2022/04/17(日) - 15:32
革新的なバイクを次々に送り出し、トレンドを作り出してきたスペシャライズド。そのラインアップの中でも異色の存在となるのが、2020年10月に発表された超軽量バイク"AETHOS"だ。発表より1年半が経とうとする今、AETHOSの意義とはなにか。改めてその素顔を覗いてみよう。
「ディスクブレーキロードは重い」。各ブランドがラインアップの軸足をディスクブレーキモデルへと移し始めた数年前、ディスクブレーキ懐疑論者の間でささやかれていたお決まりの台詞は、今なら失笑を買うだけだろう。
フレーム重量585g、完成車で5.9kg。UCI規定の6.8kgをあっさりと下回る数値を叩き出したスペシャライズドのAETHOSは、ディスクブレーキバイクは重量面で不利だという固定観念を叩き潰した。
しかし、AETHOSが粉砕した固定観念はそれだけではない。超軽量モデル=山岳向けレーシングバイクという思い込みをも、スペシャライズドは否定した。AETHOSはレースで勝利を狙うためのバイクではない。そう高らかに宣言したのだ。
その開発コンセプトは「Break The Rules(ルールを破れ)」。自分たちで決めた過去のしきたりを自分たち自身で破り、何にも縛られない自由な発想で、ただ純粋にロードライドを楽しむのに最も相応しい性能を。
ロードレース、ヒルクライム、エンデュランス、ロングライドetc……。自分たちがどんな走り方をするのか、どう楽しむのか。ルールによって規定され、切断されたカテゴリー。路上に溢れる用途別に最適化された機材とその範囲で楽しむサイクリストたち。名付けによって分かたれたサイクリングの本質、サイクリストの幸福。それらを再び一つに取り戻すのが、AETHOSというモデルネームに託された祈りだ。
その祈りに形を与えるために、スペシャライズドが起用したのがピーター・デンク。スコットのADDICTやキャノンデールのSUPERSIX EVOなど、軽量バイクの歴史の転換点となった名車を生みだしてきた伝説的なエンジニアだ。
レースバイクがプロライダーのために開発されるものだとすれば、AETHOSは確かにレースバイクではない。ピーター・デンクの思想の結晶であるるAETHOSは、作り手自身がライドを楽しむためのバイクとして作られているからだ。
意のままに操れ、鋭い反応を持つ官能的なライドフィールという、ロードサイクリングを最高の体験にするための性能を実現するため、最先端の開発技術が投入されている。一見何の変哲もないラウンドチューブを用いるフレームワークは、スーパーコンピューターによる検証によって導き出されたもの。
100,000回に及ぶシミュレーションでフレームへの力の伝わり方やしなり具合、チューブの変形量といったパラメータを徹底的に分析。その中から最高の重量剛性比を実現できる形状を探った結果、ドロップドステーもケーブルフル内装システムも採用しない唯一無二のフレームデザインを手に入れた。
最高のフレームデザインに合わせるためのカーボン積層設計もAETHOSの革新的な核心技術だ。既存モデルでは剛性を確保するために厚みを持たせていた部位も、チューブ形状を見直すことで余計なレイヤーを削減。これまで4~5mmあった部位も2mmほどに抑え、フレーム全体の厚みを均一化した。さらに均一な厚みはそれぞれのカーボンレイヤーを大きくすることを可能とし、使用枚数を削減することで製造誤差を抑えているという。
速さ、距離、出力、時間といった可視化できる指標ではなく、サイクリングの根源的な快楽を得るために、極限まで無駄を削ぎ落すことでロードバイクの紀元へと迫ったAETHOS。その指し示す世界はいかなるものか、2人のテストライダーがインプレッション。
−インプレッション
「軽さが全ての性能に通じる一台」安藤光平(Bicicletta SHIDO)
Aethosが超軽量なディスクブレーキバイクであることはスペック上からも伝わることですが、実際に乗ってみても当たり前のように軽いです。その一言に尽きますね。軽いからこそ加速感があり、軽いからこそブレーキを握ると短い距離で止まってくれる。コーナーリングも遠心力で引っ張られるといった感覚も少ないですし、全ての特徴が”軽いから”という理由に繋がります。
スローピング角が大きいため低重心で、振りが驚くほど軽い。ペダリングに対する反応も素早く気持ちがいいですし、本当に”軽い”という感想しか出てこないほど強烈な軽さ。そんなバイクですね。
ただ、乗る前にもっていた”路面からの入力がしっとりしている”というイメージは見事に裏切られました。良い意味で言えば路面の状況がわかりやすい。逆に言うと快適性がそれほどなく、車体が軽すぎて路面にバイクを抑えつける力が足りない感覚でした。
地面に弾かれる…と表現するほど極端ではないにせよ、昔のヒルクライムバイクのような硬い印象を受けました。例えばLOOK585の雰囲気と言えばイメージが湧く人がいるかもしれません。ですが、近年のバイクでAETHOSに近い感覚のバイクは思い当たらないですね。
