2021/11/03(水) - 15:14
ガーミンのペダル型パワーメーター、RALLYをインプレッション。設計をブラッシュアップすることで動作の安定性を高めると同時に、世界初のSPD-SL対応型パワーメーターとしてデビューした注目作の真価に迫る。
多くのサイクリストにとって、もはや不可欠な装備となった感のあるパワーメーター。自分の出力を数値として確認し、定量的なデータとして積み重ねられることの利便性は、一度使用したサイクリストにとっては欠かせないもの。当初トレーニングに打ち込むシリアスアスリート向けという位置づけであったが、現在はペーシングなどにも有用であることが知れ渡り、ロングライドを楽しむホビーサイクリストにとっても必携のデバイスとなっている。
そんなパワーメーターだが、現在主流となっているクランク内蔵型モデルは1台の自転車につき、一つのパワーメーターが必要となる。一度パワーメーターを体験してしまったサイクリストにとって、パワーが計測できない自転車に乗ることは大きなストレスであるとすら言える一方で、自転車を何台も所有するような熱心なサイクリストの方が、1台しか所有していないという人よりもパワーメーター所持率は高いはず。
つまり、増車やコンポーネントの入れ替えといった際のコストが増加するというデメリットがあった。また、そのコストを度外視するとしても、各製品ごとの精度のばらつきなどもあり同じパワーメーターを複数の自転車で使いたい、という需要は確実に存在している。
そんなニーズに応える存在として、ガーミンが提案してきたのがペダル型のパワーメーターだ。2011年に発表した初代Vectorを皮切りに、通信用のペダルポッドの廃止や精度の向上といったアップデートを積み重ね、2018年に3代目となるVector3を発表し、一定の支持を得てきた。そして2021年に最新作として発表したのがRALLYだ。
3代続いたVectorというモデル名を一新し、新たな看板を掲げて再出発を切ったRALLY。その最大の特徴は初のシマノSPD-SL対応のペダル型パワーメーターであること。そして、Vector3で頻発した電源トラブルに抜本的な対策を施すことで抜群の安定性を手に入れたという。2021年のグッドデザイン賞を受賞するなど、既に高い評価を手にしているシマノクリート対応の両側計測モデル、RALLY RS200をインプレッションしていこう。
まず、RALLYを自転車に組み付けるところから始めよう。スピンドルの中にセンサーや通信用のポッドが入っていることもあり、アーレンキーを使用した取り付けではなくペダルレンチによる取り付けとなる。
マニュアルによれば34Nmのトルクが推奨値。過去のVectorシリーズでは指定トルクを外れるとパワーの数値が安定しないという例も報告されているため、しっかりとトルク管理を行いたいところ。だが、実際のところここはかなりハードルは高い作業となる。
何故かと言えば、工具がそれなりに特殊な部類となるからだ。トルクレンチを所持していたとしても、15mmの薄型クローフットレンチを所持している人は少ないのではないだろうか?ちなみに、クローフットレンチをトルクレンチで使用する際は、力点と支点の距離が変わるため、換算が必要となるのでその点も注意が必要だ。
クランクに取り付け、サイクルコンピューターとペアリング。今回はガーミンのEDGE530を使用したが、同ブランドの組み合わせということもあり、接続は極めてスムーズ。更に、アクティビティプロフィールにサイクリングダイナミクスのページが自動的に追加されるなど、RALLYの機能を直ぐに体感できるような工夫がなされていることに少し感動する。
ゼロオフセットやクランク長の設定もEDGE側から直感的に行え、いたってストレスフリー。そしてそのまま走り出せば素直にパワー値やペダリングに関するデータを吐き出してくれ、非常にシームレスな体験が可能だった。サイクルコンピューターとセンサーをトータルで開発できるガーミンならではのUXと言えるだろう。
左右のパワー差やペダリングフォースの解析、トルクピークの分布やダンシングタイムといったデータに加え、独自のデータである"ペダルセンターオフセット"を計測できるのもRALLYの特徴。これはペダルのどのあたりに力が加わっているのかを検知するもの。私も思ったより左右差が大きく、クリートセッティングやペダリングに違和感がある人にとっては非常にありがたい機能だと感じた。
