2022/06/02(木) - 17:13
JCL(ジャパンサイクルリーグ)が、茨城県の「あみプレミアム・アウトレット」にてホビーレースを初開催した。本記事ではイベントの様子とあわせJCL片山右京チェアマンへのインタビューによって開催の意図をお伝えする。
5月14日、JCLのタイトルスポンサー及び資本パートナーでもある三菱地所株式会社が運営する「あみプレミアム・アウトレット」で開催されたホビーレース。この地域は国が自転車活用促進法により整備しているナショナルサイクリングルート「つくば霞ヶ浦りんりんロード」にも近接していること、さらにサイクルスポーツによる地域振興として「レースを楽しんだら、そのままショッピングも楽しめる」という試みにもチャレンジしたものだった。
”あっと驚く場所でのホビーレース”を実現するために、以下4つの企画が用意された。
・西濃運輸による「自転車の引渡し及びレース終了後の発送」を実施
・片山右京チェアマンがスターターを務める
・茨城県自転車競技連盟によるメンテナンスサービス実施
・新開隆人選手(那須ブラーゼン)、鈴木道也選手(さいたまディレーブ)来場
レースは3つのカテゴリーで、距離はそれぞれ5km、7km、15km。そして早朝7:00スタートという比較的小規模なものとなった。それでも小雨降る天候のなか、60人のホビーレーサーたちがクリテリウムレースを楽しんだ。
そしてこの大会の狙いである「レース後のショッピング」について。表彰式と参加者の記念撮影まで、大会プログラムのすべてが終了したのが午前8時50分。アウトレット各店舗の営業は通常通り10時オープンだったが、施設内の2つのコーヒー店、上島珈琲とタリーズコーヒーがこのレースに併せて9時より営業を開始。参加者や観客の皆さんはレース後のモーニングセットを楽しむことができた。
片山右京JCLチェアマン インタビュー
今回はスターターを務めたJCL片山右京チェアマンに、改めてJCLが目指すもの、そして現在の状況について直接お話をお伺いできた。決して長い時間ではなかったものの、短い時間の中で片山氏がJCLを通じて成し遂げようとしている目標について語ってもらった。
Q : まず最初に、改めてJCL理念についてお伺いします。JCL理念には4項目ありますが、1つ目が”地域密着型チームの価値向上への寄与”。2つ目が”地域課題解決への寄与”とあります。このことからJCLは地域を強く意識しているように感じます。3つ目に”世界基準となるチームや選手の輩出。4つ目に”世界が注目する新たなサイクルロードレースリーグの実現”と続いています。”地域貢献”がJCLの一番の狙いなのでしょうか?
A : JCLの目的はひとつ。あくまでも競技力の向上です。競技力向上によりオリンピックで活躍すること。日本代表チームでのツール・ド・フランスへ出場すること。そしてサイクルスポーツを日本でもメジャー競技にして、日本を元気にしたい。こうした大きな理念があります。
これを実現させるために、どのスポーツ競技でもそうなのですが、まずは実業団から始める。でもポストコロナになったら、参加料とか補助だけでは大会運営も厳しい。だから他のスポーツと同じようにプロ化をしたり、さまざまな権利とか、スポーツ庁が言っているような「スポーツを産業にする」というのを、国などと一緒にやっていきたい。地方自治体も含めて、みんなで一緒にやっていきたいという想いです。
Q : あくまでも日本のサイクルスポーツ界の競技力向上や、日本チームの海外大会での活躍を目指している。そのための支援を得る手段として、地域へ貢献しながら資金を獲得していくということですか?
