2021/09/21(火) - 08:49
タイムトライアルの新世界女王に輝いたのは、今季好調のエレン・ファンダイク(オランダ)だった。マーレン・ローセル(スイス)との手に汗握る接近戦の末、8年越し2回目のアルカンシエルに袖を通した。
男子U23個人タイムトライアルと同じ、北海に面したクノックヘイストから内陸部のブルージュを目指す30.3kmコースで争われた女子エリートの個人タイムトライアル。薄曇り空の下、31カ国から集った49名が女子世界最速を賭けた「時間との戦い」に挑んだ。
登坂やダウンヒルも、テクニカルなコーナーも無いごまかしの効かないフラットコース。サプライズは起こらず、下馬評通りパワーに優れる優勝候補たちがリザルト上位を占めることになる。
その中でも抜きん出たペースを刻んだのは、東京オリンピックの金メダリストであるアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)と直近のヨーロッパ選手権個人TTを制し、この日30歳の誕生日を迎えたマーレン・ローセル(スイス)、そしてヨーロッパ選手権ロードレースで単独逃げの末チャンピオンに輝いたエレン・ファンダイク(オランダ)という優勝候補3人。特に平均スピードを50km/h台に載せたファンダイクとローセルは、バーチャルで抜きつ抜かれつの接近戦を繰り広げた。
20番手でスタートを切り、渾身のハンドル投げでフィニッシュしたファンダイクのタイムは、それまでの暫定首位を2分近く上回る36分05秒28。「良い走りができたけれど、優勝候補たちよりも1時間も早くスタートしたので自分の結果が十分なのかどうか分からなかった」と振り返るファンダイクは、長時間ホットシートで後続選手の走りを見守ることとなる。
2008年と2016年のTT世界王者である46歳アンバー・ネーベン(アメリカ)は1ヶ月前に骨盤骨折を負ったとは信じられない好ペースを刻んだものの、ファンダイクとの差は埋まらない。ヨーロッパ選手権で3位に食い込んだリサ・ブレナウアー(ドイツ)はネーベンと互角のペースを刻む中、最後から2番目に出走したローセルが第1中間計測でファンダイクを上回った。
スペシャルペイントのTTバイクを駆るローセルは第1中間計測で3秒63、第2中間計測で2秒91と超僅差ながらもファンダイクをリードする。不安な面持ちで見守るファンダイク自身ですら「このままマーレンが私より早いタイムでフィニッシュするだろうと思っていた」と言うものの、ヨーロッパチャンピオンは最終区間で失速してしまう。10秒29遅れの36分15秒57というフィニッシュタイムを確認した瞬間、ファンダイクが両手で顔を覆った。
最終走者のファンフルーテンは第1中間計測で16秒61遅れという苦しい戦いになった。中盤以降遅れを取り戻したものの、平均スピードを50km/h台に載せることはできず36分29秒30でフィニッシュ。この瞬間、ファンダイクの8年ぶり2度目となる世界選手権優勝が決まった。
「あんなに感情的になるなんて思わなかったけれど、もう一度世界選手権で勝つことはずっと夢だった」と振り返るファンダイク。「今年は全てが調子良く運んでいたけれど、マーレンは常に自分よりも良い結果を出していた。自分も良いレベルにあったけれど、彼女は本当に強く、ここ数ヶ月のタイムトライアル全てで私を打ち負かしていた。だから勝つのは難しいと感じていたし、自分自身ベストの走りをしようと思っていた」。
ホットシートに座っていた時の気分を「恐ろしくて仕方なかった」と表現したファンダイク。「(ホットシートでは)神経がピリピリしていた。座っているだけで他にすることも無いし、私が座った時点でアネミエクはスタートすらしていなかった。みんないい走りだったと言ってくれたけれど、本当に自分の走りが(ライバルと比較して)どうなのか分からなかった」
タイムトライアルは私の大好きなもの。心から愛する競技であり、これが私の生き方のようにも思う。自分向きのコースで持てる全てを投入し、うまくいった。夢が叶った!」。今後1年間世界チャンピオンとしてタイムトライアルを走るファンダイクは満面の笑顔でアルカンシエルに袖を通した。
ローセルが東京オリンピックと昨年大会に続く2位銀メダル。ファンフルーテンが3位表彰台をキープし、怪我を感じさせない走りを披露した鉄人ネーベンが4位に入っている。
男子U23個人タイムトライアルと同じ、北海に面したクノックヘイストから内陸部のブルージュを目指す30.3kmコースで争われた女子エリートの個人タイムトライアル。薄曇り空の下、31カ国から集った49名が女子世界最速を賭けた「時間との戦い」に挑んだ。
登坂やダウンヒルも、テクニカルなコーナーも無いごまかしの効かないフラットコース。サプライズは起こらず、下馬評通りパワーに優れる優勝候補たちがリザルト上位を占めることになる。
