2021/05/06(木) - 12:22
ストラーデビアンケさながらの未舗装コース、いつもと違うモンテゾンコラン、ドロミテの難関峠を行くクイーンステージ、そして3週目に連続する初登場のセーガ・ディ・アーラ、アルペ・ディ・メーラ、アルペ・モッタの山頂フィニッシュ。ミラノの個人タイムトライアルで締めくくられるジロ・デ・イタリア後半戦のステージを紹介します。
5月19日(水)第11ステージ → コースマップ
ペルージャ〜モンタルチーノ 162km ★★★★
刺激的なステージが連続する大会後半戦がウンブリア州のペルージャでスタート。目指すのはトスカーナ州の丘陵地帯だ。この第11ステージには、コース発表時から話題を呼んだ未舗装区間が4つ組み込まれている。本家ストラーデビアンケと同じセットーレ(セクター、区間)は登場しないが、通過する地域は同じ。フィニッシュ地点モンタルチーノの周囲に広がる「白い道」もしくは「茶色い道」を合計35.2kmにわたって駆ける。残り69km地点から先は半分以上が未舗装になる計算だ。
下り基調の第1区間(全長9.1km)で縦に長く伸びた集団は、続く第2区間(全長13.5km)で崩壊するだろう。エヴァンスが2010年大会第7ステージで泥だらけのアルカンシェルを着て勝利した際に最終区間として登場したこの第2区間には最大勾配16%の急勾配区間も出現。モンタルチーノをかすめるようにして第3区間(全長7.6km)と第4区間(全長5.0km)をこなし、最後は石畳が敷かれたモンタルチーノ旧市街地を駆け抜けて、勾配12%の舗装路を登ってフィニッシュを迎える。
ちなみにエヴァンス優勝の2010年大会第7ステージに登場した未舗装区間は合計14kmだった。世界的なワインの産地を巡るだけに主催者は「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ワインステージ」と銘打っているが、選手たちにはそんな景色もワインも楽しんでいる余裕はない。難易度4つ星のグラベル決戦は、難関山岳ステージ以上に大きなダメージをマリアローザ争いに与えるかもしれない。
5月20日(木)第12ステージ → コースマップ
シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212km ★★★★
第12ステージはストラーデビアンケのフィニッシュ地点であるシエナのカンポ広場をスタート。キアンティワインを生み出す丘を越えてフィレンツェに至り、そこからアペニン山脈へと歩みを進める。フィニッシュ地点バーニョ・ディ・ロマーニャまでの間に設定されたカテゴリー山岳は4つ。総合に関係しない逃げ屋たちがステージ前半から鼻息荒く飛び出すだろう。
3級山岳モンテ・モレッロ(登坂距離7.6km・平均勾配6.6%)、2級山岳コンスーマ峠(登坂距離17.1km・平均勾配5.7%)、2級山岳カッラ峠(登坂距離15.3km・平均勾配5.5%)、そして3級山岳カルナイオ峠(登坂距離10.8km・平均勾配5.1%)という、獲得標高差3,700mのボリューム感たっぷりの登りが逃げグループの中からステージ優勝者を選び出す。エミリア=ロマーニャ州の温泉保養地として知られるバーニョ・ディ・ロマーニャに向けて、不意打ちのアタックを仕掛けてくるマリアローザ候補が出てもおかしくない。
5月21日(金)第13ステージ → コースマップ
ラヴェンナ〜ヴェローナ 198km ★
久々の難易度1つ星。久々のスプリント対決。ラヴェンナからヴェローナまで、広大なポー平原を貫く198kmの「移動ステージ」に起伏は存在しない(獲得標高差は200m)。マリアローザ争いとマリアアッズーラ争い、マリアビアンカ争いが(強風が吹かない限り)一時休戦する一方で、マリアチクラミーノ争いはクライマックスを迎える。まだ平坦基調のステージが2つ残されているものの、いずれも終盤にかけて山岳が組み込まれているため、純粋なフラットステージはこの日が最後となる。
残り3.3km地点からフィニッシュラインまではほぼ一直線。残り1.5km地点でピークを迎える高架区間からの下りでスピードをつけた集団は、トップギアを踏んで残り600mの大きなラウンドアバウトをクリアする。最後は名物の円形闘技場まで行かずに、その手前のポルタヌオーヴァ通りに引かれたフィニッシュラインに向けてスプリント。翌日から山岳決戦が始まるため、交通の便の良いヴェローナでジロを離脱するスプリンターも出てくるだろう。
