2年越しのツール・ド・おきなわ市民200kmレースは、今年も「ホビーレーサーの甲子園」たるにふさわしい激しいドラマの連続だった。

落車、優勝候補によるアタックと絞り込み。勝負の「羽地の登り」まで先頭グループに残ったのはたった10人の強豪選手たち。そんな激戦のなか、終盤まで唯一チームメイトを有していたのがRoppongi Expressの大前翔と高岡亮寛だった。

勝つべき人間が勝てる位置にいた。そして、その2人、さらには多くの強豪勢が駆るマシンが、スペシャライズドのS-Works Tarmac SL8だ。「勝負どころまで脚を残すことができた」と大前が言い、「勝ちたいなら最終的にここに行き着く」と高岡が評するバイク。今回は2025年のツール・ド・おきなわ市民200kmレースを戦った2人の言葉で、レース、そしてS-Works Tarmac SL8を掘り下げていきたいと思う。

大前翔と高岡亮寛:RXの二人が掴み取った、おきなわ市民200kmのドラマ

終盤の勝負所に残った大前翔と高岡亮寛(Roppongi Express)。高岡にとって、この場面でチームメイトが残っているのは初めてだったという photo:Makoto AYANO

「先頭が8人になって、その中に2人残れたのは大きかったですね」と振り返るのは、2022年に前人未到の通算7勝目を挙げた高岡亮寛。長年“最強ホビーレーサー”として知られる存在であり、2020年に自身のバイクショップ「RX BIKE」を立ち上げてからも、ツール・ド・おきなわ制覇への情熱はまったく衰えていない。

その高岡が「もう一度おきなわで勝つために」と声をかけたのが、元プロ選手で、現在は医師として働く大前翔だった。高岡は大前にコーチングを依頼すると同時に、Roppongi Expressの一員として一緒に戦うことを提案した。そこにはかつて、大学時代に本気でロード競技に取り組み、そして社会人の道を歩んだという、全く同じ経験をしていたことも理由だったという。

優勝レポートでは“どちらもイエスと言うまで時間はかからなかった”と書きましたけど、実はけっこう悩んだんです。僕は一度やり始めたら没頭してしまうタイプなので、距離を置くと決めた自転車競技に戻るのに少し抵抗がありました」と大前は打ち明ける。しかし同時に、こうも続けた。「プロ生活は刺激的で楽しかったし、このまま医者として勉強だけに打ち込む毎日もどこか物足りなかった。そんなときの高岡さんからの声かけで、今度はアマチュアとして本気で取り組んでみよう、と思えたんです」。

大前翔がRoppongi Expressに加わった。似た境遇を持つ高岡と大前が同じジャージで沖縄を走る姿は、ある意味で必然だったのかもしれない。

過去市民200kmで7勝。高岡亮寛が最前列に並ぶ photo:Makoto AYANO

メイン集団内で本部大橋を渡る大前翔(Roppongi Express) photo:Makoto AYANO
井上から離された大前。この時点で負けを悟ったものの、その後粘りの走りで復帰を遂げた photo:Makoto AYANO


市民レース200kmを制した大前翔(Roppongi Express) photo:Makoto AYANO

スタート直後からハイペースで刻まれたレースは、落車とアタックが連鎖するサバイバル戦に発展。勝負どころの羽地で高岡と大前は「今年誰よりも強かった」と称されるディフェンディングチャンピオンの井上亮(Magellan Systems Japan)に屈したものの、大前がライバルと共に追いかけ、引きもどす。さらにラスト2km地点で下りを飛ばした高岡も追いつき、そのままアタック。吸収されれば大前のスプリント、逃げ切れば高岡の勝ちRXの勝ち筋が一気に開けた。

「心強かったですね。最後の場面で高岡さんがいてくれるだけで、精神的な余裕がまったく違いました。高岡さんが逃げても良いし、吸収されても脚を貯めた僕で勝てる。勝率が一気に上がりましたから」と大前。とはいえ、このときすでに大前の脚は限界に近かった。「100km地点からずっと脚を攣っていて、最後のスプリントは7割くらいの出力しか出てなかった」と本人は明かす。それでも勝てたのは、序盤〜中盤を戦略的に運び、決定的な場面で脚を残せていたからだと言う。

高岡も同じ思いで走っていた。「二人とも何をすべきか、言葉を交わさずとも分かっていました。個人的には最後まで勝負には残れるだろうけど、自分が勝てるイメージはなかった。いかに大前を有利に最後まで連れていくかを考えていました」。勝負はゴールスプリントへと収束し、得意のスプリントでもがき抜いた大前が勝ったのは周知の通りだ。

なぜ勝者はS-WORKSに行き着くのか。その走りをTarmac SL8が支えた

大前翔と高岡亮寛、そしてディフェンディングチャンピオンの井上亮。今年の市民200kmの勝負を最後まで形づくった3人が乗ったマシンは、いずれもS-Works Tarmac SL8だった。それは偶然ではなく、必然だったのかもしれない。