S-Worksには軽くて硬い特徴のあるTARMAC SL6がありますが、それとは違う硬さを感じました。むしろSL6の方がしっとりという感覚があります。でもAETHOSの硬さは芯からくるものではなく、表面的でカーボンの薄さを感じるようなパリッとした硬さとでも言うのでしょうか。
バイクの軽さは誰にとってもメリットになります。ただ、AETHOSの軽さが存分に発揮されるシチュエーションは登りに限定されるでしょうね。例えば平地をクルージングしようと思っても、車体が軽すぎて快適性はさほど感じません。それはエアロ形状ではないことも影響しており、平地でも踏まないと進まないバイクです。なのでサイクリングを楽しむのならばサイクリングロードではなく、起伏の富んだコースを走るのがこの自転車の味を最も感じられると思いますね。
軽いからこそ登りが速いというわけではなく、AETHOSは走りを楽しむバイクなのでしょう。車で例えるならライトウエイトスポーツカーとでも言うのでしょうか。加速・止まる・コーナーリングという動作一つ一つを楽しむことのできるバイクですね。
AETHOSはロードバイクの競技性ではなく、操る楽しさを感じられるようなスポーツ性を楽しむバイクだと思います。僕はこのバイクをフロントシングルにして、EKAR(カンパニョーロのグラベル用コンポーネント)で組もうと思っていたのですよね。でもいざ組もうと思ったらワイヤーが通らなかった笑。全ての自転車が速さを追求しなくていいじゃないですか。単純に加速やコーナリングを楽しみたい。AETHOSはそんなバイクなのだと思います。
このバイクをオススメするなら、山が大好きな人ですね。ヒルクライムではなく、いくつもの山を繋いで登ってしまうような”山好き”は絶対に好きなバイクだと思います。
「コンセプト通り様々な走り方にも応えてくれる一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)
このバイクを言い表す一言は超軽量です。スペシャライズドはレースバイクではなく、どこでも走れるラグジュアリーバイクとコンセプトを掲げてAETHOSをローンチしましたが、まさにどこでも走れるような、様々な使い方ができるバイクであると感じています。
AETHOSに関しては複数サイズを乗り比べていますが、サイズによって剛性の印象が違います。今回試乗した49サイズでは硬さが際立ち、52サイズも同様です。54サイズになると剛性感がマイルドになる印象があります。とはいえどれも剛性は高い部類に入るので、高剛性のフレームが好きな人にフィットすると思います。
自分自身スペシャライズドのTARMACやVANGEを乗り継いでいた時期もあったのですが、どのバイクに乗ってもサイズは52がベストでした。AETHOSに関しては乗り比べて、54サイズがベストな感じがしましたね。
乗り味の印象はリムブレーキの軽量・高剛性レーシングバイクです。自分がロードバイクに乗り始めたTARMAC SL3が用意されていた時代のバイクというイメージですかね。リムブレーキバイクのようなシャープな走りを、スプリントやヒルクライムのシーンで感じ取れました。
加速が得意なバイクで、入力に対してタイムラグなく反応してくれるのでレースバイクのような走りが印象深いです。特にハイパワーで踏んでいくペダリング時のスピードの伸びが気持ち良いです。ある程度スピードに乗った後でも、後ろから押し出されるように加速してくれたので、軽さはアドバンテージになると思いましたし、ヒルクライムシーンにはフィットすると感じました。
路面からの突き上げ感もレースバイクのようにしっかり伝わってきます。快適な乗り心地に関するカスタムは好みで、ホイールやタイヤを交換するカスタムを行なえば良さそうです。個人的にはチューブレスタイヤに変えたいですね。
フレーム剛性とのバランスを考慮しても快適性を向上させるためにハンドルを変えてあげるのも一つの手かもしれません。完成車に装備されているハンドルは剛性が高いのでレースやヒルクライムではフィットしそうですが、ロングライドでは剛性が穏やかなハンドルを組み合わせたいです。
ロードインフォメーションは伝わりやすいバイクですが、信号待ちからの漕ぎ出し、登りの状況でスムーズに走れるので、長距離サイクリングでもストレスになりにくいかと思います。登りで休むダンシングと踏み込むダンシングを使い分ける事ができる方なら、長距離も走れるでしょう。
ハンドリングは癖があります。フォークが寝ているので直進安定性がありますが、コーナーでバイクを倒し始めると、車体が軽量すぎるためか、あっという間にバイクが倒れていきます。直進時とコーナリングで印象が異なるので、コーナリングのフィーリングには慣れが必要そうです。その倒れやすさは、ダンシングの時に早いリズム感となり生きてくるので、ダンシングを多用するライダーとの相性は良さそうです。今、リムブレーキモデルに乗っている人がディスクロードに乗り換えても一番違和感なく乗り換えることができるバイクなんじゃないかなと思いました。