普段使用しているのがシマノのDURA-ACEペダルということもあり、今回のテストでは付属のクリートは使用せずシマノ純正の青クリートを用いた。ありていにいえば、普段使用しているシューズをそのまま使った、ということである。
ペダルとしての性能は問題ない。DURA-ACEの軽さやたわみの無い踏み心地、高いスタビリティに比べれば少し物足りないところはあるが、決して不安定に感じることは無い。むしろ違和感が少ないことに驚いたほどだ。
ペダル型パワーメーターの導入を躊躇う理由によく挙げられるQファクターについても、個人的には気にならない。170mmのDURA-ACEクランクに取り付けた状態で、DURA-ACEペダルに対し、バンク角では1度の差とほぼ変わらない範囲に収まっている。
さて、気になる計測精度について。以前のモデルでは締め付けトルクによってパワー値に影響が出るという指摘も散見されていたこともあり、今回はペダル型パワーメーターとして複数のバイクで使いまわすことを想定し、ペダルを何度か付け外した際の数値の安定性を検証。
1本目をあえて軽めに締め、2本目を本締めすることで、数値に影響が見られるのか、ZWIFTのショートワークアウトを2回行った。TACXのFLUX2をERGモードで使用し、対照となるデータとして、クランクスピンドル計測のイーストン CHINCHパワーメーターと同時にログを取得している。
多くのサイクリストにとって、もはや不可欠な装備となった感のあるパワーメーター。自分の出力を数値として確認し、定量的なデータとして積み重ねられることの利便性は、一度使用したサイクリストにとっては欠かせないもの。当初トレーニングに打ち込むシリアスアスリート向けという位置づけであったが、現在はペーシングなどにも有用であることが知れ渡り、ロングライドを楽しむホビーサイクリストにとっても必携のデバイスとなっている。
そんなパワーメーターだが、現在主流となっているクランク内蔵型モデルは1台の自転車につき、一つのパワーメーターが必要となる。一度パワーメーターを体験してしまったサイクリストにとって、パワーが計測できない自転車に乗ることは大きなストレスであるとすら言える一方で、自転車を何台も所有するような熱心なサイクリストの方が、1台しか所有していないという人よりもパワーメーター所持率は高いはず。
つまり、増車やコンポーネントの入れ替えといった際のコストが増加するというデメリットがあった。また、そのコストを度外視するとしても、各製品ごとの精度のばらつきなどもあり同じパワーメーターを複数の自転車で使いたい、という需要は確実に存在している。
そんなニーズに応える存在として、ガーミンが提案してきたのがペダル型のパワーメーターだ。2011年に発表した初代Vectorを皮切りに、通信用のペダルポッドの廃止や精度の向上といったアップデートを積み重ね、2018年に3代目となるVector3を発表し、一定の支持を得てきた。そして2021年に最新作として発表したのがRALLYだ。
3代続いたVectorというモデル名を一新し、新たな看板を掲げて再出発を切ったRALLY。その最大の特徴は初のシマノSPD-SL対応のペダル型パワーメーターであること。そして、Vector3で頻発した電源トラブルに抜本的な対策を施すことで抜群の安定性を手に入れたという。2021年のグッドデザイン賞を受賞するなど、既に高い評価を手にしているシマノクリート対応の両側計測モデル、RALLY RS200をインプレッションしていこう。
まず、RALLYを自転車に組み付けるところから始めよう。スピンドルの中にセンサーや通信用のポッドが入っていることもあり、アーレンキーを使用した取り付けではなくペダルレンチによる取り付けとなる。
マニュアルによれば34Nmのトルクが推奨値。過去のVectorシリーズでは指定トルクを外れるとパワーの数値が安定しないという例も報告されているため、しっかりとトルク管理を行いたいところ。だが、実際のところここはかなりハードルは高い作業となる。
何故かと言えば、工具がそれなりに特殊な部類となるからだ。トルクレンチを所持していたとしても、15mmの薄型クローフットレンチを所持している人は少ないのではないだろうか?ちなみに、クローフットレンチをトルクレンチで使用する際は、力点と支点の距離が変わるため、換算が必要となるのでその点も注意が必要だ。
クランクに取り付け、サイクルコンピューターとペアリング。今回はガーミンのEDGE530を使用したが、同ブランドの組み合わせということもあり、接続は極めてスムーズ。更に、アクティビティプロフィールにサイクリングダイナミクスのページが自動的に追加されるなど、RALLYの機能を直ぐに体感できるような工夫がなされていることに少し感動する。