200kmを超える長丁場に加え、長い登りと高速の下り、スピードを維持したまま越えるアップダウンが連続する市民200kmは、SL8がもっとも真価を発揮する舞台だ。数字やカタログのスペックでは語れない、走らせて分かる強さについて、最前線で戦ったふたりが口にしたのは、核心を突くものだった。

「とにかくSL8の反応の良さには助けられたと思います。例えば与那の坂(普久川ダムへの登り)は勾配がキツくなっては緩んで...の繰り返し。加減速を繰り返す集団の中で、ダンシングでちょっと加速したり、勾配が上がったところでパワーを上げたり。そんな場面での俊敏性は他のバイクには無いのかな、と思います。実際にパワーとバイクが進んだ速度、登坂時間で見ると他のバイクで測っても一緒なのかもしれないけれど、そこのフィーリングが良いということは、後半まで脚を残す上では大きなアドバンテージになります(大前)」。

「一番強かった」と称されたディフェンディングチャンピオンの井上亮(Magellan Systems Japan)。同じくS-Works Tarmac SL8に乗る photo:Makoto AYANO

大前には、Tarmacに対してずっと胸の内にしまっていた感情があったという。「これは失礼な話なのか、受け取り方次第だと思うんですけど、僕、ずっとTarmacってつまらないと思ってたんですよ」。そう言って苦笑いする大前は、理由をこう説明する。

「自転車を始めた十数年前、Tarmacは(アルベルト)コンタドールが乗って、常に世界の第一線で結果を残していました。僕の中では機材の頂点にいるバイク。だから、高校生や大学生の頃は手を出すことに抵抗があったんです。バイクに乗る楽しみ、いじる楽しみも自転車の魅力だったから、最初から頂点に行ってしまうとその先が無いように感じてしまって...」。

そう語る彼も、アマチュアで日本一を本気で狙うようになったタイミングで考え方が変わった。「そろそろ機材のせいにできない環境にしてもいいんじゃないか、と。ちょうど高岡さんが橋渡しをしてくれたこともあって、いよいよ腹をくくったんです」

「Tarmac SL8は挙動が素直で、どれだけでも乗っていたくなるバイク」 photo:So Isobe

初めてTarmac SL8に乗った瞬間、大前は心の中で謝ったという。「すいませんって感じでしたね。つまらないなんて思ってて本当に申し訳ない、って(笑)。踏んだ瞬間に軽く加速して、挙動が素直で、どれだけでも乗っていたくなる。僕は普段のトレーニングでもゆっくり乗ることがほぼないので、速く走りたいという欲求をそのまま叶えてくれるバイクだと直感しました」。

「Tarmacって見た目は線が細いんですが、スプリントで思いきり踏んでも本当に速いんですよね」と、大前はスプリント力についても評価する。もともと、彼は「バネ感」のある乗り味を好み、反発をスピードに変える走りが得意。その観点で見ても、SL8は理想に近かった。「踏んだ時のリズムがすごく合うんです。跳ね返りだけ強くて挙動が乱れるようなこともなく、ただ素直に前へ進む。最後のスプリントで脚が残せて、なおかつ速い。これは大きな武器になってくれました」。

20秒差を埋めた武器、Rapide Sprint CLX

高岡がおきなわで駆ったS-Works Tarmac SL8。ロヴァールのRapide Sprint CLXホイールの走りが光ったという photo:So Isobe

最終盤に追いつき、そのままアタックを仕掛けたRXの総大将、高岡の走りもレースを大きく左右し、見るもの全員を大きく沸かせた。下りでの追走を成功させた影には、Tarmacに組み合わせたロヴァールの新型ホイール「Rapide Sprint CLX」の助けがあったという。

「今回、一番効いたのはRapide Sprint CLXでした。リムハイトは前後63mmと「横風が怖い」「上りはキツそう」と思われがちですが、実際はその逆。前後1400g以下で普通に登るし、横風も全然怖くない。なにより下りの伸びがすごかった。最後の登りで井上くんから20秒くらい遅れましたが、そこから追いつけたのは本当に機材のおかげ。あの下りは平均65km/hくらいで、テクニカル要素はゼロ。平均パワーも150ワットくらいですからね」。

「今回一番効いたのはRapide Sprint CLX。高速巡行はもちろん、登りでも軽い万能ホイールです」とその走りを評する photo:Makoto AYANO

それに、その手前のラスト60km地点、学校坂を越えた後の下り基調のアップダウンでも良かった。あのあたりはどれだけ下りの勢いを殺さず次の登りに繋げられるかで、脚の残り具合が全然違ってくる。エアロなのに登れるホイールですから、国内レースならこの一本で全部いけると言ってしまっても良いと思うんです」。