5月22日(土)第14ステージ → コースマップ
チッタデッラ〜モンテ・ゾンコラン 205km ★★★★★
難易度5つ星。アルプス&ドロミテ決戦がいよいよ始まる。スタートからしばらく平坦路を走ったプロトンは、120km地点のスプリントポイント通過後にフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山岳地帯に突入する。標高1,060mの2級山岳フォルチェッタ・モンテレスト(登坂距離10.5km・平均勾配5.9%)は前菜に過ぎない。メインディッシュは悪名高き1級山岳モンテ・ゾンコラン(登坂距離14.1km・平均勾配8.5%・最大勾配27%)の山頂フィニッシュだ。
目指すは標高1,730mの峠だが、直近の5回(2007年、2010年、2011年、2014年、2018年)の西側オヴァーロからのモンテ・ゾンコラン登坂(登坂距離10.1km・平均勾配11.9%・最大勾配22%)ではなく、2003年に初登場した時と同じ東側ストゥリオからの登坂となる。
平均勾配だけを見ると11.9%から8.5%にダウンしているものの、頂上手前の勾配は強烈で、最大勾配は東側に軍配が上がる。残り3kmから残り2kmまで平均勾配11.2%・最大勾配22%、残り2kmから残り1kmまで平均勾配13.1%・最大勾配25%、残り1kmからフィニッシュまで平均勾配14.7%・最大勾配27%と、進めば進むほど勾配が増していく過酷さ。終盤まで集団に食らいついていても、ラスト数キロで簡単に数分差を失ってしまうことも考えられる。逃げも隠れもできないゾンコランでマリアローザは本命の手に渡る。
5月23日(日)第15ステージ → コースマップ
グラード〜ゴリツィア 147km ★★★
ゾンコラン決戦から一夜明け、第15ステージはアドリア海の潟湖に浮かぶグラードからスロベニア国境に広がる山岳地帯へ。イタリア国内にこだわることなく、ジロはロードレースの強豪国に躍進したスロベニアを通過する。ステージ後半にかけてイタリアとスロベニアが半々半分の周回コースを2周半。合計3回通過することになる4級山岳ゴルニェ・セロボ(登坂距離1.7km・平均勾配8.5%)でピュアスプリンターは苦しむことになるだろう。
最後はスロベニア側の姉妹都市ノヴァ・ゴリツィアに設定されたボーナスタイム付きスプリントポイントと、登坂距離1km・平均勾配5.9%・最大勾配14%の登り、そして同じだけの下りをこなして、イタリア側のゴリツィアにフィニッシュ。登れるスプリンターが勝負に残る可能性もあるが、登りで飛び出したアタッカーがステージ優勝をさらうかもしれない。まだステージ優勝を手にしていないチームは逃げとスプリントの双方で勝負に出るだろう。
5月24日(月)第16ステージ → コースマップ
サチーレ〜コルティナ・ダンペッツォ 212km ★★★★★
今大会最大、獲得標高差5,700mという途方もない登りが212kmのマラソンコースに組み込まれた。大会2週目を締めくくるまごうことなきタッポーネ(クイーンステージ)であり、垂直に切り立ったドロミテ山塊の美しき山々が激しいマリアローザ争いを見守る。
ドロミテを代表する1級山岳フェダイア峠(登坂距離14km・平均勾配7.6%)、チーマコッピ(大会最高地点)のポルドイ峠(登坂距離11.8km・平均勾配6.8%)、 1級山岳ジャウ峠(登坂距離9.9km・平均勾配9.3%)という標高2,000mオーバーの峠を立て続けに3つ越える。そしてハイスピードダウンヒルの先に待つのが、1956年と2026年の冬季五輪開催地であるコルティナ・ダンペッツォの登り勾配フィニッシュ(石畳&勾配4.6%)。山頂フィニッシュではないが、空気の薄さを明確に感じる峠道で総合成績は今一度シャッフルされる。
スタート後すぐに1級山岳ラ・クロセッタの登坂が始まるので、完走を目指すスプリンターたちにとっても極めて重要な1日になる。1級山岳ラ・クロセッタで集団から脱落してしまうと、グルペット内で7時間以上走り続けなければならない。例えば主催者が予測するステージ優勝タイム6時間15分の場合、平均スピードは39km/hで、タイムリミットは1時間07分30秒(ステージ優勝者+18%)となる。