ゼロオフセットやクランク長の設定もEDGE側から直感的に行え、いたってストレスフリー。そしてそのまま走り出せば素直にパワー値やペダリングに関するデータを吐き出してくれ、非常にシームレスな体験が可能だった。サイクルコンピューターとセンサーをトータルで開発できるガーミンならではのUXと言えるだろう。
左右のパワー差やペダリングフォースの解析、トルクピークの分布やダンシングタイムといったデータに加え、独自のデータである"ペダルセンターオフセット"を計測できるのもRALLYの特徴。これはペダルのどのあたりに力が加わっているのかを検知するもの。私も思ったより左右差が大きく、クリートセッティングやペダリングに違和感がある人にとっては非常にありがたい機能だと感じた。
普段使用しているのがシマノのDURA-ACEペダルということもあり、今回のテストでは付属のクリートは使用せずシマノ純正の青クリートを用いた。ありていにいえば、普段使用しているシューズをそのまま使った、ということである。
ペダルとしての性能は問題ない。DURA-ACEの軽さやたわみの無い踏み心地、高いスタビリティに比べれば少し物足りないところはあるが、決して不安定に感じることは無い。むしろ違和感が少ないことに驚いたほどだ。
ペダル型パワーメーターの導入を躊躇う理由によく挙げられるQファクターについても、個人的には気にならない。170mmのDURA-ACEクランクに取り付けた状態で、DURA-ACEペダルに対し、バンク角では1度の差とほぼ変わらない範囲に収まっている。
さて、気になる計測精度について。以前のモデルでは締め付けトルクによってパワー値に影響が出るという指摘も散見されていたこともあり、今回はペダル型パワーメーターとして複数のバイクで使いまわすことを想定し、ペダルを何度か付け外した際の数値の安定性を検証。
1本目をあえて軽めに締め、2本目を本締めすることで、数値に影響が見られるのか、ZWIFTのショートワークアウトを2回行った。TACXのFLUX2をERGモードで使用し、対照となるデータとして、クランクスピンドル計測のイーストン CHINCHパワーメーターと同時にログを取得している。
平均出力 | 最大出力 | NP | |
---|---|---|---|
RALLY(低トルクアセンブル) | 206W | 377W | 220W |
CINCH | 201W | 355W | 214W |
RALLY(高トルクアセンブル) | 204W | 384W | 215W |
CINCH | 197W | 393W | 210W |
結果としては、締結トルクによる影響はあまりなさそうだ。CHINCHに比べると全体的に高い傾向となっているが、これはペダル型パワーメーターの特性でもあるだろう。以前、同じくペダル型パワーメーターであるAssiomaをテストした際も似たような傾向があったことを踏まえれば、納得感のある数字だ。
もちろん、推奨トルクを守ることに越したことはないのだが、出先で付け外しを行うこともあるだろうし、輪行時にはペダルを外すという方だっているはずだ。そういったシーンでもこの安定性は使いやすさに繋がるし、ペダル型パワーメーターのメリットを最大限に活かすことが出来るスペックであることは間違いない。
利便性という点においては、電源の仕様についてもガーミンのこだわりが見て取れる。前作の不安要素の原因でもあったボタン電池という仕様はそのままに端子の形状やペダルボディのネジ切り部を金属製とすることで、経年使用による接触不良の可能性を可能な限り抑えている。実際、約3週間のテストの間で動作不良は一度も無かった。
ちなみに電池はLR44もしくはSR44を4つ、またはCR1/3Nを2つ使用し、最大120時間駆動するという。週末に6時間x2日、平日に1時間x5日乗るようなアクティブなライダーでも7週間は使える計算だ。
気密性や接点不良問題の解消という点では充電式にしてしまえば、簡単に解決してしまうのだろうが、それでもあえて交換可能なボタン電池を採用するのはガーミンのポリシーにほかならないのだろう。出先で電池が切れたとしても容易に復帰できるというメリットは言うまでもなく、どんどんと増えていくケーブル類を一つ減らせるという利点もある。
