスカル(ルーマニア、トレックファクトリーレーシングXC) +0:45
5位 マキシム・マロット(フランス、サンタクルズ・FSA・MTBプロチーム) +1:09
6位 ダビ・バレロ(スペイン、BHテンプロカフェUCC) +1:18
7位 アントン・クーパー(ニュージーランド、トレックファクトリーレーシングXC)
8位 ルカ・ブライドット(イタリア、サンタクルズ・FSA・MTBプロチーム) +2:03
9位 イェンス・シューマンス(ベルギー、スコット・クルーズ・オキシジェン・ゲレ) +2:09
10位 ジョシュア・ドゥバウ(フランス、ロックライダーレーシングチーム) +2:15
メルセデスベンツUCI MTBワールドカップ第4戦女子エリート結果
1位 ロアナ・ルコント(フランス、キャニオン・CLLCTV) 1:15:42
2位 ジェニー・リスヴェッツ(チーム31アイビスサイクルズ) +1:13
3位 ラウラ・スティッガー(オーストリア、スペシャライズドファクトリーレーシング) +1:28
4位 シーナ・フライ(スイス、スペシャライズドファクトリーレーシング) +1:41
5位 アン・テルプストラ(オランダ、ゴーストファクトリーレーシング) +2:10
6位 カロリーヌ・ボヘ(デンマーク、ゴーストファクトリーレーシング) +2:29
7位 レベッカ・マコンネル(オーストラリア、プリマフロール・モンドレイカー・ジェヌイン) +3:12
8位 ヨランダ・ネフ(スイス、トレックファクトリーレーシングXC) +3:52
9位 レナ・ゲラルト(フランス、KTMヴィットリア) +3:58
10位 アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) +4:19
text:So Isobe

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