5月25日(火)休息日
5月26日(水)第17ステージ → コースマップ
カナツェーイ〜セーガ・ディ・アーラ 193km ★★★★
大会最後の休息を取ったプロトンは、ドロミテの山々を横目にトレンティーノ=アルト・アディジェ州を南へ。ステージ中盤にかけてアディジェ川が作り出したアディジェ渓谷を走り、2つのスプリントポイントを通過してから再び山岳地帯へと向かう。残り50km地点から先にはもう休む場所なんてない。
1級山岳サンヴァレンティーノ峠(登坂距離14.8km・平均勾配7.8%)が最初のセレクションの場。このサンヴァレンティーノ峠は難易度の高い登り区間だけでなく麓が近づくにつれて勾配が増す(最高90km/hを超える)下り区間も要注意。そんな危険なハイスピードダウンヒルと、短い平坦区間を経て、ジロ初登場の1級山岳セーガ・ディ・アーラ(登坂距離11.2km・平均勾配9.8%)の登坂に取り掛かる。
いくつかの平坦区間を含む1級山岳セーガ・ディ・アーラの実質的な平均勾配は10%オーバーで、特に残り4kmを切ってからは15%前後の勾配を刻む(最大勾配は17%)。この激坂区間で抜け出した単独もしくは複数名の選手が、残り2km地点からの緩斜面でスプリントすることになるだろう。休息日明けの失調に苦しむ選手も出てくるかもしれない。
5月27日(木)第18ステージ → コースマップ
ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★
第18ステージのコース全長は今大会どころか2021年のすべてのグランツールの中で最長の231km。前後を巨大な山岳ステージに挟まれたステージの大部分はポー平原を貫く平坦路であり、総合上位陣はここぞとばかりにリカバリーに勤しむ。
コースの毛色が変わるのが残り35kmを切ってから。すんなりとロンバルディア州のストラデッラにフィニッシュするのではなく、選手たちはアップダウン区間へと導かれる。選手たちを待ち構えるのは4級山岳カスターナを含む4つの丘で、いずれも勾配は4〜5%ほど。残り5km地点で最後の丘を越える。大会最後の平坦ステージであり、短い登りを得意とする軽量スプリンターや好調なピュアスプリンターであればこなせる難易度だが、開幕からすでに3週間近くが経過しているためどう転ぶか分からない。スプリンターチームを振り切って、アップダウン区間で抜け出した選手たちがステージ優勝争いを繰り広げる可能性もある。
5月28日(金)第19ステージ → コースマップ
アッビアーテグラッソ〜アルペ・ディ・メーラ(ヴァルセズィア)176km ★★★★
3週間前にスタートしたジロが開幕地トリノを含むピエモンテ州に帰ってきた。マリアローザ争いを決定づける3日間の初日は難易度4つ星のアルプス山岳ステージ。全長176kmコースの獲得標高差3,400mの大半はラスト100kmに詰め込まれている。
オルタ湖畔からまずは1級山岳モッタローネ(登坂距離15.4km・平均6.7%)を駆け上がる。勾配が小刻みに変化するリズムが掴みにくいこの標高1,341mの峠を越えてマッジョーレ湖まで下ると、次は3級山岳コルマ峠へ。ここで湖水地方に別れを告げて、ジロ初登場となる1級山岳アルペ・ディ・メーラ(登坂距離9.7km・平均勾配9.0%)へと向かう。
標高1,531mのこじんまりとしたスキーリゾート地に向かう登りは、ヘアピンが連続し、進めば進むほど勾配が増していくタイプ。残り5kmを切ってからは常に勾配10%オーバーで、残り3km地点で最大勾配14%をマークする。佳境を迎えるマリアローザ争いはもちろんのこと、マリアアッズーラの行方にも注目したい。
5月29日(土)第20ステージ → コースマップ
ヴェルバニア〜アルペ・モッタ(ヴァッレ・スプルーガ)164km ★★★★★
ジロの最終日前日は安定の難易度5つ星。獲得標高差4,200m。翌日のステージ優勝が期待されるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)の故郷ヴェルバニアをスタート後すぐ、22km地点から先は隣国スイスを走る。とにかく長い1級山岳サンベルナルディーノ峠(登坂距離23.7km・平均勾配6.2%)と1級山岳シュプリューゲンパス=スプルガ峠(登坂距離8.9km・平均勾配7.3%)という2つの標高2,000m超峠をクリアしてイタリアに戻ると、そこから標高差1,000mを一気に下る。この時点でメイン集団は数十名に絞られているはずだ。
