2021/10/24(日) - 10:01
独創的なレーシングバイクを手掛けるイタリアのカレラから、PHIBRA DISCをインプレッション。ついにディスクブレーキ化を果たすと同時に、ケーブルフル内装システムを採用し、一気に最先端のスペックを身に着けたブランドを象徴する一台の走りとは。
通算500勝以上の勝利を収め、不世出のクライマー、マルコ・パンターニが駆ったレーシングブランドとして認知されてきたカレラ。骨太で硬派なレーシングバイクを作り続ける気骨あるバイクブランドとして名を馳せたカレラのラインアップの中で、常に大きな存在感を放ち続けてきたのが、PHIBRAだ。
初代PHIBRAがデビューしたのは、今より10年以上前のこと。カーボンフレームがレーシングバイクの中心となり、各社が意欲的なフレームを世に問い続けてきた中にあってすら異形ともいえるフォルムを持ったさながら前衛アートのようなバイクで、当時のサイクリストに大きな印象を与えた。
2008年の初代から、2011年にPHIBRA TWO、さらに3年後にPHIBRA EVO、そして2018年に現行のPHIBRA NEXTと、カレラを代表するモデルであり続け、ラインアップの一角を占め続けてきたPHIBRA。最新作のであるPHIBRA NEXTでは、よりシンプルでモダンなフレームワークへとブラッシュアップされたが、コアとなるダブルアーチ構造は今に至るまで継承されている。
ダブルアーチ構造とは、フレームを上下2つのアーチ(弧)状の部位として捉えることで、それぞれに適した役割を担わせる設計アプローチ。トップチューブからシートステーに繋がる上側のアーチは振動吸収を担う「コンフォートアーチ」として、ダウンチューブからチェーンステーに掛けた下側のアーチは駆動効率を担保する「パワーアーチ」として位置づけられ、それぞれに適した柔軟性や剛性が与えられてきた。
そのPHIBRAの最新作となるのが、ついにディスクブレーキ化、そしてケーブルフル内装システムを採用したPHIBRA DISC。現行のPHIBRA NEXTをベースとしつつ、ディスクブレーキ化に当たって全体的に設計を見直すことで更なる性能向上を実現しているという。
それまでの曲線主体のデザインから一変し、PHIBRAらしさを残しつつ速さを直感させる直線的なデザインを取り入れたPHIBRA NEXTのフレームワークは受け継ぎつつ、コンフォートアーチの快適性を向上させることで、ディスクブレーキ&スルーアクスルの採用による突っ張り感を低減し、PHIBRAらしい乗り味を維持している。
さらに、フロントフォークの形状がよりストレートなプロファイルへとブラッシュアップされることで、ディスクブレーキの制動力をしっかり受け止める剛性を獲得しているという。フォークだけでなく、フレーム全体としても剛性を強化することで、レーシングバイクとして求められる性能を向上させている。
そしてもう一つの大きな変更点が、ケーブルフル内装システムの採用だ。FSAのACRシステムを搭載することで、ハンドル周りのケーブルを一切露出することなくフレーム内に引き込むことでPHIBRAらしいシルエットが際立つクリーンな仕上がりに。
もちろん、ケーブル類の生み出す空気抵抗を削減することにも繋がっている。内装シートクランプや、エアロプロファイルを与えられたダウンチューブやシートチューブなど、最先端のエアロオールラウンダーとして十分通用するスペックを有している。
より太いタイヤ幅に対応するクリアランスも確保しており、最大30mmまでのタイヤを装着可能。ブランドの代表であるダビデ・ボイファーヴァ氏が息子のシモーネ氏へと指揮を譲り、次世代への歩みを踏み出した新生カレラによる期待の新作、その実力に迫ろう。
―インプレッション
「独創的なルックスと裏腹な扱いやすさが光る一台 ロングライドのお供にピッタリ」
藤野智一(なるしまフレンド)
独創的なルックスで人気を集めてきたPHIBRAですが、その面影を残しつつ現代的なシルエットになってきましたね。走り自体もこれまでのPHIBRAに比べると角が取れて、オーソドックスな乗り味になっているように感じました。
昔は切れ味に優れたバイクでしたが、今作はバランス型で誰でも扱いやすい、乗りやすいバイクに仕上がっています。いわゆるパリっとした乾いた印象ではなく、しっとりとした踏み味ですね。レーシングブランドとしてのイメージが強いカレラですが、エンデュランスライドにこそフィットするような性格の一台です。
