2021/05/26(水) - 14:55
ミシュランのロードタイヤの中で、もっともコンペティティブなモデルに位置づけられるPOWER TIME TRIAL。クリンチャーでありながら、チューブレスタイヤに比肩する転がり抵抗を実現したという注目作をインプレッション。
世界初の自転車用クリンチャータイヤを世に送り出したミシュラン。その幅広いラインアップの中で、ロードバイク用のハイエンドラインに位置づけられるのが、POWERシリーズだ。
MotoGP用のレーシングタイヤと同じモデル名を与えられたフラグシップシリーズには、オールラウンドな性能を持つスタンダードモデルのPOWER ROADを主軸に、用途に応じていくつかのモデルが用意されている。
その中でも極限の走行性能を追求したハイパフォーマンスモデルがPOWER TIME TRIAL(以下、POWER TT)。ミシュランが「レーシングライン」と位置付けるプロユースモデルであり、大きくブルーとイエローのラインが入るサイドウォールのデザインがその証。
TTというモデル名が示すように、ミシュランがこのタイヤで追い求めたのはスピードだ。転がり抵抗を改善するために新設計された"Race-2 Compound"の採用と、3層180TPIという薄くしなやかなケーシングを組み合わせることで、比類なく少ない走行抵抗を実現した。
更に、変形ロスの原因になることを嫌ってか、POWER ROADに採用されているアンチパンクベルトも省略されている。結果として、重量も190g(25C)と非常に軽い仕上がりとなっている。そんなピュアレーシングな一本を編集部員の安岡がPOWER ROADに続きインプレッション。
―編集部インプレッション
最初に正直に申し上げておくと、私がこのタイヤを買おうと思った理由、それはズバリ「見た目」である。もちろん、同じPOWERシリーズのオールラウンドモデル"POWER ROAD"をインプレッション(※記事はコチラ
更に言えば、POWER TTが並み居る競合タイヤを蹴散らし、クリンチャータイヤの中で最も低い転がり抵抗を叩き出し、なんとなれば組み合せるチューブによってはチューブレスタイヤを含めても最速である可能性を持ったタイヤだという評判も、もちろん耳にしていた。
なので、性能に関してももちろん期待はしていたし、「最速のロードタイヤ」という評価にも興味があったのは事実。だが身銭を切って(そう、今回も自腹なんです)このハイエンドタイヤを手に入れた一番の理由は"何か"と問われれば「チョーカッコイイロゴ!」と即答する。これは本当だ。
もちろん、この記事を開いたあなたの期待する文章が、ここまでに1文字も存在していないことは承知している。これがYouTubeであれば、肝心の性能について語る再生時間へのリンクを概要欄に貼っているところだが、残念ながらこれはテキストレポートなので、適当にスクロールしてほしい。ここから数行はいかに自分の愛車にこのタイヤがベストマッチかという自慢なので。
ミシュランのコーポレートカラーであるブルーとイエローのラインが大きく2か所に入ったグラフィックは、ミシュランがレーシングラインと位置付けるこのPOWER TTとPOWER COMPETITION TUBULARのみの特別なもの。MotoGPマシンが使用するのと同じパターンで、モータースポーツファンにはたまらないハズだ。
だが、あいにく私はそこまで熱烈なモータースポーツファンではない。ではなぜ、このグラフィックに惚れ込んだのか。それは、自分のバイクをゴールド×ブルーというカラーコンセプトで組み上げているから。
深いマットゴールドのデローザ KERMESSEにアクセントとしてブルーアルマイトのブレーキキャリパーやヘッドキャップ等を配置し、青金でまとめている私にとってこのタイヤはまさに画龍点睛と呼ぶにふさわしいものだった。つまり、このタイヤを履くことで我が愛車は完全体となったのだ。
ここまで愛車を自慢してしまったので、一つお願いがあるんですけど、この記事のURLと一緒に、「ダサ」「センスゼロ」「成金趣味」みたいなトゲトゲことばをSNSに投稿するのはお控えいただきたい。自分よりも愛車が貶された時に大きなダメージを受けるのが、モノに自分を仮託する自転車オタクの性なので。せめて鍵アカウントでやってください後生ですからお願いします。
自分のバイクのほうがカッコイイぜ!っていうのはむしろウェルカムですので、告知ツイートにでもぶら下げておいてください(笑)
さて、それではみなさんが気になる走行性能についても少しは触れておこう。はっきり言って、これほどわかりやすいタイヤもそうそうない。このタイヤを表すのに多くの言葉は不要。ただ一語、「速い」。それだけで十分だと思えるほどの鮮烈さが、このPOWER TTには宿っている。
もちろん他にも語れることはたくさんある。ただ、このタイヤは「速さ」のために全てのリソースを注ぎ込んでいることは間違いない。そのことが、それこそ一踏み目から圧倒的な実感として伝わってくる。なんとなれば、上ハンドルからエアロポジションに持ち替えたような錯覚を感じるほど。
それはもちろん25Cにて実測196gという軽量性も大いに影響しているだろうし、新開発のコンパウンドも非常に良い働きをしているのだろう。しかし、個人的な印象として最も大きなファクターだと感じたのは、そのしなやかさによる変形ロスの少なさだ。