A : その通りです。そこには2つの大きな課題があります。まずは自転車がいかにしてお金を稼げるかという課題です。主催者側もスポンサーや補助金の獲得が必要です。ロードレース大会は開催コストが高い。コスト削減しつつ、ショーアップもしていかなければならないと思う。
二つ目の課題。それは選手たちにちゃんとお給料を払えるようになるということ。「プロ選手になれる」「ご飯を食べていけるんだ」という現実感がないと、若い人たちが選手を目指してくれない。これらはすべてJKA(公益財団法人JKA)で出来上がった競輪のシステムをお手本にしています。
ロード競技も同じように、チームが選手に給料を支払わないといけない。そのためには色々とビジネスモデルを整備していく必要がある。それが野球だったりサッカーとかと同じように。Jリーグもお手本にしているから、川淵三郎さんに名誉顧問になって頂きました。そして橋本聖子会長(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長)も名誉監督になって頂きました。将来はJCL集合体のプロチームをつくって海外に挑戦していきます。
これは自身の例えですが、僕がモータースポーツのレースを始めた頃、学校の進路指導で先生からは「カーレーサーって何だ?」なんて言われていました。今はF1ドライバーだけでなく、スーパーGTでも若いドライバーたちが5千万とか6千万円を稼げるようになってきています。これにはちゃんと下支えしている組織があります。その組織「GTアソシエイション」の運営には、一般社団法人といったものも加わっています。このようにみんな一緒に上手くやっています。国の補助なども受けることができています。いろんな意味でスポーツが、ちゃんと産業化しているんです。
私たちJCLも、いろんな人たちと一緒にやっていきます。例えば今年の1月に開始したJCLトークンは、誰もがJCLの運営をご支援頂けるものです。JCLトークンの売上金は冒頭でお話したJCLの目的である、世界基準のチームを作ることと選手の育成に活用させて頂きますが、これを実現させるために、株式会社フィナンシエ様と一緒に取り組んでいます。
同社はブロックチェーン技術(※1)を使って、NFT(※2)事業や、クラウドファンディングサービスを展開しています。この取り組みは、スポーツ庁とSPORTS TECH TOKYO(※3)が共同で開催しているオープンイノベーション推進プログラム「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション2021」の一つです。そのうちにスポーツベッティングや宝くじのようなものが入ってくるかもしれません。このように業界全体がちゃんと廻っていければいい。そのためには運営する組織が必要です。
これまでは競技をしっかりやってきました。ですので次のステップとして、いろんな人たちと協力して業界全体が上手く廻ることをやっていきたい。これは実業団時代にも課題化していたこと。この課題解決のために、初めてJCLとして創りました。
去年はコロナ禍で15大会しか開催できませんでした。2年目となる今年は、57の事業体からお声掛けがあります。例えば新聞社がマラソン大会を運営していくことが難しくなっていて、自転車の大会を開催したいという声も頂いています。さらに小池都知事が発表したレインボーブリッジの交通を止めてのサイクリング大会の開催などでサイクルスポーツが一般に認知されると、東京マラソンのような成功が自転車界でも起こせます。そうすれば各都市でもサイクリング大会が開催されるようになるでしょう。そこで同じようにレースもやる。
JCLもすでにいろんなプランを進めています。またオリンピックのレガシーとして、今後のレース開催も進めています。このようなことをJCLが、関係者の皆さんと連携して進めていきます。
Q : これまでは競技だけやってきた。JCLはいろんな団体と協力しながらサイクルスポーツを産業化し、日本チームが世界の舞台で活躍することを目指しているということですね。では最後に、今回はレースとあわせてショッピングも楽しむ大会です。右京さんは何か楽しみにしていらっしゃいますか?
A : まずは朝食(笑)。スタッフはみんな朝早かったから、まだ朝食を摂っていないんですよ。そして僕が一番欲しいものは、世界で通用する選手たち。これは残念だけど、この大きなアウトレットでも売っているものじゃないですね。地道に創っていきます。皆さんもご支援をよろしくお願いします。