フレームの前後バランスがしっかり整えられていて、踏み込みに対してもどこかが破綻するようなことなくスムーズに加速してくれます。ギアを掛けて大トルクで踏むよりも、高めのケイデンスを意識して回していく方が性に合っていそうですね。瞬間的な入力に対してのレスポンスはそこまで得意ではない一方で、乱れがちなペダリングでも均してくれるような、上質で懐の深いスムースネスを感じました。
ケーブルフル内装の採用もあり、エアロダイナミクスもそこそこ確保されています。テストしたタイミングで運悪く向かい風が強く吹いてきたのですが、下りでも漕ぎ足すことなく速度を乗せていけました。コーナリングでの癖も無く、非常にコントローラブルです。前目に荷重しても、膨らんだり切れ込んだりすることもないので、ストレスフリーですね。
ダブルアーチ構造が効いているのか、上下方向への柔軟性も優れています。それはリアホイールがしっかりと地面を掴むトラクション性能としても、身体へのダメージを抑える快適性としても大きなメリットです。タイヤも30mmまで対応するとのことで、ちょっとしたアドベンチャーライドにも対応してくれそうです。
とても扱いやすいバイクですから、幅広い方にオススメしやすいですね。レーシーな走りを求める競技者には物足りない面もあると思いますが、そうではない一般サイクリストにとってはドンピシャな一台だと思います。このルックスにピンと来た方にこそ、乗っていただきたいですね。
カレラ PHIBRA DISC
フレーム素材:T700SC 60%、T800SC 35%、3K 5%
BB:プレスフィット 86x41
ヘッドセット:FSA ACR N°55 - 1.5"
シートポスト:CARRERAカスタム
フレーム:重量(M) 1050 +/- 50g、フォーク400+/-20g
タイヤ幅:最大30mm
カラー:A22-109(グレー)、A22-110(レッド)
価格:297,000円(税込)
text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto Ayano
通算500勝以上の勝利を収め、不世出のクライマー、マルコ・パンターニが駆ったレーシングブランドとして認知されてきたカレラ。骨太で硬派なレーシングバイクを作り続ける気骨あるバイクブランドとして名を馳せたカレラのラインアップの中で、常に大きな存在感を放ち続けてきたのが、PHIBRAだ。
初代PHIBRAがデビューしたのは、今より10年以上前のこと。カーボンフレームがレーシングバイクの中心となり、各社が意欲的なフレームを世に問い続けてきた中にあってすら異形ともいえるフォルムを持ったさながら前衛アートのようなバイクで、当時のサイクリストに大きな印象を与えた。
2008年の初代から、2011年にPHIBRA TWO、さらに3年後にPHIBRA EVO、そして2018年に現行のPHIBRA NEXTと、カレラを代表するモデルであり続け、ラインアップの一角を占め続けてきたPHIBRA。最新作のであるPHIBRA NEXTでは、よりシンプルでモダンなフレームワークへとブラッシュアップされたが、コアとなるダブルアーチ構造は今に至るまで継承されている。
ダブルアーチ構造とは、フレームを上下2つのアーチ(弧)状の部位として捉えることで、それぞれに適した役割を担わせる設計アプローチ。トップチューブからシートステーに繋がる上側のアーチは振動吸収を担う「コンフォートアーチ」として、ダウンチューブからチェーンステーに掛けた下側のアーチは駆動効率を担保する「パワーアーチ」として位置づけられ、それぞれに適した柔軟性や剛性が与えられてきた。
そのPHIBRAの最新作となるのが、ついにディスクブレーキ化、そしてケーブルフル内装システムを採用したPHIBRA DISC。現行のPHIBRA NEXTをベースとしつつ、ディスクブレーキ化に当たって全体的に設計を見直すことで更なる性能向上を実現しているという。
それまでの曲線主体のデザインから一変し、PHIBRAらしさを残しつつ速さを直感させる直線的なデザインを取り入れたPHIBRA NEXTのフレームワークは受け継ぎつつ、コンフォートアーチの快適性を向上させることで、ディスクブレーキ&スルーアクスルの採用による突っ張り感を低減し、PHIBRAらしい乗り味を維持している。
