2021/07/17(土) - 01:28
集団スプリントに持ち込まれると予想されたツール・ド・フランス第19ステージ。207kmの平坦コースで総合上位陣がリカバリーに励む中、20名の逃げ集団の中から独走したマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)が今大会2勝目を飾った。
7月16日(金)第19ステージ
ムランクス〜リブルヌ
距離:207km
獲得標高差:1,300m
天候:晴れ
気温:24〜30度
ピレネー山脈を制限時間内で走り切ったピュアスプリンターたちにスポットライトが当てられる、はずだった。ポー近郊のムランクスから平野をズバッと北上し、ボルドー近郊のリブルヌに至る平坦な207kmコースは完全にスプリンター向き。残り6.3km地点からフィニッシュラインまで幅の広い幹線道路は大集団によるスピードバトルに打ってつけで、駆けつけたエディ・メルクス氏が見守るその前でマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がステージ通算35勝目の記録を打ち立てるのではないかと予想された。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
12.1km地点 4級山岳バレイユ峠(全長1.9km・平均5.1%)
54.1km地点 スプリントポイント
先頭6名に追走14名が追いつき、メイン集団はペースダウン
晴れ渡るムランクスを離れるとすぐ、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)によるファーストアタックを経てマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)ら6名が逃げグループを形成。4分まで広がったタイム差をアルペシン・フェニックスとチームDSMが詰めにかかる平坦ステージらしい展開に落ち着いた。
メイン集団内で発生した落車により総合6位エンリク・マス(スペイン、モビスター)や総合8位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)、カヴェンディッシュらが後方に取り残されるシーンも見られたが、スプリントポイントまでに集団は一つに戻っている。
マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)を先頭にスプリントポイントを駆け抜けたメイン集団からは次なる動きが生まれる。高速道路のような幹線道路でミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)やトムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)らが断続的にアタックを仕掛けた結果、20名の大きな追走グループがメイン集団から飛び出した。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らの脱落により14名まで人数を減らした追走グループが残り100km地点で先頭6名に追いつく一方、メイン集団ではこの動きに乗り遅れたイスラエル・スタートアップネイションやイネオス・グレナディアーズ、バイクエクスチェンジが懸命に追走。クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション)とゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)という2人の総合優勝経験者がメイン集団を牽引したものの、20名まで人数を増やした逃げ集団は徐々にリードを広げていった。
逃げ集団を形成した20名
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)
ヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーション・NIPPO)
マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、クベカ・ネクストハッシュ)
サイモン・クラーク(オーストラリア、クベカ・ネクストハッシュ)
ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
ゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
フランク・ボナムール(フランス、B&Bホテルズ・KTM)
ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
エリー・ジェスベール(フランス、アルケア・サムシック)
カスパー・ピーダスン(デンマーク、チームDSM)
クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)
ブレント・ファンムール(ベルギー、ロット・スーダル)
シルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・フェニックス)
しばらく高速走行を続けたメイン集団だったが、タイム差が2分まで広がったところで追走を断念した。明確にスローダウンしたメイン集団に対して逃げ集団はぐんぐんとリードを広げ、残り80km地点でタイム差は3分、残り55km地点で10分。総合上位陣たちはこのまったりとした集団走行を翌日の個人タイムトライアルに向けてのリカバリーに充てた。
フィニッシュまで43kmを切ると先頭ではステージ優勝に向けたアタックが始まり、バッレリーニやジェスベール、ヴァルグレン、ヴァルシャイド、ボナムールらが飛び出すも決まらない。第12ステージで逃げ切りを果たしているポリッツのアタックが封じ込められると、徐々に人数を減らす逃げ集団の中から残り26km地点で第7ステージの優勝者モホリッチが加速した。
一気にリードを広げたスロベニアチャンピオンが独走開始。追走グループに対して45秒までリードを広げた状態で残り10kmアーチを駆け抜けたモホリッチ。カウンターアタックによって足並みが揃わない追走グループとのタイム差をモホリッチは1分の大台に乗せた。
ステージ敢闘賞獲得を決めたモホリッチがフィニッシュまで逃げ切った。58秒差のステージ2位と3位にはラポルトとピーダスンが入り、その後ろにテウニッセンやポリッツ、トゥーンスらが続いている。
スロベニア旋風を印象付けるスロベニアチャンピオンによるステージ2勝目。200kmオーバーのステージで再び独走勝利を飾ったモホリッチは「8名程度の逃げグループや、ドゥクーニンク・クイックステップもしくはアルペシン・フェニックスの選手が入る逃げグループには警戒していたんだ。スプリンターチームには状況をコントロールできるだけの力が残っていないと思っていた」と、スタートから逃げの展開を狙っていた。
