5月8日にかつてのイタリアの首都トリノで開幕する第104回ジロ・デ・イタリア。前半からセストラやアスコリ・ピチェーノ、そして未舗装のカンポ・フェリーチェという山頂フィニッシュが連続して登場する。イタリア半島を南下する第10ステージまでの前半戦を紹介します。



5月8日(土)第1ステージ → コースマップ
トリノ〜トリノ 8.6km(個人TT)★★


5月8日(土)第1ステージ トリノ〜トリノ 8.6km(個人TT)★★5月8日(土)第1ステージ トリノ〜トリノ 8.6km(個人TT)★★ image:RCS Sport1861年のイタリア統一から160周年を記念して、当時のイタリア王国首都トリノで第104回ジロ・デ・イタリアが開幕する。ちなみに今から10年前、150周年を記念した2011年の第94回大会の開幕地も同様にトリノで、HTCハイロードが19.3kmのチームTTを制している(ちなみにチームTTは2015年を最後に登場していない)。

登場から90周年を迎えるマリアローザの最初の着用者を決めるのはトリノ市内を走る8.6kmの個人タイムトライアル。カステッロ広場をスタートするコースには小さなアップダウンはあるものの(獲得標高差50m)概ね平坦で、市街地ならではの短い石畳区間や直角コーナー、Uターンが組み合わされている。イザベッラ橋でポー川の対岸に渡ると、3つの直角コーナーを抜けてから全長2.8kmの長い長いモンカリエーリ通りの最終ストレートへ。主催者が予想するステージ優勝タイムは9分強で、平均スピードは55〜57km/h。つまり平坦路では常に60km/hオーバーで巡航するパワーが必要とされる。フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)に代表される大柄なTTスペシャリストの出番だ。



5月9日(日)第2ステージ → コースマップ
ストゥピニージ(ニケリーノ)〜ノヴァーラ 179km ★★


5月9日(日)第2ステージ ストゥピニージ(ニケリーノ)〜ノヴァーラ 179km ★★5月9日(日)第2ステージ ストゥピニージ(ニケリーノ)〜ノヴァーラ 179km ★★ image:RCS Sport開幕地トリノ近郊のストゥピニージから、ピエモンテ州の北東部に広がる広大な平原を走ってノヴァーラへ。ワインの産地を走るステージ前半は葡萄畑が、お米の産地を走る後半は水田が広がる。中盤にかけて小高い丘のエリアを走るステージの獲得標高差は600mしかない。そしてその丘エリアには今大会最初のカテゴリー山岳である4級山岳モンテキアーロ・ダスティが設定されており、ここを先頭通過することで自動的に翌日のマリアアッズーラ(ブルージャージ)着用の権利が手に入る。

ステージ後半にかけて登場する2つのスプリントポイントのうち、2つ目のスプリントポイント(残り24km地点)にはボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が設定されているため、前日の個人TTでマリアローザに数秒差で届かなかった選手が動いてくるかもしれない。そして最後はノヴァーラでの大集団スプリントで決する。ここでもボーナスタイム(10秒、6秒、4秒)による総合順位変動の可能性有り。つまりマリアローザを着用したいスプリンターは前日の個人TTでも手を抜かないはず。

ちなみにノヴァーラはピエモンテ州においてトリノに次いで第二の都市だが、ジロに登場するのは53年ぶり。前回登場した1968年大会第2ステージでは、最終的に総合優勝するエディ・メルクス(ベルギー)がステージ優勝を飾っている。



5月10日(月)第3ステージ → コースマップ
ビエッラ〜カナーレ 190km ★★★


5月10日(月)第3ステージ ビエッラ〜カナーレ 190km ★★★5月10日(月)第3ステージ ビエッラ〜カナーレ 190km ★★★ image:RCS Sportピエモンテ州をノヴァーラまで北上したプロトンは、再びトリノ近郊まで南下する。合計3つのカテゴリー山岳が設定された190kmコースの難易度は3つ星。3級山岳ピアンカネッリ、4級山岳カスティーノ、4級山岳マネーラはいずれも登坂距離5km・平均勾配6%ほどで、2日連続ステージ優勝を狙うピュアスプリンターたちの脚を苦しめることになるだろう。

ステージ優勝に最も大きく影響するのは、前述の3つのカテゴリー山岳ではなく、残り15km地点に登場するスプリントポイントだ。このボーナスタイムが設定された登坂距離2.6km・平均勾配7.1%・最大勾配15%の丘で飛び出すパンチャーやクライマーを、スプリンターチームはフィニッシュまでに捉えることができるだろうか。残り5km地点の短い登り(最大勾配12%)を終えると、フィニッシュまではなだらかな下りが続いている。終盤にかけて活発なアタック合戦が巻き起これば、すべての4賞ジャージ(マリアローザ、マリアチクラミーノ、マリアアッズーラ、マリアビアンカ)の持ち主が変わるかもしれない。