さらに、フロントフォークの形状がよりストレートなプロファイルへとブラッシュアップされることで、ディスクブレーキの制動力をしっかり受け止める剛性を獲得しているという。フォークだけでなく、フレーム全体としても剛性を強化することで、レーシングバイクとして求められる性能を向上させている。
そしてもう一つの大きな変更点が、ケーブルフル内装システムの採用だ。FSAのACRシステムを搭載することで、ハンドル周りのケーブルを一切露出することなくフレーム内に引き込むことでPHIBRAらしいシルエットが際立つクリーンな仕上がりに。
もちろん、ケーブル類の生み出す空気抵抗を削減することにも繋がっている。内装シートクランプや、エアロプロファイルを与えられたダウンチューブやシートチューブなど、最先端のエアロオールラウンダーとして十分通用するスペックを有している。
より太いタイヤ幅に対応するクリアランスも確保しており、最大30mmまでのタイヤを装着可能。ブランドの代表であるダビデ・ボイファーヴァ氏が息子のシモーネ氏へと指揮を譲り、次世代への歩みを踏み出した新生カレラによる期待の新作、その実力に迫ろう。
―インプレッション
「独創的なルックスと裏腹な扱いやすさが光る一台 ロングライドのお供にピッタリ」
藤野智一(なるしまフレンド)
独創的なルックスで人気を集めてきたPHIBRAですが、その面影を残しつつ現代的なシルエットになってきましたね。走り自体もこれまでのPHIBRAに比べると角が取れて、オーソドックスな乗り味になっているように感じました。
昔は切れ味に優れたバイクでしたが、今作はバランス型で誰でも扱いやすい、乗りやすいバイクに仕上がっています。いわゆるパリっとした乾いた印象ではなく、しっとりとした踏み味ですね。レーシングブランドとしてのイメージが強いカレラですが、エンデュランスライドにこそフィットするような性格の一台です。
フレームの前後バランスがしっかり整えられていて、踏み込みに対してもどこかが破綻するようなことなくスムーズに加速してくれます。ギアを掛けて大トルクで踏むよりも、高めのケイデンスを意識して回していく方が性に合っていそうですね。瞬間的な入力に対してのレスポンスはそこまで得意ではない一方で、乱れがちなペダリングでも均してくれるような、上質で懐の深いスムースネスを感じました。
ケーブルフル内装の採用もあり、エアロダイナミクスもそこそこ確保されています。テストしたタイミングで運悪く向かい風が強く吹いてきたのですが、下りでも漕ぎ足すことなく速度を乗せていけました。コーナリングでの癖も無く、非常にコントローラブルです。前目に荷重しても、膨らんだり切れ込んだりすることもないので、ストレスフリーですね。
ダブルアーチ構造が効いているのか、上下方向への柔軟性も優れています。それはリアホイールがしっかりと地面を掴むトラクション性能としても、身体へのダメージを抑える快適性としても大きなメリットです。タイヤも30mmまで対応するとのことで、ちょっとしたアドベンチャーライドにも対応してくれそうです。
とても扱いやすいバイクですから、幅広い方にオススメしやすいですね。レーシーな走りを求める競技者には物足りない面もあると思いますが、そうではない一般サイクリストにとってはドンピシャな一台だと思います。このルックスにピンと来た方にこそ、乗っていただきたいですね。
カレラ PHIBRA DISC
フレーム素材:T700SC 60%、T800SC 35%、3K 5%
BB:プレスフィット 86x41
ヘッドセット:FSA ACR N°55 - 1.5"
シートポスト:CARRERAカスタム
フレーム:重量(M) 1050 +/- 50g、フォーク400+/-20g
タイヤ幅:最大30mm
カラー:A22-109(グレー)、A22-110(レッド)
価格:297,000円(税込)
text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto Ayano
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