標準の状態だと非常に軽量なんですよね。UCIルールの下限である6.8kgを下回ることもできますし、組み方次第では4、5kg台の自転車も実現可能です。1gでも軽量な自転車を作りたい方、カスタム好きな方におすすめしたいです。
スペシャライズド S-Works Aethos
フレーム:S-Works Aethos FACT 12r Carbon, Rider First Engineered™, Threaded BB
フォーク:S-Works FACT Carbon, 12x100mm thru-axle, flat-mount disc
ハンドル:S-Works Short & Shallow
ステム:S-Works SL, alloy, titanium bolts, 6-degree rise
シートポスト:Roval Alpinist Carbon Seatpost
サドル:Body Geometry S-Works Power, carbon fiber rails
コンポーネント:SRAM Red eTAP AXS
ホイール:Roval Alpinist CLX
タイヤ:Turbo Cotton
価格:1,529,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
安藤光平(Bicicletta SHIDO)
東京都狛江市に店舗を構えるBicicletta SHIDOの店長。強豪クラブチームを渡り歩き、Jプロツアーに10年間参戦した実力派ライダー。2012年には2days race in 木祖村でスプリント賞を獲得。店主としてのコンセプトは「店長と遊んでくれる仲間募集中」で、ロード、グラベル、シクロクロスを共に楽しみたいという。
Bicicletta SHIDO
高木三千成(シクロワイアード編集部)
JCLに参戦するさいたまディレーブに所属しながら、シクロワイアード編集部に勤める。学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブへと移籍。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
text:Naoki Yasuoka, Sotaro Arakawa, Michinari Takagi
photo:Makoto AYANO
「ディスクブレーキロードは重い」。各ブランドがラインアップの軸足をディスクブレーキモデルへと移し始めた数年前、ディスクブレーキ懐疑論者の間でささやかれていたお決まりの台詞は、今なら失笑を買うだけだろう。
フレーム重量585g、完成車で5.9kg。UCI規定の6.8kgをあっさりと下回る数値を叩き出したスペシャライズドのAETHOSは、ディスクブレーキバイクは重量面で不利だという固定観念を叩き潰した。
しかし、AETHOSが粉砕した固定観念はそれだけではない。超軽量モデル=山岳向けレーシングバイクという思い込みをも、スペシャライズドは否定した。AETHOSはレースで勝利を狙うためのバイクではない。そう高らかに宣言したのだ。
その開発コンセプトは「Break The Rules(ルールを破れ)」。自分たちで決めた過去のしきたりを自分たち自身で破り、何にも縛られない自由な発想で、ただ純粋にロードライドを楽しむのに最も相応しい性能を。
ロードレース、ヒルクライム、エンデュランス、ロングライドetc……。自分たちがどんな走り方をするのか、どう楽しむのか。ルールによって規定され、切断されたカテゴリー。路上に溢れる用途別に最適化された機材とその範囲で楽しむサイクリストたち。名付けによって分かたれたサイクリングの本質、サイクリストの幸福。それらを再び一つに取り戻すのが、AETHOSというモデルネームに託された祈りだ。
その祈りに形を与えるために、スペシャライズドが起用したのがピーター・デンク。スコットのADDICTやキャノンデールのSUPERSIX EVOなど、軽量バイクの歴史の転換点となった名車を生みだしてきた伝説的なエンジニアだ。
レースバイクがプロライダーのために開発されるものだとすれば、AETHOSは確かにレースバイクではない。ピーター・デンクの思想の結晶であるるAETHOSは、作り手自身がライドを楽しむためのバイクとして作られているからだ。
意のままに操れ、鋭い反応を持つ官能的なライドフィールという、ロードサイクリングを最高の体験にするための性能を実現するため、最先端の開発技術が投入されている。一見何の変哲もないラウンドチューブを用いるフレームワークは、スーパーコンピューターによる検証によって導き出されたもの。