前後ライトは当然として、サイクルコンピューターや電動コンポーネントなど充電が必要なパーツは増えていくばかり。専用のケーブルではないボタン電池式は宿泊を伴うようなロングライド、レースでの遠征などで必要な荷物も減り、忘れ物のリスクも減らせるはずだ。入手性に優れたシマノクリートが使えることも合わせ、非常にユーザビリティに優れたスペックだと感じる。
消耗が激しいペダルという部品だが、アフターパーツも充実しており、ペダルボディの交換なども可能。シマノ互換モデルのRSとルック互換モデルのRKが用意されているが、ボディを交換することで後からどちらにも変更できるというのも嬉しいポイントだ。
10年に渡ってペダル型パワーメーターを作り続けてきたガーミンの一つの到達点とも言える完成度に仕上げられたRALLY。ガーミンのサイクルコンピューターとのシナジーも素晴らしく、信頼できるパワーメーターとして一つのベンチマーク的な存在と言えるだろう。
ガーミン RALLY RS200
対応クリート:RS シマノSPD-SL、RK ルックKEO
測定精度:±1.0%
Qファクター:53mm、55mm
スタックハイト:12.2mm
対応電池:200シリーズ LR44/SR44(×4個)CR1/3N (x2)
稼働時間:最大120時間
耐荷重量:105kg
重量:RS200 320g、RS100 326g、RK200 326g、RK100 334g
付属品:クリート、クリート用ネジ、クリート用ワッシャー、クイックスタートマニュアル
価格:140,800円(税込)
text:Naoki Yasuoka
もちろん、推奨トルクを守ることに越したことはないのだが、出先で付け外しを行うこともあるだろうし、輪行時にはペダルを外すという方だっているはずだ。そういったシーンでもこの安定性は使いやすさに繋がるし、ペダル型パワーメーターのメリットを最大限に活かすことが出来るスペックであることは間違いない。
利便性という点においては、電源の仕様についてもガーミンのこだわりが見て取れる。前作の不安要素の原因でもあったボタン電池という仕様はそのままに端子の形状やペダルボディのネジ切り部を金属製とすることで、経年使用による接触不良の可能性を可能な限り抑えている。実際、約3週間のテストの間で動作不良は一度も無かった。
ちなみに電池はLR44もしくはSR44を4つ、またはCR1/3Nを2つ使用し、最大120時間駆動するという。週末に6時間x2日、平日に1時間x5日乗るようなアクティブなライダーでも7週間は使える計算だ。
気密性や接点不良問題の解消という点では充電式にしてしまえば、簡単に解決してしまうのだろうが、それでもあえて交換可能なボタン電池を採用するのはガーミンのポリシーにほかならないのだろう。出先で電池が切れたとしても容易に復帰できるというメリットは言うまでもなく、どんどんと増えていくケーブル類を一つ減らせるという利点もある。
前後ライトは当然として、サイクルコンピューターや電動コンポーネントなど充電が必要なパーツは増えていくばかり。専用のケーブルではないボタン電池式は宿泊を伴うようなロングライド、レースでの遠征などで必要な荷物も減り、忘れ物のリスクも減らせるはずだ。入手性に優れたシマノクリートが使えることも合わせ、非常にユーザビリティに優れたスペックだと感じる。
消耗が激しいペダルという部品だが、アフターパーツも充実しており、ペダルボディの交換なども可能。シマノ互換モデルのRSとルック互換モデルのRKが用意されているが、ボディを交換することで後からどちらにも変更できるというのも嬉しいポイントだ。
10年に渡ってペダル型パワーメーターを作り続けてきたガーミンの一つの到達点とも言える完成度に仕上げられたRALLY。ガーミンのサイクルコンピューターとのシナジーも素晴らしく、信頼できるパワーメーターとして一つのベンチマーク的な存在と言えるだろう。
ガーミン RALLY RS200
対応クリート:RS シマノSPD-SL、RK ルックKEO
測定精度:±1.0%
Qファクター:53mm、55mm
スタックハイト:12.2mm
対応電池:200シリーズ LR44/SR44(×4個)CR1/3N (x2)
稼働時間:最大120時間
耐荷重量:105kg
重量:RS200 320g、RS100 326g、RK200 326g、RK100 334g
付属品:クリート、クリート用ネジ、クリート用ワッシャー、クイックスタートマニュアル
価格:140,800円(税込)
text:Naoki Yasuoka
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