第104回大会の山岳決戦最後を締めくくるのがジロ初登場の1級山岳アルペ・モッタ(登坂距離7.3km・平均勾配7.6%)。勾配8〜9%を刻む登り前半を終えて中腹のマデージモの街中に入ると、そこにはボーナスタイム付きスプリントポイントが待っている。つまり登りの麓で早めに仕掛けてスプリントポイント先頭通過&ステージ優勝を果たせば、最大13秒のボーナスタイムを獲得することが可能だ。
ジロのフィニッシュ地点を迎え入れたこともある山間のマデージモ(残り2.3km地点)を抜けるとそこから先はジロ初登坂。勾配10%近い山道を進んだ先にあるスキーリゾート地アルペ・モッタでマリアローザを受け取るのは誰だろうか。なお、最終日に平坦な個人タイムトライアルが設定されていることを考えると、ピュアクライマーは少しでもリードを広げておく必要がある。
5月30日(日)第21ステージ → コースマップ
セナーゴ〜ミラノ 30.3km(個人TT)★★★
個人タイムトライアルに始まり、個人タイムトライアルに終わる。最終平坦ステージをパレード走行するマイヨジョーヌ着用者とマイヨロホ着用者と対照的に、マリアローザ着用者は最終日まで全開走行を強いられる。
ほぼ真っ平らなコースの全長は30.3kmと比較的長め(2019年は17km、2020年は15.7km)。大都市ミラノの中心に向かうコースは直線基調だが、道中いくつもの直角コーナーをこなさなければならない。残り1kmを切ってからテクニカルな連続コーナーをこなして、最後は例年通りドゥオーモ前にフィニッシュする。ステージ優勝者の予想タイムは33分前後だ。
過去10年の最終個人タイムトライアルでマリアローザ交代が発生したのは2020年を含めて3回。2021年は距離が長いだけに、総合上位の選手たちの間に数分差がつくことも考えられる。とにかくここで総合リードを守った選手または総合逆転を果たした選手がマリアローザとトロフェオ・センツァ・フィーネを受け取ることになる。
text:Kei Tsuji
5月19日(水)第11ステージ → コースマップ
ペルージャ〜モンタルチーノ 162km ★★★★
刺激的なステージが連続する大会後半戦がウンブリア州のペルージャでスタート。目指すのはトスカーナ州の丘陵地帯だ。この第11ステージには、コース発表時から話題を呼んだ未舗装区間が4つ組み込まれている。本家ストラーデビアンケと同じセットーレ(セクター、区間)は登場しないが、通過する地域は同じ。フィニッシュ地点モンタルチーノの周囲に広がる「白い道」もしくは「茶色い道」を合計35.2kmにわたって駆ける。残り69km地点から先は半分以上が未舗装になる計算だ。
下り基調の第1区間(全長9.1km)で縦に長く伸びた集団は、続く第2区間(全長13.5km)で崩壊するだろう。エヴァンスが2010年大会第7ステージで泥だらけのアルカンシェルを着て勝利した際に最終区間として登場したこの第2区間には最大勾配16%の急勾配区間も出現。モンタルチーノをかすめるようにして第3区間(全長7.6km)と第4区間(全長5.0km)をこなし、最後は石畳が敷かれたモンタルチーノ旧市街地を駆け抜けて、勾配12%の舗装路を登ってフィニッシュを迎える。
ちなみにエヴァンス優勝の2010年大会第7ステージに登場した未舗装区間は合計14kmだった。世界的なワインの産地を巡るだけに主催者は「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ワインステージ」と銘打っているが、選手たちにはそんな景色もワインも楽しんでいる余裕はない。難易度4つ星のグラベル決戦は、難関山岳ステージ以上に大きなダメージをマリアローザ争いに与えるかもしれない。
5月20日(木)第12ステージ → コースマップ
シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212km ★★★★