手に取っただけでわかる薄くしなやかなサイドウォールがこのタイヤの高性能の基礎であり、その土台の上に薄く乗せられたRace-2 コンパウンドトレッドが転がりの良さを演出している。ゼロ加速の軽快感は重量によるところが大きいだろうが、中速域以降の伸びや減速しづらさからエネルギー損失の明白な少なさは伝わってくる。
今回のテストでは体重63kgの筆者が6気圧にてテストを行ったが、綺麗な路面を走っているときの気持ち良さはもちろん、少し荒れた路面でも持ち前のしなやかさを発揮してしっかり路面を掴んでくれる。高いトラクションと少ないロスという、相反する性能をまるで当たり前のように実現するのが、このPOWER TTだ。
その副産物というべきか、乗り心地も極めて快適。走行抵抗だけではなく体への負担も低減するという多方面からのアプローチで、「速さ」という目標へ更に一歩近づくことを可能としているのだろう。
グリップについても、その路面追従性も相まってドライ路面で不安を感じることはほとんどない。フルスリックというパターンもあり、傾けていった時の挙動変化もナチュラルでコントロールしやすい。ただ、ウェットな路面での限界はそこまで高くなく、そこはPOWER ROADのほうが優れているように感じる。POWER ROADと同じ感覚で濡れた路面のコーナーに入ると、時折リアが滑ることもあった。
そして、POWER TTはこの性能を実現するために、アンチパンクベルトという犠牲を払っているのも事実。ただ既に500㎞ほどはこのタイヤで走っているが、現在までパンクは一度も無し。むしろいつパンクしてもおかしくないと意識し、注意して走ることが無形のアンチパンクベルトとして作用しているのだろう。また、寿命についても意外と長持ちしそう。トレッドも薄いためPOWER ROADよりは短いだろうが、1500~2000㎞程は保つのではないか、という印象。
重量も軽く、走りも軽く、乗り心地も良い。ワイドリムがスタンダードとなった現在、超軽量クリンチャータイヤとして25Cをラインアップするというのも嬉しいポイントだ。ディスクロード用のヒルクライム向けの決戦タイヤとして、ラテックスチューブやTPUチューブと組み合わせれば、圧倒的なアドバンテージを得られるだろう。
そして何より、カッコイイ。このスペシャルタイヤが似合うバイクをぜひ貴方も組んでみては?
ミシュラン POWER TIME TRIAL
サイズ/平均重量:700×23C/180g
700×25C/190g
ケーシング密度:3×180tpi
指定空気圧:5-8bar
カラー:ブラック
価格:7,920円(税込)
text:Naoki Yasuoka
photo:Gakuto Fujiwara、So Isobe
世界初の自転車用クリンチャータイヤを世に送り出したミシュラン。その幅広いラインアップの中で、ロードバイク用のハイエンドラインに位置づけられるのが、POWERシリーズだ。
MotoGP用のレーシングタイヤと同じモデル名を与えられたフラグシップシリーズには、オールラウンドな性能を持つスタンダードモデルのPOWER ROADを主軸に、用途に応じていくつかのモデルが用意されている。
その中でも極限の走行性能を追求したハイパフォーマンスモデルがPOWER TIME TRIAL(以下、POWER TT)。ミシュランが「レーシングライン」と位置付けるプロユースモデルであり、大きくブルーとイエローのラインが入るサイドウォールのデザインがその証。
TTというモデル名が示すように、ミシュランがこのタイヤで追い求めたのはスピードだ。転がり抵抗を改善するために新設計された"Race-2 Compound"の採用と、3層180TPIという薄くしなやかなケーシングを組み合わせることで、比類なく少ない走行抵抗を実現した。
更に、変形ロスの原因になることを嫌ってか、POWER ROADに採用されているアンチパンクベルトも省略されている。結果として、重量も190g(25C)と非常に軽い仕上がりとなっている。そんなピュアレーシングな一本を編集部員の安岡がPOWER ROADに続きインプレッション。
―編集部インプレッション
最初に正直に申し上げておくと、私がこのタイヤを買おうと思った理由、それはズバリ「見た目」である。もちろん、同じPOWERシリーズのオールラウンドモデル"POWER ROAD"をインプレッション(※記事はコチラ
更に言えば、POWER TTが並み居る競合タイヤを蹴散らし、クリンチャータイヤの中で最も低い転がり抵抗を叩き出し、なんとなれば組み合せるチューブによってはチューブレスタイヤを含めても最速である可能性を持ったタイヤだという評判も、もちろん耳にしていた。
なので、性能に関してももちろん期待はしていたし、「最速のロードタイヤ」という評価にも興味があったのは事実。だが身銭を切って(そう、今回も自腹なんです)このハイエンドタイヤを手に入れた一番の理由は"何か"と問われれば「チョーカッコイイロゴ!」と即答する。これは本当だ。
もちろん、この記事を開いたあなたの期待する文章が、ここまでに1文字も存在していないことは承知している。これがYouTubeであれば、肝心の性能について語る再生時間へのリンクを概要欄に貼っているところだが、残念ながらこれはテキストレポートなので、適当にスクロールしてほしい。ここから数行はいかに自分の愛車にこのタイヤがベストマッチかという自慢なので。