「後方から追走グループが追いついてきてからはひたすら力を温存。ポリッツがアタックした時は限界だったものの、一発のアタックで飛び出して、あとはフィニッシュまでペースを刻んだ。正直言ってパワーは出ていなかったけどライバルたちを振り切ることができたんだ」。モホリッチの26kmにわたる独走中の平均スピードは47.9km/hで、ステージ全体の平均スピードも47.9km/h。選手たちには終始向かい風が吹き付けていたにもかかわらず、歴代8番目に速いステージだった。
マイヨジョーヌ集団は20分50秒遅れでフィニッシュし、総合成績には変動が起こっていない。総合ライバルたちから大きなリードを持って翌日の最終個人タイムトライアルに挑むタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は「コースは試走済み。決して複雑なコースではなく、かなり高速なレースになると思う。昨日のステージの疲れを感じるけど、全開で走るだけだ」と語っている。
7月16日(金)第19ステージ
ムランクス〜リブルヌ
距離:207km
獲得標高差:1,300m
天候:晴れ
気温:24〜30度
ピレネー山脈を制限時間内で走り切ったピュアスプリンターたちにスポットライトが当てられる、はずだった。ポー近郊のムランクスから平野をズバッと北上し、ボルドー近郊のリブルヌに至る平坦な207kmコースは完全にスプリンター向き。残り6.3km地点からフィニッシュラインまで幅の広い幹線道路は大集団によるスピードバトルに打ってつけで、駆けつけたエディ・メルクス氏が見守るその前でマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がステージ通算35勝目の記録を打ち立てるのではないかと予想された。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
12.1km地点 4級山岳バレイユ峠(全長1.9km・平均5.1%)
54.1km地点 スプリントポイント
先頭6名に追走14名が追いつき、メイン集団はペースダウン
晴れ渡るムランクスを離れるとすぐ、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)によるファーストアタックを経てマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)ら6名が逃げグループを形成。4分まで広がったタイム差をアルペシン・フェニックスとチームDSMが詰めにかかる平坦ステージらしい展開に落ち着いた。
メイン集団内で発生した落車により総合6位エンリク・マス(スペイン、モビスター)や総合8位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)、カヴェンディッシュらが後方に取り残されるシーンも見られたが、スプリントポイントまでに集団は一つに戻っている。
マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)を先頭にスプリントポイントを駆け抜けたメイン集団からは次なる動きが生まれる。高速道路のような幹線道路でミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)やトムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)らが断続的にアタックを仕掛けた結果、20名の大きな追走グループがメイン集団から飛び出した。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らの脱落により14名まで人数を減らした追走グループが残り100km地点で先頭6名に追いつく一方、メイン集団ではこの動きに乗り遅れたイスラエル・スタートアップネイションやイネオス・グレナディアーズ、バイクエクスチェンジが懸命に追走。クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション)とゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)という2人の総合優勝経験者がメイン集団を牽引したものの、20名まで人数を増やした逃げ集団は徐々にリードを広げていった。
逃げ集団を形成した20名
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)
ヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーション・NIPPO)
マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、クベカ・ネクストハッシュ)
サイモン・クラーク(オーストラリア、クベカ・ネクストハッシュ)
ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
ゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
フランク・ボナムール(フランス、B&Bホテルズ・KTM)
ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
エリー・ジェスベール(フランス、アルケア・サムシック)
カスパー・ピーダスン(デンマーク、チームDSM)
クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)
ブレント・ファンムール(ベルギー、ロット・スーダル)
シルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・フェニックス)
しばらく高速走行を続けたメイン集団だったが、タイム差が2分まで広がったところで追走を断念した。明確にスローダウンしたメイン集団に対して逃げ集団はぐんぐんとリードを広げ、残り80km地点でタイム差は3分、残り55km地点で10分。総合上位陣たちはこのまったりとした集団走行を翌日の個人タイムトライアルに向けてのリカバリーに充てた。
フィニッシュまで43kmを切ると先頭ではステージ優勝に向けたアタックが始まり、バッレリーニやジェスベール、ヴァルグレン、ヴァルシャイド、ボナムールらが飛び出すも決まらない。第12ステージで逃げ切りを果たしているポリッツのアタックが封じ込められると、徐々に人数を減らす逃げ集団の中から残り26km地点で第7ステージの優勝者モホリッチが加速した。
一気にリードを広げたスロベニアチャンピオンが独走開始。追走グループに対して45秒までリードを広げた状態で残り10kmアーチを駆け抜けたモホリッチ。カウンターアタックによって足並みが揃わない追走グループとのタイム差をモホリッチは1分の大台に乗せた。