第12ステージはストラーデビアンケのフィニッシュ地点であるシエナのカンポ広場をスタート。キアンティワインを生み出す丘を越えてフィレンツェに至り、そこからアペニン山脈へと歩みを進める。フィニッシュ地点バーニョ・ディ・ロマーニャまでの間に設定されたカテゴリー山岳は4つ。総合に関係しない逃げ屋たちがステージ前半から鼻息荒く飛び出すだろう。
3級山岳モンテ・モレッロ(登坂距離7.6km・平均勾配6.6%)、2級山岳コンスーマ峠(登坂距離17.1km・平均勾配5.7%)、2級山岳カッラ峠(登坂距離15.3km・平均勾配5.5%)、そして3級山岳カルナイオ峠(登坂距離10.8km・平均勾配5.1%)という、獲得標高差3,700mのボリューム感たっぷりの登りが逃げグループの中からステージ優勝者を選び出す。エミリア=ロマーニャ州の温泉保養地として知られるバーニョ・ディ・ロマーニャに向けて、不意打ちのアタックを仕掛けてくるマリアローザ候補が出てもおかしくない。
5月21日(金)第13ステージ → コースマップ
ラヴェンナ〜ヴェローナ 198km ★
久々の難易度1つ星。久々のスプリント対決。ラヴェンナからヴェローナまで、広大なポー平原を貫く198kmの「移動ステージ」に起伏は存在しない(獲得標高差は200m)。マリアローザ争いとマリアアッズーラ争い、マリアビアンカ争いが(強風が吹かない限り)一時休戦する一方で、マリアチクラミーノ争いはクライマックスを迎える。まだ平坦基調のステージが2つ残されているものの、いずれも終盤にかけて山岳が組み込まれているため、純粋なフラットステージはこの日が最後となる。
残り3.3km地点からフィニッシュラインまではほぼ一直線。残り1.5km地点でピークを迎える高架区間からの下りでスピードをつけた集団は、トップギアを踏んで残り600mの大きなラウンドアバウトをクリアする。最後は名物の円形闘技場まで行かずに、その手前のポルタヌオーヴァ通りに引かれたフィニッシュラインに向けてスプリント。翌日から山岳決戦が始まるため、交通の便の良いヴェローナでジロを離脱するスプリンターも出てくるだろう。
5月22日(土)第14ステージ → コースマップ
チッタデッラ〜モンテ・ゾンコラン 205km ★★★★★
難易度5つ星。アルプス&ドロミテ決戦がいよいよ始まる。スタートからしばらく平坦路を走ったプロトンは、120km地点のスプリントポイント通過後にフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山岳地帯に突入する。標高1,060mの2級山岳フォルチェッタ・モンテレスト(登坂距離10.5km・平均勾配5.9%)は前菜に過ぎない。メインディッシュは悪名高き1級山岳モンテ・ゾンコラン(登坂距離14.1km・平均勾配8.5%・最大勾配27%)の山頂フィニッシュだ。
目指すは標高1,730mの峠だが、直近の5回(2007年、2010年、2011年、2014年、2018年)の西側オヴァーロからのモンテ・ゾンコラン登坂(登坂距離10.1km・平均勾配11.9%・最大勾配22%)ではなく、2003年に初登場した時と同じ東側ストゥリオからの登坂となる。
平均勾配だけを見ると11.9%から8.5%にダウンしているものの、頂上手前の勾配は強烈で、最大勾配は東側に軍配が上がる。残り3kmから残り2kmまで平均勾配11.2%・最大勾配22%、残り2kmから残り1kmまで平均勾配13.1%・最大勾配25%、残り1kmからフィニッシュまで平均勾配14.7%・最大勾配27%と、進めば進むほど勾配が増していく過酷さ。終盤まで集団に食らいついていても、ラスト数キロで簡単に数分差を失ってしまうことも考えられる。逃げも隠れもできないゾンコランでマリアローザは本命の手に渡る。
5月23日(日)第15ステージ → コースマップ
グラード〜ゴリツィア 147km ★★★
ゾンコラン決戦から一夜明け、第15ステージはアドリア海の潟湖に浮かぶグラードからスロベニア国境に広がる山岳地帯へ。イタリア国内にこだわることなく、ジロはロードレースの強豪国に躍進したスロベニアを通過する。ステージ後半にかけてイタリアとスロベニアが半々半分の周回コースを2周半。合計3回通過することになる4級山岳ゴルニェ・セロボ(登坂距離1.7km・平均勾配8.5%)でピュアスプリンターは苦しむことになるだろう。