JCL初めてのホビーレースは参加者も少なく、あいにくの天候となってしまったが、スタート時には片山氏自らがメガホンを手に「今日は雨ですが、これは最高のコンディション。とても良い思い出になります!」と、選手たちの気持ちをポジティブにさせるエールを送っていたのが印象的だった。スタートは新開隆人(那須ブラーゼン)、鈴木道也(さいたまディレーブ)の2選手が先導するなど、若い選手たちにとっては刺激となる仕立てもあった。
片山チェアマンからはホビーレース開催の他にも、JCLの今後の展開についても具体的に様々なプランをお伺いすることができたが、まだ発表前のためここに記せないことも多かった。日本のサイクルスポーツがメジャーになっていくのはこれからだ。(インタビュー: 福島治男)
※1 安全にデータを記録できる技術の一つ。不正をしようとしても正しい取引履歴が維持され、また改ざんが非常に困難、多くの参加者に同じデータを分散保持させる仕組みのこと。
※2 Non-Fungible Token:非代替性トークン
※3 株式会社電通と、米国の投資会社Scrum Ventures LLC(スクラムベンチャーズ社)が共同で開催する、スポーツ×テクノロジーのワールド・アクセラレーション・プログラム
photo&text:Haruo Fukushima
5月14日、JCLのタイトルスポンサー及び資本パートナーでもある三菱地所株式会社が運営する「あみプレミアム・アウトレット」で開催されたホビーレース。この地域は国が自転車活用促進法により整備しているナショナルサイクリングルート「つくば霞ヶ浦りんりんロード」にも近接していること、さらにサイクルスポーツによる地域振興として「レースを楽しんだら、そのままショッピングも楽しめる」という試みにもチャレンジしたものだった。
”あっと驚く場所でのホビーレース”を実現するために、以下4つの企画が用意された。
・西濃運輸による「自転車の引渡し及びレース終了後の発送」を実施
・片山右京チェアマンがスターターを務める
・茨城県自転車競技連盟によるメンテナンスサービス実施
・新開隆人選手(那須ブラーゼン)、鈴木道也選手(さいたまディレーブ)来場
レースは3つのカテゴリーで、距離はそれぞれ5km、7km、15km。そして早朝7:00スタートという比較的小規模なものとなった。それでも小雨降る天候のなか、60人のホビーレーサーたちがクリテリウムレースを楽しんだ。
そしてこの大会の狙いである「レース後のショッピング」について。表彰式と参加者の記念撮影まで、大会プログラムのすべてが終了したのが午前8時50分。アウトレット各店舗の営業は通常通り10時オープンだったが、施設内の2つのコーヒー店、上島珈琲とタリーズコーヒーがこのレースに併せて9時より営業を開始。参加者や観客の皆さんはレース後のモーニングセットを楽しむことができた。
片山右京JCLチェアマン インタビュー
今回はスターターを務めたJCL片山右京チェアマンに、改めてJCLが目指すもの、そして現在の状況について直接お話をお伺いできた。決して長い時間ではなかったものの、短い時間の中で片山氏がJCLを通じて成し遂げようとしている目標について語ってもらった。
Q : まず最初に、改めてJCL理念についてお伺いします。JCL理念には4項目ありますが、1つ目が”地域密着型チームの価値向上への寄与”。2つ目が”地域課題解決への寄与”とあります。このことからJCLは地域を強く意識しているように感じます。3つ目に”世界基準となるチームや選手の輩出。4つ目に”世界が注目する新たなサイクルロードレースリーグの実現”と続いています。”地域貢献”がJCLの一番の狙いなのでしょうか?
A : JCLの目的はひとつ。あくまでも競技力の向上です。競技力向上によりオリンピックで活躍すること。日本代表チームでのツール・ド・フランスへ出場すること。そしてサイクルスポーツを日本でもメジャー競技にして、日本を元気にしたい。こうした大きな理念があります。
これを実現させるために、どのスポーツ競技でもそうなのですが、まずは実業団から始める。でもポストコロナになったら、参加料とか補助だけでは大会運営も厳しい。だから他のスポーツと同じようにプロ化をしたり、さまざまな権利とか、スポーツ庁が言っているような「スポーツを産業にする」というのを、国などと一緒にやっていきたい。地方自治体も含めて、みんなで一緒にやっていきたいという想いです。
Q : あくまでも日本のサイクルスポーツ界の競技力向上や、日本チームの海外大会での活躍を目指している。そのための支援を得る手段として、地域へ貢献しながら資金を獲得していくということですか?