5月11日(火)第4ステージ → コースマップ
ピアチェンツァ〜セストラ 187km ★★★


5月11日(火)第4ステージ ピアチェンツァ〜セストラ 187km ★★★5月11日(火)第4ステージ ピアチェンツァ〜セストラ 187km ★★★ image:RCS Sportエミリア=ロマーニャ州のピアチェンツァから平坦路を駆け抜けて、パルマの街を通過後にアペニン山脈へと舵を切る。ステージ後半100kmはアップダウンの繰り返しで、標高1,020mのセストラに向けて徐々に高度を上げていく。2つの3級山岳を越えた時点でスプリンターたちは姿を消すことになりそうだ。翌日以降のチャンスを狙うスプリンターたちは、ステージ優勝者+11〜13%(平均スピードによって変動する)のタイムリミット内での完走を目指す。

カテゴリーのついていない断続的な登りと下りを繰り返した一行は、残り7km地点でボーナスタイム有りのスプリントポイントを越えてから、2級山岳パッセリーノ峠(登坂距離4.3km・平均勾配9.9%・最大勾配16%)に挑む。パンチの効いたこの急坂をクリアすると、2.5kmにわたる緩やかなアップダウンをこなしてフィニッシュにたどり着く。最後はマリアローザ候補たちによる今大会最初の登坂バトルに注目だが、まだ3週間の戦いの序盤だけに、闇雲に総合リーダーの座を奪いにはこないはず。総合に関係しない選手たちが大逃げを成功させる可能性も高い。



5月12日(水)第5ステージ → コースマップ
モデナ〜カットーリカ 177km ★


5月12日(水)第5ステージ モデナ〜カットーリカ 177km ★5月12日(水)第5ステージ モデナ〜カットーリカ 177km ★ image:RCS Sport注目は最後の集団スプリント。以上。

広大なポー平原の南端、アペニン山脈の北麓を、エミリア街道(国道9号線)に沿ってひたすらエミリア=ロマーニャ州を南東に向かう177kmコースに起伏はない。モデナ、ボローニャ、イモラ、ファエンツァ、フォルリ、チェゼーナ、そしてリミニを駆け抜けて、アドリア海に面したビーチリゾート地カットーリカにフィニッシュする。それまで直線基調だったコースが曲がりくねるのが残り3kmを切ってから。五角形を描くように5つの直角コーナーを抜けると、残り900mからフィニッシュラインまでヴィオランテ・デル・プレーテ通りを真っ直ぐ猛進する。

ポー平原を吹き抜ける北風or南風が集団分裂を巻き起こさない限り、大集団によるスプリントで決するだろう。おそらくこれが今大会2回目の本格的な集団スプリント。2014年のポイントシステム変更(平坦ステージに多くのポイントを設定)以降、スプリンターたちによって争われているマリアチクラミーノの有力候補が自ずと絞られてくるだろう。



5月13日(木)第6ステージ → コースマップ
グロッテ・ディ・フラザッシ〜アスコリ・ピチェーノ(サンジャコモ)160km ★★★


5月13日(木)第6ステージ グロッテ・ディ・フラザッシ〜アスコリ・ピチェーノ(サンジャコモ)160km ★★★5月13日(木)第6ステージ グロッテ・ディ・フラザッシ〜アスコリ・ピチェーノ(サンジャコモ)160km ★★★ image:RCS Sportマルケ州を走る全長160kmの第6ステージには今大会最初の本格的な山頂フィニッシュが登場する。ヨーロッパ最大級のフラサッシ鍾乳洞の観光客用駐車場に置かれたスタート地点を離れると、プロトンはアペニン山脈の奥地へと分け入っていく。標高1500m級の2級山岳フォルカ・ディ・ガルドと3級山岳フォルカ・ディ・ポレスタを越えると一気に標高152mまでダウンヒル。例によってボーナスタイム付きスプリントポイントが設定されたアスコリ・ピチェーノを通過後、いよいよ2級山岳サンジャコモへの登坂が始まる。

登坂距離15.5km・平均勾配6.1%・最大勾配10%というスペックはアルプスやドロミテの峠と比較すると見劣りするものの、頂上手前5kmにかけて7〜8%を刻む登りがマリアローザ候補のセレクションの場になるのは間違いない。標高1,090mの高地サンジャコモがジロに登場するのは19年ぶり。獲得標高差3,400mのステージの最後に、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)やサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)らによる登坂バトルが繰り広げられる。



5月14日(金)第7ステージ → コースマップ
ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★


5月14日(金)第7ステージ ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★5月14日(金)第7ステージ ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★ image:RCS Sportアドリア海に沿って南下し、アブルッツォ州からモリーゼ州に移ろう第7ステージの難易度は2つ星。ステージ中盤にかけて丘上都市の4級山岳キエーティを通過するが、ティレーノ〜アドリアティコのような激坂は登場しない。その後もいくつかの丘を越えるものの、ピュアスプリンターたちは問題なく力を残した状態でテルモリに到着するだろう。