最後はスロベニア側の姉妹都市ノヴァ・ゴリツィアに設定されたボーナスタイム付きスプリントポイントと、登坂距離1km・平均勾配5.9%・最大勾配14%の登り、そして同じだけの下りをこなして、イタリア側のゴリツィアにフィニッシュ。登れるスプリンターが勝負に残る可能性もあるが、登りで飛び出したアタッカーがステージ優勝をさらうかもしれない。まだステージ優勝を手にしていないチームは逃げとスプリントの双方で勝負に出るだろう。
5月24日(月)第16ステージ → コースマップ
サチーレ〜コルティナ・ダンペッツォ 212km ★★★★★
今大会最大、獲得標高差5,700mという途方もない登りが212kmのマラソンコースに組み込まれた。大会2週目を締めくくるまごうことなきタッポーネ(クイーンステージ)であり、垂直に切り立ったドロミテ山塊の美しき山々が激しいマリアローザ争いを見守る。
ドロミテを代表する1級山岳フェダイア峠(登坂距離14km・平均勾配7.6%)、チーマコッピ(大会最高地点)のポルドイ峠(登坂距離11.8km・平均勾配6.8%)、 1級山岳ジャウ峠(登坂距離9.9km・平均勾配9.3%)という標高2,000mオーバーの峠を立て続けに3つ越える。そしてハイスピードダウンヒルの先に待つのが、1956年と2026年の冬季五輪開催地であるコルティナ・ダンペッツォの登り勾配フィニッシュ(石畳&勾配4.6%)。山頂フィニッシュではないが、空気の薄さを明確に感じる峠道で総合成績は今一度シャッフルされる。
スタート後すぐに1級山岳ラ・クロセッタの登坂が始まるので、完走を目指すスプリンターたちにとっても極めて重要な1日になる。1級山岳ラ・クロセッタで集団から脱落してしまうと、グルペット内で7時間以上走り続けなければならない。例えば主催者が予測するステージ優勝タイム6時間15分の場合、平均スピードは39km/hで、タイムリミットは1時間07分30秒(ステージ優勝者+18%)となる。
5月25日(火)休息日
5月26日(水)第17ステージ → コースマップ
カナツェーイ〜セーガ・ディ・アーラ 193km ★★★★
大会最後の休息を取ったプロトンは、ドロミテの山々を横目にトレンティーノ=アルト・アディジェ州を南へ。ステージ中盤にかけてアディジェ川が作り出したアディジェ渓谷を走り、2つのスプリントポイントを通過してから再び山岳地帯へと向かう。残り50km地点から先にはもう休む場所なんてない。
1級山岳サンヴァレンティーノ峠(登坂距離14.8km・平均勾配7.8%)が最初のセレクションの場。このサンヴァレンティーノ峠は難易度の高い登り区間だけでなく麓が近づくにつれて勾配が増す(最高90km/hを超える)下り区間も要注意。そんな危険なハイスピードダウンヒルと、短い平坦区間を経て、ジロ初登場の1級山岳セーガ・ディ・アーラ(登坂距離11.2km・平均勾配9.8%)の登坂に取り掛かる。
いくつかの平坦区間を含む1級山岳セーガ・ディ・アーラの実質的な平均勾配は10%オーバーで、特に残り4kmを切ってからは15%前後の勾配を刻む(最大勾配は17%)。この激坂区間で抜け出した単独もしくは複数名の選手が、残り2km地点からの緩斜面でスプリントすることになるだろう。休息日明けの失調に苦しむ選手も出てくるかもしれない。
5月27日(木)第18ステージ → コースマップ
ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★
第18ステージのコース全長は今大会どころか2021年のすべてのグランツールの中で最長の231km。前後を巨大な山岳ステージに挟まれたステージの大部分はポー平原を貫く平坦路であり、総合上位陣はここぞとばかりにリカバリーに勤しむ。
コースの毛色が変わるのが残り35kmを切ってから。すんなりとロンバルディア州のストラデッラにフィニッシュするのではなく、選手たちはアップダウン区間へと導かれる。選手たちを待ち構えるのは4級山岳カスターナを含む4つの丘で、いずれも勾配は4〜5%ほど。残り5km地点で最後の丘を越える。大会最後の平坦ステージであり、短い登りを得意とする軽量スプリンターや好調なピュアスプリンターであればこなせる難易度だが、開幕からすでに3週間近くが経過しているためどう転ぶか分からない。スプリンターチームを振り切って、アップダウン区間で抜け出した選手たちがステージ優勝争いを繰り広げる可能性もある。