100,000回に及ぶシミュレーションでフレームへの力の伝わり方やしなり具合、チューブの変形量といったパラメータを徹底的に分析。その中から最高の重量剛性比を実現できる形状を探った結果、ドロップドステーもケーブルフル内装システムも採用しない唯一無二のフレームデザインを手に入れた。
最高のフレームデザインに合わせるためのカーボン積層設計もAETHOSの革新的な核心技術だ。既存モデルでは剛性を確保するために厚みを持たせていた部位も、チューブ形状を見直すことで余計なレイヤーを削減。これまで4~5mmあった部位も2mmほどに抑え、フレーム全体の厚みを均一化した。さらに均一な厚みはそれぞれのカーボンレイヤーを大きくすることを可能とし、使用枚数を削減することで製造誤差を抑えているという。
速さ、距離、出力、時間といった可視化できる指標ではなく、サイクリングの根源的な快楽を得るために、極限まで無駄を削ぎ落すことでロードバイクの紀元へと迫ったAETHOS。その指し示す世界はいかなるものか、2人のテストライダーがインプレッション。
−インプレッション
「軽さが全ての性能に通じる一台」安藤光平(Bicicletta SHIDO)
Aethosが超軽量なディスクブレーキバイクであることはスペック上からも伝わることですが、実際に乗ってみても当たり前のように軽いです。その一言に尽きますね。軽いからこそ加速感があり、軽いからこそブレーキを握ると短い距離で止まってくれる。コーナーリングも遠心力で引っ張られるといった感覚も少ないですし、全ての特徴が”軽いから”という理由に繋がります。
スローピング角が大きいため低重心で、振りが驚くほど軽い。ペダリングに対する反応も素早く気持ちがいいですし、本当に”軽い”という感想しか出てこないほど強烈な軽さ。そんなバイクですね。
ただ、乗る前にもっていた”路面からの入力がしっとりしている”というイメージは見事に裏切られました。良い意味で言えば路面の状況がわかりやすい。逆に言うと快適性がそれほどなく、車体が軽すぎて路面にバイクを抑えつける力が足りない感覚でした。
地面に弾かれる…と表現するほど極端ではないにせよ、昔のヒルクライムバイクのような硬い印象を受けました。例えばLOOK585の雰囲気と言えばイメージが湧く人がいるかもしれません。ですが、近年のバイクでAETHOSに近い感覚のバイクは思い当たらないですね。
S-Worksには軽くて硬い特徴のあるTARMAC SL6がありますが、それとは違う硬さを感じました。むしろSL6の方がしっとりという感覚があります。でもAETHOSの硬さは芯からくるものではなく、表面的でカーボンの薄さを感じるようなパリッとした硬さとでも言うのでしょうか。
バイクの軽さは誰にとってもメリットになります。ただ、AETHOSの軽さが存分に発揮されるシチュエーションは登りに限定されるでしょうね。例えば平地をクルージングしようと思っても、車体が軽すぎて快適性はさほど感じません。それはエアロ形状ではないことも影響しており、平地でも踏まないと進まないバイクです。なのでサイクリングを楽しむのならばサイクリングロードではなく、起伏の富んだコースを走るのがこの自転車の味を最も感じられると思いますね。
軽いからこそ登りが速いというわけではなく、AETHOSは走りを楽しむバイクなのでしょう。車で例えるならライトウエイトスポーツカーとでも言うのでしょうか。加速・止まる・コーナーリングという動作一つ一つを楽しむことのできるバイクですね。
AETHOSはロードバイクの競技性ではなく、操る楽しさを感じられるようなスポーツ性を楽しむバイクだと思います。僕はこのバイクをフロントシングルにして、EKAR(カンパニョーロのグラベル用コンポーネント)で組もうと思っていたのですよね。でもいざ組もうと思ったらワイヤーが通らなかった笑。全ての自転車が速さを追求しなくていいじゃないですか。単純に加速やコーナリングを楽しみたい。AETHOSはそんなバイクなのだと思います。
このバイクをオススメするなら、山が大好きな人ですね。ヒルクライムではなく、いくつもの山を繋いで登ってしまうような”山好き”は絶対に好きなバイクだと思います。
「コンセプト通り様々な走り方にも応えてくれる一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)
このバイクを言い表す一言は超軽量です。スペシャライズドはレースバイクではなく、どこでも走れるラグジュアリーバイクとコンセプトを掲げてAETHOSをローンチしましたが、まさにどこでも走れるような、様々な使い方ができるバイクであると感じています。
AETHOSに関しては複数サイズを乗り比べていますが、サイズによって剛性の印象が違います。今回試乗した49サイズでは硬さが際立ち、52サイズも同様です。54サイズになると剛性感がマイルドになる印象があります。とはいえどれも剛性は高い部類に入るので、高剛性のフレームが好きな人にフィットすると思います。