SL8の軽さと空力性能、CLX SPRINTの減速しない性格。それらが噛み合ったことで、「機材の助けが確実にあった」と、疲労が蓄積する終盤でこそ強さを発揮できたという。

高岡亮寛が、スペシャライズドを選び続けてきた理由

2022年、伝説の75km逃げ切りで7勝目を掴んだ高岡亮寛(Roppong Express) photo:Makoto AYANO

ツール・ド・おきなわ市民200kmというレースには、ひとつの傾向がある。2018年は紺野元汰(Venge)、2019年は高岡亮寛(Venge)、2022年は高岡(Tarmac SL7)、2023年は井上亮(Tarmac SL8)、そして2025年は大前翔(Tarmac SL8)。2020〜21年、2024年の中止期間を除けば、ディスクブレーキ時代に入ってから市民200kmを制したのは、すべてスペシャライズドだった。

「つまりディスク時代になってから、市民200はスペシャライズドしか勝ってないんです。勝ちたいなら、選ぶべき機材は限られてくるといっても過言ではない」と、高岡は淡々と語る。「その時に気になるバイクに乗る主義」を貫く高岡だが、いつもスペシャライズドに戻ってくるという。

「それまでずっとリムブレーキのタイムに乗っていて、それで沖縄も勝ってきた。だから正直ディスクブレーキのVengeは、最初は半信半疑でした。でも数日間乗ってみて、これまでと全く別物だ、とわかったんです。速さや反応だけじゃなくて、ディスクブレーキ時代のバイクの完成度に大きな先行感があった」。

そこから彼は一度も後ろを振り返っていない。VengeからSL7へ、SL7からSL8へ。常にその時点で最も速いと感じるバイクを選び続けてきた結果、ツール・ド・おきなわではスペシャライズドが勝利を積み重ねてきた。

2018年大会を制した紺野元汰(SBC Vertex Racing Team) photo:Makoto.AYANO
2023年大会を制した井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato


2019年大会、Vengeを駆りスプリントで勝利した高岡亮寛(Roppongi Express)が喜びのガッツポーズ photo:Makoto.AYANO

「スペシャライズドは、単に新製品を出すメーカーじゃない。リムからディスクへ移行するタイミングでも、欧州系ブランドよりも一歩早かったし、UCIレースでのディスクロード初勝利もスペシャライズド。だからこそ、性能差がレースの結果に出てきたんだと思います」。

ツール・ド・おきなわ市民200km。ホビーレーサーにとって特別なこの舞台で、2025年もまた「S-Works」が勝利を掴んだ。もちろんレースを決めたのは大前翔の強さであり、高岡亮寛の経験だ。しかし一方で2人が「SL8は武器」と語ることは、本気で勝ちにいくレーサーに愛されている証。高岡が言う「勝ちたいなら、選ぶべき機材は限られてくる」それは、決して大げさな話ではないのだろう。

今なら「Build Package」でお得に購入できるチャンス

スペシャライズドがS-Worksロードバイクのフレームセットにコンポーネントを組み合わせた特別価格のパッケージを発売 (c)スペシャライズド・ジャパン

今回勝利を手にしたS-Works Tarmac SL8は、現在スペシャライズドが提案する「フレームセット + コンポーネント一式」をまとめてお得に購入できる新プラン「Build Package」の対象だ。Tarmacのみならず新型のS‑Works Aethos 2も対象に含まれ、S-Works Tarmac SL8にシマノ アルテグラなら税込99万円という買い求めやすい設定だ。

しかも「Tarmac Build Support」併用で、S-Works Tarmacのパッケージ購入者には ロヴァールのRapide Cockpit(ハンドル+ステム一体型セット)が無料で付くという特典もあり、コストパフォーマンス的に非常に優秀な選択肢と言えるだろう。
パッケージ詳細
S-Works Tarmac SL8 - DURA-ACE Package 1,149,500円(税込)
S-Works Tarmac SL8 - ULTEGRA Package 990,000円(税込)
S-Works Aethos 2 - DURA-ACE Package 1,127,500円(税込)
S-Works Aethos 2 - ULTEGRA Package 968,000円(税込)
対象フレームセット
S-Works Tarmac SL8 Frameset (モデルイヤー2024 - 2025)
S-Works Tarmac SL8 Frameset (モデルイヤー2026)
S-Works Aethos 2 Frameset
つまり、今回のレースで実証された「勝てる一台」を、従来よりも手の届きやすい条件で手に入れられるチャンスが今まさに来ている。もし来季以降のレース参加やステップアップを考えているなら、このタイミングをお見逃しなく。

スペシャライズド Build Pakage 詳細
スペシャライズド Tarmac SL8 詳細
ロヴァール Rapide Sprint CLX 詳細
制作:シクロワイアード編集部 | 提供:スペシャライズド・ジャパン