その中でも抜きん出たペースを刻んだのは、東京オリンピックの金メダリストであるアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)と直近のヨーロッパ選手権個人TTを制し、この日30歳の誕生日を迎えたマーレン・ローセル(スイス)、そしてヨーロッパ選手権ロードレースで単独逃げの末チャンピオンに輝いたエレン・ファンダイク(オランダ)という優勝候補3人。特に平均スピードを50km/h台に載せたファンダイクとローセルは、バーチャルで抜きつ抜かれつの接近戦を繰り広げた。
20番手でスタートを切り、渾身のハンドル投げでフィニッシュしたファンダイクのタイムは、それまでの暫定首位を2分近く上回る36分05秒28。「良い走りができたけれど、優勝候補たちよりも1時間も早くスタートしたので自分の結果が十分なのかどうか分からなかった」と振り返るファンダイクは、長時間ホットシートで後続選手の走りを見守ることとなる。
2008年と2016年のTT世界王者である46歳アンバー・ネーベン(アメリカ)は1ヶ月前に骨盤骨折を負ったとは信じられない好ペースを刻んだものの、ファンダイクとの差は埋まらない。ヨーロッパ選手権で3位に食い込んだリサ・ブレナウアー(ドイツ)はネーベンと互角のペースを刻む中、最後から2番目に出走したローセルが第1中間計測でファンダイクを上回った。
スペシャルペイントのTTバイクを駆るローセルは第1中間計測で3秒63、第2中間計測で2秒91と超僅差ながらもファンダイクをリードする。不安な面持ちで見守るファンダイク自身ですら「このままマーレンが私より早いタイムでフィニッシュするだろうと思っていた」と言うものの、ヨーロッパチャンピオンは最終区間で失速してしまう。10秒29遅れの36分15秒57というフィニッシュタイムを確認した瞬間、ファンダイクが両手で顔を覆った。
最終走者のファンフルーテンは第1中間計測で16秒61遅れという苦しい戦いになった。中盤以降遅れを取り戻したものの、平均スピードを50km/h台に載せることはできず36分29秒30でフィニッシュ。この瞬間、ファンダイクの8年ぶり2度目となる世界選手権優勝が決まった。
「あんなに感情的になるなんて思わなかったけれど、もう一度世界選手権で勝つことはずっと夢だった」と振り返るファンダイク。「今年は全てが調子良く運んでいたけれど、マーレンは常に自分よりも良い結果を出していた。自分も良いレベルにあったけれど、彼女は本当に強く、ここ数ヶ月のタイムトライアル全てで私を打ち負かしていた。だから勝つのは難しいと感じていたし、自分自身ベストの走りをしようと思っていた」。
ホットシートに座っていた時の気分を「恐ろしくて仕方なかった」と表現したファンダイク。「(ホットシートでは)神経がピリピリしていた。座っているだけで他にすることも無いし、私が座った時点でアネミエクはスタートすらしていなかった。みんないい走りだったと言ってくれたけれど、本当に自分の走りが(ライバルと比較して)どうなのか分からなかった」
タイムトライアルは私の大好きなもの。心から愛する競技であり、これが私の生き方のようにも思う。自分向きのコースで持てる全てを投入し、うまくいった。夢が叶った!」。今後1年間世界チャンピオンとしてタイムトライアルを走るファンダイクは満面の笑顔でアルカンシエルに袖を通した。
ローセルが東京オリンピックと昨年大会に続く2位銀メダル。ファンフルーテンが3位表彰台をキープし、怪我を感じさせない走りを披露した鉄人ネーベンが4位に入っている。
ロード世界選手権2021女子エリート個人タイムトライアル結果
タイム | 平均スピード | ||
---|---|---|---|
1位 | エレン・ファンダイク(オランダ) | 36:05 | 50.383km/h |
2位 | マーレン・ローセル(スイス) | 0:10 | 50.152km/h |
3位 | アネミエク・ファンフルーテン(オランダ) | 0:24 | 49.831km/h |
4位 | アンバー・ネーベン(アメリカ) | 1:24 | 48.502km/h |
5位 | リサ・ブレナウアー(ドイツ) | 1:29 | 48.394km/h |
6位 | ジュリエット・ラボウ(フランス) | 1:47 | 48.011km/h |
7位 | リサ・クレイン(ドイツ) | 1:52 | 47.905km/h |
8位 | ジョセリン・ローデン(イギリス) | 1:59 | 47.758km/h |
9位 | リアンヌ・マークス(オランダ) | 1:59 | 47.758km/h |
10位 | アレーナ・アミアリウシク(ベラルーシ) | 2:19 | 47.344km/h |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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