A : その通りです。そこには2つの大きな課題があります。まずは自転車がいかにしてお金を稼げるかという課題です。主催者側もスポンサーや補助金の獲得が必要です。ロードレース大会は開催コストが高い。コスト削減しつつ、ショーアップもしていかなければならないと思う。
二つ目の課題。それは選手たちにちゃんとお給料を払えるようになるということ。「プロ選手になれる」「ご飯を食べていけるんだ」という現実感がないと、若い人たちが選手を目指してくれない。これらはすべてJKA(公益財団法人JKA)で出来上がった競輪のシステムをお手本にしています。
ロード競技も同じように、チームが選手に給料を支払わないといけない。そのためには色々とビジネスモデルを整備していく必要がある。それが野球だったりサッカーとかと同じように。Jリーグもお手本にしているから、川淵三郎さんに名誉顧問になって頂きました。そして橋本聖子会長(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長)も名誉監督になって頂きました。将来はJCL集合体のプロチームをつくって海外に挑戦していきます。
これは自身の例えですが、僕がモータースポーツのレースを始めた頃、学校の進路指導で先生からは「カーレーサーって何だ?」なんて言われていました。今はF1ドライバーだけでなく、スーパーGTでも若いドライバーたちが5千万とか6千万円を稼げるようになってきています。これにはちゃんと下支えしている組織があります。その組織「GTアソシエイション」の運営には、一般社団法人といったものも加わっています。このようにみんな一緒に上手くやっています。国の補助なども受けることができています。いろんな意味でスポーツが、ちゃんと産業化しているんです。
私たちJCLも、いろんな人たちと一緒にやっていきます。例えば今年の1月に開始したJCLトークンは、誰もがJCLの運営をご支援頂けるものです。JCLトークンの売上金は冒頭でお話したJCLの目的である、世界基準のチームを作ることと選手の育成に活用させて頂きますが、これを実現させるために、株式会社フィナンシエ様と一緒に取り組んでいます。
同社はブロックチェーン技術(※1)を使って、NFT(※2)事業や、クラウドファンディングサービスを展開しています。この取り組みは、スポーツ庁とSPORTS TECH TOKYO(※3)が共同で開催しているオープンイノベーション推進プログラム「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション2021」の一つです。そのうちにスポーツベッティングや宝くじのようなものが入ってくるかもしれません。このように業界全体がちゃんと廻っていければいい。そのためには運営する組織が必要です。
これまでは競技をしっかりやってきました。ですので次のステップとして、いろんな人たちと協力して業界全体が上手く廻ることをやっていきたい。これは実業団時代にも課題化していたこと。この課題解決のために、初めてJCLとして創りました。
去年はコロナ禍で15大会しか開催できませんでした。2年目となる今年は、57の事業体からお声掛けがあります。例えば新聞社がマラソン大会を運営していくことが難しくなっていて、自転車の大会を開催したいという声も頂いています。さらに小池都知事が発表したレインボーブリッジの交通を止めてのサイクリング大会の開催などでサイクルスポーツが一般に認知されると、東京マラソンのような成功が自転車界でも起こせます。そうすれば各都市でもサイクリング大会が開催されるようになるでしょう。そこで同じようにレースもやる。
JCLもすでにいろんなプランを進めています。またオリンピックのレガシーとして、今後のレース開催も進めています。このようなことをJCLが、関係者の皆さんと連携して進めていきます。
Q : これまでは競技だけやってきた。JCLはいろんな団体と協力しながらサイクルスポーツを産業化し、日本チームが世界の舞台で活躍することを目指しているということですね。では最後に、今回はレースとあわせてショッピングも楽しむ大会です。右京さんは何か楽しみにしていらっしゃいますか?
A : まずは朝食(笑)。スタッフはみんな朝早かったから、まだ朝食を摂っていないんですよ。そして僕が一番欲しいものは、世界で通用する選手たち。これは残念だけど、この大きなアウトレットでも売っているものじゃないですね。地道に創っていきます。皆さんもご支援をよろしくお願いします。
JCL初めてのホビーレースは参加者も少なく、あいにくの天候となってしまったが、スタート時には片山氏自らがメガホンを手に「今日は雨ですが、これは最高のコンディション。とても良い思い出になります!」と、選手たちの気持ちをポジティブにさせるエールを送っていたのが印象的だった。スタートは新開隆人(那須ブラーゼン)、鈴木道也(さいたまディレーブ)の2選手が先導するなど、若い選手たちにとっては刺激となる仕立てもあった。
片山チェアマンからはホビーレース開催の他にも、JCLの今後の展開についても具体的に様々なプランをお伺いすることができたが、まだ発表前のためここに記せないことも多かった。日本のサイクルスポーツがメジャーになっていくのはこれからだ。(インタビュー: 福島治男)
※1 安全にデータを記録できる技術の一つ。不正をしようとしても正しい取引履歴が維持され、また改ざんが非常に困難、多くの参加者に同じデータを分散保持させる仕組みのこと。
※2 Non-Fungible Token:非代替性トークン
※3 株式会社電通と、米国の投資会社Scrum Ventures LLC(スクラムベンチャーズ社)が共同で開催する、スポーツ×テクノロジーのワールド・アクセラレーション・プログラム
photo&text:Haruo Fukushima
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