2010/07/22(木) - 15:59
「エアロダイナミクス」というテーマは、スピードを争う競技においては、必ず付いてまわるテーマだ。そのテーマを徹底的に追求したTTバイクがある、その名も「トレック スピードコンセプト」。ついに市販された究極のバイクは衝撃的ともいえる内容だ。究極のエアロダイナミクスを実現したというTTバイクのテクノロジーとディテールに迫ってみよう。
トレック スピードコンセプト (c)Makoto.AYANO
トレック スピードコンセプトは究極のエアロダイナミクスをテーマに開発され、現在最も進んだTTバイクといえる。昨シーズン選ばれた一部の選手だけに供給され、話題となったTTバイクだ。そんな究極のバイクが我々にも購入できる日がとうとう到来した。
その内容を詳しく見ていくうちに、理想を追い求めた形状やアイデアの数々には、驚きを超え衝撃さえ感じるものがある。それではその秘密にさっそく迫ってみよう。
フロントから一切の段差がなく流れるような形状だ
ホイール回りも完璧なエアロフォルムだ
空力を追求したリア回り
このスピードコンセプトでテーマとなった開発コンセプトは、大きく分けて3つある。
1.より実践的な風向きを研究して生まれた、KVFチューブ
TTバイクとして一番の肝と言えるのは、エアロダイナミクスを徹底追及した、エアロ形状のフォルムだ。この課題に関しては、従来の空力の考え方を大きく見直したことから始まった。
空気力学の革新的な技術、カムテール理論を採用している
既存のバイクに用いられる翼断面形状のチューブは、風洞実験などの正面からの風の流れに対しては効果的だが、斜め方向からの風に対しては大きな巻き風(空気抵抗)が発生していたという。実際の走行では真正面から風を受けることよりも、横風や斜めからの風を受けて走るケースが多い。
空気の流れを邪魔しない完璧なフォルムを追求した
カムテール理論によって新しく作られた KVFチューブ。これがこのバイクの骨格となる。
トレックはその点に着目して、カムテール理論という革新的な技術を採用して、全く新しい形状のチューブを作り上げた。KVF(Kammtail Virtual Foil)と呼ばれるそのチューブでは、斜め方向からの気流に対しても、きれいな整流効果を発揮するという。
ハンドルバーの薄さがよく判る
フロントフォークはヒンジ状に繋がる
2.理想を追求した大胆な発想の車体設計
このバイクの更なるトピックスは、理想のエアロダイナミクスを追求するために、抵抗となるようなパーツの形状や取り付け方法を根本から見直したことである。その結果ケーブル類やサイクルコンピューターのセンサーをフレームに内蔵、それに加えて驚くのはブレーキキャリパーさえもフレームに埋め込んでしまったことだ。そのためにブレーキキャリパーは、センタープル方式の専用品を使う。前後とも完全に車体に埋め込まれたブレーキは、教えられないと存在すら判らない。
ワイヤー類はトップチューブの穴から全てが内蔵される
BBの下側に付けられ完全にカバーされたリアブレーキ
クイックレバーさえも見逃さず、このように先端が完全にフィン形状をとる
チェーンステーにはサイクルコンピューターのセンサーを内蔵する
また補給食やパンク修理キットを入れるケース、それにクイックリリースレバーにも専用品を用意。
しかもそれらはエアロ効果を邪魔しない形状と向きになるように設計されている。
エアロダイナミクスを優先するために、従来の規格やパーツに縛られることなく理想を追求した設計には、感心させられる。
フロントブレーキも完全にカバーされシューしか露出しない
ボトルも空気の流れを乱さない専用品
リアのボックスまでもエアロフォルムの一部として取り入れる
3.ライダーの力を最大限に引き出す乗車ポジションの実現
いかにエアロダイナミクスに優れたバイクといえども、例えば限定された乗車ポジションやライダーに何か制約を求めるようなバイクでは、真のパフォーマンスは発揮出来ない。ただでさえTTバイクは、DHバーにより独特のポジションと極端な前傾姿勢を強いられるもの。そのため、しっかりとしたポジションとフィッティングが求められる。
ポジション調整に重要なDHバーも調整範囲を広くとれる設計
流行のインテグラルではなくスライド幅の大きいシートポストを採用