ミシュランのコーポレートカラーであるブルーとイエローのラインが大きく2か所に入ったグラフィックは、ミシュランがレーシングラインと位置付けるこのPOWER TTとPOWER COMPETITION TUBULARのみの特別なもの。MotoGPマシンが使用するのと同じパターンで、モータースポーツファンにはたまらないハズだ。
だが、あいにく私はそこまで熱烈なモータースポーツファンではない。ではなぜ、このグラフィックに惚れ込んだのか。それは、自分のバイクをゴールド×ブルーというカラーコンセプトで組み上げているから。
深いマットゴールドのデローザ KERMESSEにアクセントとしてブルーアルマイトのブレーキキャリパーやヘッドキャップ等を配置し、青金でまとめている私にとってこのタイヤはまさに画龍点睛と呼ぶにふさわしいものだった。つまり、このタイヤを履くことで我が愛車は完全体となったのだ。
ここまで愛車を自慢してしまったので、一つお願いがあるんですけど、この記事のURLと一緒に、「ダサ」「センスゼロ」「成金趣味」みたいなトゲトゲことばをSNSに投稿するのはお控えいただきたい。自分よりも愛車が貶された時に大きなダメージを受けるのが、モノに自分を仮託する自転車オタクの性なので。せめて鍵アカウントでやってください後生ですからお願いします。
自分のバイクのほうがカッコイイぜ!っていうのはむしろウェルカムですので、告知ツイートにでもぶら下げておいてください(笑)
さて、それではみなさんが気になる走行性能についても少しは触れておこう。はっきり言って、これほどわかりやすいタイヤもそうそうない。このタイヤを表すのに多くの言葉は不要。ただ一語、「速い」。それだけで十分だと思えるほどの鮮烈さが、このPOWER TTには宿っている。
もちろん他にも語れることはたくさんある。ただ、このタイヤは「速さ」のために全てのリソースを注ぎ込んでいることは間違いない。そのことが、それこそ一踏み目から圧倒的な実感として伝わってくる。なんとなれば、上ハンドルからエアロポジションに持ち替えたような錯覚を感じるほど。
それはもちろん25Cにて実測196gという軽量性も大いに影響しているだろうし、新開発のコンパウンドも非常に良い働きをしているのだろう。しかし、個人的な印象として最も大きなファクターだと感じたのは、そのしなやかさによる変形ロスの少なさだ。
手に取っただけでわかる薄くしなやかなサイドウォールがこのタイヤの高性能の基礎であり、その土台の上に薄く乗せられたRace-2 コンパウンドトレッドが転がりの良さを演出している。ゼロ加速の軽快感は重量によるところが大きいだろうが、中速域以降の伸びや減速しづらさからエネルギー損失の明白な少なさは伝わってくる。
今回のテストでは体重63kgの筆者が6気圧にてテストを行ったが、綺麗な路面を走っているときの気持ち良さはもちろん、少し荒れた路面でも持ち前のしなやかさを発揮してしっかり路面を掴んでくれる。高いトラクションと少ないロスという、相反する性能をまるで当たり前のように実現するのが、このPOWER TTだ。
その副産物というべきか、乗り心地も極めて快適。走行抵抗だけではなく体への負担も低減するという多方面からのアプローチで、「速さ」という目標へ更に一歩近づくことを可能としているのだろう。
グリップについても、その路面追従性も相まってドライ路面で不安を感じることはほとんどない。フルスリックというパターンもあり、傾けていった時の挙動変化もナチュラルでコントロールしやすい。ただ、ウェットな路面での限界はそこまで高くなく、そこはPOWER ROADのほうが優れているように感じる。POWER ROADと同じ感覚で濡れた路面のコーナーに入ると、時折リアが滑ることもあった。
そして、POWER TTはこの性能を実現するために、アンチパンクベルトという犠牲を払っているのも事実。ただ既に500㎞ほどはこのタイヤで走っているが、現在までパンクは一度も無し。むしろいつパンクしてもおかしくないと意識し、注意して走ることが無形のアンチパンクベルトとして作用しているのだろう。また、寿命についても意外と長持ちしそう。トレッドも薄いためPOWER ROADよりは短いだろうが、1500~2000㎞程は保つのではないか、という印象。
重量も軽く、走りも軽く、乗り心地も良い。ワイドリムがスタンダードとなった現在、超軽量クリンチャータイヤとして25Cをラインアップするというのも嬉しいポイントだ。ディスクロード用のヒルクライム向けの決戦タイヤとして、ラテックスチューブやTPUチューブと組み合わせれば、圧倒的なアドバンテージを得られるだろう。
そして何より、カッコイイ。このスペシャルタイヤが似合うバイクをぜひ貴方も組んでみては?
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サイズ/平均重量:700×23C/180g
700×25C/190g
ケーシング密度:3×180tpi
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