しかしフィニッシュラインまで真っしぐらというレイアウトではない。残り1.7km地点で海岸沿いを離れると、テルモリ旧市街地を横目にした10〜12%の登り区間(マリオミラノ通り)が200mにわたって登場するのだ。その後、残り1kmを切ってからは道が狭まり、いくつかのラウンドアバウトとコーナーを抜けて登り緩斜面の最終ストレートへ。マリオミラノ通りで飛び出した数名が、緩やかに弧を描くマルティーリ・デッラ・レジステンツァ通りまで逃げ切るかもしれない。集団スプリントに持ち込まれた場合でも、登れる軽量スプリンターたちがバトルを繰り広げることになりそうだ。



5月15日(土)第8ステージ → コースマップ
フォッジャ〜グアルディア・サンフラモンディ 170km ★★★


5月15日(土)第8ステージ フォッジャ〜グアルディア・サンフラモンディ 170km ★★★5月15日(土)第8ステージ フォッジャ〜グアルディア・サンフラモンディ 170km ★★★ image:RCS Sport2021年のジロは北イタリアの比重が高い。というのも、カンパニア州のグアルディア・サンフラモンディにフィニッシュするこの第8ステージが今大会の最南端。シチリア州はおろか、カラブリア州にもバジリカータ州にも立ち寄らず、翌日から最終決戦地アルプスやドロミテに向けた北上が始まる。

逃げ向きのレイアウトだけに、スタート地点フォッジャを離れてから始まる登りを利用して逃げ屋たちが勢いよく飛び出すはず。逃げグループ形成後は標高1,392mの2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァ(登坂距離18.9km・平均勾配4.6%)に向けて高度を上げていき、分水嶺を越えてティレニア海側へ。最後は4級山岳グアルディア・サンフラモンディ(登坂距離3km・平均勾配6.9%・最大勾配11%)を駆け上がる。カテゴリー4級の山頂フィニッシュだが、翌日の本格山岳ステージの足慣らしとして、ここで数秒差を奪うために登りの麓からアタックを仕掛けてくる総合上位陣も出てくるだろう。南イタリアならではの、雨が降れば滑りやすい路面に注意したい。



5月16日(日)第9ステージ → コースマップ
カステル・ディ・サングロ〜カンポ・フェリーチェ(ロッカ・ディ・カンビオ)158km ★★★★


5月16日(日)第9ステージ カステル・ディ・サングロ〜カンポ・フェリーチェ(ロッカ・ディ・カンビオ)158km ★★★★5月16日(日)第9ステージ カステル・ディ・サングロ〜カンポ・フェリーチェ(ロッカ・ディ・カンビオ)158km ★★★★ image:RCS Sport開幕からすでに1週間以上が経過。日曜日のアブルッツォ州を駆ける第9ステージは山岳スペクタクルに注目だ。何しろ158kmの短いステージにはカテゴリー山岳が4つと、非カテゴリー山岳が2つ組み込まれており、獲得標高差は3,400mに達する。立て続けに2級山岳ゴーディ峠、3級山岳フォルカ・カルーゾ、2級山岳オヴィンドーリを経て、残り8km地点でボーナスタイム付きのスプリントポイントを通過。そこからマリアローザを含むプロトンはさらに1級山岳カンポ・フェリーチェに向けて高度を上げていく。

残り3.1kmから1300mにわたって続く登り勾配のトンネルを抜けると、選手たちの目の前にはスキー場カンポ・フェリーチェのゲレンデが広がる。そして、残り1.6km地点からは勾配が増すとともに路面が未舗装に切り替わる。スキー場の斜面を蛇行しながら登っていくこの未舗装区間の平均勾配は8.8%で、残り400m地点で最大勾配は14%をマーク。この未舗装&急坂の組み合わせはマリアローザ争いにインパクトを与える。イタリア語で「幸せな広場・平地」を意味するカンポ・フェリーチェで、幸せなマリアローザを手にするのは誰だろうか。



5月17日(月)第10ステージ → コースマップ
ラクイラ〜フォリーニョ 139km ★★


5月17日(月)第10ステージ ラクイラ〜フォリーニョ 139km ★★5月17日(月)第10ステージ ラクイラ〜フォリーニョ 139km ★★ image:RCS Sport待ちに待った休息日まであと少し。例年よりも1日長い大会1週目が、大会最短距離の第10ステージで締めくくられる。2009年に発生した大地震により大きなダメージを受けたラクイラから、休息の地フォリーニョまでの139kmコースに登場するカテゴリー山岳は4級が一つだけ。ピュアスプリンターを含む大集団がフォリーニョの街に雪崩れ込むことになりそうだ。

残り20km地点から先はほぼ真っ平ら&直線的な幹線道路が続くが、残り1.5km地点から右、左、左と、忙しなく直角コーナーをこなさなければならない。このテクニカルなフィニッシュレイアウトは、ブアニが勝利した2014年大会第7ステージと、グライペルが勝利した2016年大会第7ステージと同じ。残り300mから右に緩くカーブするナザリオサウロ通りで、ピュアスプリンターたちがスピード勝負を繰り広げる。なお、大会は折り返し地点を迎えるが、スプリンター向きのステージはもう2つか3つしか残されていない。



5月18日(火)休息日




text:Kei Tsuji

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