自分自身スペシャライズドのTARMACやVANGEを乗り継いでいた時期もあったのですが、どのバイクに乗ってもサイズは52がベストでした。AETHOSに関しては乗り比べて、54サイズがベストな感じがしましたね。
乗り味の印象はリムブレーキの軽量・高剛性レーシングバイクです。自分がロードバイクに乗り始めたTARMAC SL3が用意されていた時代のバイクというイメージですかね。リムブレーキバイクのようなシャープな走りを、スプリントやヒルクライムのシーンで感じ取れました。
加速が得意なバイクで、入力に対してタイムラグなく反応してくれるのでレースバイクのような走りが印象深いです。特にハイパワーで踏んでいくペダリング時のスピードの伸びが気持ち良いです。ある程度スピードに乗った後でも、後ろから押し出されるように加速してくれたので、軽さはアドバンテージになると思いましたし、ヒルクライムシーンにはフィットすると感じました。
路面からの突き上げ感もレースバイクのようにしっかり伝わってきます。快適な乗り心地に関するカスタムは好みで、ホイールやタイヤを交換するカスタムを行なえば良さそうです。個人的にはチューブレスタイヤに変えたいですね。
フレーム剛性とのバランスを考慮しても快適性を向上させるためにハンドルを変えてあげるのも一つの手かもしれません。完成車に装備されているハンドルは剛性が高いのでレースやヒルクライムではフィットしそうですが、ロングライドでは剛性が穏やかなハンドルを組み合わせたいです。
ロードインフォメーションは伝わりやすいバイクですが、信号待ちからの漕ぎ出し、登りの状況でスムーズに走れるので、長距離サイクリングでもストレスになりにくいかと思います。登りで休むダンシングと踏み込むダンシングを使い分ける事ができる方なら、長距離も走れるでしょう。
ハンドリングは癖があります。フォークが寝ているので直進安定性がありますが、コーナーでバイクを倒し始めると、車体が軽量すぎるためか、あっという間にバイクが倒れていきます。直進時とコーナリングで印象が異なるので、コーナリングのフィーリングには慣れが必要そうです。その倒れやすさは、ダンシングの時に早いリズム感となり生きてくるので、ダンシングを多用するライダーとの相性は良さそうです。今、リムブレーキモデルに乗っている人がディスクロードに乗り換えても一番違和感なく乗り換えることができるバイクなんじゃないかなと思いました。
標準の状態だと非常に軽量なんですよね。UCIルールの下限である6.8kgを下回ることもできますし、組み方次第では4、5kg台の自転車も実現可能です。1gでも軽量な自転車を作りたい方、カスタム好きな方におすすめしたいです。
スペシャライズド S-Works Aethos
フレーム:S-Works Aethos FACT 12r Carbon, Rider First Engineered™, Threaded BB
フォーク:S-Works FACT Carbon, 12x100mm thru-axle, flat-mount disc
ハンドル:S-Works Short & Shallow
ステム:S-Works SL, alloy, titanium bolts, 6-degree rise
シートポスト:Roval Alpinist Carbon Seatpost
サドル:Body Geometry S-Works Power, carbon fiber rails
コンポーネント:SRAM Red eTAP AXS
ホイール:Roval Alpinist CLX
タイヤ:Turbo Cotton
価格:1,529,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
安藤光平(Bicicletta SHIDO)
東京都狛江市に店舗を構えるBicicletta SHIDOの店長。強豪クラブチームを渡り歩き、Jプロツアーに10年間参戦した実力派ライダー。2012年には2days race in 木祖村でスプリント賞を獲得。店主としてのコンセプトは「店長と遊んでくれる仲間募集中」で、ロード、グラベル、シクロクロスを共に楽しみたいという。
Bicicletta SHIDO
高木三千成(シクロワイアード編集部)
JCLに参戦するさいたまディレーブに所属しながら、シクロワイアード編集部に勤める。学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブへと移籍。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
text:Naoki Yasuoka, Sotaro Arakawa, Michinari Takagi
photo:Makoto AYANO
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