自転車にとってとても重要なフィッティングについても注目して、スピードコンセプトは開発された。フレームサイズはXS〜XLまで5種類を用意し、加えてステムやエアロバーといった各パーツも多くの中から選択が可能。ハンドルやピラーの調整範囲も広くとることで、多くの体型のライダーがジャストなフィッティングを得ることができるという。
誰にでも最適なフィッテングを実現
革新的な部分ばかりが目立つスピードコンセプトだが、人間が乗車する自転車としての基本的な性能も追求したバイクだといえる。このような自由で理想的な設計が出来るのは、トレックのOCLVカーボン技術があってこそ可能になったものだ。
フロントフォーク回りはハンドルマウントも含めまるで突起がない
BBの周辺は大きなボリュームを持たせ力を逃がさない設計だ
空気の抜ける隙き間を完全に埋めるリアホイール回り
ある機能を徹底的に追及した製品には、デザインを超えた美しさがある。しかしこのスピードコンセプトには、その美しさを超えた“凄み”を感じる。加えてこのバイクには、ある種独特のオーラが充満している。そんな究極のバイクが、選ばれたごく一部のプロ選手だけのものではなく、我々にも購入できる。
しかもそれが、トレック自慢のカスタムプログラム「プロジェクトワン」でオーダーすることによって、好みのカラーやパーツを選択し、もちろんサイズもジャストフィットの自分だけの一台が手に入るという点にも大いに注目したい。
トレック スピードコンセプト
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トレック スピードコンセプトは究極のエアロダイナミクスをテーマに開発され、現在最も進んだTTバイクといえる。昨シーズン選ばれた一部の選手だけに供給され、話題となったTTバイクだ。そんな究極のバイクが我々にも購入できる日がとうとう到来した。
その内容を詳しく見ていくうちに、理想を追い求めた形状やアイデアの数々には、驚きを超え衝撃さえ感じるものがある。それではその秘密にさっそく迫ってみよう。
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このスピードコンセプトでテーマとなった開発コンセプトは、大きく分けて3つある。
1.より実践的な風向きを研究して生まれた、KVFチューブ
TTバイクとして一番の肝と言えるのは、エアロダイナミクスを徹底追及した、エアロ形状のフォルムだ。この課題に関しては、従来の空力の考え方を大きく見直したことから始まった。
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トレックはその点に着目して、カムテール理論という革新的な技術を採用して、全く新しい形状のチューブを作り上げた。KVF(Kammtail Virtual Foil)と呼ばれるそのチューブでは、斜め方向からの気流に対しても、きれいな整流効果を発揮するという。
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このバイクの更なるトピックスは、理想のエアロダイナミクスを追求するために、抵抗となるようなパーツの形状や取り付け方法を根本から見直したことである。その結果ケーブル類やサイクルコンピューターのセンサーをフレームに内蔵、それに加えて驚くのはブレーキキャリパーさえもフレームに埋め込んでしまったことだ。そのためにブレーキキャリパーは、センタープル方式の専用品を使う。前後とも完全に車体に埋め込まれたブレーキは、教えられないと存在すら判らない。
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いかにエアロダイナミクスに優れたバイクといえども、例えば限定された乗車ポジションやライダーに何か制約を求めるようなバイクでは、真のパフォーマンスは発揮出来ない。ただでさえTTバイクは、DHバーにより独特のポジションと極端な前傾姿勢を強いられるもの。そのため、しっかりとしたポジションとフィッティングが求められる。
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しかもそれが、トレック自慢のカスタムプログラム「プロジェクトワン」でオーダーすることによって、好みのカラーやパーツを選択し、もちろんサイズもジャストフィットの自分だけの一台が手に入るという点にも大いに注目したい。
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