ステージ敢闘賞獲得を決めたモホリッチがフィニッシュまで逃げ切った。58秒差のステージ2位と3位にはラポルトとピーダスンが入り、その後ろにテウニッセンやポリッツ、トゥーンスらが続いている。
スロベニア旋風を印象付けるスロベニアチャンピオンによるステージ2勝目。200kmオーバーのステージで再び独走勝利を飾ったモホリッチは「8名程度の逃げグループや、ドゥクーニンク・クイックステップもしくはアルペシン・フェニックスの選手が入る逃げグループには警戒していたんだ。スプリンターチームには状況をコントロールできるだけの力が残っていないと思っていた」と、スタートから逃げの展開を狙っていた。
「後方から追走グループが追いついてきてからはひたすら力を温存。ポリッツがアタックした時は限界だったものの、一発のアタックで飛び出して、あとはフィニッシュまでペースを刻んだ。正直言ってパワーは出ていなかったけどライバルたちを振り切ることができたんだ」。モホリッチの26kmにわたる独走中の平均スピードは47.9km/hで、ステージ全体の平均スピードも47.9km/h。選手たちには終始向かい風が吹き付けていたにもかかわらず、歴代8番目に速いステージだった。
マイヨジョーヌ集団は20分50秒遅れでフィニッシュし、総合成績には変動が起こっていない。総合ライバルたちから大きなリードを持って翌日の最終個人タイムトライアルに挑むタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は「コースは試走済み。決して複雑なコースではなく、かなり高速なレースになると思う。昨日のステージの疲れを感じるけど、全開で走るだけだ」と語っている。
ツール・ド・フランス2021第19ステージ結果
1位 | マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 4:19:17 |
2位 | クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス) | 0:00:58 |
3位 | カスパー・ピーダスン(デンマーク、チームDSM) | |
4位 | マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:01:02 |
5位 | ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:08 |
6位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
7位 | ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) | |
8位 | ゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
9位 | アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー) | 0:01:10 |
10位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
26位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:20:50 |
DNS | マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
DNS | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 79:40:09 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:45 |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:05:51 |
4位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 0:08:18 |
5位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:08:50 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:10:11 |
7位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック) | 0:11:22 |
8位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:12:46 |
9位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:13:48 |
10位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO) | 0:16:25 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 304pts |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | 269pts |
3位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 216pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 107pts |
2位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | 88pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 82pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 79:40:09 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:45 |
3位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:18:42 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 239:22:04 |
2位 | EFエデュケーション・NIPPO | 0:23:25 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | 1:15:32 |
text:Kei Tsuji in Libourne, France
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