5月28日(金)第19ステージ → コースマップ
アッビアーテグラッソ〜アルペ・ディ・メーラ(ヴァルセズィア)176km ★★★★
3週間前にスタートしたジロが開幕地トリノを含むピエモンテ州に帰ってきた。マリアローザ争いを決定づける3日間の初日は難易度4つ星のアルプス山岳ステージ。全長176kmコースの獲得標高差3,400mの大半はラスト100kmに詰め込まれている。
オルタ湖畔からまずは1級山岳モッタローネ(登坂距離15.4km・平均6.7%)を駆け上がる。勾配が小刻みに変化するリズムが掴みにくいこの標高1,341mの峠を越えてマッジョーレ湖まで下ると、次は3級山岳コルマ峠へ。ここで湖水地方に別れを告げて、ジロ初登場となる1級山岳アルペ・ディ・メーラ(登坂距離9.7km・平均勾配9.0%)へと向かう。
標高1,531mのこじんまりとしたスキーリゾート地に向かう登りは、ヘアピンが連続し、進めば進むほど勾配が増していくタイプ。残り5kmを切ってからは常に勾配10%オーバーで、残り3km地点で最大勾配14%をマークする。佳境を迎えるマリアローザ争いはもちろんのこと、マリアアッズーラの行方にも注目したい。
5月29日(土)第20ステージ → コースマップ
ヴェルバニア〜アルペ・モッタ(ヴァッレ・スプルーガ)164km ★★★★★
ジロの最終日前日は安定の難易度5つ星。獲得標高差4,200m。翌日のステージ優勝が期待されるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)の故郷ヴェルバニアをスタート後すぐ、22km地点から先は隣国スイスを走る。とにかく長い1級山岳サンベルナルディーノ峠(登坂距離23.7km・平均勾配6.2%)と1級山岳シュプリューゲンパス=スプルガ峠(登坂距離8.9km・平均勾配7.3%)という2つの標高2,000m超峠をクリアしてイタリアに戻ると、そこから標高差1,000mを一気に下る。この時点でメイン集団は数十名に絞られているはずだ。
第104回大会の山岳決戦最後を締めくくるのがジロ初登場の1級山岳アルペ・モッタ(登坂距離7.3km・平均勾配7.6%)。勾配8〜9%を刻む登り前半を終えて中腹のマデージモの街中に入ると、そこにはボーナスタイム付きスプリントポイントが待っている。つまり登りの麓で早めに仕掛けてスプリントポイント先頭通過&ステージ優勝を果たせば、最大13秒のボーナスタイムを獲得することが可能だ。
ジロのフィニッシュ地点を迎え入れたこともある山間のマデージモ(残り2.3km地点)を抜けるとそこから先はジロ初登坂。勾配10%近い山道を進んだ先にあるスキーリゾート地アルペ・モッタでマリアローザを受け取るのは誰だろうか。なお、最終日に平坦な個人タイムトライアルが設定されていることを考えると、ピュアクライマーは少しでもリードを広げておく必要がある。
5月30日(日)第21ステージ → コースマップ
セナーゴ〜ミラノ 30.3km(個人TT)★★★
個人タイムトライアルに始まり、個人タイムトライアルに終わる。最終平坦ステージをパレード走行するマイヨジョーヌ着用者とマイヨロホ着用者と対照的に、マリアローザ着用者は最終日まで全開走行を強いられる。
ほぼ真っ平らなコースの全長は30.3kmと比較的長め(2019年は17km、2020年は15.7km)。大都市ミラノの中心に向かうコースは直線基調だが、道中いくつもの直角コーナーをこなさなければならない。残り1kmを切ってからテクニカルな連続コーナーをこなして、最後は例年通りドゥオーモ前にフィニッシュする。ステージ優勝者の予想タイムは33分前後だ。
過去10年の最終個人タイムトライアルでマリアローザ交代が発生したのは2020年を含めて3回。2021年は距離が長いだけに、総合上位の選手たちの間に数分差がつくことも考えられる。とにかくここで総合リードを守った選手または総合逆転を果たした選手がマリアローザとトロフェオ・センツァ・フィーネを受け取ることになる。
text:Kei Tsuji
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